電脳塵芥

四方山雑記

132人の日本人傭兵がウクライナで爆弾を受けて全滅したってのはソースがない中国発のデマじゃないかな


https://twitter.com/chibachina5/status/1689611015699456000

 コミュニティノートが付いていますけど、そもそも元記事に「注:記事内のイラストは内容とは関係ありません、また画像はネット上から引用したものです、権利侵害等がありましたらご連絡の上、削除して下さい。」(※自動翻訳)とあるので、写真が2008年でもおかしくはないですね。指摘としては精査が甘いかなと。それはともかく「ウクライナに3000人の日本傭兵が~」というデマ情報をはじめとして、これもおそらく中国発と思われる自衛隊傭兵デマの一種だと思われる。
 まず元記事は個人?が書いた「132人被团灭!日本雇佣军在乌克兰战场上的情况确实令人惋惜」というもので大まかな内容は以下の様なもの。

ロシアの最前線メディアによると、8月7日、ウクライナのリマン地方にある廃墟と化したホテル・キャンプが、ロシア空軍と宇宙軍の猛攻撃を受け、正確なサーモバリック爆弾がキャンプに命中し、即座に破壊されたという。 この収容所内には日本の旭日旗が掲げられていた。
報道によれば、132人の退役自衛隊員からなる傭兵部隊はウクライナに到着したばかりで、休息と現地での特定の戦闘任務を待っていた。 しかし、彼らはポーランドを通過している最中に、ロシア空軍と宇宙軍による壊滅的な攻撃を受けた。
この情報はロシアの最前線メディアの報道によるもので、具体的なメディア名は記されていないが、報道の内容と状況から、その信憑性を暫定的に確認することができる。 しかし、他に独自に確認された情報源がない以上、この情報はまだ慎重に受け止める必要がある。
この事件に内在しているのは、日本の傭兵のウクライナへの移動がロシアに察知され、壊滅的な攻撃を受けたという事実であろう。 ロシアとしては、この日本からの傭兵部隊を脅威とみなし、容赦なく粛清したのかもしれない。
※自動翻訳

この報道(?)、ロシアの名称がわからない前線メディアがソースという、もはやソースとはいえないものがソースとされており、実は記事自体には「この情報はまだ慎重に受け止める必要がある」という逃げの様な記述もあります。ところでこの「132人に日本人傭兵がサーモバリック爆弾で死んだ」という話ですが、これ2月には「176名の日本人傭兵がサーモバリック爆弾で死んだ」という情報も流れているので流れとしては同類。なおこの記事だと8月7日が事件が起きた日ですが、8月10日にツイートには8月5日と記述している人がいたりと日付が安定してない*1。さらに8月13日の記事では12日の事件で死亡は144名、そして根拠を日本のメディア報道としている記事まであってかなりの混乱状況になっている*2。しかしながら上記含めてどの記事にもロシア、ウクライナ側いずれのソースもないというお粗末なもので、そしてロシア語で検索する限りその様な記事は存在しません。記事にある「红利曼」(リマン)という地区を入れて検索しても存在しない。要は基本的に中国圏のみで流れている情報と言えます。例外として英語圏で唯一記事にしているのがIMEDIAというサイトに「Really fierce! 132 Japanese mercenaries were hit by missiles as soon as they entered Ukraine, and instantly disappeared」という記事がありますが、中身そのものは最初に挙げた記事とほぼ同じすし、8月12日と遅いことから中国圏の影響を受けた可能性ありですし、これ以外のサイトではやはり見当たらない。調べた限りで一番早い初出は8月8日の16時に投稿された個人による記事ですが、こちらはロシアのメディアがソースとさえ言っていません。8日は掲示板に扇情的な投稿が見られますし*3、中国で流行り出したのは8日であることがわかり、そしてどうにもその後に中国圏ではそれなりにウケている模様。

以上のものはあちらでの動画サムネイルの「一部」ですが、このほかにもゴロゴロあるのが実情。ショッキング且つ一部層の愛国心を満足させる良いコンテンツと言えるのでしょう。
 ちなみに冒頭の記事にはもう一人の日本人傭兵「ハル」が映っています。

この方は元ヤクザという異色の経歴を持つ傭兵で、日本の報道でも彼を扱った記事が少なからずあったりします。ただ中国圏などで顕著ですが、アフガニスタンとこのハル氏の画像はある意味でネットミーム化というか使いやすい「素材」扱いされている様で、つまりこの記事での写真使用はそういう文脈でしょう。
 ウクライナにおける日本人傭兵の実際の数は不明ですが、例えば2022年9月時点ではロシア国防相は9人としており*4、日本人義勇兵に参加している人物が6月に語った数は「知る限り」で10名*5。これらの事から考えると100人以上の日本人が集団的な傭兵部隊として動いていることはあり得ないレベルでしょう。またデマを真に受けるならロシアが爆弾が落とされたそうですが、ロシアからしたらこんなに日本を非難するおいしい情報はないわけで、何故それを放置してるんですかね……、と。まあ、デマですよね。



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