電脳塵芥

四方山雑記

川口市の「大気汚染」をクルド人由来にし、「クルドスモッグ」と称するのはあまりにも理由が乏しい


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1778733016237621704


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1778738951135912269

 まずこの「警報」とはグーグルマップ上における「大気質」というレイヤーを選択すると見ることができる情報であり、なんらかの公的な警報、例えばスモッグ注意報などではない。


※この画像は4月13日0時ごろの該当地域の大気質

なお石井孝明がもらった画像がいつのものかは不明ではあるが、該当地域はどうやら頻繁に「グーグルマップの大気質情報」で警報が出る地域であることがSNS上で確認できる。


https://twitter.com/clm_ranran/status/1757306259211207160

上記は2024年2月13日の投稿だが、その他にも3月4日4月5日などでも類似の画像が確認できる。なお石井孝明はこの場所で「解体業の野焼きの影響の可能性」と言っているが、地図を見るかぎり該当地域で野焼きを出来そうな場所は荒川の河川敷くらいの様に見える。

「川口の荒川の河川敷で野焼きをする解体業者」がいるとは思えないし、その様な業者がいたらそもそもすでに問題視されているだろう。また以下の様にグーグルマップ上での解体業者登録を見ていくと該当地域に解体業者そのものは存在するが、この地域に固まっているわけでもなく、むしろ業者の少ない地域と言える。

該当地域は基本的には住宅街であるし、原因をというのならば荒川の川沿いにいくつかの工場が映っている。また地域の北側には朝日環境センターというごみ焼却場も存在する。これらはいずれも該当地域の周縁と言って良く、これらが主原因であるとまではいわないが、実態も目撃談もないターゲットありきの「某外国人の解体業者が野焼きをしている」可能性よりもましな憶測だ。ちなみに令和4年度の川口市環境報告書では次の様に大気汚染防止法に定められる施設設置事業者に対して立ち入り検査を実施し、不適合が3施設とある。

やはりこういった「施設」の方をまず念頭に置くべきだろう。なお大気質情報は「世界の大気汚染: リアルタイム空気質指数」ではより詳しく確認でき、川口市のここ二日間の情報(最終更新日は土曜0時)は次のようになっている。

これを見る限りPM2.5が高くなりがちには見えるし、2024年のデータを見る限り定期的にPM2.5は大きくなりがちに見える。

ただこのサイトの情報と現状確認できる川口市での「警報」の日付の情報とでは齟齬をきたしており(例えばグーグルマップ上では3月4日に警報が出ている「時間帯」があることはわかるが、上記情報の「カレンダー上の日付」では大したことはないように見える)、観測データは異なるのかもしれない。
 ちなみにグーグルマップの大気質情報に関しては「大気質」でXを検索すると他地域でも「警戒」はたまに出ていることがわかる。見ている人が少ないであろうし、定期観測をしているような人は流石に見受けられず、その中でも川口市周辺のこの警戒は目立つのか目撃投稿の数が多いのは事実だが、それ自体の原因が明らかにされているわけではない。ただ少なくともあたかも大気汚染の理由を下調べも全くしていない、歪んだ憶測だけの「クルドスモッグ」などと特定の人種由来にする語句を用いている時点で論外でしかない。それとさらにいうならば埼玉県は当然ながら大気の監視はしており、それは埼玉県大気汚染常時監視システムで個人でも確認可能だ。憶測だけの石井孝明に言われんでも把握してると思うよ。


【4月16日追記】  そもそも川口市における野焼きの件数について、令和2年(2020年) に4件の野焼きが発生している事はHP上で確認できるもののそれ以降は不明となっている。なので川口市に問い合わせをしてみたところ、以下の返答を川口市消防局予防課火災調査係より貰った。

川口市における野焼きの件数について、令和2年に野焼きが起因と考えられる火災が4件発生しています。
また、令和3年に1件令和5年に1件発生しています。
さらに、令和6年は発生していません
野焼きに関する関係者については、個人情報のためお答えすることはできませんが、野焼きの件数にあっては、今後ホームページに掲載させて頂きます。

つまりここ2020年~2024年4月現在、川口市の野焼き件数は合計6件という事となり、2020年を除けば野焼きは1年に1回あるかないか程度の頻度となる。個人情報となるためにその野焼きをしたものが日本人であるか、外国人であるかは不明ではあるが*1、少なくとも「クルド人が野焼きをしている」というのはかなり胡乱な情報であるし、たとえ過去にあったとしても今現在その数はとても少ないと言える。少なくとも「(クルド人の)解体業者が野焼きをしている」という説はほぼ成り立たないと言って良いだろう。

■お布施用ページ
note.com

*1:なお川口市の注意喚起ポスターを見る限り、トルコ語のポスターも確認できる。ただしこれが過去にあったからなのか、単純な注意喚起なのかは不明だ。