電脳塵芥

四方山雑記

越谷市の「蒲生モスク」は「クルド人の為のモスク」ではないのでは


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1766687013997269418

 写真は越谷市にあるモスク「蒲生モスク」だ。運営団体は2011年に設立された一般社団法人ISLAMIC CULTURAL FOUNDATION JAPANであり、公式HPは英語のみで構成されていることから基本的に日本人向けとは言えない施設であるとはいえる。投稿者は「クルド人の為のモスク」としているがフェイスブックを見る限り、この団体はベンガル語で発信しており、つまりはバングラデュ出身の人間がメインであろうことがわかる。越谷市HPの外国籍市民数(2023年12月)を見るとバングラデシュ籍の在住者数は5位で、その人数は329人。かたやクルド人が内包されるトルコ人は10位の台湾158人を下回り、「その他」に含まれるほどに少ない。SNS上ではこのモスクについて「国内バングラデシュ人 ムスリムグループの結晶」との投稿も存在する事から、利用者そのものはいてもおかしくはないが蒲生モスクを「クルド人の為のモスク」と言い張るのはおかしい。なおHPによる施設の来歴は、2003年時点に収容人数が70人ほどのモスクは存在したがイスラムコミュニティの増加による問題から2019年に新たなモスクプロジェクトを立ち上げ、全国を回って慈善融資を募っていると読める(HPには2022年3月までに1億5000万円の寄付を受け付けたとある)。このプロジェクトによって2021年に蒲生モスクが誕生したことになる。
 そして越谷市議からの情報としての「越谷市が事務局」だが、団体や越谷市のHPを確認する限り該当モスクが事務局が市である事実、つまりは宗教施設の事務局が市のわけがない。これが「越谷市に事務局」ならば意味は通るし、過去には越谷市議から「拠点は越谷市」と聞いたという投稿をしている事から、これは「越谷市が事務局」ではなく「越谷市に事務局」という日本語表現の誤ちだろう。


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1753012730066579871

ちなみにこの「越谷市議」は自民党のたつざわ貴明氏の事であり、該当情報は以下のリプライの事かと思われる。


https://twitter.com/tatsuzawa1125/status/1752983336082079889

のんすけちゃんが述べている「あのモスク」は蒲生モスクの事と思われるのだが、この前段のやり取りは次の様なものとなる。

発端となっている削除された投稿ものんすけちゃんのものなのだが、現在アーカイブなどに該当投稿はおそらく存在せずにどの様な内容のものだったのかは不明である。ただし残存するやりとりを見る限りはどうやらベトナム国旗の存在をよく知らない状態なのか「越谷に(ベトナム国旗でカモフラージュした)クルド人の為の店がある」という様な事を言っていると思われる(しかしのんすけちゃんは以前にベトナムの外国人技能実習生が企業に搾取されていることに複数回怒りを表明していることからベトナム国旗を知らないとも思えず、何故クルド人と関連付けのか不思議だ。

https://twitter.com/nonsuketyan/status/1752946187299414335


https://twitter.com/TV65377118/status/1752962513187336345


https://twitter.com/xuexitaiyu/status/1752972969746542680

なおこの店はベトナム食品店なのだが店舗としては新しくグーグルマップやストリートビューでその外観などを確かめることは出来ない。なので現地を訪れてみたが、店の外観は以下の様なものだった。

ベトナム国旗部分は風によって棒に巻きついてよく見えない状態だったが、道路から見える形でベトナム食品の店であることがわかる様になっている。この部分が当時あったのかまでは不明ではあるが当時のやり取りを見る限りは存在したと思われる。少なくともこの店舗を見て「クルド人」に関連づけるのは想像力が豊かすぎる。筆者が訪れた時には客は一人も見かけなかったのでなんとも言えないが、「お客はクルド人」というのも怪しく、訪れていたベトナム人などをクルド人と勘違いしたのではないか。そもそも「ベトナム国旗でカモフラージュした店」であるかの判断はどう考えても発想の飛躍であり、断ずることは無理だ。ただ越谷市在住のベトナム人は2023年12月現在で約1100人で越谷市在住外国籍市民では2位の人数である。「普通」に考えればベトナム国旗でカモフラージュした店ではなく、ベトナム人をメインターゲットにした店だろう。


【3月15日追記】


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1753027733897330886

投稿が削除されたのは店から抗議を受けてとのこと。のんすけちゃんの投稿内容を想像するならば正当な抗議だと考えられる。


 またのんすけちゃんの元投稿には「恐ろしい事に他の県にも事務所がある」とも書いてあるしたつざわ市議の情報にも「拠点は越谷ですが他県にも事務所とある」。しかしHPやフェイスブックで該当団体の住所は蒲生モスクだけであり、他事務所の記載はない。2022年にまとめられた早稲田大学の店田廣文名誉教授の「イスラーム関係団体の法人化に関するデータ」を参照すればわかる様にあえて言えば全国各地にモスクが存在し、そのモスクにそれぞれの管理団体がいるという事はいえるだろうが、ISLAMIC CULTURAL FOUNDATION JAPANの拠点が越谷市で他県に事務所があるという情報は疑わしい。「日本人Cね」については以前指摘したが聞き間違いから端を発したデマであるし、つまらない突っ込みだが「観光ピザ」は「観光ビザ」だ。いずれにしてもイスラムフォビアクルド人バッシングを念頭に置いた意図的な混同なのかは不明だが、のんすけちゃんの冒頭の元投稿は文字通りの日本語で読んだ場合、事実と異なる表現をしている。
 この投稿者の「のんすけちゃん@nonsuketyan」は去年ごろからモスクに関する投稿が増えてきており、中には下記の様に「彼らのバッグには手引きして、モスクも用意している組織がいます!」などの陰謀論的な主張が垣間見える。


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1676388183305760768


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1676557978944827392

下の投稿では川口市長の奥ノ木信夫氏を「共産党系」と書いているが、奥ノ木氏は2022年選挙で「自公推薦」であり、共産党の支持は受けていない。埼玉県知事の大野元裕氏は無所属で自民、公明、立憲、国民、維新の与党を含む推薦を受けているので「立憲の大野知事」は誤りであるし、その際の県知事選には共産党は独自候補を立てているしで、この投稿者は基本的な情報の理解が出来ていない様に見受けられる。これは蒲生モスクの利用者についても同じことが言え、バングラデシュルーツの方がおそらくメインであろうに該当アカウントは彼らの存在を一切不可視化し*1、「クルド人」だけをピックアップするという不可思議な状況になっている。


https://twitter.com/nonsuketyan/status/1751464329298444769

これはイスラム教の地域への流入によって生じた「モスク」からのイスラムフォビア、そしてそこに近年の「クルド人問題」を混ぜ合わせて出来た陰謀論的世界と隣り合わせの人間が発したデマだと言える。調べれば見えるであろうものを見ずに、見えないものを積極的に見ようとするのは危ない。


【3月15日追記】
 越谷市に問い合わせをしたところ以下の様な返答を頂きました。

ご指摘のとおり、本市は大間野町二丁目にあるイスラム教のモスクについて、バングラデシュ国籍の方が中心となって運営されていることを認識しております。
なお、越谷市がこのモスクの事務局になっているという事実はございません。
また、市では外国人市民と日本人市民が互いにちがいを認め合う多文化共生社会の実現のため様々な施策を展開しています。
大間野町二丁目のモスクには、これまで本市が実施した外国人向けの事業に参加者として参加していただいたことや越谷警察と協力して合同の防犯パトロールを実施したことがございます。
併せて、本市の必要な情報を外国人市民へ提供することを目的に、毎月一回発行しているお知らせ「コシガヤ・メッセンジャー」をモスクへ配布しております。
越谷市 市民活動支援課 国際化担当



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*1:該当アカウントを「バングラデシュ」で検索しても一件もヒットしない