電脳塵芥

四方山雑記

2011年の民主党政権による国会延長と自民党の会期延長批判について

f:id:nou_yunyun:20201209035159p:plain

 なんて画像があって。もう自分の中の記憶がおぼろげで当時のことを覚えていなかったのでメモ代わりに当時の自民党の会期延長反対のロジックを置いておきます。なお2020年の方については自民党の国会延長(安倍政権の通常国会、菅政権の臨時国会)せずというのは現状を考えたら不味い対応であるし、何よりも首相の討論を見せまいとする姿勢がありありと見えててなめられてるなと。首相が国会でしゃべる時間が多いほど支持率が落ちる可能性が高いから隠すんでしょうけれど。
 で、2011年ですが。確かに2011年6月の民主党による国会延長提案に当時の野党は反対しています。ただ2011年6月21日時点では50日の国会延長で与野党は合意していました*1。それが22日の夕方に70日へと急遽日数が増えたことによってこの合意が崩れて迷走的状況が現れます。この50日から70日の延長については当時の松本純はこう書いています。

50日あれば十分だ。そして、8月には民主党の代表選挙をされ、その後すぐに臨時国会を召集し、新内閣の下で新しいスキームで考えていくべきではないかと申し上げている
● 少なくとも、3党の幹事長間で「50日延長」で合意したものを、首相の都合、つまり自らの延命の為に延ばされ、公党間の約束は反故にされたのだ。その延命に手を貸すことはできない
松本純の国会奮戦記2011-06

河野太郎のブログ*2でもこのことを取り上げていますし、当時にこの合意反故は相当な反発があったのがうかがい知れます。また松本純のブログでも書いてありますが、一度合意したように自民党のロジックとしては震災対応を議論しなくて良い、というものではなく以下の様なもの。

民主党が70日延長への協力を要請した。自民、公明両党は延長に反対する。民主党は自公両党との3党で、菅直人首相の退陣時期と重要法案の処理に関する合意文書を取りまとめたい意向だったが、自公両党は首相退陣の時期が明確ではないとして応じない構えだ。
国会会期、70日延長議決へ 自公は反対: 日本経済新聞

この時期は菅首相の支持率は低迷しており、菅降ろしも進行中の時期。同6月には菅政権への不信任案もありましたし、国会延長ではなく新内閣の下で新しく国会を開き議論をしようというものです。また当時の自民党メールマガジンでは、

【国会会期延長について~谷垣禎一総裁会見から~】
■昨日、国会が70日間延長されたわけですが、会期延長を巡りましては、政府与党内の迷走と申しますか、ゴタゴタが見るも堪えない状態であったということだと思います。(中略)今の国会の混乱、政治の混乱は、第一は政府与党の中での統一性のなさ、方向性のなさ、そういうところに問題が基本的にはあるわけです。
 
■被災地の復旧・復興のために、国会で審議すべき問題は山積しております。したがって、私どもは、会期延長そのものに反対しているわけではありません。大切なことは、何をするための会期延長であるのか。(中略)政府与党の中で明確な整理・説明がない中での、不合理な日程、不合理な国会に与することはできないということを私どもは申し上げたわけです。
 
■結局、総理の座への執着のみが、菅さんの頭の中にあるのではないか。平然と人を欺き、保身を事とする。総理の座にとどまる資格は全くなくなっていると私どもは思います。そういう総理の下で、日本の立て直しは不可能であると考えています。我々は、改めて総理の早期退陣を求めていかなければならないと思っています。
メールマガジン 2011.6.24 Vol.506

というもの。民主党内部の統制のなさを指摘され、自民党からしたら問題を明確に対処できない、政権末期なので会期延長せずに新内閣の下での国会を開くという考えで、個々人によって評価は異なるでしょうが一定の論理は成り立ってはいます。当時の菅内閣の政権支持率も25%ほどでしたし、政権末期的な状況だったのは確かです。なおメールマガジンの最後の強調部分について、何が言いたいかは察してください。
 こう見ていくと最初に貼った画像は当時の状況を無視したミスリード的な画像と言えます。もちろん当時の70日間の国会延長に反対すべきでないという意見は大いにあり得ますが、ただし危機災害に延長する民主党、延長しない自民党、というような単純な比較枠組みで語るには適さないかなと。

 最後に野田政権になってからのですが、2011年12月に自民党が作った文書を貼っておきます。

f:id:nou_yunyun:20201209044620j:plain

この当時の自民党によく見受けられるちょっとアクの強い文面ですが、「審議拒否は与党にあり、 国会審議を尽くせ!」は良い言葉ですね。

*1:通常国会70日間延長、衆院本会議で議決|日テレNEWS24

*2:一夜明けて 私はなぜ会期延長に賛成したか | 衆議院議員 河野太郎公式サイト。なお記事中に国会とは別に「我が国の原子力業界は腐っている、力説した」という記述があり、その後の河野太郎の顛末を知ってると面白い記述があります。