電脳塵芥

四方山雑記

最近の選択的夫婦別姓制度への世論調査を見ると賛成の方が断然多い

 タイトル通り。
 まず少し遡って内閣府2017年 内閣府 家族の法制に関する世論調査では賛成42.5%、反対29.3%、通称使用24.4%となっています。内閣府の調査では賛成、反対の是か非かではなく第三の道的に「通称使用」が盛り込まれているのがミソですが、少なくともこの3つの選択肢の中でも賛成派が最も多いことになります。なお「通称使用派」は他の調査を見る限り必ずしも選択的夫婦別姓制度反対派ではなく、むしろ賛成反対の二者択一の場合は賛成を選ぶ方が多い可能性があります。それと内閣府の調査によれば賛成反対通称使用の推移は以下の通り。

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内閣府調査は調査感覚からすればおそらく来年に類似の調査をすることになると思います。少なくとも昨今の状況を鑑みれば反対派が賛成派を上回ることはなく、また賛成派が50%を超えてもおかしくないかも。
 で、ここらからここ1年位に行われた世論調査の結果を見ていきます。

2021年01月 時事世論調査

選択的夫婦別姓の導入について尋ねたところ、「賛成」が50.7%となり、「反対」の25.5%を大きく上回った。
選択的別姓「賛成」5割超 自民支持層は評価割れる―時事世論調査:時事ドットコム

 現段階での最新の調査となり、反対の倍近い賛成があります。この調査の面白いところは政党支持層ごとの結果も載っていてそれによると、

自民党支持層  :賛成41.5% 反対36.9%
公明党支持層  :賛成57.7% 反対27.7%
立憲民主党支持層:賛成65.8% 反対不明
共産党支持層  :賛成60.0% 反対不明
維新の会支持層 :賛成26.3% 反対36.8%
※そのほかの政党、および立憲、共産の反対は記事に記述がなく不明

以上の様になり自民党支持層ですら賛成派が反対派を上回ります。この傾向は後述する2020年1月の朝日新聞調査でも同様の傾向なの現状は自民党支持層でも賛成派が多い状況と言えるでしょう。そんな中でも反対が賛成を上回る維新は異彩を放ってると言えるかなと。

2020年10月 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」による合同調査

60歳未満の成人男女7000人を対象に選択的夫婦別姓について意識調査を行ったところ、「賛成」の割合が70.6%にのぼった。「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦も同姓であるべきだ」とする「反対」の回答の割合は14.4%にとどまった。
選択的夫婦別姓「賛成」70.6%:「反対]は14.4%にとどまる | nippon.com
20〜50代の7割が賛成!47都道府県「選択的夫婦別姓」全国意識調査の概要 | 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション

 賛成の内訳は「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同性でも別姓でも構わない」が35.9%、「自分は夫婦別姓が選べるとよい。他の夫婦は~」が34.7%。こう見ると選択的夫婦別姓制度が導入された場合、少なくない数の夫婦が別姓を選択する可能性があり需要はそれなりにある事もうかがえます。それと「別姓が選べないために結婚を諦めたことや、事実婚にしたことがあるか」という問いがあり、これは全体で1.3%が「ある」と答えています。1%という数は決して少なくない数と言えるかなと。
 ちなみにこの調査に対しては自民党赤池まさあき議員が以下の様な記事を書いています。

おいおい、早稲田大学の教授の名前を出して、あたかも研究者などの最新調査であるかのように誤認を誘導していますが、よくよく聞けば夫婦別氏を推進する活動家団体の調査ではないですか。それも、反対が多くなる70歳以上の高齢者を除き、さらに、報道機関や研究者が公正を期すために行う無作為抽出調査ではなく、インターネット調査ではないですか。当然、その結果は調査に協力する人、つまり賛成者が増える可能性があります。
NHKの世論操作か…夫婦別氏制度賛成が「7割」???

高年齢者ほどに反対派が増えやすいので確かに70歳以上の高齢者を除けば賛成派が増えるのは当然なのですが、インターネット調査=ツイッターでやっている党派性による賛成反対アンケートではないので後半の方は正直いちゃもんに近いと思う。調査をした株式会社インテージ自体のインターネットモニター自体にケチをつけるならどうぞお好きに、ですが。それと赤池氏はブログで、

我が国が夫婦同氏制度を導入したのは明治時代からであり、男女平等、女性の権利保護、夫婦や家族の法的保護が近代化にとって重要だったからです。それによって、我が国は夫婦や家族が保護され、維持発展してきたのではないかと思います。

とあるけど、夫婦同氏制度導入と男女平等、女性の権利保護云々を繋げるのは意味が分からないよ。

2020年11月 QOM総研「選択的夫婦別姓」に関するアンケート調査

選択的夫婦別姓制度、20~30代未婚男女の54.6%が「賛成」「反対」はわずか13.1%
20代~30代独身男女、「夫婦別姓」賛成5割、実際に「別姓にしたい」は2割~女性の5人に1人は夫婦同姓に憧れないと回答~|タメニー株式会社のプレスリリース

この調査は20~30代の男女に限定した調査であり、賛成は先ほどの調査の70%よりも落ちますが、反対派13.1%と近い数字。

2020年1月 朝日新聞調査

選択的夫婦別姓について尋ねると、69%が「賛成」と答え、「反対」24%を大きく上回った。自民支持層でも63%が賛成し、反対は31%だった。
選択的夫婦別姓、賛成69% 50代以下の女性は8割超:朝日新聞デジタル

ここでも賛成が大幅にリード。そして記事にある様に自民支持層でも賛成派が多いことが分かります。


 2020年から賛成反対が簡単に確認できる世論調査では以上のような感じです*1。これらの調査を見ればわかる様に一部政党の支持層を除けば反対が賛成を上回ることはなく、というよりも賛成は反対の最低でも倍以上。最近の傾向を見るに反対は多く見積もっても3割程度、かたや賛成は少なく見積もっても5割程度、現実として今後反対派が賛成を上回る事はないでしょう。故に自民党政権としての折れ方として通称使用の普及を図っているわけですが。ちなみに丸川珠代氏をはじめとした自民党議員が連名で地方議会に選択的夫婦別姓への反対を求める文書を送った問題ですが、それは以下の様に「選択的夫婦別姓」制度を政府に導入や議論を求める地方議会の意見書の数が近年増加傾向であることが背景にあります。

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出典:夫婦別姓の導入・議論を求める意見書が地方議会で増加:東京新聞 TOKYO Web

 それと下記記事では自民党内の動きで面白かった記述があります。

党内は制度導入への慎重派が優勢だった情勢から拮抗へと変化しており、夫婦別姓に慎重だった安倍晋三政権の退陣に伴い容認論が増えたとの見方がある。
(中略)
風向きが変わりつつあるのは、夫婦別姓に慎重だった安倍政権の退陣も一因だ。慎重派の党ベテランは「今回はなんとか踏ん張ったが、新たな案をまとめる5年後は危ないかもしれない」と語る。安倍氏は今回、推進派に誰が名を連ね、どのような活動を展開したかに関心を示していたという。
選択的夫婦別姓の是非、慎重派が巻き返し 自民党内は容認論拡大 - 産経ニュース

近年議論が進まなかったのは安倍政権の長期政権の影響だということは間違いなく、未だに歯止め役になっている事は確かそう。ただ現状の傾向を見るに自民党政権下でも選択的夫婦別姓論議の盛んさと世論の賛成の割合から制度導入は時間の問題の様にも感じます。それよりも手っ取り早いのは公約として掲げもした立憲民主党が政権を獲得することになるでしょうが。

*1:実は毎日新聞の調査はあるものの有料記事なので参照してません