電脳塵芥

四方山雑記

レジ袋有料化の効果のデータについて


https://twitter.com/orgmrm/status/1523801437993836544

 レジ袋有料化ネタのツイートは定期的にバズる傾向があるのでこのブログでも幾度か記事にしていますが、今回もまたデータやそれに伴う話を書いていきます。本題に入る前に少しふれときますが「データないとは言わせんで」と言ってて、むしろデータがないとネタでなく思ってたらやばいなって感じがします。それと「レジ袋有料化でどれくらいプラ減りましたか」と書いてあることから、論理の逃げ場としては「プラごみが全体でどれくらい減ったか」を言いたかった、要はレジ袋なんて全体からすれば大した事ない数字だ、と言いたいとも取れますがレジ袋有料化で減るのはレジ袋なのでレジ袋の話のみに限ります。といいつつ、一般社団法人プラスチック循環利用教会のデータだけは貼っておきます。

2019年 850万トン(一般廃棄:412、産業廃棄:438)
2020年 822万トン(一般廃棄:410、産業廃棄:413)*1

レジ袋有料化で28万トン減りました、というのは因果関係を無視した冗談にしろコロナ禍の影響などもあってか特に産業系廃棄が減り2020年は廃プラ総排出量は減少しています。ただこの減少分は2021年には戻ってしまう気もしますが。

レジ袋の辞退率や削減についてのデータ

 レジ袋有料化に伴うデータは種々出ているのでここではその一部を列挙していきます。  


日本フランチャイズチェーン協会
レジ袋辞退率進捗状況
レジ袋有料化前(2020年3月~6月) 28.3%
レジ袋有料化後(2020年7月~2021年2月) 74.6%

日本チェーンストア協会
レジ袋辞退率の推移

環境省

日本ポリオレフィンフィルム工業組合


 これらのデータを見ていくと、まずレジ袋の辞退率は7割以上と考えられます。環境省がまとめたデータからもレジ袋の使用枚数や国内流通量は激減レベルと言っていいでしょう。また日本ポリオレフィンフィルム工業組合によれば「レジ袋」の削減率は以下の様になります。

【レジ袋の年別出荷状況】
2019年 77,543トン
2020年 49,863トン
2021年 34,108トン

有料化前後の2019年から2020年にかけてレジ袋の出荷が大幅に減少したことが伺え、2021年でもその減少トレンドは変わりません。またゴミ袋などの推移の変化の乏しさ、ポリ袋の輸入量減少を見るとレジ袋の代わりに代替としての袋を買っていたとしてもレジ袋減少分をチャラにするほどの購入量は存在しないことが伺えます。
 つまりはレジ袋有料化によってレジ袋の流通は大幅に減少した、というのが結論です。

万引きの増減について

 レジ袋有料化後に万引きが増加したスーパーがネット記事に出たことがある事やエコバックによる万引き抑止策などを各店舗が行ったことによりレジ袋有料化後に万引きが増えたという認識が生まれていますが、こちらに関してもデータを見ていきます。
 まず初めに当事者ともいえるスーパーマーケット協会は2020年11月20日に協会会員300社の協力で得た調査で以下の様に記述しています。

レジ袋有料化義務化以降、マイバッグの使用は増えている。
マイバッグの普及による万きの動向については、「わからない」が最も多い43%であり、万引きや盗難被害の実態についても「ほとんど把握できていない」が3分の2を占めたことからも分かるように、被害状況を正確に把握できていないのが実状である。
レジ袋有料化義務化によるスーパーマーケットへの影響 実態調査

上記の調査は正確に把握できないのが実情とは言っているものの、「増えた」とも答えている部分が約3割あることからこの調査のみでは万引きは増えたと考えられなくもありません。しかしこの調査は「正確に把握」が0%であり、「おおよそで把握」が34%、「ほとんど把握できていない」が66%と考えると印象論での把握の可能性もぬぐえずに、やはり業界全体を考えるならば正確な把握ができていないが実情と言えるでしょう。
 では警察庁の把握している数字はどうか。犯罪統計をもとにして2018年~2021年、ついでに2021年1~3月と2022年1~3月の万引きの認知件数、検挙件数、検挙人員を表にすると以下の様になります。

上記を見れば一目瞭然ですが、万引きの認知件数は常に減少傾向となっています。このことから「全体」を通じてみれば万引きが増加したという事実はありません。万引きが増えたというネット記事などがあることから個別店舗で増加した店舗がある事を否定はしませんが、全体を鑑みれば「レジ袋有料化によって万引きが増加した」は一般化することは些か難しいと言うしかありません。

レジ袋は焼却時の補助燃料となる説

 レジ袋有料化時の反対論の中にゴミ焼却時にレジ袋は燃料になるのにそれがなくなるとその分の重油を使わなくてはいけない為に逆にエコではない、という話が流布しました。以下の様に。


https://twitter.com/pixie10ole/status/1268329601098346498


https://twitter.com/ExcellencyRozen/status/1268424244314009600


https://twitter.com/kAssy0121/status/1336991247827750912

今現在確認できる当時バズったツイートはここら辺で、これらを含めて当時ソースとして使用されていたのが以下の二つだと考えられます。

自治体によってはサーマルリサイクルし、ごみ焼却燃料になり、重油燃料の使用量がその分減少し、無駄とならない。総二酸化炭素排出量は、サーマルリサイクルしても、そうしない場合と大差ない。
清水化学工業「脱プラ、脱ポリ、紙袋へ 切り替えをご検討のお客様へ

 

プラスチック製の袋は、薄くて発熱量が高く、エネルギー回収も効率的に行うことができる。実はプラスチックは焼却炉の餌になるのである。生ゴミだけ燃やすには、余計に原油が必要となり、逆に資源のムダ使いになるのである。
第6回高校生地球環境論文賞の入賞作品
受賞論文【優秀賞】「レジ袋削減は本当に必要か」

確かにレジ袋というか、プラごみが燃料となるというのはそうではあるのでその部分については特に異論はありません。ただ、この話が流布の過程でかなり過大に評価されているきらいがあります。例示すれば以下の様に*2


https://twitter.com/kAssy0121/status/1445233481269743620


https://twitter.com/ifeelin7/status/1369258538007031810


https://twitter.com/8000000_392/status/1276385976504348672

つまりはレジ袋有料化によって焼却炉の燃料が足りずに有料化後に余計な燃料が使用されている、という考えです。ちなみにこの論理に近しいものは2022年4月6日参議院決算委員会で自民党小野田紀美が次のような形で使用しています。

ごみ焼却場でごみを燃やす時にプラスチックごみがあるとええように燃えるんですよ。熱をちゃんと出していけるんです。ある程度高熱でごみを焼かないとダイオキシンの問題もあるので、その焼却炉してカロリー欲しいんですね。プラスチックごみが減ったことによってカロリーが減ってしまって結局高熱出せなくなったから重油買ってきて燃やします、ってならそれまた本末転倒じゃないかって(以下略)

ここではレジ袋ではなくプラスチックごみというくくりで言っていますが、論理そのものは同様です。なおこの質疑に関して今現在普及している焼却量では重油などによる助熱は必要はなく、ただし地方の小規模なクリーンセンターでは実情を伺って必要な検証を行っていきたいという答えをしています。つまりはこのレジ袋減少による補助燃料としての重油追加説は基本的にはその指摘は真の意味で当たらず、小規模な自治体に限ってその実態が不明というものになるかと考えます。
 さて、では実際にこの補助燃料についてデータ上はどうかというとのをいくつかのデータから見ていきます。まずは東京二十三区清掃一部事務組合のデータから。まず該当組合のデータを見るとそもそも補助燃料として重油を使っていません


出典:平成23年 清掃工場など作業年報

このように2002年度を最後に重油を燃料としては使っておらず、使用しているの都市ガスとなります。その都市ガスの使用量も2020年には減少しています。


出典:令和2年度 清掃工場など作業年報

どうも調べていくと現在の焼却炉は形式によりますが補助燃料としての重油を使用しなくても大丈夫なものが多くあります。例えば横浜市の金沢工場では重油だけではなくガスも使用しないと記述されています。

例えば、「生ごみばかりだと水分が多くて、そのままだと燃えないため、重油などをかけて無理やり燃やしている」「燃やすごみの中にプラスチック類が混じっていた方がよく燃えるため、燃やすごみの中に適当に混ぜて出したほうがよい」などです。皆さんの中にも、似たような話を聞いたことがある方がいるのではないでしょうか。
 これらの話は完全な誤解と言ってよいでしょう。(略)現在の焼却工場は、焼却炉の 内部が非常に高温のため、運転中は重油やガスなどの燃料を使わなくても生ごみは乾燥し、自然発火して燃えてしまいます。
recycle design no.258

日本の焼却炉の約7割を占めるストーカ式*3の特徴としては資料などを見ると他の方式よりも化石燃料の使用量は少ないものです*4。それと岩手や島根で清掃処理業務を受注してる会社の資料を読む限りは2019年度から2020年度にかけて重油の使用量は減少しており、ある程度の規模の自治体の場合は重油の使用量が増加したという事はないように見受けられます*5
 そもそもレジ袋のゴミに占める割合は廃プラスチックの2%程度とされており*6、これを2019年に当てはめると850万トンの2%で17万トン、それを日ごとに割り、各自治体ごとに割っていけば1回あたりの焼却時のレジ袋はかなり少ない量と推測でき、果たしてその量が減少したところで補助燃料が必要なほどにレジ袋が減少したかどうかは疑問な所です。思えばその削減量の少なさから有料化政策に「効果が薄い」という反論もあるわけで。なんにせよ、小規模な自治体まではその実態は不明ですが、この「レジ袋有料化によって重油使用量が増えた」系の話はかなり眉唾なものだと考えます。

 レジ袋有料化批判ツイートは定期的にバズる印象ですが、とはいえ有料化からもうすぐ2年。流石にいつまでもこのネタで引っ張れるとは思えないのでこのネタもあともっても数年でしょうかね。

*1:おそらく四捨五入をしているため合計値にズレが生じている

*2:一つ愚痴ると、レジ袋が減ったから重油使用料が増えた的な返事をツイッターの方でもらいました。

*3:出典: http://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/ippan/r2/data/disposal.pdf

*4:出典:https://www.city.itoigawa.lg.jp/secure/10947/03-03.pdf

*5:岩手第2クリーンセンターアースサポート株式会社を参照。なおこれらの企業の場合、重油使用量が焼却炉に限定して記述しているかまでは不明

*6:出典:https://www.soumu.go.jp/kouchoi/substance/chosei/rejibukuro.html#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8B%E3%82%89%E6%AF%8E%E5%B9%B4%E6%8E%92%E5%87%BA%E3%81%95%E3%82%8C,%E3%81%B0%E3%81%94%E3%81%8F%E5%83%85%E3%81%8B%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82

体育座りGHQ起源説について

 ”「体育座り」は悪影響が多い? 生徒から廃止求める意見、改めた学校も”という記事を受けて体育座りは戦後にGHQが日本人弱体化計画で導入したという話、言うなれば「体育座りGHQ起源説」の様なものがツイッターで流れてきたので、これを信じる輩はそこまではいないものの、しかしどうやら下記の様にグーグルのトレントを見てみると2020年近辺から「GHQ 体育座り」での検索数が増えているのでこの話が生まれた流れなどをメモ代わりに置いておきます。

 それと本題に入る前に一応書いておきますが、そもそも体育座りの起源は上記記事にある様に1965年の学習指導要領によって浸透したというのがおそらく定説であり、GHQは関係ないです。

島根大大学院教育学研究科の久保研二准教授(39)=体育科教育学=によると、1965年に文部省(当時)が、学習指導要領の解説書として発行した「集団行動指導の手引き」で、「腰をおろして休む姿勢」として写真付きで示されてから広まった。省スペースで手遊びがしにくく「行儀よい姿勢」という印象が浸透したという。

「体育座り=囚人座り」という認識(~2014年)

 まずこの体育座りのGHQ起源論の中にはいくつか特徴的な言葉遣いがあり、そのうちの一つが「体育座りは囚人座り」だというものです。例えば以下の様な。

上記は2021年10月21日に投稿された都市伝説紹介系youtuberによる「学校は洗脳教育のための場所だった。体育座りが使われ続ける理由がヤバい【 都市伝説 洗脳 アメリカ GHQ 】」のなかのワンシーンですが、ここで「大昔から「囚人座り」と言われており…」という記述がなされています。なおサムネイルも体育座りですが動画内でこれについて語っている時間はほんの数秒だけです。しかし再生数は27万回を超えて影響力は無視できません。

 ではこの「囚人座り」が大昔から使われていたかというと別にそうではなく、少なくとも日本のネット圏内で現在確認できる一番古い使用例は2010年10月の川邉研次氏のツイートです。

川邉氏はこれを含めて3回類似のツイートをしており、その後に別アカウントも数度「囚人座り」を含めたツイートをしていますが、そこまでの膾炙は見られません。しかし2012年2月4日、川邉氏はツイッターではなく今度はフェイスブックで類似のツイートをしています。


https://www.facebook.com/miraidentalspace/posts/336172626422464

そしてこの二日後の2012年2月6日にはさらに詳しく書いて、尚且つ画像も添付されています。


https://www.facebook.com/photo?fbid=337739122932481&set=a.212683462104715

体育座りは、日本だけの最も悪い姿勢。囚人ずわりとも言われる体育座り。こんな姿勢は、私のごともの頃でも小学校後半になってから始まった。ナチス・ドイツユダヤを平定するときに、行動が一歩遅れることを想定して創り上げたと言われる。

以上の様に「囚人座り」という名前だけではなく画像付きでどの様に悪いかを書くことによって説得力を増させています。ちなみにこの画像はその後に流布する話の中でたまに使用されることあるもので、さらにここではナチス・ドイツという単語も出てきますが、これもGHQ起源説の際につくことがある単語です。これらを考えると川邉研次氏のこれらの投稿が今の体育座りGHQ起源説の一つの原形を作ったと考えられます。なお川邉氏は2012年から今現在(2022年)までに体育座り関係の投稿をフェイスブックで30回以上はしていますが、ただ一つだけ留意する点としては、川邉氏は「体育座りGHQ起源説」は唱えていないという事です。今年3月に「実は体によくない!? 「体育座り」が教育現場に定着したワケ/毎日雑学」という記事をリンクに貼りながら「【体育座りはいつから 1965年から】」という投稿をしていますし、その領域には足を踏み入れてはなさそうです。
 そしてこの川邉氏の投稿の2年後に時間差でこの投稿を受けたブログ記事がほんの少しだけ書かれます。それが以下の二つ。

2014-4-12「姿勢!!! それ、囚人すわりじゃない?!
2014-6-12「体育座りが囚人座りと言われる理由
※ちなみにツイッターでも4月11日にやや拡散された囚人座りツイート有り

以上の他にも削除済みのブログも当時のツイートから確認でき*1、ここで「体育座り=囚人座り」の認知度が上がったことが認識できます。なお、これらのブログはいずれも川邉氏が作成したであろう画像を使用しており、ネタ元が川邉氏であることは明らかです。それと川邉氏は歯科医でして、上記ブログのうち6月の方のブログも歯科医、フェイスブックで反応している方にも歯科医が確認でき、「医者」という権威ももしかしたらここら辺の流布に関係している可能性はあります。ただし、まだこの時点ではGHQ起源説は登場していません。
 なお囚人座りとは別に「奴隷座り」というバージョンも存在しています。GHQ関連ではありませんがこの呼び名で2019年にバズったツイートは存在しており、囚人座りよりも膾炙している感もあります。


https://twitter.com/zapa/status/1092054854271303680

この奴隷座りの囚人座りと比べるとその出所は分かりませんが現在確認できるのは2011年のツイート。ただこの奴隷座りの膾炙自体は後々のブログなどで囚人の絵は使用されずに奴隷の絵が使用されることによって広まっていったものと考えられます。さて、では説そのものの出所はどこか。

体育座り=GHQ起源説の「完成」(2015年)

 GHQ起源説の出所を探っていったところ、まず2013年にそれに近い事をツイートしているアカウントは存在します。


https://twitter.com/Pharma_yoshi/status/338716951297798144

文面からGHQ起源説に近しい内容なのですが如何せんこのアカウントが何を根拠にしてツイートしているのかが不明であり、またこの周辺期に限って検索しても類似のツイートは存在しません。正直なところ検証する側にとってはかなり困るツイートで、そして究明も出来ないツイートの為にここでは例外として無視します。しかしこのツイートから2013年頃にはこのGHQ起源説が現在は削除されたであろうHPやブログか何かで生まれていた可能性があります。ただし現状から考えるとその後にそれから派生したツイートやブログがない事からかなり限定的であったと言えます。あと付け加えるならこのアカウントはこの直前に「体育座りが好き」とツイートしており、「囚人座り」的価値観とは別個のものであることが分かります。
 上記を例外にして現在確認できるGHQ起源説の本格的な登場が2015年です。それが確認できるのが2015年1月22日にyoutubeにアップロードされた「脳と心と体の専門家:田仲真治のブレイン・アップデートTV」の「歯と全身と生き方・奴隷座り」における以下の場所です。

田中氏は一般社団法人国際ブレインアップデート協会会長という方であり、この方自身が出所なのか、はたまた違う人間がソースなのかまでは不明ですが、ここで紹介されている文言は今流布されているGHQ起源説の論調とほぼ同一ものであり、この時期にGHQ起源説が「完成」していたことが分かります。また氏は「GHQ」、というよりも戦後の在り方に疑問を持つ思想と見受けられることから何らかの「アレンジ」をした可能性は考えられなくもありません。それとここの文言で「囚人座り」との融合が見られますが、この動画には春藤歯科医院の院長との対談であることから川邉氏など歯科医つながりで「囚人座り」との融合が発生した可能性もうかがえます。ただGHQ起源説が完成はしたものの、この説自体はこの時期には広まらずにある程度時間差を要しています。
 さて2015年初頭にGHQ起源説は完成していたことが確認できたものの他に出所はあるものかと探っていくと、2015年4月15日の雷人という方によるブログ記事「体育座りとスマホは鬱になる洗脳!?」において以下の様な文面があります。

確か心理カウンセラーの高石さんから聞いたんだと思うんだけど、「体育座りは、戦後GHQが日本人を鬱にするために学校でやらせてる」という話がある。

この話が本当ならば出所はこの「高石さん」となります。では心理カウンセラーの高石とは誰か。それは高石宏輔氏です。現在はHPが削除されていますが、インターネットアーカイブで確認する限りそのプロフィールはカウンセラーであると共にナンパ師であり、催眠術なども使うと自ら語る人物であり、宮台真司氏とイベントに出たり共著があったり、数冊の書籍なども出したことのある知名度がありそうな人物です。そして氏のHPには以下の様な記述があります。

いわゆる体育座りは、戦後の国家が子供たちを管理しやすくする為に教育に取り込まれた座り方です。自分自身の手で自分を縛り付け、浅い呼吸を繰り返すことになります。不自然な座り方が教育の中で自然な座り方になっていきます。牢獄を無自覚に作ることで、自分の感情が分かり辛くなり、感情 表現の乏しい状態が生み出されます。子供の頃の習慣の影響で、大人になっても残っていきます。

ここでは「戦後」と書いておりGHQとまでは書いていません。また確認できる氏のHPを漁る限りはGHQがという話はされていません。なので果たして高石氏が実際にGHQ起源説を書いたのか、それとも雷人氏が勘違いしたのかまでは分かりません。ただしこの「戦後」は「GHQ」との近さを持つであろう性質で、これの拡大解釈でGHQが付加された可能性が指摘できます。
 結局のところ誰がソースかまでは不明なものの、この時期から徐々にGHQ起源説が流布し始め、まずそれが確認できるのが2015年の5chでの以下の書き込み

578 :名無しの心子知らず@無断転載禁止:2015/12/04(金) 19:39:30.62 ID:2vDpm2Pm
体育座りは奴隷の座り方。
これを持ち込んで我々に強いたのはGHQ
この体育座りをしている人に触られただけで力が入らなくなってしまう。
 
こんなんシェアされた

以下の様なものです。ちなみにこの文の元ネタはフェイスブックであり、投稿はこちらです。ここからも「何を」根拠にしてGHQ起源説を唱えているかまでは不明ですが、これ以降は説の拡散行動が見受けられるようになっていきます。

GHQ起源説の拡散時期(2016年~)

 田中氏の時点で「思想」は十分にありましたが、2016年6月28日に「ゆるむ@ ゆるんで・今を楽しく・次の今も楽しく(#^^#)」というブログでも「何気にやってる「体育座り」の本当の意味ってなんですか?」で明確な「思想」を伴った記事が出現します。

囚人座り
この姿勢はナチス・ドイツが開発したと言われていて、日本では戦後GHQによって、学校教育に取り入れられた座り方です。(略)まさに『手も足も出せない』状態であり、体を使った洗脳政策のひとつです。海外ではこの姿勢はないようです。マーメイド座りか、手を後ろに置いて体を支える座り方です。

このブログ記事はその後にるいネットに転載されており、それを媒介してツイッター内でも多少の拡散が見られます。
 2017年には陰謀論好みの保守層の中に話題を拡散する行動に出たと思われるのが確認できます。例えば「国家非常事態対策委員会」というアカウントがyoutubeにおいて2017年7月6日に「GHQによる日本衰退戦略 「体育座りの健康への悪影響」、「水道水に含まれる塩素」、「輸血にまつわる陰謀」【ネット TV ニュース.報道】」という動画をアップロードしています。これは現在youtubeでは削除されていますがニコニコ動画では現存しておりますが、聞く限りは今までの説のトレースです。そしてツイッターでは2017年7月のブログ記事「「体育すわり」は日本人を骨抜きにする戦後GHQ戦略」が若干の拡散が見られ、「奴隷」との関連付けをするための以下の画像も使用されるようになったことが確認できます。

なおこの2017年のブログは随所の記述を見る限りは2016年の「「体育すわり」は日本人を骨抜きにする奴○と囚人の座り方」と類似性は高くパクリ記事っぽい*2
 そして2019年12月3日、おそらくこの「体育座りGHQ起源説」に決定的な影響を与えた動画あります。それがyoutubeの「自己肯定感アニキ 津田 絋彰〔つだ ひろあき〕」チャンネルにおける「【衝撃】GHQが日本に導入した体育座り。身体への影響とは」です。

www.youtube.com

この動画の再生回数は70万回にも及び、無視できる再生回数ではありません。発端ともいえる田中氏の動画が1万回であることから影響力の差も段違いと考えていいでしょう*3。グーグルトレンドにある検索推移とも符合する時期と言えるだけにこの動画が今の説に影響を与えたと考えてもそうは誤りはないと考えます。ちなみにこの動画の津田氏はブログなどを見る限りは保守層で違いはありません。そしてこの動画の後にツイッター内でもつぶやきが増加が確認でき、中には以下の様なGHQ起源説を定期的につぶやくアカウントまで登場。


参照リンク

またyoutubeでは2020年3月25日に「ウマヅラビデオ」がアップロードした「学校で植え付けられた洗脳【都市伝説】」が津田氏の再生数を上回り100万回再生を超えているのも確認できます。

www.youtube.com

冒頭で紹介したyoutube動画も含めて、都市伝説の「ネタ」として流布されそれが拡散に大きく寄与している事が伺えます。またこれらに比べれば微々たるものですが、ブログ記事などでもちらほらと出てくるような状態になっています。実際、かなり馬鹿げた話なので信じる人間は少ないでしょうが、それでもそれなりの数が信じているのもまた事実な案件になってしまっています。

 以上の様にこの「体育座りGHQ起源説」の初発自体は不明で明確にわかるのは2015年。実際には2013年ごろにはおそらく存在したと考えられます。この発端には体育座り自体が身体に良くないという前提があり、それを危惧した歯科医が「囚人座り」という言葉を流布し始め、それとは別個として存在した「戦後に生まれた体育座り」の「戦後」というキーワードが「GHQ」と結びつき、そしてさらにそれらが結びついた結果としてGHQ起源説が生まれたと推測できます。そしてそれはまずブログでの記述や陰謀論と近しい保守層の中にその言説を利用した人間が出始めましたが、当初はほそぼそとしたものでした。ただそれが徐々に膾炙し始め、それを信じたのか、若しくはウケると信じて流すyoutuberによって拡散されて一部で定着したという流れであるかなと。息の長く、時には一部をくすぐる「日本人弱体化計画」の様なものが付きながらの伝言ゲームによって生まれたのだと考えますが、それはそれとして体育座りを日本人弱体化計画でGHQ云々は信じる必要もない戯言に過ぎない。

*1:https://twitter.com/azumask/status/456320912820682752

*2:そして2016年の方はツイーターを見る限りはあまり拡散していない

*3:一応、津田氏の動画の前にも類似の動画がありますが、再生数的に言えばこの津田氏の動画の影響力がかなり大きいと考えられる。

東日本大震災時に安倍晋三がトラックで被災地に救援物資を運んだという話について

 東日本大震災時に安倍晋三氏がトラックで被災地に救援物資を運んだという話について、これ自体は事実なんですが、中には部分的に間違っている情報があり、また一方ではこの件がまとまった情報が特にないという情報で、だのに定期的にツイッターなどで話題に上がる案件なのでここに忘備録として記録しておきます。

安倍晋三が支援物資をもって訪れた被災地とその日付

 まず現在は消去されていますが当時の安倍晋三公式HPをインターネットアーカイブで参照すると以下の日付に支援物資をトラックで被災地に運んでいる事が分かります。


福島県
訪問日付 :2011年3月26日土曜日
訪れた場所:相馬市、南相馬市、新地町、福島市

なおこの訪問については世耕ブログ亀岡偉民の当時を振り返っているブログにも詳しくあり、それによると詳細は以下の様なもの。

・トラックは2台(10トントラックと4トントラック*1
 4トントラックに安倍&世耕が乗る
 トラックには運転スタッフ有
・支援物資は安倍事務所と世耕事務所が企業等に依頼して集めた物や下関での義援金で購入した物
南相馬市(14時半ごろ) → 相馬市 → 新地町 → 福島市の避難所に訪問
・最後に亀岡氏の事務所に行って終了
ツイッターには一万組の男女下着を持参との情報もあるが真偽不明

ちなみに篠原直秀氏の「東日本大震災 中期ボランティア報告書 その2」には南相馬市での原町第一小学校における目撃談が以下のように語られています。

安倍晋三元首相来所
14 時半頃、ふと気付くと自民党安倍晋三元首相らがぞろぞろと大名行列でやってきて、カップ麺配布場所に行き、笑顔で配布側に回って配布を始め、来た人と握手したり写真に撮られたりしていた。5 分程してからふと顔をあげて見てみると、もう手渡しを止めて、避難所になっている体育館に入って行くところだった。後から聞いた話では、体育館の中で被災者と一緒に炊き出しのおにぎりを食べて話を聞いていたらしい。しばらくして出てきた、安倍元首相は、配布作業がかなり落ち着いてきていた私の所に来て、頑張りましょうと握手をして去って行った。市長もパッと来て何もせずパフォーマンスだけしてパッと帰って行ってしまうことに不満を漏らしていたが、私もこちらはこれだけ頑張っているのに、ただのパフォーマンスかよと、少しムカつきを隠せなかった。ただ、有名人は、ただ来て顔を見せるだけで被災者を元気づけることができるかもしれないし、できる限り多くの場所を回って元気を配ることができるのかもしれない、それぞれの人で最も効果的に被災地を支える術があるのかもしれない、と考えることもできるかとも思った。私が、最も自分の能力を生かして効率的に被災者のためにできるものは何だろうか、と改めて考え直させられる瞬間でもあった。

パフォーマンスだという手厳しい部分があるものの立場ある人間が訪れる意味についても書いています。滞在の長さについては14時から各市内を回ることを考えればそのような短さになるのも仕方ないものとも考えられます。

宮城県
訪問日付 :2011年4月8日金曜日
訪れた場所:仙台市亘理町・山元町

こちらの宮城県の訪問については公式HP以外の情報が少なく、当時のツイートで参考になりそうなものも以下くらいのもの。


https://twitter.com/akibakenya/status/55949141880221696

これらの情報を統合すると「トラックは2台(少なくとも1台は4トントラック。書き方からおそらくは2台とも4トンと思われる)、訪れた避難所は8か所、この他に分ることは下関の運送会社エンデバーがトラックを用意、同行者の議員がいたかなどは分かりません。


以上の2つが安倍晋三が支援物資をもって被災地に訪れた事例です。なお安倍晋三公式HPの4月30日には29日に宮城を訪れたとありますがこちらは視察の為であり支援物資を運んだとは書いていないことから数には入れていません。

事実誤認な箇所

 この話が拡散していく中で幾つか事実誤認な箇所があるのでそれをここで指摘しておきます。

安倍晋三本人がトラックを運転した

https://twitter.com/kamedazo2012/status/259159313862512640


https://twitter.com/murrhauser/status/1171703132008484865

 まず世耕ブログにもある様に運転スタッフがおり、また別のソースとしては谷口智彦『誰も書かなかった安倍晋三』にて以下の様な記述があります。

東日本大震災が発生し、津波が起きて10日経つか経たないかというとき、安倍総理は盟友・世耕弘成さん(現経済産業大臣)と申し合わせて、2人でトラックの狭い助手席に乗り込み、 被災地に救援物資を届けていますから*2

どちらの情報を信じるかと言えば当事者の世耕ブログの方を信じるべきであり、このことから安倍晋三本人はトラックは運転していないと考えるべきです。なのでこの部分は明確に誤りと考えられます。亀岡氏が何故安倍晋三自ら運転していると言っているかはよく分かりませんし、安倍晋三免許を更新したという記事もある事から少なくとも普通運転免許までは取得している事は分かり、それは時期的に4トントラックも運転可能な免許でしょうが、それはともかく運転スタッフがいるって明記されてますから運転スタッフはいたでしょう。

■トラックを何十台も連ねて

https://twitter.com/mpipanda/status/311641604819668992

 #kokkaiタグがある事からこれは国会中継中のものであると判断できます。では、国会会議録ではというと以下の様なもの。

西村明宏「総理、震災後に早速に被災地の方に足を運んでいただきました。総理から、当時はまだ総理ではございませんでしたけれども、その後にいろいろな物資を運んでいただきました。十トン車を何台も連ねておいでいただいた。そして、防災服に身を包んで一緒に段ボールを運んでいる姿を通りかかった皆さんが見て、びっくりしていたのを思い出します。  食べ物がようやく届き、そして、着がえをしたい、下着が欲しい、そんな話のときに、暖かい下着が届きました。安倍総理から届いた下着で、いやあ、あったけえなと言っていたおじいちゃんやおばあちゃんの顔を思い出します。」
第183回国会 衆議院 予算委員会 第13号 平成25年3月13日

この部分は国会中継ツイートが意訳したのか、それとも会議録にするうえで修正したのか不明ですが、それはともかく「何十台」というのは誤りですし、少なくとも1台は4トン車であることから「10トン車を何台も連ねて」は誤りと言えます。

数年前からこの話が膾炙し始めている

 この安倍晋三が被災地に行って支援物資をトラックで運んだ話は昔より今の方が聞くようになったなというのが体感で、時間差を感じます。まず当時から世耕ブログをソースにしたツイートでRT100超えツイートはいくつかありますがそこまでの数はなく4桁超えはありませんでした。その後に2012年10月3日に以下のツイートが存在します。


https://twitter.com/morimasakosangi/status/253495638606630912

これが現在確認できる初めての4桁越えたもののその後にまたこの話は鳴りを潜めます。そしてここから6年後の2018年8月の下記ツイートによって認知が一気に広まったと考えられます。


https://twitter.com/wadamasamune/status/1050028456430329856

これが恐らく決定的な拡散要因となり、その後2019年3月11日に政治知新によって「東日本大震災時、たった三人で被災地救援に向かった安倍総理」という記事が書かれてまた拡散します。題名の「たった三人」に運転スタッフが入ってないのは置いといて*3、現在この記事は原因不明ですが政治知新HPからは削除、政治知新アカウントのツイートも存在しないわけですが記事のURLを貼ってRTが1000を超えるツイートも確認できます。その後もいくつかの4桁越えのツイートが見られ、今後ももしかしたら同様のツイートで4桁越えがあってもおかしくはないかなと。

和田政宗氏の写真の場所はどこ

 なんだか過去にはtogetterで写真がおかしいというまとめがありましたし、それについて少しだけ。まずはじめに持ち方がなってない、重くて持てないのではという指摘がありましたが、これはおむつの「グーン(GOO.N)」であることが段ボールから分かります。おむつの重さを考えればこの持ち方でも大丈夫と考えられます。
 そして最後に和田政宗氏がアップロードした写真の場所はどこかでも。ちょうど探そうと思ったところ、ツイッターでちょうど地元の方からここではないかという場所を教えてもらいました。確認したところ各要素から以下の場所で間違いないでしょう。


参照リンク

その場所は「場外 杜の市場」の駐車場です。横断歩道からここが道路であるかのように語っている方もいましたがこれは駐車場内にある横断歩道なので道路ではありませんし、特に法的な問題もないでしょう。ただ一つだけよくわからないのは近くに学校等の避難所がない場所なので、何故ここで荷物を降ろしていたかは写真からは不明です。近くに避難所があったのか、個々からさらに個別に仕分けた辺りでしょうか。なにわともあれ、普通に存在した写真であることには違いないでしょう。
 これで終わりにしますが、本題とは別の締めで。ネットストーカーには気を付けよぅ……。

*1:安倍晋三は5トントラックと書いているが世耕、亀岡は4トンと書いており、安倍晋三の間違いと思われる。

*2:3月26日に向かったことを考えると「津波が起きて10日経つか経たないかというとき」というのは誤りです。

*3:ちなみに世耕ブログをソースにしているが、そこには運転スタッフと書かれているのに知新の記事本文には運転スタッフの存在が消えている。雑。

中国のCCTVが「ロシア崩壊後の領土分割案の地図を発表」というのはデマ


https://twitter.com/SputnikATO/status/1520061360939360256

 上記のツイートをもとにしてツイッター速報が「中国の国家テレビチャンネルCCTV、ロシア崩壊後の領土分割案の地図を発表」という記事をまとめて怪しい地図と共に怪情報が流布しています。結論から言ってしまえばデマです。まずそれぞれの画像は以下の様なもの。

1枚目の画像がロシアを分割した地図というものとなり、2枚目がこの地図が中国の報道番組で流されて「分割案が発表された」という報道の体の画像となるわけですが、2枚目の右上のロゴを見ればわかる様にこれはCCTVではなく東方衛視であり、この時点でツイッター速報は間違っているわけです。ただそれは放送局が違うだけで報道は事実だ、と言い張ることは可能かもしれませんので、まず画像の出典を見ていきます。

画像の出典

 この画像は昨日今日造られたわけではなく管見の限り初出は2020年7月2日のredditの”The nearest country to you, when in Russia”というスレッドです。タイトルの通りこれは「ロシアにいるとき、あなたに最も近い国」というもので別に分割がどうのという地図ではありません。この地図を見てどの国が近いのかが、感覚的に理解できない面もありますが……。ただ実は当時からこの地図が分割案と受け取られてはおり、例えば香港のプラットフォームである9GAGには2020年7月2日「2032年 旧ロシアの領土が近隣諸国に分割される。」、同7月3日「2014年クリミア危機後のロシア分割を国連が計画2015.」、テレグラムで@ukrainian_mapが2020年7月5日「ロシアはどのように崩壊していくのか」という様に分割案地図として広がっている事が分かります。また当時にラトビアの政府機関の人間がこの地図を分割案的な利用でツイートをしており、ロシアのメディアで批判的記事も作成されています。 それと少し時は立ちますが@ukrainian_mapはウクライナ関連を思わせるアカウントで2022年1~2月ごろには韓国の掲示板ウクライナ人が作った分割案地図の様な広まり方を局所的でしたが確認できます。  ひとまず言えることはこの地図自体は「分割案」として生まれたものではないが、分割案地図としてネットで活用されて行っている事が伺えます。ただし、「ロシア崩壊後の領土分割案」をネット発の画像で中国の報道機関が流す可能性は著しく低く、この時点でほぼほぼデマと判断していいでしょう。

番組は何か

 上記の様にそもそもこの地図を実際の番組で利用すること自体があり得ないのですが、しかし万が一の可能性もあります。で、探っていったところカザフスタンのメディアがファクトチェックをしていたので、その記事を参照します。まずこの番組は「欣然股课堂」という番組でyoutubeにもチャンネルが存在しています。画像からも分かりますがこの番組は株式系の市場の話題を扱う経済番組であり、背景においても分割案地図を使う様な番組とは言えません。そしてファクトチェック記事によると番組自体は2021年6月30日に報道されたものとしており、こちらもyoutubeに存在します。以下はその一部のキャプチャ。


https://www.youtube.com/watch?v=MvyHNyhaS38&ab_channel=%E6%AC%A3%E7%84%B6%E8%82%A1%E8%AF%BE%E5%A0%82

見ればわかる様に右上の東方衛視ロゴ、右下の欣然股课堂ロゴの有無の差異はありますが、それ以外の各スーパー、男性キャスターに著しい同一性が見られ、今出回っている画像はこの日の番組画像の背景を分割案地図に変えたものと考えて良いでしょう。そもそも出回っている画像、地図とキャスターの境目が不自然で加工臭が元からあるんですよね。で、実際加工だったと。

 このツイート自体がいたずらか、情報戦的なものの一部化までは不明ですが、とにもかくにも地図は「ロシア崩壊後の領土分割案の地図」ではないし、「中国のテレビが発表(報道)」というのも何れもデマです。

ウクライナ難民に「月60万円」は日本国としての支援ではないし、単純にデマ


https://twitter.com/binbou415/status/1519520646971400192

 この話がバズっているが、「月60万円」自体はこのアカウントが元ネタではある*1。 ただこのネタ自体はこのアカウントが初ではなく、初出はおそらくは以下のアカウントによるツイートでしょう。


https://twitter.com/realworldscope/status/1518939164573544449

ちなみにパクツイもあり、すでに極一部ですがミーム化しています。


https://twitter.com/moemoe_pi0306/status/1519229221725347840

月60万円(1人当たり15万円)について

 まずウクライナ難民に対して日本国としての生活費支援はNHKによる以下のまとめが分かりやすいので貼っておきます。


出典:ウクライナ避難民 相談や支援は?住宅やことば 自治体など支援まとめ
※「・11歳までは500円10歳未満 19人」の19人が謎。誤字と思われる

以上の様に一時滞在先ホテル、住居に移った後などで支給額は異なります。一番支援額が多いものを見ていっても1日当たり2,400円となり、月当たりで言えば72,000円程度です。同一家族で2人目以降は1600円となる為に48,000円。日本国としての生活費支援月15万円はデマです。またこの額は朝日新聞報道によれば生活保護費を参考にしているために日本国民と比較して特別手厚いとも言えません。
 なお、この月15万円の元ネタ自体はおそらくは前橋市の支援内容です。

前橋市 ウクライナから避難の人に政府支給含め月15万円支給へ
市内に避難してきた人に生活費を独自に補填し、政府からの支給分と合わせて毎月15万円を受け取れるようにする方針を決めました。
期間は、自立するまでの間、最大で1年間で、家族などで避難してきた場合は、2人目以降の人にも補填する方向で調整しています。

という様に前橋市は独自支援によって政府からの支給分に乗せて月15万円を支給するというものです。なお前橋市のHPを読むと月15万円は単身世帯のみであり、世帯員数によって支給額を調整するとあり月60万円は前橋市においてもあり得ません。ちなみに財源は税金ではなく募金。

スマホをもらえる

 これの元ネタはソフトバンクによる支援でしょう。

ソフトバンク、日本到着のウクライナ避難民にスマホ無償提供
ソフトバンクは5日、政府専用機で日本に到着したウクライナの避難民20人への支援として、希望者に対してスマートフォンを無償で貸し出したと発表した。ソフトバンクが政府に協力を申し出たもので、避難民は音声通話やデータ通信を無制限で利用できる。

政府としての支援ではなく企業が政府を通しての支援であり、通常考えるならこの支援は企業負担と考えられます。千葉市が1世帯に1台スマホを無償貸与するという報道もあり、自治体によってはそういった施策をしている事がありますが、企業にしても自治体にしても無償「貸与」とあるように字義通りの貸与であるならばいつかは返すものであり「もらう」というのはデマであると言えます。

家賃無料

 これも企業や自治体による支援内容が元ネタと思われます。まずは静岡市の支援。

静岡市、避難民3人受け入れ 市営住宅へ入居調整 ウクライナ侵攻
静岡市は8日、ロシアの侵攻を受けるウクライナから避難した同国籍の未成年3人を市内で受け入れることが決まり、市営住宅への入居の調整を進めていると発表した。住宅の敷金と家賃を最長で1年間無償とする。

また企業支援では上述のNHK記事に以下の記述も。

ウクライナ避難民 相談や支援は?住宅やことば 自治体など支援まとめ
避難してきた人のなかには、日本での受け入れ先が決まっていない人もいて、住まいについての支援が必要となります。受け入れに向けては、自治体だけでなく民間企業の間でも支援の動きが広がっています。
このうち、賃貸住宅などを手がける不動産会社の「APAMANグループ」は、避難してきた人たちに全国でワンルームや3LDKなどの賃貸住宅、およそ100部屋を用意して無償で貸し出しています。

静岡市にすると1年間無償、アパマンの無償支援は期間は書いてはいないですが生涯無償はあり得ませんので何らかの期限はあるでしょう。ただ、この件に関していえば全くのデマとまで言えません。

電動自電車でもなんでも無料プレゼント

 これは画像を根拠にして言っているのでしょう。この画像の出典はRKB毎日ニュースによる「弁当業者に就職したウクライナ人女性~その後の生活は 福岡」。

www.youtube.com

映像を見ればわかる様にこの電動自転車はウクライナ支援をする企業の社長のプレゼントです。確かにこれは「プレゼント」ですが、それを「なんでも無料プレゼント」とするのはこの社長の好意を馬鹿にしているとしか言えませんし非常に質の悪い紹介の仕方としか言えません。

そのほか

以下はちょっと雑ですが、簡単に紹介。


・パスポート不要で入国
 → 本当

・新築マンションに審査なしで入居
 → 不明。住居支援はあるが、マンションに審査なしというの特に見当たらない

・生活必需品は最新型
 → 読売新聞『「無印良品」、ウクライナ避難民に就労機会・生活必需品提供へ』などの様に必需品の支援自体は存在
   日本財団のウクライナ難民支援による生活環境整備費なども存在

・移動費全額支給
 → 出入国管理庁の支援に「支援先への移動手段の提供」とあるが「全額」という表記はない
   他を探してもそのような「全額」支援はなさそう

・選考試験なしで就職
 → ではなぜ「就労支援」があるのか
   選考試験なしの企業があってもおかしくはないが、それは企業によると考えられる


 事程左様に大抵の表現には誇張があります。一部には出典不明と思われる情報もありますが、正直デマの部類に入るものもあります。月60万円とかはあり得ませんし、電動自転車などは個人の好意のプレゼントにもかかわらずこの紹介では悪意を持った切り取り方と言われてもしたかたないでしょう。
 最後に出入国管理庁のウクライナ支援情報について貼っておきます。大まかに見る場合には「日本に在留しているウクライナのみなさんへ」ですが、しかし探し方が悪いのか1日2,400円などの情報は出入国管理庁HPに見当たらない……。なので支援の大枠について書かれた「・ウクライナ避難民に対する支援内容について」を貼っておきます。

右派系ブログ「政治知新」のツイッターアカウントの影響力(RT数)が安倍首相辞任後に不自然に落ちている

 というツイートがあったのですが、試しに少し調べてみたら目に見えてその影響力が落ちていたのでちょっと記事化しておきます。なお、「ツイートすれば5000RT、1万いいねが当たり前だったネトウヨ系政治アカウントだった」と書いておりますがこれは事実誤認で、政治知新アカウントによるツイートで5000以上RTされたツイートはアカウント創設期から2020/4/27現在で14個程度なります。

政治知新とは

 政治知新とは親自民、反サヨクのネット右派系ブログとなりますが、ただの個人によるブログではなく過去にはtogetterで「【2019/4/12】吉良よし子さんのデマ流した「政治知新」は菅義偉の推薦受けた議員の兄弟の仕業」や、リテラとなりますが「野党議員をデマ攻撃するサイト「政治知新」に菅官房長官に近い自民党県議の弟が関与、安倍首相「桜を見る会」にも招待」で明かされている様に自民党神奈川県議の兄弟がサイトに関わっているとされています。また以下の様に分析ツール「whotwi」でここ最近の政治知新アカウントのツイッターへの投稿日時傾向を見る限りは「業務」でやっている可能性が高いことは確か。ブログが「仕事」の一つなのでしょう。

 そしてこの政治知新のツイッターアカウントは2017年の9月末から活動を開始しており、当初はそこまでのRT数を稼ぐアカウントではありませんでした。例えば開設から1年以上経過した2018年12月31まででRT数が100以上超えたツイートは以下の様に2つしか存在せず、一つは石破茂関連というもの。


*1

ただそもそもこの時期で「現存」してるツイート数は少なく例えば2019年12月31日までのツイートを見てみると4月12日のツイートの次が6月21日、その次が11月1日など、この時期はかなりツイートの間隔が開いています。これは消したのか、それとも前述の吉良よし子氏へのデマが2019年の3月という事からほとぼりが冷めるのを待ったのかまではわかりませんが、【4/29追記】インターネットアーカイブを見る限り7月や9月の投降が確認でき、現在空白の期間も投稿はしています。またサイトの方にも記事はありますがその時期の記事も削除しています。これがどの様な理由によって為されているのかはよく分かりません。【追記終わり】それはともかくとして例外はあるものの2019年末までのツイートによる露出や影響力は現在確認できる限りでは相対的に少なめと言えます。これが一気に増えたのが2020年以降。

安倍首相辞任後にツイートのRT数が極端に減っている

 さてここからが本題です。まず政治知新アカウントによる1000以上のRTがされたツイートは確認する限り以下の様にな傾向が見えていきます。


*2

そして安倍晋三が首相を退任した時期は2020年9月16日。数で言えばRT数1000越えは442個あり、退任前は358個、退任後は84個です。この時期を境にきれいにRT数が落ちているわけではなくRT数が激減したの11月からとなりますが、それでも顕著にRT数が落ちたのは安倍首相辞任後と言える時期ではあるでしょう。またこのグラフだけだとツイート数が著しく落ちている可能性はありますが、whotwiによるツイート数を見る限りは多少の減少や特定月に極端な減少は見られるものの、とはいえRT数が減るほどの減少には見受けられません。

では全く拡散されなくなったかと言えばそうというわけでもなく、例えば2022年3月にRT数が100を超えたものは現時点で21個あり*3、最大のRT数は707*4。ただしここからもわかる様に以前のような多くのツイートが4桁を超える影響力を持つアカウントではもはやなくなっています。それが「何故」起こったかは分かりませんが、記事傾向としては親自民ではあるもののネット右派系に見られる反岸田傾向はみられないのでその部分からの支持が少なくなった可能性はなくはないです。例えば更新頻度の低いyoutubeの方を見ると岸田政権アシストの姿勢は見えます。

ただ、やはりここまで顕著にRT数が減るという事はRTを「買っていた or 仕事で拡散していた」可能性が一番高いでしょう。dappiのツイートは諸々な事情があって2021年10月頭を境に途絶えたものの、こちらは現在も活動中。ただ似たような時期にRT数の目に見えての低下などを考えるとここら辺の時期に自民党のネット戦略が変化したのかもしれませんね。

*1:参考リンク:[(https://twitter.com/search?q=from%3Aseijichishin%E3%80%80until%3A2018-12-31%20min_retweets%3A100&src=typed_query&f=live]

*2:該当アカウントを「min_retweets:500」の条件で検索し、その中から1000を超えるRTのツイートを計上。なお「min_retweets:500」にしている理由はこの値を1000にすると1000以上でも検索ヒットしないツイートも多数あるため。参照リンクhttps://twitter.com/search?q=from%3Aseijichishin%20min_retweets%3A500&src=typed_query&f=live

*3:参照リンク。https://twitter.com/search?q=from%3Aseijichishin%20since%3A2022-03-01%20until%3A2022-03-31%E3%80%80min_retweets%3A30&src=typed_query&f=live

*4:参考リンクhttps://twitter.com/seijichishin/status/1500631156144115714

千羽鶴廃棄画像の出所についてのメモ


https://twitter.com/magic_mackee/status/1515101654332239874

 という画像があって、この方はその後に「ちなみにこれはウクライナじゃなくて広島とかの写真だと思う。」とか言ってて、それは合っているのですがこの写真以外にも千羽鶴の話題がある度に貼られている画像の出所があまりにも曖昧で、過去にはデマに利用されてもいるのでメモとして記事化しておきます。

■1枚目

場所:広島(千羽鶴は沖縄)
出典:千羽鶴未来プロジェクト
2012.11.30 沖縄の千羽鶴が広島に到着しました。

■2枚目

場所:広島
出典:千羽鶴未来プロジェクト
2014.6.13 2012年8月から始まった、千羽鶴ファクトリー構想では、6月3回目の配布で約10屯の千羽鶴を解体。

■3枚目

場所:広島
出典:産経ニュース
2011.7.12 折り鶴「再生利用を」…原爆の子の像モデルの兄が提案 広島」

この三枚目は3.11時の地震の時のものと紹介されている事もあるが、2011年の広島の写真。

■4枚目

出典不明。しかし場所と状況の類似性から3枚目の産経ニュースと同じ場所と推測でき、広島と考えられる。上記の類似記事の時に使用された写真の一枚の可能性が高い。

流布している画像は災害に関係ない

 主に出回っているのが上記の4枚と考えますが、沖縄と広島の折り鶴は年ごとに行われる文化事業/習慣の様になっている地域での写真のものであり、いずれも災害時の支援物資としての千羽鶴としては関係ありません。また1枚目と2枚目は千羽鶴の再生事業の紹介の写真、3枚目と4枚目はこの再生事業が始まる前の写真であり、「処分に困っている」というには時代的には古く、「処分される」というには再生紙として再利用される為に単純に「捨てられる」という様な理解は過ちとなります。被災地に送る/送らないの賛否はともかくとして、これらの写真をもってして被災地は困っているとするのは単純に過ちです。

以下は広島の処分費用や折り鶴再生について参考になりそうなリンク。

折り鶴の再生・循環プロジェクト
ONGAESHI プロジェクト
日誠産業 折り鶴リサイクル活動
折り鶴焼却に年間1億円というよく出どころの分からない数字に踊らされる人々を見た

アメリカで図書館から「お姫様の出る絵本が撤去」されてるという話はデマとしか判断できない

  https://twitter.com/obenkyounuma/status/1515883463676555264

 アメリカでは「図書館からお姫様が出てくる絵本を撤去」が事実ならば結構なニュースバリューがあると言えますが、まずこの話を日本語圏で初めてツイートしたのは上記ツイートのぬまきち氏となります。

分かりやすくするためにRT数が5より下のツイートは除外した形で検索しましたが、4月18日の彼のツイート以前には類似の話題が過去はともかく現時点では存在しない事が分かります。なお念のため書いておきますがRT数条件をなくした場合もこのツイート以前にこの話題は存在しません。この時点で相当に怪しい情報ではあるのですが、では実際にアメリカにおける図書館の規制情報を探ってみたところ図書館に置く書籍に関する規制運動というのは確かに存在します。しかしそれは「お姫様の出る絵本」ではなく主には「LGBTQ」関連や人種などの本が主流です

アメリカにおける図書館からの書籍の排除運動

 まずそもそも今現在のアメリカでこの図書館における特定ジャンルの禁書運動ともいえる動きはかなりホットな話題です。例えばNYタイムズBook Ban Efforts Spread Across the U.S.」やワシントンポストの「Censorship battles’ new frontier: Your public library」などは2022年に書かれた記事です。NYタイムズでは手法も書かれており、団体が論争の的になっている本をフェイスブックに投稿し、それをグーグルドキュメントなどで目にした親が学校に問い合わせて撤去へ、というものです。また直接的な図書館への規制話をすればオクラホマ州についての記事で「Oklahoma bill gives parents the right to have a book removed from a school library」というものがあり、議員が「公立学校の図書館に対し、性的な性質を持つ不愉快な内容を含む本や、性的嗜好、性的・性自認を扱った本を撤去するよう、親に強制する権利を与えたいと考えている。(自動翻訳)」、これに30日以内に従わない場合、司書は解雇され2年間公立学校で働けないという法案との説明がなされています。その他にも「Schools nationwide are quietly removing books from their libraries」、「Conservatives now have control of public libraries in Llano, Texas, and it's the mess you'd expect」などなど参考になりそうな「図書館と禁書的な本の撤去」話は溢れています。これらの話は日本の現状を考えれば2、3歩先を進んでいると考えられるアメリカの現状ですが、だがしかしこれらの記事において「お姫様の絵本」は一言一句話題になっていません。基本的にこれらの運動は保守派の動きであり、それらの主要ターゲットはLGBTQ、人種関連であり、反面「お姫様の絵本」は彼らの撤去対象になっている模様はありません。そもそも「お姫様の絵本」はジェンダーロールを考えての批判でしょうから、そう考えるとリベラル派からの批判は考えられますが、それについての記述も記事には見当たりません。

Top 10 Most Challenged Books Lists

 大まかなジャンルではなく、実際にブックチャレンジ(学校や図書館から資料を撤去するよう文書で要求すること)にさらされている本に関しては知的自由オフィス(OIF)が毎年Top10リストを発表しています。

まず表紙?を見れば一目瞭然ですがお姫様本は存在しません。そしてそれぞれの本にその理由が書かれていますが、大半はLGBTQ、性的描写が主なものとなっています。1位の本のタイトルが『Gender Queer』であったりと「何が」標的になっているかは明白と言えます。ただこれは最近の話なので例えば10年前ではどうだったのかとなりもしますが、このページは2001年からのTop10を参照可能であり、2012年のTop10での理由を見ると露骨な性描写や同性愛表現などという表記がなされており、「お姫様」絵本的な価値観へのチャレンジはやはりない。
 なお脇道ですがちゃんと数の推移はとってはいないものの、リストからはLGBTQ関連に関するチャレンジは近年増えている様に感じられます。これは社会的な認知工場や出版物の増加とそこからの反動が伺えます。続いて脇道その2ですが、ハリーポッターが魔法や魔術に言及してるからチャレンジ対象になっていたりします。どうやら魔法関連も撤去対象になる価値観がある模様。
 閑話休題。このチャレンジそのものは報告されていない案件もあるでしょうが、ただ少なくともぬまきち氏の言っている様な状況は現実には存在していないと考えられます。
 またこのリスト以外にエヴァンストン図書館が子ども用の本で禁止扱いされた本を紹介しているページがあります。このHPにおいても「お姫様」本が存在しません。あえて言うならば「Prince & knight(王子と騎士)」がありますが、タイトルからわかるように「お姫様」本が理由ではありません。またこのページにはないですが「My Princess Boy」という本も禁止対象になっていますが、この本もそのタイトルが示すようにその非難の理由はお姫様本に付随するであろうジェンダーロールではありません。
 さて、以上の話を受けてぬまきち氏がした以下のツイートを読むと違和感しかありません。


https://twitter.com/obenkyounuma/status/1515970221395259394


https://twitter.com/obenkyounuma/status/1515971930049822722


https://twitter.com/obenkyounuma/status/1516138155350528001

実際にアメリカの動きを見ていけば少なくとも今の主流はLGBTQ関連の書籍撤去の動きが活発であり、「LGBTは無罪」という言葉は出ないはずです。またよしんばそれが「双方」の一方だという事でその一方が無罪という理解は出来はしますが、ただどう見ても現状は「一方」の動きしかありません。あとディズニーは時代によってプリンセスの描き方を変えている事からも違和感しかない。
 では、ぬまきち氏はこの情報をいつ、どこから得たのか。

どうやら根拠はCBLDFの公演らしい

 実はソースを知りたかったのでぬまきち氏に聞いてみたのです。そしたら。


https://twitter.com/obenkyounuma/status/1517101343495794689

ソースを訪ねたら「ご自分でお調べ下さい」は悲しさしかなかったのですが……、とはいえぬまきち氏の情報の出所はCBLDFの来日講演であることが分かりました。なので自分で調べます。まずCBLDFですが、これはコミック弁護基金というアメリカのNPOです。そして当時の代表者であるチャールズ・ブラウンスタインの来日講演が確認できるのは3つです。


1)2012年5月18日
  公開シンポジウム「日本と諸外国における創作表現の規制の現状と課題」
2)2013年8月11日
  日本では何ができるのか――北米でのコミック表現規制とCBLDFの取組
3)2017年10月29日
  米国コミック弁護基金ブラウンスタイン事務局長講演会


 では、はたしてどの公演なのかを見ていきます。

1)2012年5月18日
 このシンポジウムについてはスピーチの詳細が分かりません。ただtogetterに「【表現規制】公開シンポジウム 「日本と諸外国における創作表現の規制の現状と課題」実況まとめ」が存在しており、当時の実況に抜けはあるとはいえ、お姫様本の下りはありません。また当時のぬまきち氏のツイートを読む限りはこのシンポジウムに参加している様には見受けられないことからこのシンポジウムではないでしょう。

2)2013年8月11日
 これも当時のまとめがあり、そしてこのまとめにはぬまきち氏が存在します。ということはこの講演の場にいたという可能性がありますが、ただし当時のツイートを見ると会場にはいなかったことが分かります。またこの講演でのスピーチはCBLDFのHPで全文確認可能ですが、例えば"princess"で検索してもヒットは0件ですし、全文を見てもそういった類の話はしていません。故に2013年ではないことは確実です。

3)2017年10月29日

https://twitter.com/obenkyounuma/status/924603837771538432

 この講演が当たりです。そしてこの講演は弁護士ドットコムの「米図書館で「ソードアート・オンライン」が禁書に…「表現の自由」を守るNPOが懸念」そのスピーチの要旨訳文が公開されています。そしてなんと規制(検閲)話もある。つまりはとうとうソースを見つけたわけです。以下、該当箇所を引用します。

●学校と図書館がマンガ検閲の最前線に
現在も、検閲との戦いは続いているという。
「今、検閲の最前線は学校と図書館にあります。この一年、図書館で最も検閲対象として多かったのがマンガです。例えば、権威ある賞を受賞した作家が思春期向けに創作した作品で、作中で裸体や性描写は皆無にも関わらず、性について触れられているということで、アクセスを制限されました。他にも、中学の演劇部が舞台の物語で、登場人物の一人がゲイであるという理由で、検閲しろという意見がありました。しかし、何よりも『マンガだから置かれるべきではない』という声が強かったのです。これはとんでもないロジックだとして、打ち破ってきました」
日本でも子どもたちに人気の「ドラゴンボール」や「デスノート」、「ソードアート・オンライン」も学校図書館では、問題作扱いだと説明する。

一見して分かるように「お姫様の出る絵本が撤去」なんて話は一切出ていません。なお付け加えて言えばCBLDFがHPで公開されている英文においてもそんな話は存在しない。あえて言うならば英文だと、アクセス制限された本が『This One Summer』と『Drama』だということが分かります。これは日本ではわからないから作品説明のみで作品名は伏せたと考えられますが、どちらとも「お姫様」本とは言えません。また2017年の公演という事から2016年のアメリカでブックチャレンジされた本Top10を見ると次の様なもの。

見ればわかる様に「お姫様本」は存在しません。当時のぬまきち氏もつぶやいてないし、お姫様本撤去の内容が真ならば弁護士ドットコムに載るはずであるし、他のアカウントによるツイートがあっても不思議ではない。通訳をしたダニエル兼光氏がその場で言った可能性は一応はなくはないですが、しかしこの情報の初出が2022年のぬまきち氏という事を考えるならば、つまりはこの情報はデマとしか判断しようがありません。CBLDFのページで"princess"で検索してニュース記事を見てもそんな話ないし*1
 そしてですね。

これ以降、返事がないんで「そういうこと」なのかなと。自力で調べた結果、デマとしか判断できないので本当にそんなことを言っていたのならソースがほしいなあ。


4/23追記

 ぬまきち氏から返事をいただきました。


https://twitter.com/obenkyounuma/status/1517441423011762176

記事中でも紹介した『Prince & knight』の"Prince"を”Princess”と誤読していたとのことです。ここから言えることもなくはないですが、ひとまずは該当ツイートは削除されましたし、ここまでにしておきます。誤解って怖いですね。

更に追記
 コメントでなぜぬまきち氏が今回のツイートに至ったのかを検証されている方がいます。過去に『Prince & knight』のことをツイートしており、そこに講演、バルセロナでの話が合わさった結果のツイートということで本人の説明と符合する部分もあり説得力があります。私もその流れでおそらくあってるのではないかなと思います。

*1:あえて言うなら「眠れる森の美女」に対してロンドンの女性が眠っている女性にキスをしてもよいと示唆しているという理由でカリキュラムから削除してほしいという記事は存在する。しかしロンドンの話であり、記事も批判的論調は少なく内容を変えることや教育の手段を考える記事にもなっており、「検閲」の話とは言えない。「British Mom Objects to Non-Consensual Kiss in Sleeping Beauty