電脳塵芥

四方山雑記

アイヌ新法へのパブリックコメントのコメントは何処から来たの?

www.hokkaido-np.co.jp

 という記事がありました。ログインしないと中身は見れませんが、題名の「パブコメ98%公表せず アイヌ新法方針案 大半が差別表現」がすべてを表しています。そして結果が公示されているHPはこちら。

パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

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提出意見数は6,305件。パブリックコメントは必ずしも全てが公表さるわけではありませんが、このうちの98%非公表は流石に度を越していると考えますし、そうせざる得なかったというのは「大半が差別表現」だったという事でしょう。
 ちなみに公表された意見についてはリンク先のページから参照可能ですが、一応リンクをば。なお、公表されている中にはアイヌ差別の際に使用される常套句的なものがあったりもして、「意見に対する考え方」でそれらへの回答をしていますが現在のアイヌ差別の一旦が垣間見えてくる意見がいくらか散見されます。

【基本方針全般に対する意見】
アイヌ民族先住民族であることを科学的根拠に基づいて明示すべき。又は、「先住民族」という言葉を削除すべき。
・具体的な「アイヌの人々」の定義を本方針案に記載すべき。
・利権化の危険を排除すべき。
・この政策を全国に展開するのは無理がある。全国的に多大の労力と税金が投入されることに反対したい。

【基本方針の各項目に対する意見】
・日本には先住民族はいない。国連の言う先住民族アイヌ系日本人は全く別物と考える。
アイヌは1万5千年頃の前より日本人の先祖である縄文人よりはるか後の13世紀頃に北海道に来た民族であり、先住民ではないことが近年考古学やDNA鑑定で明らかになっているにもかかわらず、改めて特定の保護権利を付与するのは基本的に問題である。従って、これを削除し、13世紀ごろに「北海道に定着しだした人々」とすべき ・北海道に古くから住んでいたという定義であるならウィルタ民族や和人もそうである。一部の民族を優遇するあまり、他の民族が犠牲にならないようアイヌ民族以外の日本人民族への配慮すべき。
・「差別され貧窮を余儀なくされた」は、主観的な表現であり歴史的事実とは言えない。

などなど。

 ピックアップしたのは主に差別と親和性の高い意見です。念のために言っておきますがこれらは公表された意見のごく一部であり、日本の加害性に関する意見なども出ていますし、アイヌに対するヘイトスピーチへの対処を求める意見などの反差別的な意見も当然ながら存在します。
 とはいえ。
 公表されていなかった意見が6000件以上はある事、そしてそれらが公表されなかった理由は記事を信じれば「差別表現」が理由という。6000件の差別表現、これは個々人がパブリックコメントに気付き投稿しているというよりも、どこかでこのパブリックコメントへの投稿を促している事は明白です。ちなみにそういった動きは韓国への輸出規制の時にも似た様な事がありました。「 韓国への優遇措置適用除外のたくさんのパブコメは何処から来たの? - Togetter」で簡易的にまとめましたが、多分こういう事が今回も行われていると考えるのが妥当です。じゃ、今回のはどこから来たんでしょ、と。

パブリックコメントへの促し源

ツイッター
・上念司

吉田康一郎

・重松保之

・Chieko Nagayama

・木村光

 他にもいくつか拡散されているのはありますが、大きく拡散されているのは以上の様なアカウントであって、特に上二人は界隈では有名です。それと上記は拡散された主なツイートですが、ツイッターパブコメURLを検索するとかなりの量が出てきます。あまりお勧めはしませんが、どのようなやり取りをされているかを知りたい人はどうぞ。なお、その際に「虎ノ門ニュース」のハッシュタグをつけている人が見受けられ、それらの番組視聴者層へパブコメを促していることがうかがえます。

【ネット番組】
【DHC】2019/8/2(金) 上念司×大高未貴×居島一平【虎ノ門ニュース】 | DHCテレビ
アイヌ文化継承へ政府が基本方針 新交付金手続き記載

 上記にも書きましたが虎ノ門ニュースはパブコメ投稿者と重なる視聴者が多いと考えて良いでしょう。また虎ノ門には小野路まさるというアイヌに関する話でこれまた有名な人間が出演したりもありますし、ここもまた拡散元となった一つと捉えても良いのではないかと。なお小野寺まさるですが、パブコメに対するツイートはしていない様でした。
 ちなみにパブコメではないですが、youtubeで「アイヌ」を検索すると以下のようなものが上に決ます。一番上に来るのが「チャンネル桜北海道」。

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勿論こういったものだけが引っ掛かるわけではないですが、とはいえこれに類する動画は他にも存在します。これらもコメントを出すようになった下地と言えるでしょう。

【ブログなど】
上念 司 - アイヌ新法に関するパブリックコメントに以下のような意見を提出しておきました。ご参考まで。... | Facebook

アイヌ民族についてパブコメ:すたーとのブロマガ - ブロマガ

▶8/13まで【パブコメ】アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針案に関する意見募集について - engram 記憶の痕跡

https://dajya-ranger.com/patriot/pubcomme-for-ainu-policy/#outline__4

【アイヌ問題】アイヌ政策に関するパブリックコメントに意見を!(意見サンプル公開): 大師小100期生集まれ!

 などなど。探せば他にもあるかもしれませんが、簡単に出て来るのはここら辺かなと。上念司のフェイスブックを見ればわかる様にパブリックコメントの最初の方に来ているものと同内容のものが書かれています。これをコピペして送った人は多くいると考えられます。なおパブコメの公表では採用されていない意見もこれらのブログを見ると何であったのかが垣間見えます。

アイヌを認定する機関、メンバー(通名ではなく実名)、国籍を公表すべき
アイヌに関連する団体その他に在日朝鮮・韓国人が関わっているのはなぜか
アイヌ認定された人間だけに特権を与えることはそれ以外の日本人に対する差別となり、仮にアイヌが差別されているとしたら差別の再生産となるのではないか
アイヌ協会には北朝鮮主体思想チュチェ思想)の信奉者が多く入り込んでおり、政治的プロパガンダをしているようだが、そのような団体を血税によって援助するのは適切ではなく、アイヌ政策の推進自体に反対する

というような感じの。酷さは言わずもがなであり、これらが公表されるわけありません。ただ中にはこれ以上の感情的や陰謀論的な意見を言っている人間がいても不思議ではないでしょう。

【新聞について】
政府がアイヌ文化継承へ基本方針とりまとめ 新交付金手続き記載 - 産経ニュース

文化継承など方針案決定 アイヌ政策推進本部「民族誇り持てる社会を」 - 毎日新聞

 新聞に関してはパブリックコメントを募集する程度の記事であり、流石に煽ったりはしていません。とはいえ、ここら辺の情報が発火点になってしまったという事はあるでしょうが……。



 以上となりますが、基本は新聞の情報 ⇒ 上念司などのネット右派界隈のコメントを境にという流れだとみられます。ただしそれだけがキッカケではなく行動には知識の下地が必要というのを考えれば、虎ノ門ニュースやチャンネル桜などのネット媒体や個人の活動の結果としてその下地はすでに出来上がっていると考えられます。パブコメを複数送った人間がいるとしても、こういった意見を送る人間が4桁はいる可能性があります。
 上念司などは現政権支持者でありますし、虎ノ門ニュースなどもそう。ポジティブに考えるならばそういった支持者からも反対される施策を行う安倍政権、的な事を考えることも可能ですが、安倍晋三個人がアイヌ施策に対して前のめりという姿勢は一切見えず*1、それは流石に政権をよく考えすぎでしょう。ここで考えるべきならどういった層に現政権が支持されているのか、かなと。

アイヌ学入門 (講談社現代新書)

アイヌ学入門 (講談社現代新書)

アイヌ近現代史読本 増補改訂版

アイヌ近現代史読本 増補改訂版

*1:国会議事録検索で発話者「安倍晋三」キーワード「アイヌ」で調べるとヒット数は3件。アイヌに関する会議には出ていますが以前の政権からの連続性の上での行動であることは否めません。

10代の身長が低下しているという話について

comemo.nikkei.com

 という話を見たんで、へーって思った次第。へーへーへーって、特に疑いもなく。なんで調べてみました。なおリンク先はの内容はとりあえず下記引用部分に注目しとけばとりあえずいいかなと。

その身長の伸びが近年止まってしまったどころか、逆に低身長化の傾向にあるという事実をご存じでしょうか?
(中略)
20-40代の男性の平均身長は、ほぼ170㎝を超えています。50代でも2017年にはじめて170㎝を突破しました。ですが、18-19歳男子の身長が直近2年連続低下し、170㎝に達しないという低身長化が見られます

 リンク先はこれをグラフにしており、その参照先データは「国民健康・栄養調査」です。で、引用部分の話についていえば「2017年国民健康・栄養調査(e-stat)」の身長のデータ。直接的な該当部分はここです。ちなみに現在のところ2018年分は概要は出ていますが、詳細は出ておらず身長のデータを参照するのは無理な様です。

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2017年 国民健康栄養調査より

となっており、確かにデータ上、18-19歳男子は平均して170を割っています。さらに2016年データでの身長は、

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2016年 国民健康栄養調査より

となり、確かにこのデータ上では減少傾向である事がうかがえます。そしてなんとさらに2015年データでは、

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2015年 国民健康栄養調査より

という様に2015年からも低下傾向となります。データだけ見ると2015年に平均身長174.9cmの19歳男子が2017年では170.7となんと4.2cmも縮んでいることが分かります。

おかしくない?

たった3年間の間に同じ年齢の平均身長が4cmも違うのは正直異常事態の類といってもいい。これが本当ならば相当の何かがあったのか、もしくは癖のあるデータであると考えた方が妥当です。
 さて、では18-19歳に限らなかった場合にはどうかというと、「国民健康栄養調査」の2010~2017年の16~25歳男子での平均身長を見てみます。

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先ほどの2015年の19歳の値が突出していることが一目良田ですが、それと共に調査年ごとにかなりのばらつきがある事が判ります。平均身長が毎年1cm程度ブレるというのは中々考えづらいことかと考えます。

 このブレの要因ですが、調査人数が少ないことが原因かなと。上の方のデータで張り付けた国民健康調査ですが、「年齢」と「身長」の間に謎の数字があります。それは調査人数となります。以下の様に。

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これは2015年データですが、例の突出した19歳の平均身長は19人からとった平均身長にしかすぎません。このサンプル数が少ないであろうとことは想像に難くありません。
 そもそもこの「国民健康栄養調査」ですが、主な目的はその名の通り「健康と栄養」の調査であって、身長はその副次的な調査と考えます。その証左であるかのように「平成30年国民健康・栄養調査結果の概要」を読みますと、身長そのものの話はされていません。生活習慣、糖尿病、栄養・食生活、運動etc、という様な内容。このデータをもとにそれらの状態を見るのは良いとは思いますが、身長はあくまでも目安、これをもって10代の身長の参考にするにはあまりにも使用するデータが誤っているかなと。

 じゃあ、実際10代の身長はどうなんだという話になりますが、それは「学校保健統計調査(e-stat)」を参照するのが良いかなと。で、手っ取り早くデータです。ただし学校での調査のために18,19歳のデータはありません。なので中学校(12~14歳)、高校(15~17歳)の男性のデータ比較となります。

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表を見ればわかる通り中学校はほぼほぼ変わらずの推移、高校の方は2~3mm程度の減少傾向ではあるようです。ただ17歳の時点で170越えはしていますし、18、19歳にも少しは身長が伸びることを考えれば日本の10代男性の平均身長はまだ170は割ってはいませんし、この推移であっても170を割るのは相当後でしょう。
 ちなみに女性(中学校、高校)の身長推移は、

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となり、女性の方もやや減少傾向といって良いかなと。

 一番最初にあげた記事は少々データ元がまずい気がしますが、とはいえ身長が減少傾向である事はほぼほぼ確かかなと。この原因を探るなら参照記事にあるような低体重児もあるでしょうし、日ごろの栄養状態とかもあるでしょう。栄養状態を調べるなら家庭ごとの所得による子どもの身長などなど、多数の要因を探せば探せるとは思います。さすがにそこまで色々と調べて……、というのは私にはできませんが。
 とりあえず結論としては10代の身長、ちょっとだけ低下しつつあるというのはほんと。


2005年にあったジェンダーバッシングについて

政府関係や国会で使われている「行き過ぎた個人主義」について - 電脳塵芥

 っていう記事の中でジェンダーフリー教育バッシングがあったと書きましたが、ちょっとそれについてでも。

 2000年代初頭に「過激な性教育」というものが話題になり、これはメディア等でも扱う一種の社会問題的なものとして扱われたと記憶しています。後に問題を振り返る中でこのバッシングによって日本の性教育は遅れたままになったと振り返っている方も見かけましたし、後々への影響は大きかったと考えます*1
 なおジェンダーフリーバッシングというか、それに類するバッシング自体はそれ以前から存在しています。たとえば1996年民法改正要綱案の選択的夫婦別姓制度*2。これに対して「家族の一体感を壊す」ものとして反発が起こっています。選択的夫婦別姓制度に関しては現在においても同様の理由での反発者がいますが、この論法は20年以上前から同じような理屈で反発が存在しているわけです。

 閑話休題さて本題。
 2005年の国会にて「ラブ&ボディBOOK」という教材を発端として性教育ジェンダーフリー教育に対してにわかにこの話題が盛り上がり、衆議院総選挙もあってから自民党では「過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト」というものが立ち上がっていきます。今の自民党HPにはもう存在しない*3ですが、たとえはこういう特設ページがあったくらいにその活動に熱心でした。

過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト
アーカイブ

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といった文句と共に構成されています。尚、リンク先では性教育の実例が少しだけ紹介されているのでご興味があれば。基本的には当時の民主党との比較であり、やはり選挙を意識したものです。ちなみにこのプロジェクトチームの座長が

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安倍晋三です。若い。この当時の安倍晋三座長の写真の横に「不適切事例を郵送・FAXでお寄せ下さい」とある様に当時に不適切事例の密告制度的なものを行い、で、それが報告されたのが「◆過激な性教育・ジェンダーフリー教育の調査結果◆アーカイブ」です。なお、そもそも「過激な性教育」が行われているという文句がなされているページにおいて事例を集めるというのは、調査としては甚だ誘導的であり調査段階でバイアスがかかっています。
 このページには合計3500件ほどの報告が寄せられ、ページ内にも数々の例が挙げられています。中には人によってはおかしいと思うであろう教育というか状況もあれば、「コンドームの付け方を習った」程度のものまであります。「射精についての教科書の説明に対してオナニーを学校で教えるのか」、「男女混合の組体操で男の上に女が乗ったり云々」など、正直いちゃもんと思えるレベルまで。寄せられた中には過去の性教育の嫌な思い出も交じっていたりしますし、これを教育に反映させると性教育が後退するなというのは素人の私でも分かります。あと読んでて以下のようなコメントがあったのですが、

○ 山谷議員が国会で取り上げた「ラブ&ボディBOOK」の製作者の一人です。ただ、この本を読んで信じられないことです。しかし、帰国子女の私はこれを小学校のときに体験させられて、男として本当にいやでした。小学校からこのようなことが無いようにしてください。

ラブ&ボディBOOKの製作者の一人という方が情報を寄せていますが、性教育が嫌だった人間が製作者になるかという疑問や微妙に怪しい日本語であったりして、誰かの騙りによる嘘情報なのではと疑いたくなるものまであります。密告的な制度であると共に数を多く見せるための組織票や一部ネットの悪ノリ的投稿があったと邪推してもそこまでバチはあたらないのではないかなと。たとえば2004年と少し時期はずれますが2ちゃんねるの過去ログには「【政治】"ジェンダーフリー、自虐史観"…「まるで社会党」 自民、民主の左翼的路線を批判」というものがあります。これらで活動していた人間が投稿を自作したかどうかまでは分かりませんが、投稿を促したとしてもおかしくありません。ちなみにこの2ちゃんの話題提供元は産経新聞です。

 それと上記の事例調査には以下の様な批判がなされています。

「バッシングの対象である社会的実践」としてあげる行為と、「バッシングの対象になっている人」との間に、全く関連性が無い場合が、極めて多いのである。
(中略)
つまり私たちは、批判の対象である社会的行為と、特定の個人や組織の間に、事実的関連性が存在するはずだと仮定してその批判を聞くのである。
(中略)
ジェンダージェンダーフリーという言葉の使用者として挙げられた例と「過激な性教育」の例として攻撃された人々の間には、明確な関連性はない。先述した「男女同室着替え」の例で見ても、「学校における男女同室着替えの強要」という社会的行為が批判の対象になっておりGFBはこの社会的実践を「ジェンダーフリー派」教員が行なったことであるかのように、批判の矛先を向けている。しかし、既に新聞記事や日教組の調査などで明らかになっているように、このような「男女同室着替え」は現にあるけれども、教室の都合などによるものであり、ジェンダーフリー教育とは何の関係もない。
江原由美子
※GFB=ジェンダーフリーバッシング

情報収集時点でバイアスがすでにかかっていますが、その情報の利用も稚拙と言われても仕方ありません。これらの情報を実際にどこまで政策などに使用したかまではわかりませんが、「自民党過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム会合」は2005年の「第12回男女共同参画基本計画に関する専門調査会議事録」で資料を出しています。これは性教育限定ではなく男女共同参画*4ですが、以下の様なまとめがなされています。

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2枚目の右側には「■全てにおいて「女性」が誇張されすぎている」とありますが、象徴できな文言かなと。それと脇道ですが、左下に「2020年までに、社会のあらゆる分野において女性の指導的地位が占める割合を30%となるように期待」とありますが、2020年現在の我々からすると見事にその期待は叶わずでしたと思わざる負えません。


 ここで例に挙げたジェンダーフリーバッシングは2005年です。それから15年経つわけで、あと私は現在の性教育事情は良く知らないのですが、現在はどうなんでしょうね。現代性教育研究ジャーナル(2018年6月15日発行)の「わが国の性教育の現状と課題」では、

田代は「過激な性教育バッシングが激化するなかで、性交やコンドーム、避妊などの科学的な知識を扱う性教育が過激な性教育とされ、現在でも文科省性教育を積極的に推進する姿勢は示していない。」と述べ、日本は東アジア諸国の中でも遅れていると指摘している。


わが国の性教育の根本的な原因は、学校教育の中に性教育が位置付けられていないことである。学習指導要領に必ず付されている歯止め規定があり、コンドームの教育は家族を作るという前提での教育であり、子どもたちの知りたいことや必要なことはベールに隠された情報となり、理解されないまま安易な性交を迎え、その結果妊娠や性感染症、暴力的な性に結びついている。

とあまり変わっていないように見受けられますが。そうなると悪い意味でいまだにあまり変わっていると言えない状況なのかな、と。

“性教育のタブー“に踏み込んだ都立中学のモデル授業 15歳までに知りたい性のこと | ハフポスト

こういう動きもありますが、とはいえ国としてはあんまり動いてない感じですしね。


【参考文献】
江原由美子ジェンダー・フリー・バッシングとその影響
若松孝司『ジェンダーフリー・バッシングに関する一考察

ジェンダーフリー・性教育バッシング―ここが知りたい50のQ&A

ジェンダーフリー・性教育バッシング―ここが知りたい50のQ&A

Q&A 男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング

Q&A 男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2006/06/05
  • メディア: 単行本

*1:今回は2005年のジェンダーバッシングの一例のみですが、2003年の七生養護学校事件などは有名ですし、東京においてバックラッシュが起こっています。ここでもその筋では有名な自民党の都議が精力的に動いたりしていました。なおバックラッシュ自体は東京に限らず各地で起こっています。参考文献に挙げた江原由美子の論文である程度の概要がうかがえます。

*2:日弁連のHPhttps://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/1996/1996_2.htmlに当時の声明が確認できます。

*3:http://women.jimin.jp/news/2005/104447.htmlの様に山谷えり子の活動でその残滓が残ってはいます。

*4:脇道ですが「男女平等」ではなく「男女共同参画」という事にも留意してください。「平等」と「共同参画」では意味合いが違います。

政府関係や国会で使われている「行き過ぎた個人主義」について

 香川のゲーム利用時間制限条例で少しだけ「行き過ぎた個人主義」についての話を見たので、その文言についての政府などでの使用のされ方の紹介でも。
 「行き過ぎた個人主義」という文句は主に右派や保守が良く口にする言葉であり、また議員などの公的な立場で発するのも大抵はそういった傾向が強い人物です。体感的にはではありますが自民党議員の方が多い印象です。なおこの「行き過ぎた個人主義」は時折政府関連の資料でもそれが用いられることがあります。例えば、


1)2008年 子育てを支える「家族・地域のきずな」啓発パンフレット

罪・虐待などの毎日のニュースばかりではなく、離婚も増加し、その一方で、子どもの数は減っています。今「家族・地域のきずな」が弛み、社会に「ガタ」がきているのです。何故そうなったのでしょうか。(中略)同時に、心も汚染され、行き過ぎた個人主義・物質万能主義となり、人間関係が希薄になった結果、「家族・地域のきずな」も弛んだのでしょう。

 この発言主は「家族・地域のきずな」フォーラム実行委員会代表であり国立小児病院名誉院長の小林登氏。文面を見ればわかるかもですが、少子化対策の一環「家族・地域のきずなを再生する国民運動」の実施にあたってのパンフレットでの文章です。少子化と「行き過ぎた個人主義」を合わせるのもままみる光景です。

2)2013年 教育振興基本計画

○ 道徳教育については,行き過ぎた個人主義の風潮や社会全体のつながりの薄れ,異なる文化や価値観等を持った人々との交流や各種体験の減少などを,,背景として 規範意識や社会性などの育成には依然として課題が残っており各学校段階における取組の強化が必要である。

 資料の冒頭にありますが、2006年の「教育基本法」に基づいてできた計画です。ちなみに2006年は第一次安倍政権です。道徳と「行き過ぎた個人主義」の話もよく聞く組み合わせ。なお必ずしも安倍政権下でこれらの言葉が使用されたというわけではなく、民主党政権下の2011年の教育振興基本計画の話し合いの中でも同様の文言は使用されていますし、2012年文科省の「少人数学級の推進など計画的な教職員定数の改善について」などでも使用されており、それらの積み重ねもあって第二次安倍政権下の教育振興基本計画でも使用されるに至ったという流れかと考えます。

 政府関連のもので「行き過ぎた個人主義」という文言がそのまま使われているので大きなのは上記2つくらいです。省庁の横断検索を使用するともう少し出たり、各委員会での議員の発言では似たような言葉が使われていたりしますが、政策と親和する使用のされ方は上二つかなと。
 ちなみにですが「行き過ぎた個人主義」そのままの文言ではないですが、似たような使われ方で以下のようなものもあります。

3)2004年 「今後の少子化対策の方向について」(少子化問題調査会中間とりまとめ)

学校教育、家庭教育は、両親・祖先・子孫への思いを大切にする、子供・家族の大切さを実感できる-ものとすることが必要である。また、異性は互いに尊重し合い、身体的・生理的違いを認めあったうえで、人間としての尊厳を認めあうべきであって、行き過ぎたいわゆるジェンダーフリー的教育や制度は改めるべきである

 これは中間とりまとめであり、またその後の資料では使われていない文言ではありますが、これまた当時の自民党界隈で意識されていた言葉です。多分今も。なお当時には「行き過ぎたジェンダーフリー教育」バッシングというものがありまして、これまた安倍晋三がその動きに大きく携わっていたりしています。
 さて、次は国会での発言について。

4)国会での発言 f:id:nou_yunyun:20200112012348p:plain

 という様に今のところ14件引っ掛かります。すべての発言が「行き過ぎた個人主義」への警鐘という内容ではないですが、典型的な発言をいくつか紹介します。

2003年7月10日 参議院内閣委員会 

参考人八木秀次君)
自己決定権という場合には、行き過ぎた個人主義というものを背景としておりますので、やはり結婚も出産も相手があるものでありますし、この行き過ぎた個人主義の中から、特に出産、中絶といったところを、これも女性の個人としての権利だと、こう理解することから、例えば中絶の自由やあるいは先ほどから御指摘のように行き過ぎた性教育がなされるという、そういう事態も出てきておると思います。

 以上は少子化社会対策基本法案の議題において参考人として出てきた八木氏の発言です。氏は界隈では有名な方ですが、第1次安倍内閣でブレーンとして報じられたりした方であり、フェミニズムや選択的夫婦別姓などに強く反対する方でもあります。

2004年4月8日 衆議院憲法調査会

古屋圭司自民党
忘れてならないのは、やはり家族の再生という視点であると思います。やはり、みんなで支え合うという共生の理念を築き上げることが大切だと思います。憲法の二十四条で、個人の尊厳と両性の本質的平等について規定されていますが、これが行き過ぎた個人主義という風潮を生んでいる側面も私は否定できないと思いますので、そこで、やはり憲法にも、家族のきずなの重要性であるとか家族の再生、家族が果たしてきた機能の回復、そういったものをサポートするような規定を加えるという考え方が私は必要ではないかと思います。

 古屋氏もこういった方面で有名な方です。これもその典型的な発露でしょう。
 国会での「行き過ぎた個人主義」の使用者ですが、大半は自民党議員やそれへの同調者のものとなります。2003年の民主党議員によるものが1件ありますが、これは世間の風潮でそういう文言が使われているという質問の過程での発言であり、上記の古屋氏の様な発言とは趣が異なるものです。その反面、自民党議員の発言は大抵において「行き過ぎた個人主義」の問題視をしている発言と捉えても言い過ぎではないかなと。

 またこれは余談ですが、自民党議員西田昌司氏のHPでは1996年07月20日発行の機関紙(?)の原稿が載っていて、そこでも似たような文言で使われています。

しかしその一方子供の教育環境の面では、いじめの問題、家庭の教育力の低下など子供の健全な発達を歪めているのが現実であります。しかも、その原因は「行き過ぎた自由主義個人主義」が蔓延してしまったためで、他人や社会のことを考えない勝手気ままな利己主義者を生み出してしまったからです。
第8号 行き過ぎた自由、失われた伝統と秩序 家庭の回復を!|機関紙showyou|参議院議員 西田昌司

「行き過ぎた個人主義」がいつから使用されるようになったかまでは調べてはいないですが*1少なくとも1996年にはもう使用され始めています。そして事程左様に大抵において「行き過ぎた個人主義」という文言を使いたがるの、自民党系なんですよね。

ジェンダーフリー・性教育バッシング―ここが知りたい50のQ&A

ジェンダーフリー・性教育バッシング―ここが知りたい50のQ&A

*1:「行き過ぎた自由主義」、「行き過ぎた平等主義」、「行き過ぎたジェンダーフリー」など、行き過ぎた○○は結構多いです。なので追うとしたら大変そう。あと使用され始めるのはおそらくですが保守論壇誌上でしょう。

朝日新聞 1945.6.14 朝刊「敵来らば「一億特攻」で追落さう」

 ツイッターで特攻兵の話題を見たのでそれ関連の新聞記事でも。

朝日新聞 1945.6.14 朝刊「敵来らば「一億特攻」で追落さう」

※文字が潰れて良く読めなかった場所を「□」で表示しています。読めたり類推できるような学が欲しい……。

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「敵来らば「一億特攻」で追落さう」
【海軍基地にて末常報道班員(本社特派員)】「一億特攻隊」の言葉が叫ばれて既に久しい、だがこの言葉の叫び続けられねばならぬところ、国民の中にはまだ特攻隊精神に徹しきっていないものがあるのではないか、しかも今ほど一億国民すべてに、あの烈々醜虜を焼き尽さずんばやまぬ特攻精神が求められることはないのだ、沖縄の決戦なお続くと雖も大局我に利あらず、我々は遂に敵の本土上陸を覚悟しなければならなくなった、男も女も、老人も子供も、一たび敵が本土に上陸せば、武器となし得るものすべてを武器とし、敵兵を突き刺さねばならないのである、一億特攻隊―今にしてこれを我がものとして敵に立向うのでなければ勝利は永遠に失われるであろう、□いてみれば平凡な常識である、また多くの人々によって語られた言葉である、人あるいは「報道班員いまさら何をほざく」と嘲罵するであろう、だが基地にあって幾多の特攻隊員の沖縄出撃を見送り、力の限り帽子を振った一報道班員である私にとっては、この抗議をも甘んじて受け、さらに声を大にして「一億特攻隊!」を絶叫し本土上陸の敵を□べ□つことに最後の勝利を見つめたいのである

 「特攻」という概念と実行が積み重なる事によって臣民も特攻を強要されるようになるという記事かなと。

厚労省調査によるホームレス数の推移について

※減少率の話を少し書き変えました。書き換え前は安倍政権と民主党政権の期間の長短を考慮していなかった為、少し比較として不適切でしたのでその部分を修正。

 というツイートがあったのでホームレス数の話でも。ちなみに別のツイートやリンク先では下記のグラフを引用されておりその推移が示されています。

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なお、この「ホームレスの実態に関する全国調査」は調査月が各年の「1月」となっています。安倍政権は2012年12月26日発足となり、実質的には2013年からのその政権が始まっています。2013年1月時点での調査においては安倍政権による政策効果というよりも民主党政権の効果と考えた方が妥当であり、2013年を起点としますが2013年は前年からの削減率には入れないこととします。
 で、安倍政権におけるホームレス数推移は、

【安倍政権下でのホームレス数推移】
 2013年(0年目):8265人 累計削減率 0%
 2014年(1年目):7508人 累計削減率 9.16%
 2015年(2年目):6541人 累計削減率 20.86%
 2016年(3年目):6235人 累計削減率 24.56%
 2017年(4年目):4977人 累計削減率 39.78%
 2019年(5年目):4555人 累計削減率 44.89%
※1月6日に内容修正。2013年を0年目として追記

以上の様な推移です。2013年から3710人の減少、割合にして言えば約45%の減少です。なのでツイッター速報なるまとめサイトが言っている「安倍政権、全国のホームレスの人数を3分の1にまで減らしていた」はフェイクです。数字上で減っているのは確かですが、割合にして言えば半分も減ってませんので3分の1というのは盛り過ぎ、デマの域でしょう。そもそも該当記事の中でも3分の1という内容は見当たらず見出しのみに数字を使用している様なので記事として甚だ不誠実な内容です。ザ・まとめサイト
 付け加えて言えば民主党政権は以下の様になります。なお民主党政権は2012年に終わっていますが、先ほど書きましたよう2013年1月の調査は民主党政権による効果と考えるのだ妥当の為、2013年の調査を民主党政権の影響として表に加えています。また民主党政権は2009年9月発足となり、その年の大半は自民党政権となるため、起点を2009年にして良いのかという点はありますが2009年を一応の起点とします。

民主党政権(影響)下でのホームレス数推移】
 2009年(0年目):15759人 累計削減率 0%
 2010年(1年目):13124人 累計削減率 16.72%
 2011年(2年目):10890人 累計削減率 30.90%
 2012年(3年目): 9576人  累計削減率 39.23%
 2013年(4年目): 8265人  累計削減率 47.55%
※1月6日に内容修正。2009年を0年目として追記

4年間で7494人の減少、割合にしていえば約47%です。ちなみに各年の前年比をグラフに入れると以下のような感じ。

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 安倍政権が5年で45%、民主党政権は4年で47%と削減率は民主党政権の方が少し高めです。ただし既に記述した様に民主党政権の起点の2009年の大半は自民党政権であった事や、民主党政権時はリーマンショックからの復調、逆に安倍政権時の削減鈍化は全体の数の減少などの影響も考えた方が良いかと考えます。
 各年の減少に関しては対策と外的要因を考えねばですが、それは置いておいても全体としては減少傾向であることは間違いなしです。

◆ホームレス数減少と暗数の存在

 このグラフの出典はビッグイシューの「ホームレス問題の現状」だと思われます。なお、このページの解説において、

厚生労働省の2019年度調査によると、全国の路上で生活する人の数は4,555人。同調査の12年前の人数18,564人と比べると、8割ほど減少したことになります。しかし一方で、安定した住居がない状態でネットカフェ等を利用する人は、都内だけで一晩に4,000人いると推計されています(2018年 東京都調査)。いわゆる「ネットカフェ難民」をはじめとする、統計に現れない「見えないホームレス」の数を合わせると、甚大な数の人が、今も不安定な居所で夜を過ごしていると考えられます。

とあるようにこの統計には欠陥が指摘され、相当な暗数がある可能性があります。つまりは「ネットカフェ難民」の存在です。上記記事にある2018年の東京都調査「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」では、

(1)のオールナイト利用者概数約15,300人のうち、インターネットカフェ等をオールナイト利用する「住居喪失者」は東京都全体で1日あたり約4,000人(オールナイト利用者に占める構成比25.8%)、そのうち「住居喪失不安定就労者」は約3,000人(住居喪失者に占める構成比75.8%) と推計される
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/26/documents/14_01.pdf

とあり、東京のみで約4000人ほどの住居喪失者がいると推定されています。なお調査においてはネットカフェ難民(住居喪失者)はいつもネットカフェにいるのではなく、「寝泊まりに路上を利用している者は「週に1~2日程度」が57.2%」とあります。この推定4000人という数の中には路上での寝泊まり者を含み、この路上寝泊まり者が厚労省の調査に入っている可能性があるのでネットカフェ難民の推定4000人が厚労省調査のホームレス調査にそのまま上乗せされるわけではありません。しかし、実際に調査すればそれなりの上乗せになるのは事実でしょう。
 それと大体4年間隔で行われている厚労省の2016年の「ホームレスの実態に関する全国調査(生活実態調査)」では、

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という様にホームレス生活者の高齢者層(65歳上)の増加とともにそれ以外の年齢層の低下が見受けられます。しかし東京都の調査によればネットカフェ難民の年齢層はこれらの低下した年代で占められています。つまりは路上にはいなくなったが、ネットカフェなどへの移行が見られると言ってもそこまで過言ではないと考えます。
 またこのネットカフェ利用による調査は対象が東京のみの数字であり、全国で見ればこの数が増えるのは確実です。ちにみに厚労省の調査ではホームレスの中で東京の占める割合は約2割。これを単純にネットカフェ難民にあて嵌めれば2万人程となります。実際にはネットカフェの数が多い東京の割合が多くなるとは思いますので2万という数字はないでしょうが、それでも4000人の倍以上には増えてもそこまでおかしくはないと考えます。なお2007年の厚労省の調査ではネットカフェ難民を全国で約5400人と推定していますが、東京都の4000人という推計を考えると増加傾向の可能性もあります。いかんせん定期的な調査がないので推測になってしまいますが。
 単純に厚労省の調査のみで減ったと言っても、そこには漏れている数は相当あるはずです。

厚労省における調査へのその他の指摘

 暗数以外にも調査の欠点が指摘されています。たとえば図録▽ホームレス人数」において、

調査方法については「昼間に街中を見回るだけで「テントや段ボール内の確認、本人への聞き取りはしていない」(都福祉保健局)という。ネットカフェなどで夜を過ごす人や昼間に働いている人は漏れてしまうという」(東京新聞2014.2.16)。

という指摘が存在します。これについては同様の継続的調査をしていればその数の動向は使えますので増減把握としては問題は無いかもしれませんが、とはいえ仮に夜のホームレス状態の方が増えた場合には厚労省の調査からはこぼれる事になります。またこの夜のホームレス数ですが、福祉新聞2016.2.9において、

3区内の路上生活者は渋谷区が189人、新宿区が366人、豊島区が116人と計671人という結果になった。
 一方、同様の調査は東京都でも毎年実施している。15年1月時点では、渋谷区が89人、新宿区が70人、豊島区が47人の計206人。ARCHによる調査の3分の1の水準となっている。この理由について、都福祉保健局は調査した時間帯の違いが大きいとみる。
深夜の路上生活者数、昼間の3倍 東京の学生らが独自調査

とあります。この指摘での比較対象は都の調査との比較ですが厚労省調査においても似た様な状況でしょう。
 また厚労省による調査は「目視調査*1」であり、調査場所は「都市公園、河川、道路、駅舎、その他の施設」となります。「その他の施設」があるのでそこまでの調査漏れが起きることはないでしょうが、目視調査の為に公園や河川などの場所からホームレスがいなくなればその数が少なくなる可能性は存在します。つまりは昨今時折話題になる「排除アート」や公園からの追い出しなどによってホームレスを物理的にその場所から昼の間だけでも排除すればその数が少なくなるかもという可能性です。
 こちらのNHK記事「【特集】東京“ホームレス” (1)東京2020の影で 明らかになる実態 - 記事 | NHK ハートネット」には写真とともに、

公園での寝泊まりを禁止する表示や、路上生活者の手荷物が置かれていた道路脇には、新たにコーンが設置されていました。

とある様に行政側は公園、路上からの追い出しをしようとしている意図が見受けられます。ここで追い出された方々が何処に行きつくのかまでは分かりませんが、こういった追い出しによって調査から漏れ、ホームレスの「調査上の数」は少なくなっている可能性も考えねばなりません。

◆政策について(簡単に)

 最後にさらっと政策の話について。厚労省の調査上ではホームレスの数は安倍政権以前からおしなべて減少傾向であり、安倍政権そのものの大きな対策によって減少していたというよりも政権以前からの政策が機能していたと考えるのが妥当でしょう。以下のような指摘も存在しますし。

厚生労働省の調査によると2003年の25,296人という野宿者数が(厚生労働省、2003)、2018年には4,977人にまで減少(厚生労働省、2018)した。野宿者数の減少は、2002年に制定された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(以下「ホームレス特措法」)に基づいた施策などの効果や社会経済などの環境の変化などの総合的な結果だと考えられる。
岡本 祥浩『日本のホームレス問題と総合的政策の必要性

安倍政権下において言えば「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針(平成30年7月31日厚生労働省・国土交通省告示第2号)」というのがあります。この方針自体はホームレス特措法に基づくものですから、やはり原点は2002年から連続している流れです。
 なお上記論文内では貧困ビジネス、脱法ハウスの存在が指摘されています。トランクルームで生活する方や車上暮らしという新しい形態のホームレス状態の方々がいます。彼らは今現在日本の調査上におけるホームレスではないのかもしれませんが、その居住状況は良いもとのは言えないでしょう。ホームレスの数そのものが減少したことは確かでしょうが、しかしその反面劣悪な住環境で暮らす人間が増えている可能性も存在する事には留意が必要ではないかなと。

 押し入れに詰め込めばキレイに見える部屋状態になってるかもですよ。

ルポ 若者ホームレス (ちくま新書)

ルポ 若者ホームレス (ちくま新書)

*1:「目視」なので対象が着込んでいる場合には性別が分かりません。なので厚労省の調査には性別「不明」がわりと多いです。年度によっては「女性」よりも「不明」が多い。また目視調査の為にネットカフェなどの場合は判断不能ということなのでしょう。

電車における案内などの多言語表示について

 こういった電車の案内板表示におけるハングル語表記の写真を撮って「どこの国だ」、「必要ない」という感じの投稿は今やSNS上などでは稀によく見るツイートです。これらは循環表示されるものであり、数秒感覚で再度日本語表示があるにも関わらずハングルが切り替え表示された瞬間に写真を撮ってSNSにとってアップする、という一連の行動は非常に滑稽ではありますが今や手軽に憎悪を煽る為にいまや定番化してる手法です。大体、引用したツイートにある様に今現在の日本の電車内ディスプレイは2つ並んだものが多いはずで、その隣に日本語表示がある場合があります。指摘としては事実レベルの確認をしない甚だいちゃもんレベルでしかなく、これらの物申す系にあるのは排外感情がほぼほぼでしょう。
 ちなみにこの件は2019年に韓国でもちょっとだけネットニュースになるくらいです。

「日本電車にハングル嫌 "日有名な作家「嫌韓」ツイート議論
日本右翼に分類される有名な小説家百田尚樹が電車に浮かぶ韓国語を批判する「嫌韓」のツイートを上げて議論だ。
議論は去る18日百田が自身のツイッターにしたネチズンがあげた日本の電車の中、ハングル案内板の写真をリツイートして始まった。
(中略)
百クタの記事に同調した日本ネチズンたちは「日本語が出てくるまで待たなければなら英語と中国語があれば十分だと思う」、「バットで殴って壊したい"、"ここは日本だから日本人が理解しやすい言語で書かれていほしい」とやや過激に反応した。
"일본 전철에 한글 구역질 나" 日 유명 작가 '혐한' 트윗 논란 : 뉴스줌
※自動翻訳

このニュース自体は百田尚樹きっかけでニュース化したものでしょうが、2017年でのこちらの中央日報記事"「地下鉄「韓国語」のご案内を見る嫌い」日本ネチズンわいわい "ではそれとは関係なく記事になっています。いまや韓国では時折ですがニュースになるくらいのネットの話題になってきている事象です。

◆言説の出始めた時期

 2ちゃんねるにおいては2008年のスレットにその様な言説はありましたがすぐ消えています。2010年には「何で最近駅の標示にハングルや中国語が増えてるの? | ログ速@2ちゃんねる(net)」において少し盛り上がりを見せていますが、それはあくまでも2ちゃんねる上であり、その他の場所ではそういった言説はあまり見受けられません。なおスレッドを見ると民主党(鳩山)政権批判の文脈もいくらか確認できます。
 これが2012年になると2ちゃんねる以外でもそういった疑問が確認できます。

京急のホームにある駅名表示にはどうしてあんなにハングルが書かれているのだろう。局所的に向こうの方々がたしかに多く住み着いているが、あまりにも多すぎるので、経緯を知りたいです(ぷさんのキニナル)
(中略)
まとめ
私たちの生活の足である公共交通機関において、確実に増えつつある多言語表示。
「ここは日本なのに、いったい何故?」と思う方も中にはいらっしゃるかもしれないが、昨今のグローバル化という流れを受け、今後は益々、ハングルや中国語を目にする機会が増えるだろうと感じた今回の取材だった。
京急の駅名表示がハングル表記なのはなぜ? - [はまれぽ.com] 横浜 川崎 湘南 神奈川県の地域情報サイト
2012年06月18日

この記事自体は今の様な言説とはやや異なりますが、コメント欄にはその萌芽、というよりもほぼほぼ今の言葉と同じ様な言説が見受けられます。またニコニコ動画においては”最近、急激に増えた駅などのシナハングル表記★黒幕は誰か★電凸① - ニコニコ動画”という様に現在と同じ言説がされています。

 また2013年11月には極右系運動において多言語(というかハングル)表示がイシューになっているのが観測できます。このページ(遠州日の丸会 “ 日本と故郷を護る” 活動日記:『多言語は見にくい』 子供でもバカでも分かります)やツイッター上では、

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というような感じで現在とイコールの動きです。ここである言説は多言語批判も含みますが、根本は横断幕が表す様にハングル、というか韓国憎しの感情が優先されているといっても過言ではないかなと。 ちなみに画像のツイートにある「日本がハングル普及云々」に関してはこちらの記事で書きましたが、かなり無理のある言説でしょう。
 言説自体は2008年頃からふつふつと表出してきたものであり、噴出したのが2012~3年頃という感じなのかと考えます。言説の内容的には民主党政権部分は削ぎ落されたものの当初からその内容自体に変化はありません。

◆なぜ多言語表示になったのか

 まず直近で挙げられるのは第2次安倍政権後の観光立国政策による2014年の「 観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」。ここでは多言語対応言語の考え方として基本は英語併記をするものとして英語優先ではあるものの、英語以外の表記の必要性が高い施設については中国語、韓国語などの多言語で表記されることが望ましいとしています。観光立国とはすなわち外国からの観光客増加を目指す政策であり、多言語表示とはその上での「おもてなし」の一環と捉えることが出来るでしょう。
 それとなにもこの観光立国の提言はなにも2014年に突如出てきたものでなく、2010年の「公共交通機関における外国語等による情報提供」では「外国人観光旅客の旅行の容易化等の促進による国際観光の促進に関する法律(外客来訪促進法)」に基づき、「外国人旅行者が1人歩きできる社会を目指している」としています。検討会には交通事業者系の当事者たちが委員となっている事からも国、事業者と主に多言語表示という方向性を共有していると言っていいでしょう。またこの法律はさかのぼれば全国都道府県議会議長会のHPを見る限り、小泉政権時代の2002年の「グローバル観光戦略」に萌芽が見られ、翌年には案内標識などのガイドラインを策定する方向性へと動いています。少し懐かしい言葉ですが「ビジット・ジャパン・キャンペーン」などの文句もその頃です。遡ればもっと遡れはするでしょうが、この時点で多言語表示へと舵を切ったと考えても良いでしょう。

◆訪日外国人旅行者アンケート調査

 観光庁HPに「多言語表示・コミュニケーションの受入環境について訪日外国人旅行者にアンケート調査」(2018年3月20日)というものがあります。

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”旅行中困ったことの回答は、「施設等のスタッフとのコミュニケーション」が平成28年度調査と同様最も多くなりました(26.1%)。続いて「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」”という様に多言語表示が一つのネックとしてなっている事が明らかになっています。また、以下のグラフでは

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「鉄道駅」は多言語表示で困る割合が多いです。この内訳をみると誤訳であったり情報量の少なさの指摘だったりと多言語表示の有無自体以外の理由も入っていますが、表示言語数が問題になりやすい事はグラフからも明らかです。もし韓国語などが表示から消えればこの割合が増える可能性は高いでしょう。
 また韓国からの訪日客数は今現在不買運動などの一環として減少中ではあるもののそれでも2019年11月で20万人不買運動前は70万人を超える月もありました。減少前は中国に次ぐ第2位、減少後であっても中国、台湾に次ぐ第3位の人数です。いってしまえば韓国は観光のお得意様と言えるわけで、その言語表示を無くす合理的意味はあろうはずがありません。

◆まとめみたいなの

 多言語表示自体、観光立国と銘打った時点で避けようもない施策です。また日本の位置する場所を考えれば距離的に近い隣国は韓国や中国、そして実際にそこからの観光客は多い。日本に来る観光客の体験を一切無視していいという方や日本に観光客が来なくていいという方ならば話は別でしょうが、しかし国としては観光立国は今現在も謳っていますのでこの流れが逆行する事はほぼほぼあり得ないでしょう。鎖国するとかなら話は別ですが……。
 またよく指摘される事ですが多言語表示は外国人自身が判断して誰かに道を聞くという工程をある程度省くであろう事から人間が対応するコストを削減させます。災害時などにも多言語表示があった方が良いのは言わずもがなです。

 案内板での多言語表示は実生活においての日本語話者の利便性を著しく奪うものでは無く、また逆に多言語表示によって日本語以外の話者の利便性は向上し案内側はコスト削減が図れるものです。その利便性などを奪ってまで合理的な説明の無い憎悪の感情のみの言葉が生みだすものは排外のみであり、またこれにより実現するのものはそういった心性を持つ人間の満足感と達成感です。もし彼らの言っている事が実現した場合、その達成感は次につながる可能性さえありエスカレートの危険性があります。そこまでの理性が失われた社会ではないと思いたいですが、一部で話題のネタ化して定着して叩かれても出続けるもぐら叩きと化した現状は危うい。傍から見たら言ってる事、完全に排外極右ですし。

◆余談。韓国での話

f:id:nou_yunyun:20191231171322p:plainhttps://www.youtube.com/watch?v=DORo7pM40Uwから

 韓国でも同じように電車案内に日本語、中国語表記がある模様。ただどこまで普及しているのかまでは良く分かりませんが。一応ハングルでいくつか思いつく単語でツイッターなどを検索しましたが、韓国で「日本語を使うな!」的な発言は見当たりませんでした。専用のミームとかあったら話は別ですが、それも可能性低いと思います。もしあったとしても日本よりはかなり少ないボリュームはないのではないかなと。


消費税増税後のエンゲル係数について

2017年の一時期にエンゲル係数の話題が出てきました。

2016年のエンゲル係数(家庭の消費支出全体に占める食費の比率)が25.8%と4年連続で上昇し、1987年以来29年ぶりの高水準となったことが17日、総務省の調査で分かった。 mainichi.jp


ってやつです。さらに2018年の国会において安倍晋三首相の答弁後のすぐ後にwikipediaエンゲル係数の説明が安倍首相側にとっては都合の良い内容に変更されたという件もありました。


buzzap.jp


またこれを覚えている人は少ないでしょうが2018年の統計局コラムで修正エンゲル係数なる概念が出てきてこれまた一部で話題になったりしました。いずれもエンゲル係数があがったという指摘に対して、係数が上がってもさしてそこまで問題視する必要はないという躱しかたというものです。
 それらの件の是非はひとまず論外なので置いといて、消費増税すればエンゲル係数が上がるのはほぼほぼ確実なわけで。ただそれについての報道はまだ出てない模様なので家計調査からそれを引っ張てきました。

参照先:家計調査 家計収支編

◆消費増税直後(2019年10月)のエンゲル係数
 今現在2019年10月のエンゲル係数までが公表されており、その10月のエンゲル係数は「26.4」です。これは前年同月比「25.7」と比較すれば0.7の上昇です。ちなみに2010年からの10月のエンゲル係数の推移をグラフ化したのは以下の様になります。

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2014年は消費増税8%の影響で上昇、2015年以降は何が主因で上昇しているかは不明ですが「25.7」と高い値で安定しています。2019年はここから更に上昇に転じましたが、10%への消費増税の影響は否めません。
 なお9月のエンゲル係数ですが2018年は「26.6」、2019年は「25.1」とかなりの差異が生じています。データを詳細に見てはいないので予測にすぎませんが、食料品以外の駆け込み需要の影響の可能性はそれなりにあるかなと。また災害の修理費用などによる臨時出費などの影響もあるかもしれません。


◆2010年からのエンゲル係数の推移
 2010年から2019年10月のエンゲル係数の推移は以下の様になります。全体的に上昇傾向です。 f:id:nou_yunyun:20191228215751p:plain

グラフだと少しわかりにくいですが2019年は数値が出ている10月分までで2018年と比較した場合、エンゲル係数は前年度よりもやや低めでした。ただし前述した様に10月の消費増税に合わせたエンゲル係数は前年越えであり、11月、12月のエンゲル係数も上回る可能性はそれなりに高いと考えます。
 それと1年を通したエンゲル係数は2016年から「25.8」付近で安定しています。2019年は10月時点までは「25.3」となり2016~2018年の10月時点のエンゲル係数と比較した場合「0.2~0.4」ほど低くなっていました。11月、12月が前年を超えたとしても、2019年全体で考えれば2018年のエンゲル係数とあまり変わらないと考えますが2020年以降のエンゲル係数は今よりも少し高めで安定する可能性は高いかなと。


 2019年全体のエンゲル係数が出るのは来年2月くらいとなり、また2019年全体は前年度からあまり変わる可能性はないのでニュースになったとしてもそこまで大きなものにはならないと考えます。ただし2020年は全体的に消費増税の影響が現れるでしょうし、そうなると2020年のエンゲル係数は高く出る可能性は高いです。しかしその数値が出るのは2021年。問題として扱われるとしてもちょっと先になりそう。