アサ芸プラスで那須優子による「住民が「怖くて道を歩けない」と嘆く埼玉県川口市「外国人ドライバー暴走事故」続発の異常実態」という記事があったのだが、その中身が酷かったのでここに記しておく。まず前半分については最近川口市で起きたトルコ国籍によるひき逃げ事件、中国籍による飲酒運転&暴走事件について書かれれており、この部分については特に異論はない。容疑者らは法に基づき、処罰されるべきだろう。そして中盤には川口市に住むという女性のインタビューが掲載されており、こちらについても問題ないといえる。ただ、問題なのが次にあげる後半部分だ。
異常事態はこれだけではない。川口市では毎月1000人ずつ人口が減り続けている。川口は県南部、東京都境に位置し、JR東京駅、新宿駅までそれぞれ25分、地下鉄は都心に直通運転するなど通勤通学に便利な立地。それでも不動産会社のアンケートでは「埼玉県で住みたくない街ワースト1位」で、年間事件発生数は3800件超と、県内ワースト1位である。治安悪化により、川口市から逃げ出す世帯が相次いでいるというのだ。これ以上、不名誉な事件や事故が起きれば、不動産価格が暴落するという経済的損失を免れない。
ちなみに、住みたくない街ワースト2位は、ベトナム人が大量移住してベトナム寺院も建立された越谷市、ワースト3位は川口に隣接し、在日外国人の割合が約9.0%の蕨市だった。3市に共通するのは外国人労働者を募集する法人、企業が多く、外国人が増える一方、日本人の人口が減っていること。真面目に働いている外国人が圧倒的多数だろうが、一部の暴走外国人によって、交通ルールを守っている日本人が「命を奪われる」現状を、埼玉県の議員センセイ達は指をくわえて見ているつもりなのだろうか。
はっきり言って、この部分は嘘デタラメが多すぎる。都度指摘していくがその前に該当記事のイメージとして使用されている写真について指摘しておく。
これは「ぱくたそ」というサイトで掲載されているフリー素材「商店と道路の無料写真素材」であり、場所は愛媛県松山市の道後温泉となる。いくらイメージ素材としての写真使用だろうとはいえ、埼玉県川口市の記事に愛媛県松山市の写真を使うのは不適切だろう。
川口市では毎月1000人ずつ人口が減少
嘘である。川口市では「人口・世帯数・人口動態の月別推移」が公開されており、令和6年10月現在、日本人に限定した「対前月人口増減数」が1000人を超えた月は一度もない。
上記の表は日本人に限定した表であるが、ここで「日本人+外国人」という括りで見ると川口市の人口増減数は増加の月も多く、ここ数ヶ月は多少の減少に転じている、という程度だ。
なお人口減少の理由として「川口市から逃げ出す世帯が相次いでいる」とあるが、日本人に限定した表における「転出等」の対前年同月比を見ていくとここ数ヶ月は前年を上回る転出は確認できるものの、「毎月1000人人口減少」を説明できるほどの転出数増加とはいえないだろう。
川口市の人口が毎月1000人減っている、という情報が何処から来たのか謎だが、その様な事実は存在しない。
不動産会社のアンケートで「埼玉県で住みたくない街ワースト1位」
事実性が疑わしい。このアンケートがどのアンケートかは不明だが、実在を前提に立つならば住みたくない街ワースト2位は越谷市、3位は蕨市となっている。ただグーグルで検索する限り、不動産会社関連のランキングでいうと、「引っ越しまとめ」の「埼玉県住みたくない街ランキングTOP10!」では1位がさいたま市大宮区、2位が川口市、3位が八潮市となり越谷市は4位、蕨市は7位、また「イエプラコラム」における「埼玉県住みたくない街ランキングTOP10!」では1位川口市、2位さいたま市大宮区、3位蕨市となり、越谷市は6位である。不動産関連ではないがrankyというサイトの「埼玉の住みたくない街15選」では1位がさいたま市大宮区、2位が草加市、3位が川口市、越谷市は4位、蕨市は5位となる。「住みたくない街ランキング」はそこまで数はないが、これらを見ていくと川口市が「埼玉県で住みたくない街」の上位にいることは異論はないが、それと同等程度にさいたま市大宮区もランキングに入っている状態だ。業者による非公開のランキングの可能性もあるが、とはいえ那須優子のランキングには大宮区の情報が入っておらず不自然に見えるし、2位越谷、3位蕨という並びと順位の説明部分からは論旨のために用意されたランキング感が拭えない。
川口市は年間事件発生数は3800件超と県内ワースト1位
嘘である。埼玉県警の犯罪統計を見ると、年間事件発生数3800件超は令和4年の事件発生数なので事実だが、実際のところ事件数ならばさいたま市の方が多く県内ワースト1位だろう。さいたま市は区ごとに統計されているので犯罪統計情報ではそうはあまり見えない様になっているが、市という括りならばさいたま市は7000件を超えている。これが東京23区の様な特別区ならばともかく、さいたま市における区はその様なものとは言えないために件数のみワーストとするならばさいたま市を外すのは恣意的だ。そもそも人口が多ければ犯罪数は多くなるもので件数を殊更いうのは微妙な部分もあるのだが、ならばと犯罪率でみるならば令和5年の川口市の犯罪率は県全体では16位であり、中の上程度でしかない。
在日外国人の割合が約9.0%の蕨市
嘘である。蕨市の各年次別人口統計を見るとが直近の外国人比率は12%程度だ。
蕨市の外国人比率が9%台前半になるのは令和元年であり、一体いつのデータを使用したのか理解に苦しむ。
事程左様に那須優子によるこの記事は意味が分からないレベルでデータ部分に過ちが多すぎる。ここまでになってくると中盤のインタビューを受けた人物が実在するのかも本当であるのか疑わざるを得ないくらいの記事レベルだ。しかしそんな記事であるにも拘らず「毎月1000人ずつ人口減少」などの目を引く情報と共に拡散されてしまっている。
https://x.com/okada_2019/status/1841305117452349838
最早この記事は偽情報というにふさわしい記事になっているし、那須優子はなにをソースに記事を書いたのかが謎すぎるし、そしてこんな記事を掲載したアサ芸は問題では。