電脳塵芥

四方山雑記

自民党の山田宏がクロ現プラスについてデマ的な切り取りをしている

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米国留学から帰国した中国の若者の「中国は素晴らしい」「米国には幻滅」という「官製」インタビューを、NHKは長時間そのまま流していた。まるでCCTV(中国国営放送)のようだった。

 このためにNHKプラスに加入してみましたとさ。
 該当番組はクローズアップ現代「中国の若者・リアルな胸の内▽自信・愛国心・葛藤も」で、大きな基本的に番組の流れは以下の通り。


【留学生の心境変化(愛国心を育む青年)】
アメリカ(自由や民主主義)にあこがれ留学した青年が中国の新型コロナウイルスの封じ込めを見て中国を見直す。コロナ対策を契機にして言論の締め付けが強化、言論統制が始まるが上記の留学生はそれについて聞かれると若干困りながら、「普通の人には大きな影響がない」、「法が許す範囲ではなんだってできる」という。そして留学生の帰国率がここ最近増加していることに触れ、海外にいるほど中国を誇りに思うようになるという発言。アメリカへの中国批判に反発をにじませた留学生が中国が世界中から尊敬される国になれるように若者が努力する姿勢を映す。

共産党による若者党員の育成】
共産党支部による党員育成を映す。

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上記の様に洗脳的、妄信を育てているとも言えそうな教育風景という印象を与える類のもの。習近平の言葉も引用されており、党員教育の段階で指導者を持ち上げている事をわからせる。その後に幹部候補生(山田議員のキャプチャの女性)の実際の活動を見せる。なお、山田議員のキャプチャに行くまでのやり取りは以下の様なものです。

・幹部候補生の女性が村の人々の健康管理の為に村に訪れる
・実際に人々と会って話すようになる
・実際に話す事により、「人々の存在は資料に書かれた存在」から「数字の裏にいる一人一人の人間の姿が見える」
・以上を受けて「人民のために奉仕をしたいです」と答える

その後に共産党の構造を見せながら、若者の農村への派遣を習近平が力を入れている事を示す。そして派遣された若者(今回の女性)は党の期待を背負っていると認識し、自分の夢を語る。

【愛国教育の強化】
アプリを通した愛国教育を紹介し、それが学校にも通知されると触れる。習近平になってから経済、科学が党の功績として盛り込まれるとのこと。ただし、この愛国教育に対して違和感を覚える若者を紹介。違和感を覚えた若者は顔はモザイク、声は変えられてインタビューを受けており、愛国教育の点数が低いことを叱責され、奨学金にも関わっている事を述べる。そして若者の間で政権批判を許さない空気(同調圧力)が蔓延し、アメリカを擁護(悪口は良くないよ程度で)するだけで批判対象になることを紹介。

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上記の様な息苦しい言論社会になっている事が証言されている。

【スタジオで安田峰俊氏による解説】
上記のVTR部分や現在の中国についての解説。天安門から現在に至るまでの歴史や中国人の今の政府への簡単な認識、新型コロナでの当初の隠ぺい体質、その後の封じ込めの成功なども語る。

【若者の将来不安】
低賃金で働く若者を紹介し、高学歴に伴った就職競争激化、上の世代の3倍にもなる失業率の増加に触れる。ギグワーカーは2億人に及ぶとされ、国が雇用の受け皿になるとしてギグワークを推奨、しかし実際に働く若者にしてみれば答えは以下の通り。

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さらに男女を比べると男性が3000万人ほど多いことから結婚への焦りを募らせる。この歪な男女比は一人っ子政策である事も明言、「お見合い公園」が出来るなど結婚は社会問題であると紹介する。専門家により若者が減り、少子高齢化が起こる将来に国力低下が起こることを懸念している。

【スタジオに戻り解説】
番組のまとめ的なもの。現在の中国が習近平の属人性によるところが大きいというような事を述べながら、それゆえに未来が読みにくい、今の若者が体制に過適合しているので今後どうなっていくのか注目、という様な感じで締め。


 30分の中でコンパクトに中国の若者の意識や問題点をまとめてる結構いい番組という印象で、これを見てCCTV(中国国営放送)だというのはちょっと意味が分からない。中国の現状、しかも宣伝的というよりも問題点についての方が番組的な尺は全然多いので、これを見て吐き気を覚えるならば病気レベルだし、中国について知る事を身体レベルで拒否反応を起こすならばそれ関連の仕事にはつかない方が良いと思う。日本にとっても不幸だから。
 それと山田氏は"米国留学から帰国した中国の若者の「中国は素晴らしい」「米国には幻滅」という「官製」インタビューを、NHKは長時間そのまま流していた。"と書いていますが、彼は中国に言論の自由がないことを自覚しており、それをカメラは映し、見ている我々はよほど鈍感でなければ彼の中に複雑な感情があること自体は察しがつきます。また「官製」というけれど「愛国心」を持つ若者はどこにでもいますので複雑な感情を持ちつつの本心でしょう。というか。あの留学生インタビューを映して何が悪いというか、あれを見て中国が良い所でシンパシーを得るという人間は少ないのではないかと。それとこの留学生シーンではトランプによる「チャイナウイルス」呼びを映しており、山田宏などの自民党極右系が言う「武漢ウイルス」という言葉の危険性まで考えられるシーンであるとも言えます。
 ツイッターの写真の女性については共産党員の末端として現場に赴き、そして人民のために奉仕をしたいと言ってて、ある意味一番この番組でプロパカンダ的側面を持つと言える場所ですが、それについても共産党の党員育成の構造理解の為には有効なものと言えます。このシーンの前に共産党の教育の洗脳的な側面を見していますし、あの教育風景をもってしてシンパシーを得る人間は少ないですよね、多分。

 以上の様に自民党山田宏議員のツイートは本当に一部のみを切り取り、また番組の意図を甚だ理解できるリテラシーを持たず、というか自分の中のイデオロギーに基づき番組の理解とツイートへの発露をしていますよね。あとNHKへの憎悪。全体を見れば言論の自由の不在、過度な愛国心教育とそれによる同調圧力、将来が見込めない若者と現代中国における問題点、それこそ表題の通り「中国の若者・リアルな胸の内▽自信・愛国心・葛藤も」という内容です。なお愛国心教育であるとか政権批判を封じる空気のところを問題視しないのは、自民党としては実現したい部分だから批判しないんですよね、みたいな事を邪推したくなります。この番組の結構大きな核の部分なはずなのに一つも触れないんだから、本当に番組見てたんですかね。