電脳塵芥

四方山雑記

アサ芸プラスの川口市記事におけるデータに間違いが多すぎる

 アサ芸プラスで那須優子による「住民が「怖くて道を歩けない」と嘆く埼玉県川口市「外国人ドライバー暴走事故」続発の異常実態」という記事があったのだが、その中身が酷かったのでここに記しておく。まず前半分については最近川口市で起きたトルコ国籍によるひき逃げ事件、中国籍による飲酒運転&暴走事件について書かれれており、この部分については特に異論はない。容疑者らは法に基づき、処罰されるべきだろう。そして中盤には川口市に住むという女性のインタビューが掲載されており、こちらについても問題ないといえる。ただ、問題なのが次にあげる後半部分だ。

 異常事態はこれだけではない。川口市では毎月1000人ずつ人口が減り続けている。川口は県南部、東京都境に位置し、JR東京駅、新宿駅までそれぞれ25分、地下鉄は都心に直通運転するなど通勤通学に便利な立地。それでも不動産会社のアンケートでは「埼玉県で住みたくない街ワースト1位」で、年間事件発生数は3800件超と、県内ワースト1位である。治安悪化により、川口市から逃げ出す世帯が相次いでいるというのだ。これ以上、不名誉な事件や事故が起きれば、不動産価格が暴落するという経済的損失を免れない。
 ちなみに、住みたくない街ワースト2位は、ベトナム人が大量移住してベトナム寺院も建立された越谷市、ワースト3位は川口に隣接し、在日外国人の割合が約9.0%の蕨市だった。3市に共通するのは外国人労働者を募集する法人、企業が多く、外国人が増える一方、日本人の人口が減っていること。真面目に働いている外国人が圧倒的多数だろうが、一部の暴走外国人によって、交通ルールを守っている日本人が「命を奪われる」現状を、埼玉県の議員センセイ達は指をくわえて見ているつもりなのだろうか。

はっきり言って、この部分は嘘デタラメが多すぎる。都度指摘していくがその前に該当記事のイメージとして使用されている写真について指摘しておく。

これは「ぱくたそ」というサイトで掲載されているフリー素材「商店と道路の無料写真素材」であり、場所は愛媛県松山市道後温泉となる。いくらイメージ素材としての写真使用だろうとはいえ、埼玉県川口市の記事に愛媛県松山市の写真を使うのは不適切だろう。

川口市では毎月1000人ずつ人口が減少

 嘘である。川口市では「人口・世帯数・人口動態の月別推移」が公開されており、令和6年10月現在、日本人に限定した「対前月人口増減数」が1000人を超えた月は一度もない。

上記の表は日本人に限定した表であるが、ここで「日本人+外国人」という括りで見ると川口市の人口増減数は増加の月も多く、ここ数ヶ月は多少の減少に転じている、という程度だ。

なお人口減少の理由として「川口市から逃げ出す世帯が相次いでいる」とあるが、日本人に限定した表における「転出等」の対前年同月比を見ていくとここ数ヶ月は前年を上回る転出は確認できるものの、「毎月1000人人口減少」を説明できるほどの転出数増加とはいえないだろう。

川口市の人口が毎月1000人減っている、という情報が何処から来たのか謎だが、その様な事実は存在しない。

不動産会社のアンケートで「埼玉県で住みたくない街ワースト1位」

 事実性が疑わしい。このアンケートがどのアンケートかは不明だが、実在を前提に立つならば住みたくない街ワースト2位は越谷市、3位は蕨市となっている。ただグーグルで検索する限り、不動産会社関連のランキングでいうと、「引っ越しまとめ」の「埼玉県住みたくない街ランキングTOP10!」では1位がさいたま市大宮区、2位が川口市、3位が八潮市となり越谷市は4位、蕨市は7位、また「イエプラコラム」における「埼玉県住みたくない街ランキングTOP10!」では1位川口市、2位さいたま市大宮区、3位蕨市となり、越谷市は6位である。不動産関連ではないがrankyというサイトの「埼玉の住みたくない街15選」では1位がさいたま市大宮区、2位が草加市、3位が川口市越谷市は4位、蕨市は5位となる。「住みたくない街ランキング」はそこまで数はないが、これらを見ていくと川口市が「埼玉県で住みたくない街」の上位にいることは異論はないが、それと同等程度にさいたま市大宮区もランキングに入っている状態だ。業者による非公開のランキングの可能性もあるが、とはいえ那須優子のランキングには大宮区の情報が入っておらず不自然に見えるし、2位越谷、3位蕨という並びと順位の説明部分からは論旨のために用意されたランキング感が拭えない。

川口市は年間事件発生数は3800件超と県内ワースト1位

 嘘である。埼玉県警の犯罪統計を見ると、年間事件発生数3800件超は令和4年の事件発生数なので事実だが、実際のところ事件数ならばさいたま市の方が多く県内ワースト1位だろう。さいたま市は区ごとに統計されているので犯罪統計情報ではそうはあまり見えない様になっているが、市という括りならばさいたま市は7000件を超えている。これが東京23区の様な特別区ならばともかく、さいたま市における区はその様なものとは言えないために件数のみワーストとするならばさいたま市を外すのは恣意的だ。そもそも人口が多ければ犯罪数は多くなるもので件数を殊更いうのは微妙な部分もあるのだが、ならばと犯罪率でみるならば令和5年の川口市の犯罪率は県全体では16位であり、中の上程度でしかない。

在日外国人の割合が約9.0%の蕨市

 嘘である。蕨市各年次別人口統計を見るとが直近の外国人比率は12%程度だ。

蕨市の外国人比率が9%台前半になるのは令和元年であり、一体いつのデータを使用したのか理解に苦しむ。
 事程左様に那須優子によるこの記事は意味が分からないレベルでデータ部分に過ちが多すぎる。ここまでになってくると中盤のインタビューを受けた人物が実在するのかも本当であるのか疑わざるを得ないくらいの記事レベルだ。しかしそんな記事であるにも拘らず「毎月1000人ずつ人口減少」などの目を引く情報と共に拡散されてしまっている。


https://x.com/okada_2019/status/1841305117452349838

最早この記事は偽情報というにふさわしい記事になっているし、那須優子はなにをソースに記事を書いたのかが謎すぎるし、そしてこんな記事を掲載したアサ芸は問題では。

投げ銭用ページ
note.com

深圳の男児死亡事件の花束における偽謝罪文コラ画像について


https://x.com/hoshusokuhou/status/1839108570950021246

 拡散している保守速報の投稿だが、コミュニティノートが付いていたり、日本ファクトチェックセンターが記事を書いている様にこの画像自体はコラであり、元画像は次の画像だ。


https://www.ntdtv.com/gb/2024/09/19/a103915375.html

この画像自体は上記のサイトなどを含め複数のサイトで使用されている花束と手紙の画像のようで9月20日ごろには各メディアに載り始める。そして保守速報の投稿には翻訳文が付いているが、これは「大翻訳運動@daihonyaku」からの転載となる。

このアカウントは中国ネット圏の「反日的言動」を日本語に翻訳するという様な趣旨のアカウントで、8月に出来たばかりなものの既に拡散力を持ってきており今後もネタ元になりそうなアカウントとなる。ところでコミュニティノートやファクトチェックセンターの記事にある画像編集は何時、何処でされたのかが不明なために、それをここに記しておく。


https://m.weibo.cn/detail/5081486862321720

9月22日に投稿されたこの投稿がおそらくコラ画像の出所と思われ、自動翻訳をすれば「花束に入れるべき言葉」として作成されたコラ画像となる。アカウントの「 布尔费墨」の意図としては明白だろうが、weiboの反応上では画像内の文章には同意もあれば反論も存在する。ただ冒頭の保守速報の投稿を介して中国語によるネットニュース華僑のサイトであって中国本国のネットニュースではない。ただ同記事が他のサイトにも転載されている模様)にもなっており、そこではコラであることに触れられていない。絵に描いたような悪循環が繰り広げられている。

投げ銭用ページ
note.com

杉並区の給食として例示されてバズっている写真が不適切


https://x.com/neko_no_geboku_/status/1838371681192251396

 まず、上記の投稿が存在した。これ自体は実在する給食であって、奥州市立胆沢学校給食センター2023年11月17日に提供した給食となる。

おかずとしての紅白なますや蒸しパン、給食センターの写真などマシだが報道ではアッパレ鍋の具材も少なくてショボく見えることに異論はない。なお同センターの最新の給食は次の様な内容なので少なくとも「戦時…??」という感想はおそらくでなさそうな写真があがっている。

給食自体は日々による当たりはずれもあるし、映える映えないなどもある。ただこちらは実在した給食なので個々人が写真を見てそう思う分には問題ない。ただこの投稿に対して次のような引用投稿が行われていた。


https://x.com/yag_yaguchi/status/1838681811989467374

これは杉並区の給食を誇る投稿と言える。投稿には「東京・杉並区の小中学校の給食の例」とまで言ってる。しかし、左の写真は葉隠勇進株式会社という企業の求人情報などに使用される給食の「素材」写真であって実際の杉並区の給食ではない。


https://ar-baito.com/kyujin/471342


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000199.000045351.html

この「素材」写真が実際に提供された給食なのか、それとも会社が素材用に作成した素材用給食かは不明だが、少なくとも使用されている写真そのものはこの企業の素材写真そのものであって、「杉並区の給食の例」としては不適切だ。投稿アカウントの「ygch@yag_yaguchi」 はグーグルで画像検索したものを使用したらしいが、ページに行けば求人情報であることは容易に理解できる。うかつにもほどがある。また右に使用されている写真は確かに杉並区だが、提供時期は2007年と古く、また提供したのは一般社団法人ChefooDoという団体が提供した「スーパー給食」だ。


https://www.chefoodo.jp/report/school/report_2007719.php

ChefooDoはHPを見る限り食育を推進する団体の様であり、また上記の提供ページや名称の「スーパー給食」を考えるならば一般化すべきでない。2007年時点の写真を今かの様に語るのも問題だ。
 さて実際の杉並区の給食だが、資料としては杉並区HPにある「令和5年度 杉並区の学校給食」がある。

また実際に最近提供された給食では杉並区立沓掛小学校の写真が存在する。

この写真からの価値判断は個々人にゆだねるが、「ygch@yag_yaguchi」が提示した写真から受ける印象とは異なる人が多いかもしれない。SNS上でバズる給食写真は時に時系列などを無視した写真が使用されている事もあるが、今回のも同様の類のものと言える。しかし今回は企業の「素材」写真まで使用されているが、当然ながら論外だ。

投げ銭用ページ
note.com

中国深センにおける男児刺殺事件の背景としてのデマ・ヘイトスピーチについて

 深センにおける小学生男児の殺害事件に対しての記事だが、本題に行く前に目に入った日本におけるデマに触れておく。


https://x.com/napori_ankake/status/1836981034317140355


https://x.com/superwangbadan/status/1836916067387773252
※下にコミュニティノートがあるが長くなるので省略

まず「献花を強制的に撤去」は事実誤認であり、在広州日本総領事館には次の様に述べている。

深圳日本人学校には、既に1,000を超える花束が届いております。学校は、現地の気候を考慮して、冷房の効いた献花室にお花を移しました。ご遺族にも刻々お届けしております。当館にも3,000件を超えるお見舞いの書き込みを頂いております。こうした哀悼とお見舞いのお気持ちもご遺族に必ずお届けします。

「李老师不是你老师@whyyoutouzhele」はイタリアを拠点としたインフルエンサーであり、寄せられた情報から情報足らずではあるものの事実を言ったまでともいえるし、上記二つのアカウントはそれをもとにした批判とはいえる。ただし実際には学校内に移されているだけであるし、現状の領事館より示された写真の規模を考えるならば最早校門には置いておけないレベルの量ではあるので、中国共産党が撤去に関わったかというとそれは疑問と言え、日本人学校側の対応と考えるべきだろう。ただし、例えば中国政府には今のところ積極的対応は見られず大事にしたくないので、なにかしらの行動を求めた可能性までは否定できない。また次の様に献花はほとんど「同胞の日本人」という投稿も見られた。


https://x.com/Naniwamono1/status/1836757070244421953

こちらに関しては証明のしようが存在しないのだが、投稿者の「浪速者@Naniwamono1」はbioを信じるならば日本の大阪在住者だと思われるし、投稿の前後を見ても彼自身もなんらかの根拠があっての発言とは思われない。あえて言えば共同通信の記事「日本人学校に千束超える献花 中国人ら男子児童に哀悼の意」という記事内に「保護者らが続々と花を持って学校を訪れた」という部分があるが、しかしそれで千束は難しいだろう。また広州における在留日本人は2023年時点で5383人であり、日本領事館が発表した1000の花束、3000件を超えるメッセージが「ほとんど日本人」である可能性そのものは否定できない。しかしながら「李老师不是你老师」による多数の献花に関する投稿では中国人による献花が多い事を思わせる。


https://x.com/whyyoutouzhele/status/1836797739579146739

上記は一例だが*1、日本在住者がなんの根拠も示さずに献花が日本人のものがほとんどと言ってしまうのには問題だろう。また浪速者は後段に「賞賛の声が圧倒的に多かった」ともあり、実際に中国のネット圏においてそういった声があること自体は事実であり、否定しようがない*2。ただし非難の声が多くある事もまた事実である。


https://weibo.com/5970333229/OxSxYad1J?pagetype=profilefeed

上記はweiboにおける在広州日本総領事館による投稿だが、当然ながらこの投稿への返信には暴力への非難や殺された子どもに対する哀悼の言葉が多く存在する。暴力への非難/賞賛を定量的にどちらか多いかなど到底図れるものはないが、見ている言論の場によって斯様に認識は変化する。

背景として語られる中国国内でのデマ・ヘイトスピーチについて

 この事件に対して日本、中国両国で中国のヘイトスピーチが原因ではないかという話がされる事がある。例えばCHINA DIGITAL TIMESに掲載されている記事「【网络民议】“很多人在乎的是立场,是国籍,是历史,是仇恨,根本没人在乎这个生命”」では今回の事件にヘイトがあるのではないかというweiboにおける投稿がピックアップされている。実際のところ現状で犯人の動機は不明であり、またその動機が今後明かされるかも不明な状況なのだが、事情を知っている人にはその説明が一定程度の得心が良く背景が存在するからだ。それを実証的に示しているともいえるのが、CHINA DIGITAL TIMESの「【404文库】念个咒语会下雨|十岁日本男孩被害的背后:快手上278个视频呼吁“拆除日本学校”,点赞量超两百万」であり、そこでは「日本人学校」が排斥すべき存在であるという動画がプラットフォーム上で人気を得ていたことが述べられている。そして主にそれらの動画の類型として、

1.日本人学校の様子を映した一人称vlog
2.国家レベルで日本人学校取り壊しを決定したとするフェイクニュース
3.日本人学校がスパイを養成しているというデマ
4.日本人学校取り壊しを求める感情的非難

以上の四つを挙げている。次は記事に挙げられている動画のサムネの抜粋だが、中国の「愛国的なネットユーザー」の間にこの様に「日本人学校」がバズワード的にターゲットにされている事が観測できる。

そしてこれらが特に規制されるわけでもなく、流布していたことが今回の事件につながったのではないか、という事となる。実際に今回の犯人がそうであったかは不明だが、こういうった背景を肌で感じ取っている人にとってはヘイトスピーチやデマの果てとして起こった事件として認識しているのだろう。またこれらの動画をアップロードできていたプラットフォーム「快手」はNHK中国人気動画投稿アプリ「快手」約90アカウント閉鎖などの措置」によればアカウント閉鎖に踏み切っている事から、中国においても問題であるとの認識がなされたのだろう。最後に404文库の同記事から抜粋するが、その内容は中国に限らず日本にも当てはまる。

※自動翻訳
快手プラットフォームには、私たちの社会で最も多くの暴徒を扇動する人々がいます。このグループの人々は、「愛国大V(引用者注:中国共産党の公式レトリックを遵守し、愛国心、さらには党への愛を主張する中国のインターネットのオピニオン リーダー)」によって簡単に興奮し、惑わされ、切り離されます。 「愛国心」というテーマは、そのようなグループの間でより広範な感情的共鳴をもたらすことが多く、当然のことながら、多くのコンテンツクリエイターが競って利用しようとする「トラフィックパスワード」となっています。
快手プラットフォームにおける「日本人学校陰謀論の人気は、ある程度、現在の国民感情、世論環境、ソーシャルメディアアルゴリズム、そして我が国における愛国的なマーケティングと商業的利益の交差点の産物です。
複雑な国内および国際環境の中で、景気低迷、高い雇用圧力、緊迫した国際関係により、社会感情がある程度滞り、弱い立場にある国民の一部ははけ口を見つける必要があります。ナショナリズムと外国人排斥は彼らにとって安全なはけ口であり、歴史的な敵国である日本は国民の感情のはけ口の格好の標的となっている。
快手の「日本人学校」に関する陰謀論は、一部の人々の日本に対する憎しみに応え、その反日発言がより感情的であればあるほど、これらの人々の共感を呼び、日本の学校を「戦争陰謀」と結びつけている。 」は、一部のネチズンの現在の感情的な期待とまったく一致しません。

投げ銭用ページ
note.com

産経新聞記事をソースの一つとしてトルコにデマが生じていた模様

 産経新聞が9月18日付で「<独自>「トルコ人は10月からビザ必要」ニセ情報拡散 外務省「川口クルド問題は認識」」という記事を出していた。記事の一部を抜粋すればトルコのSNS上で広まったデマに対する内容だ。

日本とトルコの間で結ばれている短期滞在の査証(ビザ)免除措置について、トルコ国内の一部メディアやSNS(交流サイト)で「日本政府が10月からトルコ国籍者にビザ要件を課す」との偽情報が拡散、トルコ大統領府が否定の声明を出す異例の事態となっている。日本の外務省も「そのような事実はない」と否定した上で、埼玉県川口市でトルコの少数民族クルド人の一部と地域住民の軋轢が表面化している問題について「問題は認識し、注意深く対応している」と述べた。

この記事は産経におけるシリーズ連載「「移民」と日本人」に位置づけられるものなのだが、ファクトチェック記事としては若干異質な流れがある。上記引用箇所の前半部ではデマの内容と外務省によるデマの否定を述べているがデマの「検証」そのものはほぼないと言える(検証=偽情報の出所とそれに対する反証。引用部分以外の記事全体でそういった検証はしていない)。そして後半では「川口市におけるクルド人との地域住民との軋轢」という「問題」を外務省が認識しているというチグハグともいえる流れとなっている。「「移民」と日本人」というシリーズ連載自体の主張は後半に重きを置いているわけで、外務省も認識する「クルド人問題」が為にトルコでこのようなデマが広がったという主張をこの記事は含ませている様に思える。
 ところで実際にこのトルコにおける「トルコ人はビザ必要デマ」の発端はなんなのか。まず言説自体は9月15日ごろに確認できるのだが、トルコのファクトチェック記事*1によるとまず一つ目に2020年のコロナ禍の際における入国制限記事(10月1日にビザ要件導入。2022年にふたたび不必要に)が挙げられる。これが日付と制限そのもののネタ元といえるだろう。ただしもう一つの大きな要因があり、それが感じられるのが次の投稿だ。


https://archive.md/OuXIu#selection-459.0-459.80

そしてこの投稿には次のインスタグラム投稿の画像が使用されている。

日本はトルコに、このままの状況が続けばトルコ国民にビザを発給できると伝えた 日本の報道によると、会談中に日本の国会の外交部長が駐日トルコ大使と会談した。と、埼玉地方での出来事に感じた違和感が伝わってきて、トルコから観光客として来た人たちは申請によって不法滞在し、このままではビザが下りるとのことだった。例えば、同様の問題により、トルコ国民にもビザが適用される可能性があると言われている。
※自動翻訳

上記の投稿は既に削除されているが、これはjaponya_seyyahi(直訳すれば日本の旅行者)という日本在住のトルコ国籍(?)の写真家による投稿だ。このアカウントのインスタ投稿は基本的に写真家の枠を超えるものではなく、また該当投稿は時間制限で消えるストーリーズによる投稿のために彼がどの様な文脈でこの投稿をしたのかは不明だ。そしてソースとして使用されている記事が2023年9月16日の「埼玉・川口のクルド人問題、トルコ大使に衆院外務委員長が懸念伝達 ビザ見直しにも言及」となる。記事内容は埼玉県の衆議院議員である黄川田氏とギュンゲン駐日トルコ大使との会談を記事化したもので、黄川田による当時の記事も存在する。実際、ここでは見出しにある様にビザ見直しにも言及したようだがこの記事の内容がコロナ禍時の入国制限情報が合わさって、10月1日に見直しが決定されたかの様なデマに変異したと思われる。川口における所謂「クルド人問題」はその提示される「問題」そのものに反移民感情を刺激する事やインプレッション稼ぎなどを念頭に置いたデマも含むものがあり、産経新聞の記事を見ていくとデマも含んだこの「問題」の流れに乗っていると言える。ただそれが今回、海を越えたトルコでデマを生むという事案が発生したものだといえる。

■お布施用ページ
note.com

*1:例えばdogrulukpayi。また本記事でRUASENを使用してはいないがteyitも詳しい。

選択的夫婦別姓における「制度」への賛否と「選択」として同姓を選ぶかを混同した話は不誠実では


https://x.com/rk751118/status/1834779462120227039

 「NHKの調査でも夫婦別姓反対の高校生が9割」という話が投稿の中に出ているが、これはコミュニティノートにもある様に次の投稿がソースとなる。


https://x.com/rk751118/status/1807090759608459442
https://x.com/minoru57washi/status/1806593217418461213


https://x.com/M3llSQuC35qDAo0/status/1806578191466954890

さて、この調査はNHKによる「中学生・高校生の生活と意識調査2022」の結果なのだが、元々の質問文は「第51問 あなたは、将来、結婚したとしたら、名字をどのようにしたいと思いますか。」であり、選択的夫婦別姓に対する「制度」への賛否ではなく、自身が結婚した時に名字をどうしたいかの選択(希望)であり、両者には隔たりががある。また質問の1と2は相手or自分の名字を変えるという意味で「同姓希望」と言えるし、4は「別姓希望」と言える。ただし3に関しては「自分の名字がどちらでも構わない」という項目であって「別姓希望」ではないが、「同姓希望」とするのにもやや強引な感はあるし、構造的に「同姓希望」が多くなりやすい質問文と言えて、そういう意味では「同姓でも別姓でも構わない」的な質問文があった方が良かった気はする。そして冒頭の近藤氏はこの「結婚時の姓の選択希望」の話を直接的にイコールで選択的夫婦別姓の反対は9割に繋げているわけであるが、そもそも選択的夫婦別姓という制度には賛成するが、自分が結婚するときは同姓が良いという話は選択的夫婦別姓世論調査のあるあるであり、別段珍しい話でもなんでもない。大抵の人は「選択的夫婦別姓」という「制度」に賛成しており、それは個々人の選択の幅が増えることなどから賛成しているのだろう。ちなみに近藤氏は「夫婦は同姓が良いとする中高生が9割」というアンケート結果という投稿も同時期にしているが、これも質問文からすると曲解といえる。


https://x.com/rk751118/status/1807246962401624500

現状、中高生に絞った選択的夫婦別姓制度への世論調査はないように思われるが、傾向としては選択的夫婦別姓制度への賛否は年齢が若いほど賛成が多い様に思われる。また2022年の山陰中央新報が大学生など40人にしたアンケートにおいては「31人が賛成、3人が反対、6人がわからない」となっている。自身が結婚した時ではなく、制度そのものへの賛否ならば中高生でも似たような割合だろう。いずれにしても「制度への賛否」と「自己の選択希望」を一緒くたにして「制度への反対が9割」かの様に語るのは不誠実だろう。選択的夫婦別姓には賛成だが、自分は同姓を選ぶは別に容易に両立する話だ。

■お布施用ページ
note.com

日本に「クルド学校」を作りたいって言ってるアカウントはなりすましだよ


https://twitter.com/mattariver1/status/1767108049255469099

 3月の投稿でちょっと古いのだが目についたので記しておく。まずこの記事の根拠は次の投稿だ。


https://twitter.com/momoiromegapho/status/1764739139763900422

現在、この元となった投稿アカウント「Tayfun@tayfuncatkaya_」の日本語投稿は消えている。そもそもこの投稿アカウントは本人のbioを信じるならばトルコ在住者による投稿だ。

投稿自体もトルコ語の投稿が多く、やはり現地の人間だろう。また彼の投稿では次の様に「クルド(Kürt)」という単語を用いた検索により、別件だが自身がなりすましアカウントである事を告白している。


https://twitter.com/Typhoon89ccc/status/1700834583338508654
スクリーンネーム末尾に「ccc」がつくが、同一アカウント


https://twitter.com/Typhoon89ccc/status/1700841925765460194

現在、上記ツリーをみるといくつか削除されている投稿の形跡があり、もしかすると「Tayfun@tayfuncatkaya_」が削除した投稿の可能性は高い。「クルド人学校」の件もそうだが該当アカウントは2023年9月ごろにいくつかこうしたなりすまし的投稿をしていたものと思われ、状況証拠としては「tayfuncatkaya_」に対する日本語反応を見ているとアカウントに対する日本語批判が数多くみられるし、次のようなスクショも残っている。

ただ現状においてこのアカウントは日本語投稿をほぼ削除しており、この時期に行われた日本語によるなりすまし投稿はすべて消えていると言って良い。なりすましムーブをなぜ辞めたかまでは不明だが、いずれにしてもトルコのなりすましアカウントによる「極端な意見」に冒頭のアカウントを含め多くの日本人が釣られたこととなる。


.

【追記】
 該当のなりすましアカウントは今年5月1日の朝日新聞越境した憎悪、拡散瞬く間 在日クルド人装い、1人で180件投稿」で取材を受けている人物だったのでここに追記しておく。

■お布施用ページ
note.com

日本人が子猫を食べた悲惨な事件が何故かベトナム人と思しき人間名の嘘ニュース化している


https://x.com/tweetsoku1/status/1834070428803105248

 バズっているが偽ニュースだ。まずこの元ネタは5chのスレッド「ペットの子猫5匹を捕まえ食べたグエン、入管が国外追放へ。「ただの習慣、意味がわからない」」の転載まとめ記事なのだが、提示されている記事ソースは2021年6月のスプートニク記事「子猫5匹を殺して食べた日本人男、国外追放へ トルコ」となる。

トルコ・イスタンブールで日本人の男が子猫5匹を殺して食べたとして、動物愛護法違反で13万円相当の罰金処分を受けた。また、住民に危害を加える恐れがあるとして国外追放される方針であることが明らかになった。17日、日本のメディアが報じた。

以上の様にスレッド名には「グエン」という謎の人物が登場しているが、実際のスプートニク記事にはそのような人物は登場していないし、舞台はトルコであるし、犯人は日本人だ。ちなみにスプートニクは同時期の時事通信の記事「子猫5匹殺して食べる 日本人の男、国外追放へ―トルコ」という記事を一つのソースとしており、日本報道も存在した記事である。当然ながら当時現地のトルコで話題になった事件であり、地元住民が犯人である日本人をリンチ寸前までいっている。
 何はともあれツイッター速報の記事は存在しない人間を作り出すことによって生まれた反移民を煽る偽ニュースであるし、5chのスレッド名はソースを読まない人間を釣るために意図的に作られた偽情報だ。

■お布施用ページ
note.com