電脳塵芥

四方山雑記

マラウイ共和国において、児童婚はいまだに問題として残っている


https://twitter.com/whatimtheworrld/status/1787496125521707518


https://twitter.com/U3nao256/status/1787615161018442084

 バズっていたが、いろいろと誤解を生んでいる様な気がするので補足的にメモしておく。冒頭の「ホワット」が貼っている記事は2023年11月8日にアップされた「Malawi’s first female Ngoni chief breaks cycle of child marriages」というもの。記事はテレサ・カチンダモトという女性が初めて首長となり、児童婚の連鎖を断ち切った的な話ではあり、見出しそのものは日本における投稿文とそこまで変わっていない。ただし、「マラウイ共和国の初女性長」という表現であるとあたかもマラウイ共和国のトップ=大統領であるかの様な印象を受けるが、テレサはンゴニ族の族長になったというものだ。ちなみにテレサ・カチンダモトは英語版のwikipediaが存在しており、それによれば彼女自身が首長の一族の一員であり、2003年にマラウイ中部のデッザ地区の最高首長となり、90万人以上に対して権限を持っているという。つまりは地方の首長となる。彼女はその後に児童婚についての実態を鑑みて廃止運動を始め、2019年の記事では16年間で3500件解消、冒頭の2023年記事では過去3年間で850件解消という記述がある。ただし2023年記事における「850件解消」については2019年記事にも同様の記述があり、近年の実態を表しているかは疑わしい。
 そしてマラウイ共和国における児童婚の禁止だが、2015年に18歳未満の結婚を禁止する法律法案は通っており、その際にテレッサを含めたロビー活動があったのは記事からも事実でありそこは疑いようがない。ただしその当時のマラウイ共和国の大統領はピーター・ムタリカは男性であるし、ついでに付け加えると現在のラツルス・チャクウェラも男性となる。テレッサを含めた女性の運動が原動力にあった事は否定しないが、「女性がトップにならないと児童婚が終わらない」という解釈はやや現実とは異なる。とはいえ慣習としての児童婚はいまだに続いており、冒頭の記事でさえ「女性の47%が18歳未満で結婚」とある。この47%という数字は国連人口基金 (UNFPA) でも同様の数値を使用している。またBBC記事によればNGOであるGirls Not Brides の調べでは国内の少女の40%以上が18歳未満で結構しているともある。これらの事から2024年現在においてもそれに近い数値の児童婚が存在している事は想像に難くない。それとGirls Not Bridesによれば 2023年11月にチャクウェラ大統領がジェンダー大臣などと協力して児童婚をなくすための国家戦略の策定という話も出てきている。現在も以前としても児童婚問題が残っており、外部団体の働き掛けもありながらその改善のために動いている事がわかる。
 マラウイ共和国において「児童婚を廃止」は法的な取り組みは進んだものの実態としては依然として残っている事となるし、この法的取り組みも「女性がトップだから」とは言いづらい。テレサ・カチンダモト氏の働き掛けは素晴らしいとしか言いようがないが、そこでの拡散の仕方と解釈は実際にある問題が歪曲されている。そもそも冒頭の記事内には47%が18歳未満で結婚とある事から記事を紹介したアカウントが記事をちゃんと読んで理解していたのか疑問であるし、紹介の仕方にも問題がある。そもそもスクショを貼るならリンクを貼れ、となる。いずれにせよ、誤った情報で議論やうっ憤晴らし的な言説を披露するのは宜しくない。

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