【2025年2月25日】文章表現など改訂。内容自体は変わらず。
などなど、スイス政府『民間防衛』の「要約」的画像が日本のネット上では氾濫している。そしてこれらの画像の元ネタとなったコピペがあるのだが、これは大まかに分けて三通りあり、そのうち二つは次のようなものとなる。
◆コピペver.1
「スイス政府民間防衛」より新しい戦争。その名も「乗っ取り戦争」
第一段階「工作員を送り込み、政府上層部の掌握。洗脳」
第二段階「宣伝。メディアの掌握。大衆の扇動。無意識の誘導」
第三段階「教育の掌握。国家意識の破壊。」
第四段階「抵抗意志の破壊。平和や人類愛をプロパガンダとして利用」
第五段階「教育や宣伝メディアなどを利用し自分で考える力を奪う。」
最終段階「国民が無抵抗で腑抜けになった時、大量植民。」◆コピペver.2
武力をつかわない戦争の形 その名も「乗っ取り戦争」
第一段階:工作員を政府の中枢に送り込む
第二段階:宣伝工作。メディアを掌握し大衆の意識を操作
第三段階:教育現場に浸透し「国家意識」を破壊させる
第四段階:抵抗意志を徐々に破壊し、平和や人類愛をプロパガンダとして利用する
第五段階:テレビ局などの宣伝メディアを利用して、自分で考える力を奪っていく
最終段階:ターゲットとする国民が、無抵抗で腑抜けになったとき大量移民
確認できた限りコピペver.2は2013年ごろに流布し始めたコピペであり、ver.1及び後述するもう一つのバージョンはver.2よりも古いものとなる。何故2013年ごろに微妙に文言が違うコピペver.2が出来たかというと、これはおそらくコピペver.1を基にして画像を作成した際に収まりやすい様にであったり違和感を少なくするために文言が変更され、そしてその画像を見た人間がそこにある文言を使用してコピペver.2が作成されたと考えられる。ver.2の生まれた時期などまでは詳しくは追ってはいないが、この記事の頭に貼った画像は2013年ごろには使用形跡が確認できるために、状況的には画像→コピペver.2と推測する。
そして文言を含めてこの「乗っ取り戦争六段階」とでもいうべきミームは画像含めて様々なバージョン違いがあり、上記画像の細部違いも含めれば相当な枚数が作成されていることがわかる。いらすとやを使用した画像などは一番下に「このチラシは今の周辺諸国やメディアに対して危機感を抱いている個人が作りました」とあり、これが本当なら「チラシ」として物理的に配布されている可能性すらあるものだ。かなり手が込んでおり、果たして「個人」が作ったのか若干の疑念すらある。それはともかく事程左様にこの”スイス政府発行『民間防衛』より”はネット右派が好んで使用する画像であり情報だ。
そしてこの件については過去に弊ブログで次のような記事を書いており、スイスではもはやこの民間防衛は「過去の遺物」であると指摘している。
ただ、この際に画像に書かれている各情報に対しては何らの検討も行っていなかったのだが「忘却からの帰還~Atomic Age」というページに「「スイス民間防衛」にない「乗っ取り戦争六段階」の登場と普及」というのを目にした。これを信じるならば「乗っ取り戦争の六段階」という情報はスイス民間防衛にはないというこのミーム化した情報の根底を覆すような内容だ。つまり、これらの情報は捏造である、と。そして実際に調べてみると確かにこの「乗っ取り戦争の六段階」の画像には捏造項目が含まれており、一部情報はスイス民間防衛には存在しない。具体的に言うと、
【スイス政府「民間防衛」にはない捏造箇所】
・「乗っ取り戦争」という単語は存在しない。ただし「概念」は存在
※日本版「乗っ取り」とは若干「概念」が異なる
・「乗っ取り戦争」の「六段階」の様なまとめは存在しない
・「最終段階」の「~大量植民」は存在しない
以上の3点だ。ちなみにこのことに気づかせてくれた「忘却からの帰還~Atomic Age」だが、例えばネットにおける初出が間違っているなど詰めが甘いところが見受けられるのでここではその内容を参考にすることは控える。
スイス政府『民間防衛』という書籍内容について
そもそも『民間防衛』という書籍がどういう背景を持った書籍であるかなどは以前の記事で触れているので割愛するが、この書籍は冷戦下の1969年に配布されたという事への認識は必要だ。時代状況的には戦争が近く、反共思想への反発も強かった時代といえる。そしてその時代に生まれたこの書籍は以下の様に構成されている。
目次
平和
われわれは危険な状態にあるのだろうか/深く考えてみると/祖国/国の自由と国民それぞれの自由/国家がうまく機能するために/良心の自由/理想と現実/受諾できない解決方法/自由に決定すること/将来のことはわからない/全面戦争には全面防衛を/国土の防衛と女性/予備品の保存/民間防災の組織/避難所/民間防災体制における連絡/警報部隊/核兵器/生物兵器/化学兵器/堰堤の破壊/緊急持ち出し品/被災者の救援/消化活動/救助活動/救護班と応急手当/心理的な国土防衛
戦争の危険
燃料の統制、配給/民間防災合同演習/心理的な国土防衛/食料の割当、配給/地域防衛隊と軍事経済/軍隊の部分的動員/全面動員/連邦内閣に与えられた大権/徴発/沈黙すべきことを知る/民間自警団の配備/妨害工作とスパイ/死刑/配給/頑張ること/原爆による隣国の脅迫/放射能に対する防護/被監禁者と亡命者/危険が差し迫っている/警戒を倍加せよ/防衛
戦争
奇襲/国防軍と民間防災組織の活動開始/戦時国際法/最後まで頑張る/用心/戦いか、死か
戦争のもう一つの様相
敵は同調者を求めている/外国の宣伝の力/経済的戦争/革命闘争の道具/革命闘争の目標/破壊活動/政治生活の混乱/テロ・クーデター・外国の介入
レジスタンス(抵抗活動)
抵抗の権利/占領/抵抗活動の組織化/消極的抵抗/人々の権利/無益な怒り/宣伝と精神的抵抗/解放のための秘密の戦い/解放のための公然たる闘い/解放
知識のしおり
避難所の装備/医療衛生用品/救急用カバン/2週間分の必要物資/2ヶ月分の必要物資/だれが協力するか? どこで?
大きく分ければこの書籍は「平和」、「戦争の危険」、「戦争」、「戦争のもう一つの様相」、「レジスタンス(抵抗活動)」、「知識のしおり」の6つの章に分かれている。「平和」、「知識のしおり」については戦時災害化の心得の様な趣が強く、例えばこの部分から着想を得て出来たのが『東京防災』だろう。「戦時下」の為に実際に役に立つかはともかくとして災害時マニュアルといえる。ただこの部分は当然ながら件の画像には一切使用されていない。次に「戦争の危険」、「戦争」だが、これらの章の特徴的な部分は架空戦記の体で情報が発信されている章だ。「戦争の危険」はヘスペリア国のタンカーが潜水艦がタラスク国の潜水艦によって撃沈されたことから端を発する「戦争の危険」であり、最終的に緩衝地帯であるスイス国境に両陣営(注:ヘスペリア、タラスク以外も参戦)が殺到して危機に陥るというものだ。次に「戦争」は敵国(名称不明)からロケット弾が町に落ちたことから戦争がはじまるというものだ。この章は短いので割愛する。
そして最も日本のネット上でウケた、というか画像の元ネタになっているのが「戦争のもう一つの様相」という章だろう。この章は敵国が唱える「新秩序」の宣伝をし、国家制度を内部から崩し、新しい政治体制の樹立を目標とする社会進歩党のX教授という「設定」から話が進む。この「設定」からわかるように、この章は「内部から外部に共鳴した存在(日本で言えば「在日」、「外国人」、「民主党/社民党/共産党」など)が既存の国家制度を破壊して国家を乗っ取る」という内容であり、この章のBADENDルートは連邦大統領は辞任、その後に社会進歩党の党首が連邦内閣の首相となり「新生スイスの盟主」を名乗って国家の全権を掌握、秩序回復の為に外国部隊の介入を求めてスイスはその歴史に幕を下ろした、というものとなる。このBADENDルートとはどういうことかというと、この章は見た目的にも特殊で、左のページにはBADもしくは「敵による策略、煽動」を配置、右のページにはそれへの対処時のGOODルートや「良き行い」が提示されているという構成になっている。
上記を見ればわかるようにネット右派へのウケは良い内容と言える。そして六段階ネタはほぼこの章からなのだが、それについては改めて後述する。
この次の「レジスタンス」という章だが、この項目はスイスが占領状態になった状態で始まる心得の様なものだ。この章も「戦争」と同じく短いのだが、この章で使用されている内容も六段階ネタに使用されている痕跡が見受けられる。
◆実際の書籍中の「乗っ取り戦争」の流れ
六段階の大体の元ネタである「戦争のもう一つの様相」についてさらに詳しく見ていくが、この章は以下の様な流れで所謂「乗っ取り戦争」が記述されている。
【「戦争のもう一つの様相」におけるいわゆる「乗っ取り」の流れ】
1)敵と通じた政党の結成
2)同調者の登場
3)敗北主義(平和や人権、軍拡反対を訴える)などによる宣伝
※ここには自国の反応や外国からの発信や交流を含む
4)敵国は技術的優位性を誇ったり、経済的停滞を起こさせようとしてくる
5)経済的措置によって労働者の解雇が発生
6)解雇から端を発するストライキにより混乱
7)敵国は経済的停滞に対して甘言を弄する
----ここまでが第一次作戦。以下から第二次攻勢----
8)敵と通じた政党は要人などに疑惑の目を向けさせ、軍隊や既存体制から民心を離す
9)新聞社などにも人を入り込ませ、メディアを利用したキャンペーン攻撃をする
10)隣国でクーデター発生、侵略者に同調する政権登場
外国勢力が「秩序維持」の為に軍隊を派遣、スイス国境に迫る
国境付近ではスイスの部隊と偶発的な戦闘発生、国境突破の危険性
政府は外国勢力に屈して国家安全保障体制を解体させる
敵と通じた政党はこの隣国と手を結ぼうと提案
11)経済や治安の悪化。相互疑惑の発生。敵側につく国民の登場
12)敵国と通じた政党が選挙で過半数を獲得
13)外国との交渉。経済破壊と流血のない解決策を求めてくる
14)敵国と通じた政党から連邦首相が登場、外国軍隊の介入、スイスはその歴に幕を下ろす
『民間防衛』書籍上で想定されている「乗っ取り戦争」だが、10)における隣国クーデターの存在などレアケースの前提や、スイス国境を部隊が突破しそうになったりなどの直接的な「武力」がちらつく。これらが今流布しているネット右派いうところの「乗っ取り戦争」とは様相が異なることは論を待たない。これはつまり本来書籍にあった流れ全部を示すと日本の種々の状況からだと不具合をきたす為に、日本の政治状況とネット言論空間に応じた形で「日本版乗っ取り戦争」として書籍にはない形で捏造されるに至ったと考えられる。なお上記の流れはこれでもいくらか端折っている状態であり、それを考えると「六段階」はかなりコンパクトなまとめと言える。
『民間防衛』やコピペ元ネタの「戦争のもう一つの様相」の内容は以上の様な構成なのだが、六段階コピペの”最終段階「国民が無抵抗で腑抜けになった時、大量植民。」”についてはこの時点で否定できる。なぜならばスイスの『民間防衛』は「植民」という概念は一切登場せずに、実際に書籍中に「植民」という概念は存在しない。あくまでもこの書籍は「戦時下の民間防衛」の内容ともいうべきものであり、最終段階としてあるのは前述した様に実際の権力の掌握であったり、別の章でも敵国の武力を伴う侵攻だ。つまりこの部分は当時の日本の政治状況に起因して日本で生み出された事となるが、その背景に何があったのかは後述する。
「乗っ取り戦争六段階」の引用元
◆もともとは「六段階」ではなく「八段階」
さてここからはコピペに使用されている引用元を示していくが、その前にここまで「六段階」と書いてきたが実は元々このコピペネタは六段階ではなく八段階であった事を記しておく。その初期コピペは以下の様なものとなる。
「スイス政府民間防衛」より新しい戦争。その名も「乗っ取り戦争」
第一段階「工作員を送り込み、政府上層部の掌握。洗脳」
第二段階「宣伝。メディアの掌握。大衆の扇動。無意識の誘導」
第三段階「教育の掌握。国家意識の破壊。」
第四段階「抵抗意志の破壊。平和や人類愛をプロパガンダとして利用」
第五段階「教育や宣伝メディアなどを利用し自分で考える力を奪う。」
第六段階「国民が無抵抗で腑抜けになった時を突き、軍事侵攻。」
第七段階「占領。そして再教育や洗脳を行う」
最終段階「民族浄化。無意識のうちに」
第五段階までは今と同様だが第六段階以降の内容が大きく大きく異なる。第六段階目が「~大量植民」に変化したのは当時の日本の政治状況によるものだと思われるが、その際に「大量植民」というワードと相性が悪い当初存在した第六段階以降の「軍事侵攻/占領/民族浄化」という部分が削除されたのだろう。
◆「乗っ取り戦争」という名称はコピペ作成者によるもの
本題に入る前にそもそも「乗っ取り戦争」という単語についてに触れておく。初めに書いた様にこの単語自体は書籍中には使用されていない。この名称はコピペ作成者がキャッチーな言葉として付けたのだろう。ただ「乗っ取り」という単語は使用せずとも、「戦争のもう一つの様相」という章が次の文章で開始されていることを鑑みれば「乗っ取り」というその名称自体には大きな誤りはないとはいえる。
戦争のもう一つの様相は、それが目に見えないもんであり、偽装されているものであるだけに、いっそう危険である。また、それは国外からくるようには見えない。カムフラージュされて、さまざまの姿で、こっそりと国の中に忍び込んでくるのである。そして、われわれのあらゆる制度、あらやる生活様式をひっくり返そうとする。
このやり方は、最初はだれにも不安を起こさせないように、注意深く前進してくる。その勝利は血なまぐさくはない。そして、多くの場合、暴力を用いないで目的を達する。これに対しても、またしっかりと身を守ることが必要である。
われわれは絶えず警戒を怠ってはならない。この方法による戦争に勝つ道は、武器や軍隊の力によってではなく、われわれの道徳的な力、抵抗の意志によるほかない。
p.227
むしろこの章冒頭の文章の範囲だけでこの章が終わっているならば、日本で今流布している「乗っ取り戦争」と『民間防衛』がほぼ同一のものであったとは言える。実際には『民間防衛』はこの範囲を飛び越えた未来を提示しているので日本版まとめと齟齬をきたすわけだが。ちなみに若干話はそれるが「戦争のもう一つの様相」には六段階(八段階)コピペの様な箇条書きは一応存在し、それは次の様な内容となる。
敵は、同調者を探す
敵は、われわれの防衛力を弱めようとする
敵は、われわれを眠らせようとする
敵は、われわれをおどそうとする
敵は、わが経済力を弱めようとする
p.248
もしくは、
分裂したスイスは降伏する
敵は、われわれの抵抗意思を挫く
敵は、国民と政府との間に隔たりを生むような種をまく
敵は、攻撃準備ができている
敵は、武力行使の道を選ぶ
敵は、われわれの息の根をとめる
万事休す
p.249*1
今流布しているコピペと部分的に通じる箇所は存在するが、ただしこれが今の六段階コピペの元ネタかというと字面のごとく違う。
◆乗っ取り戦争六段階(八段階)の引用元
そして本題である乗っ取り戦争六段階(八段階)の元ネタを記していく。なお今の画像で流布している「~大量殖民」はすでに指摘した様に書籍中にないので割愛する。
【「乗っ取り戦争」六段階(八段階)の元ネタ(引用元)と考えられる箇所】
▼第一段階「工作員を送り込み、政府上層部の掌握。洗脳」
国を内部から崩壊させるための活動は、スパイと新秩序のイデオロギーを信奉する者の秘密地下組織をつくることから始まる。この地下組織は、最も活動的で、かつ、危険なメンバーを、国の政治上層部に潜り込ませようとするのである。
敵は同調者を求めている p.228
ちなみに上記箇所の翻訳については「忘却からの帰還」に以下の様な指摘があり、誤訳の可能性がある。
この翻訳はいささか疑わしい。該当するフランス語版の記述は、少し違っている。
Une telle action de sape commencera par l'établissement d' un réseau clandestin où se retrouveront les espions et les tenants de !' « idéologie ». ''Ce réseau s'efforcera de glisser parmi les cadres politiques du pays ses éléments les plus actifs et les plus dangereux.'' On n'oubliera pas que les« novateurs ». les « progressistes » se recrutent souvent dans des milieux d'intellectuels à l'affût de nouveautés et peu rompus à la solution des problèmes concrets de la vie sociale.
そのような弱体化工作は、スパイと「新秩序」の支持者の地下ネットワークの構築から始まる。このネットワークは、国の政治的枠組みの中で最も活発で危険な分子を引き寄せようと努める。「革新者」と「進歩主義者」は、多くの場合、新しいアイデアを探し求めており、社会生活の具体的な問題を解決した経験のない知識階級から採用されることを我々は忘れてはならない。
[ Défense civile, 1969 ]
コンテキスト的にも「政治上層部に潜り込ませる」話をしていない。もともと翻訳した官僚有志の誰かが、政権中枢に工作員を確保するシナリオを念頭においていて、勘違いした訳を書いてしまったかどうかは、今となっては知りようもない。(なお、この部分はドイツ語版から大きく改訂されていて、該当する記載はドイツ語版にはない。)
以上の様な翻訳という指摘と共に書籍的な流れとして考えた場合、第一段階で「政治上層部を掌握」しているという時点でそもそもこの記述には大きな違和感が存在する。第一段階の時点で最早「乗っ取り」がほぼほぼ完成してるじゃん、と。この記述があるp.228は「戦争のもう一つの様相」という章の冒頭であり、そこから最終的に「新秩序」に共鳴している政党の人間が首相につく流れとなる。「首相=政治上層部」ではないとはいえ、第一段階(冒頭)時点で「政治上層部の掌握(潜入)」は流れ的にも誤りと考えられる。ただ、それはともかくとして少なくともこの部分に関しては明確な引用元と言える箇所がある。また書籍における「社会進歩党」や知識人などが美辞麗句による「新秩序」に引き寄せられるなど政治的な人間を「洗脳」、そしてそれが第二段階に繋がるかの様な描写はいくつか存在する。
▼第二段階「宣伝。メディアの掌握。大衆の扇動。無意識の誘導」
(「新秩序」の美辞麗句によって)ジャーナリスト、作家、教授たちを引き入れることは、秘密組織にとって重要なことである。彼らの言動は、せっかちに黄金時代を夢みる青年たちに対して、特に効果的であり、影響力が強いから。
また、これらのインテリたちは、本当に非合法な激しい活動はすべて避けるから、ますます同調者を引き付けるに違いない。彼らの活動は、”表現の自由”の名のもとに行われるのだ。
敵は同調者を求めている p.228
この部分はメディアの掌握などは語っていないが「大衆の煽動」、「無意識の誘導」には通じるものがあると言える。このページの題は「敵は同調者を求めている」というものでありニュアンス的にも近い。またページは飛ぶが以下の様な部分も存在する。
われわれは、われわれと同調する相当数の新聞記者を利用する。その記者の中には、われわれがつくった文書を信ずる者も出てくるだろう。われわれの組織の中の相当数の者は、最も重要な新聞社から二流新聞の編集局にまで入り込んでいる。
政府の権威を失墜させようとする策謀 p.258
書籍上では社会進歩党の第二次攻勢に当る箇所だが、この部分は「メディアの掌握」といえる箇所だ。また「外国の宣伝の力(p.232)」(後述)、そして「革命闘争の組織図(p.246)」では組織図を示し、その下に「当局、行政組織、輸送、新聞出版、ラジオ、テレビ企業などの内部につくられる組織細胞」という記述があったりと、「宣伝」や「メディア」という枠では他のページでも記述が存在していることから、丸めてはいるが第二段階の記述も原著に存在していると言える。
▼第三段階「教育の掌握。国家意識の破壊。」
学校は、諸民族との間の友情の重んずべきことを教える
外国の宣伝の力 p.232
「戦争のもう一つの様相」における「教育」という部分は上記箇所のみで、これだけでは「教育の掌握。国家意識の破壊」とまで言うには流石に飛躍だ。しかしこの部分に該当しそうな箇所は一応存在する。それが「レジスタンス(抵抗活動)」の章となる。
(スイスが占領化にある状態で)裏切者にまかせられた宣伝省は、あらゆる手段を用いて、われわれに対し、われわれが間違っていたことを吞み込ませようと試みる。彼らは、レジスタンスが犯罪行為であり、これは我が国が強くなるのを遅らせるだけのものだということを証明しようとする。
占領国の国語の学習がすべての学校で強制される。
歴史の教科書の改作の作業も進められる。
”新体制”のとる最初の処置は、青少年を確保することであり、彼らに新しい教義を吹き込むことである。
(中略)
学校では、あらゆる宗教教育が禁止され、精神的な価値を示唆することは一切御法度になる。
占領軍の洗脳工作 p.288
占領後の洗脳工作によって学校内で「国家意識の破壊」が行われていると言える記述だ。しかしながら「戦争のもう一つの様相」という「武力を用いない手段での乗っ取り」ではなく、この部分は「直接的な武力を用いた占領下(乗っ取り後)」の話であるために六段階の「第三段階」に置くのはおかしなことになっている。これはコピペ作成者による恣意性を強く感じる部分だ。そもそも書籍と順序が大きく異なり引用として正しくなく、捏造レベルといえる。
▼第四段階「抵抗意志の破壊。平和や人類愛をプロパガンダとして利用」
敗北主義ーそれは猫なで声で最も崇高な感情に訴える。ー諸民族の間の協力、世界平和への献身、愛のある秩序の確立、相互扶助ー戦争、破壊、殺戮の恐怖……。
そしてその結論は、時代遅れの軍事防衛は放棄しよう、ということになる。
新聞は、崇高な人道的感情によって勇気づけられた記事を書き立てる。
学校は、諸民族との間の友情の重んずべきことを教える。
教会は、諸民族との間の慈愛を説く。
この宣伝は、最も尊ぶべき心の動きをも利用して、最も陰険な意図のために役立たせる。
外国の宣伝の力 p.232
また「敵は我々の抵抗意思を挫こうとする(p.234)」においても類似の記述があり「核武装反対」、「軍事費削減のためのイニテシアティブを」などなどの抵抗意思を挫こうとする文言の例が記述されている。第四段階はこの部分をまとめており、ページの流れ的にも違和感はほぼないことから適切なまとめ方とはいえる。
▼第五段階「教育や宣伝メディアなどを利用し自分で考える力を奪う。」
第五段階は第二段階と第三段階と内容が被っている様に見える。第二、第三の引用元が元と言えるが、 ただ「自分で考える力を奪う」という部分をメディアなどによる攻撃と捉えると「政府の権威を失墜させようとする策謀(p.256、p.258、p.260)」で怪文書の流布やスパイ、メディアなどによって攪乱工作、要人のスキャンダル、そしてメディアキャンペーンを起こしていくという記述があるために、この部分が元ネタと考えられはする。
▼第六段階「国民が無抵抗で腑抜けになった時を突き、軍事侵攻。」
以下からは今画像で流布しているものとは異なるが一応書いておく。ただこの部分の引用元は存在しない。捏造だ。「戦争のもう一つの様相」という部分は外国の軍隊が国境付近に来たことにより数度の衝突はあるが、「軍事侵攻」はなく最終的に社会進歩党という架空政党の党首が全権を握り、外国軍隊の介入を要請するといったものだ。また「レジスタンス(抵抗活動)」の章は占領下から始まる章であり、「腑抜け」云々は全く関係ない。「戦争」の章にしても特段の前提は記述されずにロケット弾が町に飛ん出来たことにより戦争が始まるというもの。そそもそもこの第六段階以降は軍事侵攻が伴うので最早「乗っ取り戦争」ではない。
▼第七段階「占領。そして再教育や洗脳を行う」
第三段階「教育の掌握。国家意識の破壊。」で記述した「占領軍の洗脳工作(p.288)」が元ネタだおる。第三章と若干かぶっているが、第三章は自国民側の工作員からの洗脳工作であり、こちらは占領軍からの洗脳工作と考えれば第五段階の様な重複とは言えず、独立させた意味は一応分かりはする。
▼最終段階「民族浄化。無意識のうちに」
捏造だ。『民間防衛』には「民族浄化」という単語は存在しない。無意識のうちにされる民族浄化という題目自体、第七段階の洗脳教育などによって「民族意識を消失させる」という理路だとは思うが実現不可能だろう。
以上がコピペとなっている部分の元ネタと思われる個所となる。第一~五、七段階目の元ネタと言える箇所は存在していると言える。そして各段階とそのページ数を対応させた場合は次の様になる。
【戦争乗っ取り六段階の引用元と思われるページ数】
第一段階(p.228)
第二段階(p.228、p.232、p.246、p.258)
第三段階(p.232(?)、p.288)
第四段階(p.232)
第五段階(p.256~260)
第六段階 捏造
第七段階(p.288)
第八段階 捏造
このページ数自体は調査者である私の考えによる対応表の為にコピペを生み出した人間とは異なる引用元である可能性は十分にある。とはいえ第三段階などは急にページ、というよりも章さえ違う箇所を参照している感が拭えず、また参照ページ数を見ればわかる様に所々の要素が飛んでいる。まとめるには不向きなページも存在することは確かだが、例えば「スポーツは宣伝の道具(p.240)」、「われわれは威嚇される(p.242)※敵国の科学技術プロパカンダによる威嚇」、「経済的戦争(p.244)」などは「乗っ取り戦争」の中に入れようと思えば入れられる箇所であるにもかかわらず無視されている状態だ。これらのことを考えるとコピペ作成者は意図的にコンパクト且つ日本でウケる形にしてこのコピペを作成していると考えられる。ただこのコピペには捏造であったり、別の章からの引用が見受けられ、箇条書きとはいえ到底適切な引用とは言えない。
そして何よりもだが、各要素にネタ元となる引用元があるとはいえ、「乗っ取り戦争六段階(八段階)」はそもそも書籍内に存在する段階ではなく、この概念自体が捏造だ。書籍に実際に書いてある様に見せているコピペ(画像)は相当に悪質といえる。
コピペ「乗っ取り戦争六段階(八段階)」が生まれたであろう経緯
◆日本における『民間防衛』の隆盛やコピペの登場
『民間防衛』は1970年に発売された際にはそこまでの人気はなくのちに絶版となるが、1994年の阪神淡路大震災後の1995年に再版されたことにより今の人気の基盤を築いたと言える。そして確認可能な2004年ごろからこの『民間防衛』という単語がネット上でも活発に使用されるようになっている形跡が見られる。
そして2ch(5ch。以下、当時を鑑みて「2ch」とだけ記述)においても2004年ごろから「民間防衛」を含むタイトルのスレッド数に活発化が見受けられる。
【00年代の2chにおけるタイトルに「民間防衛」が入ったスレッド数】
2009年 3件
2008年 5件
2007年 2件
2006年 3件
2005年 24件
2004年 7件
2003年 1件
2002年 4件
2001年 1件
2000年 1件
https://kakolog.jp/?q=%22%E6%B0%91%E9%96%93%E9%98%B2%E8%A1%9B%22&d=2000
2005年が24件となり一桁違うが、これは2005年当時に『嫌韓流』とセットで購入すべしというスレッドが各板に出来たことが大きな要因だ。これについては「おかしな人」がステマ的な行動をしていたとも考えられるが、ただこの行動からは当時「嫌韓」と「民間防衛」がセットとして扱われても不思議はない言論が背景にあったともいえる。
そしてこの『民間防衛』が2chにおいて上記の様に言説と結びついて活発に使用される様になった理由としては2004年ごろからの法案が強く関係していると考える。その法案とは「外国人参政権(地方参政権)」についての法律だ。例えば「外国人参政権」という単語を含むスレッドは「2003年 21件」から「2004年 211件」と桁違いに激増する*2。また同様の意味で使用されている「地方参政権」は「2003年 9件」から「2004年 70件」となり、こちらも激増している*3。当時は頻繁に反対派によるスレッドが建ち、その中で「民間防衛」という単語を含むコピペ的投稿がいくつか見受けられるようになる。
当時における「民間防衛」を含むコピペ投稿
↓韓国の工作員のやり方
∧_∧
<=( ´∀`) 僕は生粋の日本人だけど、
( ) 地方参政権はOK、差別はよくない。
| | | それにこの話題、板違いじゃないか?
〈_フ__フ
韓国の情報戦に大してどんなことがあっても戦おう。
これは「民間防衛」(スイス政府編)いわく、
「戦争のもう一つの様相」である。コピペ、メール、はがき、デモ、なんでもいい
私たちはできる限りのことをしよう。
http://www.geocities.com/hinomarukimigayo2004/
(引用者注:「永住外国人地方選挙権(参政権)付与に反対するメール運動」へのリンク)
出典:[見えない]永住外国人参政権反対[戦争]
●工作員がよくいう言葉
○「成立するわけないからメールやデモなどの運動は必要は無い」
→その根拠はどこにあるんですか?
昔消費税のときに同じことを言っている人がいましたが、消費税は成立しました。
○「参政権反対運動しても、かえって反感かうだけ」
→反感かう人間より、圧倒的に「知らなかった。コピペではじめて知ったよ。
これは許してはならない」という人間のほうが圧倒的なはずです。
中国の石油盗掘はやはり有志のしつこいくらいの大量コピペと大量スレ立て
大量メール攻撃で政府が動きました。
○嫌韓厨房おつかれさま(笑
あきらかに好き嫌いのレベルではありません。「参政権のことを話すのは幼稚だ」
と油断させて議論の中心から話をそらす作戦です。(狡猾な政治家がよく使う手)
どんなことがあっても戦おう。これは「民間防衛」(スイス政府編)いわく、
「戦争のもう一つの様相」である。コピペ、メール、はがき、デモ、なんでもいい
私たちはできる限りのことをしよう。
http://www.geocities.com/hinomarukimigayo2004/
(引用者注:「永住外国人地方選挙権(参政権)付与に反対するメール運動」へのリンク)
出典:民主党支持者は外国人参政権に賛成なの?
http://www.tcnweb.ne.jp/~perfect/index.html
これは韓国の情報戦であり、外国人参政権を絶対に許してはならない。
民間防衛の「戦争のもう一つの様相」である。
出典:【自民】自民新憲法、外国人参政権認めず【最高】
(引用者注:民間防衛に関する個人HP。この書き込みは2005年だが、同HPを使用した別コピペは2004年に存在。*4)
以上は抜粋であり、これ以外にも「民間防衛」を含むコピペ書き込みは多数見受けられる。この様に『民間防衛』という書籍を一つの道具として使用した書き込みや個人HPが2004年時点で生まれていた事が確認できる。ただしこの時点では「乗っ取り戦争六段階」というコピペは存在しない。しかしながらこれらの底流には外国人参政権導入により「日本乗っ取り」という概念があることは指摘できる。それを確認できるのが以下のコピペだ。
あのさ、おれも君たちの大嫌いな在日だが。在日3世。
別に嫌われようが何されようがこっちはどうでもいいよw
日本という国における「楽して稼げる職業」は全て在日・帰化人が
握ってるし(笑)
金あるから在日でも日本人女とやりまくり。さらにはレイプしても
全然バレないw あと数年で日本の参政権も取得できるし(爆)
俺達はもうお前達みたいに毎日毎日職業とか将来とか金の心配なんか
しなくていいんだよw 今俺達が考えてるのはもっと大きいこと。
いかにしてこの日本という国をボコボコにいじめ抜いてやるか、って
こと。 つまり、日本の中に、俺たち朝鮮人、韓国人の血を増やして
在日を増やす。んで日本人を少数派にしてその日本人をいじめたおす。
んでこの国を乗っ取る。 今はもうその最終段階に入ってるわけ。
平和ボケした危機感ゼロのお間抜け日本人は気づいてないがw
例えば韓国ブーム。あれは在日が作ったって知ってる?あれだけ大規模
なブームを作れるくらい、もう日本の中で在日の力は最強なんだよ。
自分達を地獄に導いてるとも知らずに毎日毎日テレビで韓国を
ヨイショしてくれる日本人w
韓国ブームのお陰で在日や韓国人へのマイナスイメージがプラス
イメージになった。そして日本人が韓国人や在日と結婚する数も圧倒的
に多くなった。つまりもうあと30年で日本は完全に在日主体の社会に
なるよ。 たった100万人に満たない在日に使われる1億人の日本人 w お前ら糞日本人に一生地獄の生活を見せてやるよw
どう?ムカムカする?(爆)
出典:嫌韓流は民間防衛とセットで読むべし
上記のコピペの初出までは追っていないが、2005年時点で既に存在していることを確認できる。コピペそのものには「民間防衛」という単語を使用されてはいないが、「この国を乗っ取る。 今はもうその最終段階に入ってるわけ」という部分にはのちの乗っ取り戦争六段階への影響すら感じる言い回しが使われている。またスレッド名だと「【日本乗っ取り】日韓在日ネット「韓国に続き日本でも地方参政権を」というスレッドが存在し、このほかにも「乗っ取り」を含むスレッド名はいくらか散見される*5。これらの言い回しが直接採用されたのかまでは不明だが、これらの先に「乗っ取り戦争」という名称がある事は確かだろう。
またコピペ以外の影響に関しては『民間防衛』について取り扱う個人HPの存在も大きいだろう。上記の3つ目のコピペもそういったHPだが、その個人HPよりも影響力が大きかったと考えられるのが「nokan2000」による「スイス政府「民間防衛」に学ぶ」という個人HPだ。このHPは『民間防衛』を引用しつつ危機を訴える系統のHPであり、氏はのちにmixiでコミュニティを作るなど精力的な活動も見受けられる*6。多数あるために紹介は一つだけに割愛するが当然ながらこのHPを利用したコピペも多数存在する。
スイス政府「民間防衛」に学ぶ
-日本が敵国から武力以外による攻撃を受け、破滅へと導かれないように-
http://www.geocities.com/nokan2000nokan/switz/
加治 隆介「倉地…俺は今つくづく思うよ」
倉地 潤「何を?」
加治 隆介「日本という国は本当に平和ボケした国だと思う」
加治 隆介「前から言われていたことだが他国のスパイがこれほど暗躍していても誰も気にしない」
倉地 潤「スパイ防止法がないからな」
加治 隆介「そうだ そういう法律がないことを むしろ誇らしげに思う国だからな」
加治 隆介「その誤った平和意識のツケが 今 確実にやってきているんだ」
出典:憲法9条改正・軍隊保持に賛成か反対か
(引用者注:上記の「加治 隆介」など弘兼憲史によるマンガ『加治隆介の議』の登場人物)
ただこの「nokan2000」によるHPにも「乗っ取り戦争六段階」などは記述されていない。
以上の様に2004年から「外国人参政権」という政治的イシューを得ることによって『民間防衛』の使用が活発化、今のネット右派の言説の中での地位を築いていく。この「外国人参政権」自体は2005年以降は落ち着いていくが、その2005年以降には人権擁護法案に関する情報が活発化。この法案を語るスレッドの中にも「民間防衛」という単語が時折出る様になり、その影響力が落ちていないことがわかる。わかりやすい例を示すならば2007年3月のスレッド「■□■人権擁護法案反対N極東総司令部 4■□■」において、「ネット時代の民間防衛戦略・序論1」という名前で書き込みをはじめ、「序論11」まで「戦略」を語っている書き込みが見受けられる。またこのスレッド内もそうだがこの他の人権擁護法案反対スレッドにも「民間防衛」という単語を使用している書き込みは多く存在する。しかしこの時点でもまだ「乗っ取り戦争六段階(八段階)」は生まれてはいない。探っていた中で確認する限り、このコピペが確実に生まれていた時期としては2007年10月、確実ではないものの推定できる時期は7月ごろだ。
「乗っ取り戦争第六段階」の誕生
◆「乗っ取り戦争第八段階」
この記事を作成する為に探っていく中で確認できた「乗っ取り戦争の第八段階」のコピペ書き込みで一番古いのは2007年10月20日となる。
822 :名無しさん@一本勝ち:2007/10/20(土) 12:45:16 ID:YT1mtq2c0
「スイス政府民間防衛」より新しい戦争。その名も「乗っ取り戦争」
第一段階「工作員を送り込み、政府上層部の掌握。洗脳」
第二段階「宣伝。メディアの掌握。大衆の扇動。無意識の誘導」
第三段階「教育の掌握。国家意識の破壊。」
第四段階「抵抗意志の破壊。平和や人類愛をプロパガンダとして利用」
第五段階「教育や宣伝メディアなどを利用し自分で考える力を奪う。」
第六段階「国民が無抵抗で腑抜けになった時を突き、軍事侵攻。」
第七段階「占領。そして再教育や洗脳を行う」
最終段階「民族浄化。無意識のうちに」
日本はどの段階?
出典:【Kー2】全日本新空手道連盟
そしてこの書き込みの10秒後に「★☆★エンプロのエース、りなちゃん★☆★」で同様の書き込みが行われている。またこの1時間後くらいには「【政治】福田首相、安倍色一掃へ…公務員改革にブレーキ、外国人参政権・人権擁護法案・皇室典範改正などを視野か★3」では一部を削除された八段階コピペがされていることが確認できる。最初の書き込みスレッドが非政治系である事、またその10秒後に別箇所での書き込みを見る限り、おそらくこの他のスレッドにも書き込まれていることが類推できるが、過去ログ検索も万能ではなく全文検索だと引っかからない板も多いのでその広がりや本当の初出は不明だ。ただし状況証拠的にはこれ以前に八段階コピペがあった事を思わせる書き込みが見つかる。それが2007年7月10日の以下の書き込みだ。
431 :名無しさん@八周年:2007/07/10(火) 22:17:27 ID:SKa4XW700
スイス民間防衛に書かれている最終段階に近くなってきているな。
もうどうかしてるわこの国。
出典:【参院選】 民主党から、在日コリアンの期待背負った金氏が立候補…外国人参政権・障害者差別禁止訴え、下関より★7
これは2007年の参院選時についての書き込みであり、金政玉が立候補した事によりできたスレッドとなる。内容からも「民間防衛」、「最終段階」とあることから背景にコピペの存在を匂わせる。それも文脈からは八段階コピペ(民族浄化)よりも六段階コピペ(大量植民)の方を感じさせるが、ここではそれを確定するほどの情報はない。残念ながら当時の他の金政玉やこの日以降の参院選関連で書き込みについて50以上のスレッドを10月まですべて確認したところコピペそのものは見つからなかった。この書き込みが果たして乗っ取り戦争コピペを見ての書き込みであるかどうかの判断は難しいが、ただ2ch以外で使用されていた可能性はあり、また選挙や当時の他のスレッドの盛り上がりを考えればこの時点でコピペが誕生していても不思議ではない。とはいえ、この7月に既に誕生説はあくまでも可能性の域は出ず、確実な誕生時点として断言できるのは実際にコピペを確認できる10月だ。また7月以前にコピペが生まれていないという状況証拠としては7月以前の参院選関連スレッドの他、2005年から2007年ごろの「日本 乗っ取り」、「地方参政権」、「外国人参政権」、「在日参政権」などを含むスレッド名の内容を数百確認したが、7月10日より早い段階での乗っ取り戦争コピペは見つけられなかった。このことからも2007年が乗っ取り戦争コピペが生まれた年であると考える*7。そして現状でコピペが確認できる2007年10月の書き込み以後においてもその増加はあまり確認できず、のちの六段階バージョンに比べれば当初の八段階バージョンはそこまでの拡散は確認できない。何故かまでは不明だが、やはり第六段階以降が「軍事侵攻」という直接的な武力行使になっていることや最終的に民族浄化という極端なレベルまで行っていることから共感や使い勝手が悪かったのかもしれない。
◆「乗っ取り戦争第六段階」への派生
そして現在流布している六段階への変化が確認できるのは2008年11月18日の以下の書き込みだ。
354 :可愛い奥様:2008/11/18(火) 02:43:56 ID:aE6Hf8240
「スイス政府民間防衛」より新しい戦争。その名も「乗っ取り戦争」
第一段階「工作員を送り込み、政府上層部の掌握。洗脳」
第二段階「宣伝。メディアの掌握。大衆の扇動。無意識の誘導」
第三段階「教育の掌握。国家意識の破壊。」
第四段階「抵抗意志の破壊。平和や人類愛をプロパガンダとして利用」
第五段階「教育や宣伝メディアなどを利用し自分で考える力を奪う。」
最終段階「国民が無抵抗で腑抜けになった時、大量植民。」
これのまんま過ぎて笑えない・・・
出典:【外国人激増】国籍法改悪案の反対【日本破綻】★9
このスレッドは既婚女性板の国勢法改正に対するスレッドだ。2008年は「外国人参政権」というイシューよりもこの「国籍法改正」というイシューが活発にやりとされており、その最中での書き込みとなる。なお既婚女性板は板名だけだと判断しづらいが、「国籍法改悪案の反対」というスレッドが建つくらいには右派的なスレッドも多い板となる。この354の書き込みだけを見るならば”これのまんま過ぎて笑えない・・・”という事からコピペ発祥は別の個所である可能性がある。ただ一つだけこのスレッドの流れで気になる点を記すならば、354の書き込みにはない最終段階の「←今ここ」という部分がこのスレッド内で付けられている事だ。この「←今ここ」はコピペによって有無が分かれる部分だが、画像などを見ればわかる様に今の日本の段階はもう最終段階だと思わせる重要な部分であると言える。その「←今ここ」がこの354の書き込みから20分後に同スレッド内で行われている。それが390の書き込みであり、この390は最終段階の最後に”~大量植民。」 ←今ここ”とまるで354を補足するかのような書き込みをしている。そしてさらにその2分後、396があたかも354の書き込みに「←今ここ」という部分がついていたかのような捏造コピペが登場する。
396 :可愛い奥様:2008/11/18(火) 03:06:40 ID:0DtsU4zt0
354 名前:可愛い奥様[] 投稿日:2008/11/18(火) 02:43:56 ID:aE6Hf8240
「スイス政府民間防衛」より新しい戦争。その名も「乗っ取り戦争」
第一段階「工作員を送り込み、政府上層部の掌握。洗脳」
第二段階「宣伝。メディアの掌握。大衆の扇動。無意識の誘導」
第三段階「教育の掌握。国家意識の破壊。」
第四段階「抵抗意志の破壊。平和や人類愛をプロパガンダとして利用」
第五段階「教育や宣伝メディアなどを利用し自分で考える力を奪う。」
最終段階「国民が無抵抗で腑抜けになった時、大量植民。」 ←今ここ
https://changi.5ch.net/test/read.cgi/ms/1226933275/
もともと354が引用したかもしれないコピペに「←今ここ」がついていた可能性はあるが、それならば354が「←今ここ」を削除する動機づけがあまりなく、354から390の流れでこの「←今ここ」が付加され、件のコピペがこの流れで完成した可能性が考えられる。そしてこのコピペはこの後の同スレッド内はいうに及ばず、同日中に「「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事151」、「京都」、「入間基地スッドレ5」でコピペが確認できる。特に「京都」、「入間基地」のスレッドの書き込みは354の名前などを含めた書き込みをそのままコピペしたもので(「←今ここ」が片方はあり、片方はないというチグハグさが見受けられる)、また検索に出てこないだけで他の板でも書き込みをしたであろうことは推測できる。そしてこのコピペが観測できる11月18日の3日後である11月21日にはヤフー知恵袋で同様のコピペが確認できたり、現存するブログだと2009年の書き込みが確認できる。2008年の11月から徐々にこのコピペが膾炙していった状況が見て取れる。この流れ、特に11月18日のやり取りを見る限り、この捏造コピペが流布される際には強い意図を感じる動きがあり、その後の拡散までを狙って作成と流布がされたと勘繰っても罰は当たらないだろう。
この八段階から六段階への変化として大きいのは、八段階バージョンが「軍事侵攻」という直接的武力を示唆する情報であり必ずしも政治イシューコピペとしての使い勝手が良くなかったであろう部分が、六段階バージョンで最終段階が「大量植民」へと変化したことによって「外国人参政権」や「国籍法改正」、「在日外国人(移民)」に反対するという政治イシューにおいてとても使い勝手が良くなったことが言える。故に今の様に画像までが作成されるにいたるほどにこのコピペはネットにおける「草の根保守活動(煽動)」の)使用頻度が高いアイテムになっている。
「乗っ取り戦争六段階」が実際の書籍内の情報とは乖離した捏造情報を含むのであり、そしてその捏造がどの様に生まれたのかを見てきたが、そんな指摘をしてもこれを好んで使用する人にとっては馬耳東風ではあろう。ただ皮肉なことに『民間防衛』の書籍情報だけでならともかく(それでも大概なのだが)、捏造情報を含む画像などを拡散している状況って、まさに自分たちが訴えている「乗っ取り」という情報工作に自分たちがまんまとやられていると言えることだ。内からの情報工作もあり得るわけで、そっちからはいとも簡単に「自分で考える力を奪われる」のだなと。
■お布施用ページ
*1:同ページにスイスが団結した場合のGOODバージョン言い回しが存在
*2:https://kakolog.jp/?q=%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E5%8F%82%E6%94%BF%E6%A8%A9&d=2003
*3:https://kakolog.jp/?q=%E5%9C%B0%E6%96%B9%E5%8F%82%E6%94%BF%E6%A8%A9&d=2004&p=1
*4:例えば「外国人参政権に賛成する議員一覧作成スレッド」
*5:https://kakolog.jp/?q=%E6%97%A5%E6%9C%AC%20%E4%B9%97%E3%81%A3%E5%8F%96%E3%82%8A&d=2004
*6:https://mixi.jp/view_community.pl?id=144525
*7:2005年~2006年ごろにしたらば掲示板の方でみたという情報をいただいたが、したらばは中々追えずに確認ができない為にこの情報は留保する。したらばでコピペが流行るくらいなら2chにも流入している可能性も高いですし。