電脳塵芥

四方山雑記

立憲民主党が「父」「母」という性別表記をなくして「親1」「親2」にするという言説経緯


https://twitter.com/YoshikoSakurai/status/1788882499713773675

 この投稿に関しては立憲民主党党首である泉健太事実誤認であることを指摘している。ただし産経記者の阿比留氏の反応などは典型的だけれど本当に信じているかは不明とはいえ櫻井よしこの事実誤認(デマ)に対して親和的な反応をしている。


https://twitter.com/YzypC4F02Tq5lo0/status/1789096496866242708

ところでそもそもこのデマの起源は何かをメモがてらに残しておく。例えばこの「親1」、「親2」という呼称そのものについては2018年の勝共連合HPで「アメリカでは、教育省の公式文書における「父親・母親」という表記が、「親1・親2」(Parent1、Parent2)に置き換えられてしまいました。」という紹介がされている。櫻井や阿比留の政治思想と勝共連合が発信している政治思想は似通っているともいえるだろうが、それはともかくとしてこの2018年時点ではこの記事を含めて「親1」「親2」という呼称への認識は日本語圏ではほぼ見られない*1。この状況が変化して日本に明確に話題になったのが2019年のフランスにおける出来事とそれを伝えたNewsweekの2019年2月21日の記事「フランスの学校、同性婚家族への配慮で「父」「母」の呼び方を「親1」「親2」へ」と、同年の産経2月28日「親1号、親2号?」による。これで日本、特に保守層がこの話題を認知するに至る。ただしこの時点では「親1、親2」と「立憲民主党」との結びつき自体はほぼなく下記程度のものであり、またその後2023年末まで話題に挙がっていないことが確認できる。

この状況が変わるのが2024年4月13日。下記のようにもえるあじあがまとめ記事「【は?】立憲民主党「同性カップルに法的保障がないのはG7で日本だけ、差別。同性婚を法制化!『父母』を『親』に変更します!」 ※「父母」→「親1親2」に」、そしてシェアニュースジャパンの「【同性婚】立憲民主党「書類上から父母という性別を排除し『親1・親2』という表記に変更します」「G7で同性カップルに法的な保障がないのは、日本だけ」」の影響によって今の流れが生まれる。

なお上記まとめサイトは下記の冨田格氏の投稿が元となっており、直接的な話題の発生源はこの投稿と言える。


https://twitter.com/itaru1964/status/1648292985464037376

冨田氏は立民の婚姻平等法案へのリンクを貼っているが、例えば下記概要の様に「同性婚を認めることに伴い、文言を性中立的なものに改正」とはあり、「父母」、「父」、「母」の表現を「親」などに変えるとある。

素直に読めば基本的には「親」という表記がなされると思われるし、法案に「親1、親2」などの表記はない。ただし「可能性としては」、「どこかの書類で」、「親1、親2」という表現が用いられる可能性そのもの自体は否定はできない。とはいえ冨田氏の解釈は婚姻平等法案を字面通りに読んで素直に出た発想としての「親1、親2」というよりもパリをはじめとした欧米の動きを背景として認識はしていたものと思われる(なお、パリでの「親1、親2」表記問題は保守派などからの反対が起こっており、この表記に関する反対感情には万国共通的なものがみえる。それと若干脇道だけれど、「「親1、親2」という表現に代わるから同性婚に反対」という有権者は正直少ない様な気はする。)。
 ただこの二つの「まとめサイト」の力によってこの言説は真に受けてどんどん拡散していく。


https://twitter.com/shop_kakiko/status/1779050919021482115


https://twitter.com/KojiHirai6/status/1779200526330241084

また当時の期間が補欠選挙に近かったこともあり、選挙活動上での動きとしても機能する。


https://twitter.com/maku94483/status/1780153973514895500


https://twitter.com/akasayiigaremus/status/1780545121517555887


https://twitter.com/KojiHirai6/status/1780765268232503436


https://twitter.com/itaru1964/status/1781893536683802878

そして冒頭の櫻井よしこ発言へと至る、というもの。背景としてはパリでの法案などがあるものの、大きな火付け役としては2024年4月のまとめサイトによる拡散、そしてその後にSNS上におけるインフルエンサーの存在、また当時の選挙や同性婚そのものへの反対といえる。彼らの立場に立つならば「日本文化の破壊」と捉えるのであろうし、この様に強い拒否反応を示して政治的イシューにするのだろうと。泉健太の発言後もこれらの発言をした人の意見は変わろうはずもないし、また一つの「使える政治言説」が生まれたと、とも考えられる。

■お布施用ページ
note.com

*1:2018年時点ならばアメリカではないがパリにおける事例としてhttps://twitter.com/karyn_nishi/status/977497602684944386や、https://twitter.com/misetemiso/status/1002122595095973888などの存在は指摘できる。