電脳塵芥

四方山雑記

レジ袋有料化の効果を少しだけ調べて見た

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 2020年7月に有料化したレジ袋有料化政策が1年を経過したくらいの時期から上記の様なレジ袋有料化反対を思わせる表現物が見られ、それらがツイートなどでも散見された状態でしたので環境省にレジ袋のメリット・デメリットが書いてある資料を開示請求してみた。デメリットを書いてある資料は届かなかったんですが、それはともかくとして環境省資料やそのほかの記事でその効果を見ていきます。この記事で書かなくっても環境省辺りが環境白書なりなんなりでいつか書くとは思うんですけれども*1

レジ袋使用の削減率

 日本チェーンストア協会日本フランチャイズチェーン協会、日本チェーンドラッグストア協会調べによる資料ではレジ袋の辞退率は以下の様になっています。

日本チェーンストア協会
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日本フランチャイズチェーン協会
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【日本チェーンドラッグストア協会】
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 日本チェーンストア協会は(おそらく)各月の削減率(辞退率)を表示しているのと思われますが*2、有料化後に辞退率が平均8割へと上がっているのが確認できます。ちなみにチェーンストア協会は主にスーパーなどが加入している協会となり、スーパー自体が有料化以前からマイバック運動などを推進しており元から他業界と比較してレジ袋辞退率が元から高いという業界特性があります。詳しくはこちらの記事で書いているので興味のある人はどうぞ。次に日本フランチャイズチェーン協会は2030年度までの60%以上辞退率という目標を有料化後に既に達成しています。そして日本チェーンドラッグストア協会は前年同月比の削減率のみの表示ですが、この資料からは相当量のレジ袋が削減された事がわかります。
 いずれにおいてもこれらの資料からは有料化によって相当数のレジ袋が削減されている事が伺えます。レジ袋をごみ袋として使用していた家庭では代わりにごみ袋を購入するようになった家庭もありますからこの減少分=プラごみの削減とはなりませんが、ひとまずこの削減は政策の効果として見て良いでしょう。

Web記事などからわかる効果

 以上で開示請求での資料は終わりますが、その他にWEB記事などでのレジ袋有料化についての記事を置いておきます。

ITmedia ビジネスオンライン】

レジ袋有料化から1年が経過したが、この施策をどう評価するか聞いた。すると「どちらとも言えない」が38.7%で最も多かった。「成功だった」は38.3%で、失敗だったは23.1%という結果に。
レジ袋有料化は「成功だった」と考える人が「失敗だった」を上回る

上記の調査からはこの政策において「成功だった」は「失敗だった」を上回っている事が分かります。ここら辺は辞退率などを見る限り、特殊な場でのアンケートでもしない限りは成功>失敗という感じにはなりそう。

NHK

セブン‐イレブンはことし2月まででおよそ8000トンのプラスチックごみの削減につながったとしていてレジ袋の収益はペットボトルのリサイクルのための回収容器の設置費用などにあてているということです。
またファミリーマートは、有料化の収益は、海洋ごみを原材料にした買い物かごを作る費用に充てています。
(中略)
レジ袋の有料化からまもなく1年になりますが、街なかにいわゆるポイ捨てされているレジ袋は減ったものの、弁当の空き容器などプラスチックのごみそのものは今も減っていないという声もあります。
レジ袋有料化1年 辞退率7割以上 導入前の3倍程度に増加

記事にあるコンビニの調査は環境省資料とほぼ同じ事が記載されていますが、セブンイレブンなどの記述はより具体的になっています。これらの事を見る限り「レジ袋」によるゴミが減ったことは分かります。ただ記事にある様にレジ袋以外のゴミはそのままなので、ここら辺は意識改革なり、街中でゴミが捨てやすい環境なりを作っていく必要があるでしょう。

データから見るレジ袋(ポリ袋)量の変化

 上記で引用したNHK記事には次のような記述があります。

ごみ袋メーカーが行った調査によりますと、去年7月以降、レジ袋と同じような形をした取っ手付きのポリ袋の購入量が2倍以上に増えているということで、有料化がプラスチックごみの削減につながっているかどうかは不透明です。

無料でもらったレジ袋をゴミ袋として再利用という家庭は多かったでしょうから、この指摘は重要です。ではデータ上でレジ袋を含む袋の変化はどの様になっているか。このデータでは「日本ポリオレフィンフィルム工業組合」が【2016~2020年 ポリオレフィンフィルムの年別出荷状況】というデータで以下の様に示しています。

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HDPEフィルムの項目をみると2020年のレジ袋は前年比で64.3%、ごみ袋は前年比95.7%となり、ごみ袋の消費量が上がったという記事の記述があるものの、その出荷総量自体はあまり変化はなさそうに見受けられます。また【ポリエチレン袋輸入量の年別推移(2016年~2020年)】を見ると輸入量からもポリ袋そのものの減少が見受けられます。

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更におまけで2019年から2021年の6月までの輸入量はこちら。

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これらを見ると2021年もポリ袋の輸入量は減少傾向と見受けられ、ゴミ袋の消費量が増えていると言っても総量としてのポリ袋は現在のところは減少傾向と見て良いかと思われます。

万引き数の変化

 レジ袋有料化によってマイバックが増え、そして万引きが増えたという指摘があります。これに関しては量販店などに行くと「マイバックをお持ちの方は~」などというアナウンスがされる店も存在しており、実際に店舗側が気を付けていることが伺えます。またスーパーマーケット白書における「レジ袋有料化によるスーパーマーケットへの影響 実態調査」では以下の様に万引きについての調査をしています。

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この調査によれば盗難の増加は「かなり増加」が5%、「やや増加」が26%で合わせて31%。「変わらない」が26%、「わからない」が43%となっています。ここから3割程度の万引きが増加している可能性が見受けられ、その割合は決して少ないとは言えません。
 では万引きの統計はどうだったのか。こちらに関しては警察庁に問い合わせて2019年から2020年までの万引きに関する認知件数、検挙人数、検挙人員の資料をもらいました。それによると以下の通り。

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万引き認知件数だけを見ると、
 2019年:93812
 2020年:87280
となり、2020年は万引きそのものの数は減っています。また月ごとの認知件数をグラフ化すると以下の通り。

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2020年の4月、5月などは新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響なのか前年と比べて大きな減少をしている事が伺え、この二つの月が前年からの万引き大幅減の主要因であることがが伺えます。ただしその後、レジ袋有料化の7月以降に関しても前年と比べてもやや少ない月が多いことから、スーパーへの調査で3割が増えたという回答があったとしても、万引き全体を見ればレジ袋有料化が万引きを増やしたという結論はかなり微妙なところです。結論としては個別の店で増えた店はあるかもしれないけれど、全体としては変わらないという玉虫色的なものになるかなと。


 一番最初に貼った画像に関して、レジ袋有料化はひとまずポリ袋の消費量は確実に減ったという事だけは言えます。それに伴う「ポリ袋」そのもののポイ捨ては減ったでしょう。ただしそれ以外のごみが減った可能性は少なく、またプラスチックごみという問題そのものを考えた場合はレジ袋以外にもやらなければいけない事が存在しており、それらの政策が今後進む可能性は十分にあるでしょう。これらの政策は直接的な生活変容を起こすものでもある為にツイッターなどでの拒否感はかなり強いものとなる事が予想されますが。
 

*1:令和3年版環境白書には効果自体は書いてないので実際に書くかは微妙

*2:日本チェーンストア協会の資料は添付した画像以上の情報がないために「おそらく」と書いています。資料名は「2020年度レジ袋削減率調査(日本チェーンストア協会)」なので各月の削減率(辞退率)を調べているのかなと。少なくとも前年同月比とは考えにくい。

【デマ】熱海の土砂崩れ近くにあったメガソーラーには韓国系企業は関わってない

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 土砂崩れの原因はその後の調査を待つにして。まず初めに言っておきますが、熱海市の伊豆山のメガソーラー施設には韓国のハンファは関わっていません。ハンファが関わり問題になっているのは伊豆高原伊東市です伊東市の問題は「伊豆高原メガソーラー訴訟を支援する会」が参考になり、これはこれで環境を考慮すれば憂慮すべき問題ですので各自でその賛否を考えてください。この件は単純に「伊豆山」を伊豆高原伊豆半島と勘違いした人間が広めてる伝言ゲーム的なデマです。ちなみに伊豆高原で運動をしている方のツイートでは以下の様に伊豆山の業者はハンファではないことを確認しています。

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 熱海市のメガソーラーの建設にネットで検索すると情報がかなり少ないのですが、建設中に予定地視察について書かれたブログが出てきます。こちらは大阪にある日本企業です。また資源エネルギー庁による事業計画認定情報で伊豆山に発電設備を持っている事業者はすべて日本企業です。

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一番下の宗教う法人以外は不動産系の会社の模様。ネットで漁れる情報を見る限り韓国系企業が関わっている模様は一切ありません。
 それと地元で反対があったという話もありますが、熱海市会議録を読む限りは当時と思われる時期にそういった発言はなさそうなために少なくとも市議会レベルでは問題にならなかった模様です。ただ近年少しだけですが規制についての話が触れられているために今後はなんかしらの動きがある可能性あります。

 以上の様に熱海市伊豆山におけるメガソーラーが韓国企業が関わったのはデマです。災害時はなんらかの理由を探したくなるものですが、それにかこつけてデマを吹聴するのは軽蔑すべき行為。

オマケ。掲示板の書き込みで国を判断するのは危険すぎる

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韓国はネットで「天罰」だなんだと

おそらくネット記事「사흘째 퍼붓는 비, 흙더미가 日마을 삼켰다..최소 20명 실종 [영상]」とかにあるコメント欄の発言について言ってるんですが、それを言うなら今デマをまき散らしている日本人は何なんだとなりますし、そもそもヤフーの記事にあるコメント欄だって酷く、あのヤフコメを日本人そのものの声とするには無理がある。当然ながらそういう声以外にもあるし、愚劣な輩はどこにでもいるということでしかない。なお韓国ツイッター圏で천벌(天罰)で検索してもそういうツイートはない感じで*1、ネット記事のコメント欄というのはそういうものになりがちなのかもしれない。

*1:韓国はフェイスブックが盛んみたいな話も聞きますがそっちは確認していません。

自民党の山田宏がクロ現プラスについてデマ的な切り取りをしている

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米国留学から帰国した中国の若者の「中国は素晴らしい」「米国には幻滅」という「官製」インタビューを、NHKは長時間そのまま流していた。まるでCCTV(中国国営放送)のようだった。

 このためにNHKプラスに加入してみましたとさ。
 該当番組はクローズアップ現代「中国の若者・リアルな胸の内▽自信・愛国心・葛藤も」で、大きな基本的に番組の流れは以下の通り。


【留学生の心境変化(愛国心を育む青年)】
アメリカ(自由や民主主義)にあこがれ留学した青年が中国の新型コロナウイルスの封じ込めを見て中国を見直す。コロナ対策を契機にして言論の締め付けが強化、言論統制が始まるが上記の留学生はそれについて聞かれると若干困りながら、「普通の人には大きな影響がない」、「法が許す範囲ではなんだってできる」という。そして留学生の帰国率がここ最近増加していることに触れ、海外にいるほど中国を誇りに思うようになるという発言。アメリカへの中国批判に反発をにじませた留学生が中国が世界中から尊敬される国になれるように若者が努力する姿勢を映す。

共産党による若者党員の育成】
共産党支部による党員育成を映す。

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上記の様に洗脳的、妄信を育てているとも言えそうな教育風景という印象を与える類のもの。習近平の言葉も引用されており、党員教育の段階で指導者を持ち上げている事をわからせる。その後に幹部候補生(山田議員のキャプチャの女性)の実際の活動を見せる。なお、山田議員のキャプチャに行くまでのやり取りは以下の様なものです。

・幹部候補生の女性が村の人々の健康管理の為に村に訪れる
・実際に人々と会って話すようになる
・実際に話す事により、「人々の存在は資料に書かれた存在」から「数字の裏にいる一人一人の人間の姿が見える」
・以上を受けて「人民のために奉仕をしたいです」と答える

その後に共産党の構造を見せながら、若者の農村への派遣を習近平が力を入れている事を示す。そして派遣された若者(今回の女性)は党の期待を背負っていると認識し、自分の夢を語る。

【愛国教育の強化】
アプリを通した愛国教育を紹介し、それが学校にも通知されると触れる。習近平になってから経済、科学が党の功績として盛り込まれるとのこと。ただし、この愛国教育に対して違和感を覚える若者を紹介。違和感を覚えた若者は顔はモザイク、声は変えられてインタビューを受けており、愛国教育の点数が低いことを叱責され、奨学金にも関わっている事を述べる。そして若者の間で政権批判を許さない空気(同調圧力)が蔓延し、アメリカを擁護(悪口は良くないよ程度で)するだけで批判対象になることを紹介。

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上記の様な息苦しい言論社会になっている事が証言されている。

【スタジオで安田峰俊氏による解説】
上記のVTR部分や現在の中国についての解説。天安門から現在に至るまでの歴史や中国人の今の政府への簡単な認識、新型コロナでの当初の隠ぺい体質、その後の封じ込めの成功なども語る。

【若者の将来不安】
低賃金で働く若者を紹介し、高学歴に伴った就職競争激化、上の世代の3倍にもなる失業率の増加に触れる。ギグワーカーは2億人に及ぶとされ、国が雇用の受け皿になるとしてギグワークを推奨、しかし実際に働く若者にしてみれば答えは以下の通り。

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さらに男女を比べると男性が3000万人ほど多いことから結婚への焦りを募らせる。この歪な男女比は一人っ子政策である事も明言、「お見合い公園」が出来るなど結婚は社会問題であると紹介する。専門家により若者が減り、少子高齢化が起こる将来に国力低下が起こることを懸念している。

【スタジオに戻り解説】
番組のまとめ的なもの。現在の中国が習近平の属人性によるところが大きいというような事を述べながら、それゆえに未来が読みにくい、今の若者が体制に過適合しているので今後どうなっていくのか注目、という様な感じで締め。


 30分の中でコンパクトに中国の若者の意識や問題点をまとめてる結構いい番組という印象で、これを見てCCTV(中国国営放送)だというのはちょっと意味が分からない。中国の現状、しかも宣伝的というよりも問題点についての方が番組的な尺は全然多いので、これを見て吐き気を覚えるならば病気レベルだし、中国について知る事を身体レベルで拒否反応を起こすならばそれ関連の仕事にはつかない方が良いと思う。日本にとっても不幸だから。
 それと山田氏は"米国留学から帰国した中国の若者の「中国は素晴らしい」「米国には幻滅」という「官製」インタビューを、NHKは長時間そのまま流していた。"と書いていますが、彼は中国に言論の自由がないことを自覚しており、それをカメラは映し、見ている我々はよほど鈍感でなければ彼の中に複雑な感情があること自体は察しがつきます。また「官製」というけれど「愛国心」を持つ若者はどこにでもいますので複雑な感情を持ちつつの本心でしょう。というか。あの留学生インタビューを映して何が悪いというか、あれを見て中国が良い所でシンパシーを得るという人間は少ないのではないかと。それとこの留学生シーンではトランプによる「チャイナウイルス」呼びを映しており、山田宏などの自民党極右系が言う「武漢ウイルス」という言葉の危険性まで考えられるシーンであるとも言えます。
 ツイッターの写真の女性については共産党員の末端として現場に赴き、そして人民のために奉仕をしたいと言ってて、ある意味一番この番組でプロパカンダ的側面を持つと言える場所ですが、それについても共産党の党員育成の構造理解の為には有効なものと言えます。このシーンの前に共産党の教育の洗脳的な側面を見していますし、あの教育風景をもってしてシンパシーを得る人間は少ないですよね、多分。

 以上の様に自民党山田宏議員のツイートは本当に一部のみを切り取り、また番組の意図を甚だ理解できるリテラシーを持たず、というか自分の中のイデオロギーに基づき番組の理解とツイートへの発露をしていますよね。あとNHKへの憎悪。全体を見れば言論の自由の不在、過度な愛国心教育とそれによる同調圧力、将来が見込めない若者と現代中国における問題点、それこそ表題の通り「中国の若者・リアルな胸の内▽自信・愛国心・葛藤も」という内容です。なお愛国心教育であるとか政権批判を封じる空気のところを問題視しないのは、自民党としては実現したい部分だから批判しないんですよね、みたいな事を邪推したくなります。この番組の結構大きな核の部分なはずなのに一つも触れないんだから、本当に番組見てたんですかね。

赤木氏が「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」と言っても赤木氏は現場の人間ではない

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 安倍晋三アカウント(ツイートは秘書)が産経新聞の極限御免というコラムを引用し、

赤木氏は明確に記している。
「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」
この証言が所謂「報道しない自由」によって握り潰されています。

と書いていました。ひとまず赤木氏は公文書改ざんを強要された現場の人間であり、森友学園で問題になっていた土地値下げに関わった現場の人間ではありません
 それと赤木ファイルについてはネットで手に入ったので該当箇所を読みましたが、該当部分は赤木氏が忘備記録として書いているようです。以下がその内容。

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赤木氏が何をもってして「厚遇した事実もない」という判断に至ったかは分かりません。一番蓋然性があるのは改ざん前文書を読んでいるのですから、そこに書かれた内容に妥当性を見出してこの様な書きぶりになったと考えるべきでしょう。一応は可能性としては値引き交渉に関わった本当の「現場」の人間とやり取りしたという可能性も無きにしも非ずですが、所謂赤木ファイルの指示内容等を見てもそれに類する話は記述は存在せず、また現場の人間とメールなどをして「厚遇した事実もない」が裏付けされているならば政府側が嬉々として情報を出してきそうなものですが、そういったものもありません*1
 なんにせよ本当に厚遇した事実や何かしらのやましい話がなかったら、公文書改ざんする必要性とかなかったはずなんですよね。それが現場判断による「誰か」への忖度であったのか、直接/間接的な言い回しによる指示だったのか分かりませんが。あと「報道しない自由」とありますが、安倍晋三氏や産経新聞が大好きな朝日新聞は該当箇所を報道してます

備忘記録 本省の対応(調書等修正指示)
・本省において、議員説明(提出)用に、決裁文書をチェックし、調書の内容について修正するとの連絡受。本省の問題意識は、調書から相手方(森友)に厚遇したと受け取られるおそれのある部分は削除するとの考え。現場として厚遇した事実もないし、検査院等にも原調書のままで説明するのが適切と繰り返し意見(相当程度の意思表示し修正に抵抗)した。
赤木ファイル詳報「決裁済の調書修正は問題、強く抗議」

基本的に赤木氏のこの「厚遇した事実はない」という認識自体はなんら事態を動かすであろう新しい事実や認識でもなく、そもそも政府、行政側の従来の認識でしかないはずです。それをあたかも何らかの決定的な事実かの様に吹聴するのはコラムを書いた人間、これをピックアップしてそれを全文載せた秘書、ツイートを許してるであろうアカウント主の全てが恥ずかしい行いと言って良い。「報道しない自由」というよりも該当箇所がそこまで強調して報道するほどの報道価値がないってだけです。

*1:赤木ファイルは公文書改ざんについて、赤木氏による経緯が記されたファイルなのでそのメールが仮に実在してもファイル内容からは逸れるものになりますが

ワクチンの職域接種の新規受付停止に関しての雑文

今後、供給できる量を上回るおそれがあるとして、大規模接種は23日で、職域接種は25日の午後5時で、新規の申請の受け付けを一時休止すると発表しました。
自治体の大規模接種と職域接種 新規受け付け一時休止 河野大臣

 少しだけ書いとく。何故新規受付停止をしたのかと言えば、ありていに言えば応募が多くてワクチン供給量を上回るから。ただ果たしてこれが政府の想定通りなのか、想定以上なのか。そもそも職域接種と自治体間の調整など計画性があっての事なのかは不明。なお朝日記事を見ると想定以上っぽい。予想される事態であったろうに認識が甘いと思う。

政府高官は「(申請されたワクチン数は)想定外。正直ここまで申請があるとは思わなかった」と語った。
官邸関係者「指示が裏目に」 職域接種、受け付け停止に

モデルナ製ワクチンの供給量

 まず職域接種に使用されるのはモデルナ製ワクチン。そのモデルナ製ワクチンの供給量は6月末までに4000万回。その後に7~9月に1000万回の合計5000万回。そして職域接種の応募状況は先ほどの記事では以下の様なもの。

職域接種と大学での接種の合計でおそらく3300万回を超え、自治体の大規模接種が1200万回を超えてかなり上限に近くなっている

上記の記事にある様にモデルナ製ワクチンは自治体の大規模接種にも使用されることになっており、職域接種と併せて4500万回分。このことからも年内5000万回という上限に近づいている数字であり新規受付停止は当然のことではある。というより、現状だと6月末4000万回の数字を既にオーバーしている事を考えれば、オーバーした500万回分に回された応募企業、もしくは自治体に若干のスケジュール的しわ寄せがある可能性が存在。

ファイザー製ワクチンの供給量

 ファイザー製については以前供給量減少についての記事で書きましたが詳しく見たいならそちらで。ただ簡単に記すと供給スケジュールは以下の様なもの。

ファイザー製ワクチン輸入時期>
6月末  :約1億回分(5千万人分)
7~9月 :約7千万回分(3500万人分)
10~12月:約2400万回分(1200万人分)

ファイザー製ワクチンに関しては上記を見ればわかる様に7月から供給量が減少します。配布スケジュールでは第10クール(7/19の週・7/26の週)までに医療従事者(936万回分)、高齢者向け&一般向け(8223万回)を併せて9159万回分のワクチンの配布・計画され、7月末に6月末までに届いたワクチンを9割以上使用される予定となっています。
 なお高齢者用のファイザー製ワクチンは6月末1億回を考えると十分な量なはずだけれど、以下の様に来月19日以降の供給量が未定となっている自治体もある。厚労省の配布スケジュールを見ると総量はもう決まっているはずであるし、何故決まってないのか、一定の割り振り枠があるはずなので政府側が要求量にこたえられないのが何故かは良くわからない。

ファイザー社のワクチンは、今月21日から来月18日までがあわせて6万7860回分と市の要求量の半分程度にとどまっているほか、来月19日以降は、供給量が未定になっています。
山形市 ワクチン接種の新規予約を一時停止 供給量著しく不足

問題点

 一番最初に紹介したNHK記事に書いてある河野大臣の言葉が全てかも。

河野大臣は「若干、綱渡りのようなオペレーションになるかと思うが、自治体と連絡を密にしながら、なるべく必要なところにきっちりと届けられるよう頑張りたい。すべての職域接種や大規模接種ができないのは非常に残念だが、最大限スピードを落とさないようサポートしていきたい」

要は確固たる計画の下に進んでいる計画ではなく綱渡り、若しくは行き当たりばったり的な行為なのかなと。よく言えば柔軟。現場は大変だろうけど。それとモデルナ製ワクチンは自治体においてもその接種スピードを上げるために大規模接種会場を用意したり、7月以降は物理的な供給減少が発生するためにモデルナ製ワクチンが必要になる可能性がある。しかしその分のワクチンを職域接種により大量に使用することになり、自治体側の計画に混乱が生じることになるかもしれない。
 その他の問題点としては単純に職域接種という属する企業によってワクチン接種が出来るかどうかが変わり、本来優先接種を受けるべきであろう職種とされる人や非正規雇用の人間が置き去りにされるというのもある。なんとなく新自由主義下のワクチン接種だなって思う。

余談。1日100万回を超えたね

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 上記はテキトーに作った雑な表なんですが、これをみると6月7日週くらいからワクチン接種は1日100万回程度の推移ということが分かります。なお1日100万回自体は7月末に高齢者全員に2回接種達成に必要な数という「目標の為の目標」の様なもので、では7月末に希望高齢者全員が現在達成可能かは不明。少なくとも単純に高齢者全員7200万回は最早無理だし、全員接種は色々な意味で土台不可能な話なので置いといて。そも、「希望高齢者は何人か(何割か)」という前提が存在しない。希望者が7割くらいならばおよそ5000万回なので、その数ならば達成は不可能ではないだろうけれど……。ここら辺はアナウンスされてないので、高齢者接種というのは実はゴールラインが不明瞭だったりする。なお、ここ最近の一般接種は8~90万回前半で高止まりしてきてて一般接種の上限は自治体大規模接種会場を考慮しても100万程度なのかなと。
 そして職域接種に関しては河野大臣の会見を読む限りは1日20万回程度と踏んでいるらしい。医療従事者への接種については既に当初の想定である960万回を超えて1000万回を超えているので早晩医療従事者の接種は終了するはずです。大体1日10~20万回で推移していたので、この医療従事者分の回数がなくなり職域接種分がそれを補う感じでプラスされる流れになるかなと。職域の本格化と医療従事者への接種回数が重なるところで1日120~130万回という回数の日が出てくるかもしれないけれど、150万回レベルはなかなか難しそう。あと細かい事なんだけど、現状の統計だと職域接種は一般接種に合算されるっぽいので職域接種の回数はすぐには確認できなさそう。

アベノマスクによる在庫放出論について

 全世帯向けの布マスク、所謂「アベノマスク」についてはいくらか記事を書いてて、それは以下の様なもの。

4月のマスク輸入量、むっちゃ増えたよ

アベノマスクの使用率ってどれくらいだったのか

全戸配布用布マスクの不良品(カビ等)は毎日新聞のデマというけど、それがデマ

これらに加えて今回厚生労働省に対して合同マスクチームが作成した資料を全て欲しいと開示請求した結果*1、それらの資料が届いたので今回はそれらの資料を基にして記事にします。これがアベノマスクに対する最後の記事。

「アベノマスク」で吹聴されている効果

 一般的(?)にアベノマスクで言われている効果の一つとして「アベノマスクが届いたおかげでマスク価格が下がった」という在庫放出論の様なものがあります。例えばコレとか、コレとか、コレとか。あと有名どころで言えば、黒瀬深氏とか。

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そして以下の安倍元首相の発言。

「こういうものを出すと、今まで溜められていた在庫もずいぶん出てまいりました。価格も下がってきたという成果もありますので、そういう成果はあったのかなぁと思います」
安倍首相の主張「アベノマスクで在庫放出に成果」が怪しい訳

確かにアベノマスクが届き始めたのは4月中旬くらいからで、その時期ぐらいからマスクの品薄が改善され始めてきたこと自体には異論はないですが、その要因についてはアベノマスクによる在庫放出論よりも「4月のマスク輸入量、むっちゃ増えたよ」で書いたように単純にマスクの輸入量が増えたことを主要因として考えた方が妥当でしょう。それを裏付けする為に2020年の貿易統計を見ていくと不織布及び布マスクの輸入量は以下の様なもの。

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4月という時期は上記グラフが示す様に布マスク(ここにアベノマスクは含まれる)をはるかに上回る量の不織布マスクが輸入され国内に流入している状態*2。このグラフだけでも在庫放出論は例え効果があったとしても微々たるものであったということが理解できます。要は供給が増えれば需要は賄える。

アベノマスクの配布時期

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 アベノマスクは4月1日に発表され、その配布スケジュールは上記の様なものです。なお、所謂「アベノマスク」は全戸向けの事を呼ぶのだという気もしますが、布マスク配布は他にも介護施設、妊婦向けも存在します。人によってはこれら3つを含めてアベノマスクと言っている方もいるかもしれません。ただ一応本記事においては全戸向けのみをその対象とします。
 上記の配布スケジュールを見ると4月17日に配布が開始し、6月20日に配布が完了。ただこれだけだと配布進捗度が不明、とはいえ開示資料にそういった資料はない。厚労省の「布製マスクの都道府県別全戸配布状況」でも進捗度そのものは今現在は書いていないためにどの様なペースで進んだのかは不明です。なのでインターネットアーカイブで過去を確認すると東京は4月17日に配布が開始し、5月27日に配布が概ね完了します。東京以外の地域で言えば12道府県で5月11日週から配布が始まり、その後順次他県でも配布が始まり6月20日に配布が完了という流れです。東京での詳細な配布進捗が分からないものの東京は対象約700万世帯に対して約40日かけて各世帯に布マスクを届けたことになります。700万世帯に40日という事を考慮すれば配布開始と共に市中に布マスクが潤沢に出回ったというわけではなく、市場の在庫放出のインパクトがあるほどに出回ったのかには大きな疑問です。また配布枚数に関しては以下の様な記事も存在。

今月(5月)18日時点で、東京をはじめ、大阪、北海道など、13都道府県でおよそ1450万枚の配布が完了
「布マスク約1450万枚配布完了 品薄状況改善に効果」官房長官

5月18日時点で1450万枚(1世帯2枚配布なので725万世帯に配布)。布マスクの利点が繰り返し使えるとはいえ1450万枚では市場需要を満たせる数字ではないであろうことは想像に難くありません。返す返すもこの程度の数で在庫放出を促進したかは疑問。なおデータについては後述しますが、4月17日から5月18日までのマスク販売数は2億3千万枚

アベノマスク配布前後の販売動向

 開示資料の中に「販売動向週次データ」と「販売動向日次データ」という二つの資料があったのでこちらからマスクそのものの販売動向データを確認します。まずは「販売動向週次データ(~2021.2.14まで)」から。

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上記の様に動向週次を確認する限り販売枚数がアベノマスク配布開始時期とほぼほぼ呼応して販売数が上昇すること自体は間違いありません。ただし。上記のグラフの突き抜けている部分が販売のピークとなりますが、その時期は2020年1月27日週、販売枚数は9億7854万5000枚。1週間で10億枚に迫る勢いであり、2019年のマスク生産量が64億枚であったことを鑑みればその販売数が如何に驚異的な数字であるかが理解できます。その後の販売動向を見ると3月にかけて急激な販売数量低下、そして4月の底の状態を見るに市場の在庫枯渇と供給不足をうかがわせます。その底は在庫放出ではなく供給能力向上などで終わったのがアベノマスクの配布開始時期とたまたま被ったと考える方が妥当でしょう。そもそもアベノマスクが輸入された時期にそれ以上のマスクが日本国内に輸入されてるわけですし。
 そしてお次はマスクの1枚当たりの販売単価の推移です。

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最高値は5月4日週の55.9円。アベノマスクの発表が4月1日、配布開始時期が4月17日共に販売単価の上昇局面にあり、つまりはこれらの発表、配布開始時期がマスクの単価に与えた影響、少なくとも安くさせる効果がなかったのは確かです。その後に販売単価が低下したのは供給量の大幅改善と考えた方が妥当。勿論、この単価値上がりのさ中に在庫をためておいた業者がいた可能性は否定できませんが、ただしそれをアベノマスクが在庫の大量放出に向かわせたならば単価の下落傾向が見られてもいいはずです。それがないという事は仮に在庫にためて価格上昇を狙っていた業者がアベノマスクによって放出したとしても市場には影響の出ない範囲だったという事でしょう。
 おまけとして販売、平均販売金額の月次動向も貼っておきます。やはり2020年3、4月が供給が需要をカバーできない市場の底だったのだなと。

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 さらにおまけでこっちは販売の日次動向とそのデータを基にして作成したアベノマスク発表から2か月間の販売データのグラフです。

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日付単位でみていくと4月が販売数の底でそれが回復してきたのがGWあたりからなのかなと。このグラフを見てもアベノマスクが在庫を放出したとはちょっと考えにくいです。

説明資料にその在庫放出論はあるか

 全戸配布マスクの政策評価に関する資料が全て手元にあるかまではわかりませんが、開示資料の中ではマスク市場改善に関する資料が1つだけあるので紹介します。
 まずは「マスクの市場供給の改善に伴う今後のマスク施策について」という資料。これはマスク市場改善後の施策についての資料ですが、マスク市場改善の理由としては以下の様に記述されています。

・国内におけるマスクの生産量の増加や、海外からのマスクの輸入量の増加により 、市場におけるマスクの供給量については 、 7月末には 、一般小売 における販売量が1月初旬の水準である週1億枚まで回復し 、また、8月には国内供給 が月間10億枚 を達成 できる見込み」

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少なくともこのマスク市場供給改善の理由にアベノマスクは登場していません。書かれるほどのインパクトはなかったという評価なのでしょう。その他に7月29日の野党ヒアリング提出資料で介護事業者向けの布マスク配布の効果について記述されたものもありますが、こちらは全戸配布ではないのおいておきます。ただ対象が全戸配布でなく時期も供給回復後なので当然ですが、少なくとも在庫放出論的な事は書いていません。
 本節のはじめに書いたように政策評価に対する資料は他にもあるかもしれませんが、少なくとも合同マスクチーム作成資料において在庫放出論に類する記述がされていないのが現状と捉えられます。

在庫放出論は正当化、擁護のための論

 以上みてきたように在庫放出論に関して、現実においてはそのような効果はあったとしても極小であり、懐疑的にならざるを得ない。私自身、絶対にアベノマスクの効果がなかったとまでは言いませんが、「アベノマスクの使用率ってどれくらいだったのか」で書いたようにその使用率は日本全国ではおそらく1割にも達しません。安倍元首相自身が当時率先して布マスクをすることなどによる布マスクでも良いという広告的効果や手作り布マスク促進などは考えられはしますが、それがどこまで市場にインパクトがあったのかは図りようがない。

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それを上記の様に約260億円という金額を用いて行うべき政策だったかと考えれば、答えは明らかなのではないかと。それは「新型コロナ対応・民間臨時調査会」の以下の記述からも明らかです。

マスク需給逼迫の中、値崩れ効果を狙った「アベノマスク」について官邸スタッフは「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」と認めた
4月1日に安倍首相が発表した1世帯当たり2枚の布マスク全戸配布、いわゆる「アベノマスク」は、厚労省経産省との十分な事前調整なしに首相周辺主導で決定された政策であった。背景にあったのは、使い捨てマスクの需給の逼迫。値崩れ効果を狙ったが、緊急経済対策や給付金に先立ち、政府の国民への最初の支援が布マスク2枚といった印象を国民に与え、政策コミュニケーションとしては問題の多い施策だった。配布の遅れもあり、官邸スタッフは「総理室の一部が突っ走った、あれは失敗だった」と振り返った
「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(コロナ民間臨調)が日本のコロナ対応検証報告書を発表、10月後半から一般発売

 また4月22日には「新型コロナウイルスに関連した感染症の発生に伴う マスクの適正な価格での販売について」という通知が日本チェーンドラッグストア協会 をはじめとした各団体にいきわたっており、以下の様に価格適正化と売り惜しみについての要請をしています。

将来的な値上がりを期待した売り惜しみ等は行われないようにすることが重要であることが、4月22日に開催された物価担当官会議において確認されたところです。(中略)以下の事項について上記の方針について周知いただき、マスクの適正な価格での販売について御配慮いただくよう、よろしくお取りはからい願います。
(中略)
3. 将来的な値上がりを期待した売り惜しみ等は行わないよう、お願いいたします。
4. 以下のとおり、関係省庁の窓口において、事業者によるマスクの売り惜しみ、買占め行為等についての情報収集を行います。事業者によるマスクの売り惜しみや買占め行為等と疑われるような事案があれば、これらの窓口に情報提供いただくよう、お願いいたします。

各団体へのこの通知の効果がどこまであったのか分かりませんが、売り惜しみに関しては通報制度的なものまで設けられており、もしも在庫放出論を訴えるならばむしろこちらの実行的な取り組みのほうが効果があったかもしれません。実際にどの程度の売り惜しみ通報があったのか分からない為、実効性自体は図りようがありませんが。
 2020年のマスク国内出荷量は以下の様に100億枚を超えています。

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この出荷量増大には政府が政策としてちゃんと関与しておりその部分について批判する人間は少ないと思います。また一時期に需給がひっ迫したとはいえ5月ごろには徐々状況が改善したのには政府や企業の尽力もあるでしょう。ただし、それとアベノマスクとの関連性は薄く、配布が迅速だったならともかく配布の遅さや使用率からも正直なくても大丈夫な政策だったと言わざるを得ません。それを「在庫放出論」の様なもので擁護するのは安倍政権への属人性に基づくものとしか言えません。ましてや安倍氏本人がこんな現実と乖離した言い訳めいた正当化を過去に言っていたことは問題で、彼は政策評価を適切に判断できる人間ではなかったということの証左でもあります。言い出しっぺだから負けを認められないみたいなのだったんでしょうが。あと在庫放出言う人、なぜか輸入量の激増は口にしないの何なんですかね。
 アベノマスクの在庫放出論はまともに取り扱う必要はありません。それを言った時点でその人の視点は曇ってる可能性大ですから。アベノマスクは死せる孔明ではない。


余談。介護事業者向けマスク在庫が結構余ってるかも

 介護施設向け布マスク配布は3月中旬以降、累計約6000万枚が配布されていましたが8月からは8000万枚(布マスク配布スケジュールによる)を施設からの申出受付に伴い配布するという枠組みを持っていました。この8000万枚については時事通信7月29日「布マスク配布の延期検討 介護施設向け8000万枚―厚労省」などを見ると延期検討などもされたようなのですが、ただ少なくとも8000万枚の在庫があったことは確かっぽい。で、開示請求の中に「介護施設等向けの布マスクの随時配布と備蓄概要」という資料がありました。この資料に8月30日までの申出状況ありました。

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合計448万枚。多いとみるか少ないとみるか分かりませんが、この時点で在庫の数は約7500万枚がある事に。ただ8月30日までの状況なので今はもっと申し出が増えているかもしれない。ということでまた別の開示請求資料「全希望事業者リスト」というのを参照。この資料はその名の通り希望事業者からの枚数含む要望が2021年2月25日時点まで記述されており、それによると「44,750件中10,044,148枚」の申出があったようです*3。これで合計約1000万枚の申出があり、3月以降の申出が不明なものの単純に考えればおよそ7000万枚の介護事業者向けマスク在庫が存在することになります。実際にはその後の要望などはまだあるので7000万枚よりは減ってはいる可能性はありますが、それでも相当量のマスク在庫がある事は確実。現在の状況を考えれば在庫はある程度あることに越したことはないかもしれませんが、それでも過剰在庫の感は否めなく、この面でもこの布マスク配布には批判点は存在するといえるかもしれません。

*1:該当資料が多く、医療用、一般用どちらの資料を欲しいかと聞かれたので今回は一般用の資料のみをもらっています。ですので医療用向けについての資料は手元にはありません。

*2:2020年のマスク輸入量の増加によって2021年はHSコードに変化が見られます。2020年はJETROのこちらを参照。2021年は税関のこちらを参照のこと。

*3:この資料「全希望事業者リスト」では必要枚数が空欄(2か所?)であったり、割り振られてたNoの中に一部変な記述があったりとケアレスが散見。なのでここで提示した数字が本当に正確なのかが不明です。ただこの数字で大きな間違いはないはずです

来月(7月)以降のファイザー製ワクチンの供給量減少についての話

 ツイッターで次の記事を見たので、それに対しての雑記。

自治体が行う集団接種についてです。この接種にはファイザーのワクチンが使われているのですが、この供給を巡って自治体から困惑の声が上がっています。ファイザーワクチンの全国への供給量の推移は、当初は量が限られていましたが、先月から段階的に拡大、安定的な供給が続いていました。しかし、国は、今月4日、来月以降、大幅に減少すると発表ファイザーとの契約に基づくもので、やむを得ないとしていますが、突然の減少に、打ち手の確保に努めてきた自治体からは困惑の声が上がっています。
ワクチン 来月以降 供給量減少へ 自治体から困惑の声|NHK 関西のニュース

最初にこの記事を読んだときに私は勝手に高齢者向けワクチンの話と勘違いしてたんですが、これ記事の後半の方を読むと高齢者接種後の一般向け(12歳以上の市民)の話ですね。そんな勘違いは置いといて本題。

厚労省のワクチン配布スケジュール

 厚労省による6月4日の発表は「新型コロナワクチンの供給の見通し」 で確認可能です。4日の発表が15日に報道される時間差は謎ですが、好意的に考えるならば自治体が気付いてそれを察知したのがそれくらいだった、とか。それはともかくワクチン配布スケジュールは現在のところ以下の通り。

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上記のスケジュールにある6月末に「6月末までに、高齢者約3600万人2回分の配布を完了」とある様に今月末に高齢者向けのワクチン配布は完了の予定。なので今回供給量減少によって足りないと言われているワクチンは高齢者向け以降の話になると思います。実際には自治体によって異なるところもあるかもしれませんが。ちなみに4月30日に厚労省が通達した「新型コロナワクチンの高齢者向け接種の前倒しについて」では高齢者向けワクチンの配布計画が載っていて、4月30日時点で6月末に高齢者向けワクチンの各自治体への配布が終了する計画でした。つまりはこの高齢者向けワクチン自体は4月末の配布計画から外れることなく進んでいることが伺えます。なお「配布」であって「接種」ではないので注意。
 そしてファイザー製ワクチンは上記厚労省HPから「【第10クール】7/19の週・7/26の週」までに医療従事者(936万回分)、高齢者向け&一般向け(8223万回)を併せて9159万回分のワクチンの配布・計画されている状態です(5回で計算)。

ファイザー製ワクチンの輸入計画

 さてNHKの記事にはこう書いてあります。

厚生労働省は、「ファイザーとの契約に基づくため減少はやむをえない」

この契約とは何か。報道を見ると単純に7月からの輸入量が落ちるということです。まずファイザー製ワクチンの契約数は年内に約1億9400万回分。12歳より下の子どもなどがいるとはいえ、単純に今現在日本に住む全住民にファイザー製ワクチンを接種できる分だけの回数は契約していません。少なくとも年内に限っては。で、5月28日の朝日新聞の記事を参考にするとその輸入スケジュールは以下の様なもの。

ファイザー製ワクチン輸入時期>
6月末  :約1億回分(5千万人分)
7~9月 :約7千万回分(3500万人分)
10~12月:約2400万回分(1200万人分)

見ればわかる様に7月からファイザー製ワクチンの輸入量が減少します。そして6月末までに9000万回分くらいのワクチンを使用するので在庫もほぼなし。この供給量について河野氏5月28日の記者会見で以下のように語っています。

自治体の皆様から、6月に入るということで7月以降のワクチンの供給の見通しについて、今後の準備を効率的に進めるためにもできるだけ早く知らせてほしいという声がありました。
(中略)
市区町村がスピードアップをするために、あるいは一般の方、基礎疾患をお持ちの方に移行するために接種会場を新たに設けるという要望もかなり強くあるようでございますので、今までのファイザー社製ワクチンを使った集団接種と会場を明確に分けていただくという条件でモデルナ社製のワクチンを市区町村にも供給してまいりたいと思っております
6月11日を目途に厚労省がモデルナ社製のワクチンを使った集団接種、大規模接種の希望がどれぐらいあるかというのを調査しておりますので、市区町村でご要望があれば、都道府県を通じて手を挙げていただければ、我々としてもしっかり供給してまいりたいと思っております。モデルナ社製のワクチンについては、毎週のご要望の数を、おそらく週ごとにお届けするという形で供給ができるのではないかと思っております。

まずワクチンの供給量については透明性を持てばいいだけの話なので早く知らせるとかじゃなくてそういう仕組みを作っておいた方が良いのではと。それとファイザー製ワクチンの供給量が鈍化することは確実なのですが、それを補うためにモデルナ製を市町村にも供給したいと語っていますが、ただスピードアップという論理はちょっとおかしくて単純に減少分を補うためには使うんですよね、と。市区町村の要望があればとも書いてありますが、モデルナ製がなければファイザー製は物理的に数が減る。ここら辺は国と自治体でどの様にワクチン接種の構想を練っていたのかのズレが生じている可能性はあるような。ファイザー製だけで計画を練っていた自治体は確実に有ったであろう反面、国はファイザー製だけでは足らない事は認識していたはずですから。そして同日の会見では以下の様な質問と答え。

(問)ファイザー社製のワクチンを7000万回分、3か月で12週間換算すると、2週間当たり約1万箱の配送になると思います。大型連休以降は、1万3000箱以上安定的に供給されてきたと思います。一転減少する形になりますが、このあたりをどのように分析されているかお伺いします
(答)ファイザー社製のワクチンに加えて、モデルナ社製のワクチンが入ってまいりますので、量的にはしっかり維持していきたいと思っております。具体的なスケジュールは今、交渉しているところです。
(問)確認ですが、そうしますと7月5日以降の供給量自体は、トータルではモデルナ社製のワクチンと合わせれば減少しないという理解でよろしいでしょうか。
(答)減少しないように、供給量がダウンしないように我々もしっかり調整していきたいと思っています

つまりは5月28日のこの会見にある調整がNHK記事にある6月15日時点でまだついていないという事かなと。それは6月11日の記者会見でもちょっとうかがえます。

モデルナ社製ワクチンによる集団接種、大規模接種、職域接種をお願いしてございますが、自治体からこれまでファイザー社製ワクチンで集団接種を行っていたが、ワクチンをモデルナ社製ワクチンに転換したいというご要望をいただいております。(中略)ファイザー社製ワクチンでないと小分けができないということから、かかりつけ医にファイザー社製ワクチンを分配すると集団接種会場でファイザー社製ワクチンが足りなくなるのではないかというご心配をいただいております。現時点では、恐らく全ての都道府県にまだファイザー社製ワクチンの在庫がかなりございますので、県内の融通をしっかりやっていただきたいと思っております。

6月11日を目途にモデルナ製ワクチンを使った接種希望がどれくらいあるのか調査すると5月28日に発言していますが、11日時点でも話は進んでいるがまだ全体像を掴んでいるとは言えない状況かなと。
 モデルナ製はファイザー製とは異なり自治体ごとに接種会場を新たに設けるという仕組みや接種方法なども異なりますから各自治体側はファイザー専用のロジの他にモデルナ専用のロジも新たに構築しなければならず現場は大変なのは想像に難くない。職域接種も始まるし、大規模接種会場もあるし、全体を把握して理解するのも大変。


余談。

接種記録の入力が滞ると、実際は接種が進んでいてもシステム上は当該自治体の在庫が積み上がっているようになる。河野氏は、自治体の中には入力数が1~2桁のケースがあることを明らかにし、「極めてシステムの数値が低い自治体がある。在庫を積み増しても仕方ないという考え方もある」と強調。「あまりに接種が遅いところは、1回クール(配送を)飛ばすこともありうる」と、厳しい対応で臨む姿勢を示した。
接種記録遅い自治体、ワクチン配送見送りも 河野担当相 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

 記者会見のページに15日会見分がまだ上がってないので詳細は分からないですが、上記の話は今回のとは直接関係ないとは思います。ただ記事にある様に単純にシステムが使いづらいんだろうなー、っと。

堺市のワクチン廃棄をテロのせいと断定するにはあまりにも早計

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 堺市のワクチン廃棄に関してテロや事件性を見出している方が散見されたので書いておきます。ネタ元の一つになっているNHKの記事はこちら。

堺区のホテルに設けられた集団接種会場で、10日朝、運営責任者が456回分のワクチンが保管されていた冷蔵庫の電源が切れていることに気付きました。
市は、適切な管理ができなかったとして、すべて廃棄しました。 市によりますと、冷蔵庫は、停電が起きても作動し続けるようにと、現場の担当者が非常用の電源につないでいて、どちらも、9日の接種が終わった際には正常に作動していたということですが、10日朝、確認したところ、非常用電源のスイッチが切れていたということです。
故障はみられず冷蔵庫が置かれた部屋は夜間は施錠されていたということで、市は、当時の状況を詳しく調べるとともに警察にも相談するとしています。
この会場では今月1日にも、冷蔵庫が置かれた部屋の電気のブレーカーが誤って落とされて冷蔵庫の電源が切れ、ワクチン210回分を廃棄するミスが起きています。
堺市 集団接種会場 またワクチン廃棄 冷蔵庫の電源切れる

 時系列的に整理するとこうなります。

6月1日
冷蔵庫がおかれた部屋のブレーカーが誤って落とされ、電源が切れてワクチン廃棄へ
6月10日
非常用電源につないだ冷蔵庫が非常用電源のスイッチが切れていた為にワクチン廃棄へ

以上の様に計2回、別々の理由でワクチン廃棄が発生しています。で、これに対してテロと言ってる方が何人かいてリツイートなどを見ると賛同者はかなりいそうという状況。

堺市の調査と説明

 この件についてはそもそも堺市が調査して説明があるので、それを参考にします。まず1回目、6月1日のブレーカー落とされ案件。

概要・原因
6月2日に、ホテル役員が改めてホテル従業員のうち対象となる者(5月31日17時30分以降ホテル内にいたスタッフ59人)全員に対してヒアリングしたところ、5月31日17時30分にフロントのスタッフが電気を消すために会場内の部屋に入り、誤ってブレーカーを落としたことが判明しました。
 
再発防止策
・これまでも従事者が定期的に冷蔵庫の温度確認を行っていましたが、今後は時間を定め、会場の運営責任者が確認することをルール化します。
・これまでも、会場の運営責任者および施設管理者と連携し、運営しておりましたが、さらなる管理体制の強化を図ります。
 
新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場におけるワクチンの廃棄について【6月4日更新】

以上の様に1回目はスタッフの一人が電気を消すためにブレーカーを落とした為であると判明しています。テロではなく従事者への周知徹底が行われていなかった可能性の方が高いです*1

 次は6月10日の2回目の案件。こちらはまだ原因は調査中ですが現在のところは以下の様な説明がなされています。

概要・原因
冷蔵庫の電源が入っていなかった原因は、コンセントが非常用電源に差し替えられており、その非常用電源のスイッチがオンになっていなかったためです。なお、スイッチがなぜオフになっていたかについては現在調査中です
 
経過
6月8日(火曜)午前11時頃
会場に従事していた薬剤師が、コンセントを非常用電源に差し替える。会場を点検していた市職員が、「コンセントが差し替えられた」ことを会場の運営責任者に伝達しようとするが、伝達できなかった。その後、伝達することを失念
6月8日(火曜)午後5時00分
冷蔵庫が正常に作動していることを確認
6月9日(水曜)午後4時35分
冷蔵庫が正常に作動していることを確認
6月10日(木曜)午前8時30分
会場の運営責任者が冷蔵庫から薬液を取り出そうとしたところ、庫内温度が高いことに気づく。
 
再発防止策
・原因が判明し、対策が完了するまでの当分の間、ワクチンを直接配送します。
・確実に報告・連絡を行うため、場内スタッフのそれぞれの役割分担を明確にします。
・接種事故防止のため、堺市医師会と連携し、確実な事故防止策を取りまとめます。
 
新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場におけるワクチン廃棄について

2回目の説明は以上の通り。誰が非常用電源をオフにしたのかという直接的な原因はまだ調査中の為に記述されていませんが、間接的な原因は「経過」にある市職員が運営責任者に伝達してなかったという伝達ミスの可能性が高いでしょう。少なくともテロ、事件性よりも俄然高い。あと堺市はワクチン 供給量の増加によって集団接種会場を設けるようにしたんですが、医師の受付期間は5月21日から。急遽できたこれら接種会場内の集団は情報連絡などが拙い可能性が考えられます。だって集団接種会場のみワクチンを充填しないままの注射器で接種使用済み注射器接種などのミスが発生してますから(ワクチン廃棄と注射器ミスは別会場での出来事)。

 警察に相談という文言は確かに記事にもありますし実際に相談自体はしていると思いますが、1回目にしても2回目にしても堺市の調査からは事件性を感じるものではなく現場の連絡ミスのほうが蓋然性が高い。ましてやテロという発想に至るのは少々御発想が豊かですね、と。あと堺市公式HPに説明があるのだからそっち読んでから想像したほうが良くない?

*1:その従業員が反ワクチン思想で~、とかを言い出したらキリがないので言及しません。電気を消す=ブレーカー落としが日常業務ならば全然あり得るミスですし。