電脳塵芥

四方山雑記

岩手の蘇民祭が終了した理由は単純な担い手不足であり、2008年のポスターも関係ない


https://twitter.com/KomeiT2/status/1758850124170838306

 このキャプチャはTBSの「7daysニュースキャスター」放送のもの。2月17日に最後の蘇民祭があることから特集及び中継などが行われる。まず、komei氏の投稿内容だと「意識の高い人」が祭りを終わらせようとしたと読める内容になっている。ただし、この論旨から逃げられるように続く投稿で「補足」として「因果関係は不明」とはしている。しかし、そもそも祭り終了の理由は妙見山黒石寺自体が次の様に述べている。

令和7年以降の黒石寺蘇民祭について
令和7年以降の黒石寺蘇民祭については、実施しないこととなりました。
その理由は、現在祭りの中心を担ってくださっている皆様の高齢化と、今後の担い手不足により、祭りを維持していくことが困難な状況となったためです。 今後可能な限り祭りを継続することも検討しましたが、祭り直前での急な開催中止等、多くの皆様にご迷惑をかけかねない事態の発生を防ぐため、祭り自体を行わないという判断に至りました。
これまで長きにわたり、黒石寺蘇民祭の護持にご尽力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
また、蘇民祭を楽しみにしてくださっている皆様におかれましては、大変申し訳ございませんが、何卒ご理解を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

一言で言ってしまえば過疎化といえる。奥州市の人口集計によれば該当地区であろう黒石の2008年(平成20年)年の15~64歳の男性の人口は392人、それが2023年集計は210人にまで減っている。実際は「黒石」地区だけが参加するわけではなく周辺地区も参加するのだろうが、それでもテレ朝の記事によれば黒石寺の蘇民祭関係者は「地域の人口は885人。その半数が65歳以上の高齢者」と言っている。他地域からの参加も出来るようだが、それでも祭りを維持できる人間の数が地域にいないという事なのだろう。そしてそれは番組でも説明している事がわかる投稿は存在している。komei氏が途中で見たから該当部分を見ていなかった可能性もなくはないが、とはいえ「意識高い人たち、伝統壊すの得意すぎる」などと言うのはデマを流しているに等しく、意識が低いとか高いとかいう問題ではない。そもそもの話、2008年のポスター問題は「意識の高い人たち」という話よりも、JR東日本がポスター掲示を拒否したというものであって張り出されたポスターにクレームが来たのではなく、JR東日本による事前審査によって断られたという話だ。

岩手伝統の裸祭りポスター 「きわどい」とJR東日本が拒否(AFP 2008年1月9日 )
千年の歴史がある「裸祭り」の伝統が、時代の変化の壁に阻まれた。JR東日本(JR East)が、岩手県奥州市に伝わる伝統行事のポスターを「不快感を与える」として掲示を拒否していたことが明らかになった。
(略)
同地域担当のJR東日本盛岡支社は、ポスター掲示がセクハラにつながるかもしれないと判断したという。同社広報室は「駅はいろいろな人が利用する。このポスターのデザインに不快感を持つ人も出てくる可能性は高い」としている。銭湯や温泉がある日本でも、公衆の面前で裸になることはますますタブーになりつつある。

 

祭りポスター:JR東が「待った」…女性が不快感毎日新聞 2008年1月8日)
岩手県奥州市の黒石(こくせき)寺で繰り広げられる伝統行事、蘇民祭(そみんさい)の観光ポスターを市が駅構内に掲示しようとしたところ、JR東日本から待ったがかかった。「男性の裸に不快感を覚える客が多い」というのが理由だ。数十年作製しているポスターの掲示拒否は初めてで、市は枚数を200枚減らして1400枚とし、駅で張れない分は市内や首都圏で張るという。

以上の様にJR拒否話がマスコミやワイドショーなどに報じられて一気に「話題」となる。クレームが来てからの掲示を取りやめたならばともかくとして、またこのJRの対応の是非についての話ならば成り立つが、果たしてこれを「ネガキャン」、そして「一部の意識の高い人たち」につなげるのはいささか発想が飛躍しすぎているように思える。「ネガキャン」という意味では以下の様な「ネット民」がオモチャ化した方が「ネガキャン」ともいえる。


http://riceballman.fc2web.com/AA-Illust/Data/HadakaMaturi.html

もっといえばポスターは2008年の話題で、今2024年ですよ……?



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イーロン・マスクが百田尚樹に引用して「Uso o kakuno~」っていってるのはコラだよ

 まあ、ネタとわかっているとは思うが中にはバズっている投稿もあって「おもしろい画像」であることは違いないのだけど、それはともかく今後残って出回ってしまうかもしれないので一応指摘しておく。

1)「Elon Musk@elonmusk」及び「百田尚樹@hyakutanaoki」に該当投稿がない
まずいずれのアカウントにも当然ながら該当投稿はない。たとえばイーロンマスクは「uso」で検索、百田尚樹は「コミュニティノート」を検索しても該当投稿はない。当然、存在しないのだからリンクやアーカイブもない。日本で拡散され始めたのが2月15日だが*1、マスクの投稿は2月13日で実在するならば日本で話題になるのが遅すぎる。ちなみに百田尚樹からの一方的なイーロン・マスクとの絡みは存在しており、それが下記の投稿。


https://twitter.com/hyakutanaoki/status/1621151479032877059
※「百田尚樹と申します。」で検索したのでそこだけ太字。別に百田尚樹が強調したわけではないです。

文面は今回の内容と類似しており、おそらくはこの投稿をネタ元としてコラ画像を作ったのだろう。ついでにいうと「初めまして」をこの時に使っているので今回「初めまして」を使用するのもおかしい。

2)百田尚樹アカウントにブルーバッジがついていない
上記投稿スクショを見ればわかる様に百田尚樹はブルーバッジ取得者である。それがコラ画像では存在しておらず、現在の百田尚樹アカウントの表示と矛盾している。

3)引用元の各種表示がおかしい
コラ画像と実際の画像を比較するとわかりやすいが、引用投稿に下記の様な差異が存在する。
・引用元のアカウント名は1行が正しいが、コラ画像は2行になっている
・引用元のアカウント名の横には日付が付くのが正しいが、コラ画像にはそれがない
・引用元投稿の右端には何も存在しないのが正しいが、コラ画像には引用の右端に縦三つの点が存在する
 ※そもそも縦三つの点ってXにおいて表示されないのでは
・コラ投稿の百田尚樹の文中にはリプライ表示がないところを見れば引用となるが、引用リンクがない

以上の様に意図的にかどうかまでは不明なものの細部におかしな点が多い。出所まではわかりませんが普通にコラ画像です。ちなみにこちらはあまりバズってないですがコラ画像はもう一枚あって、それは次のようなもの。

こちらのブロック画像と合わせてのネタだったんでしょう。



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*1:わかりやすい文言で検索したところ、2月15日午前1時の投稿が確認可能。

「夫のコレクションを勝手に処分する主婦の姿」として挙げられている画像は全然関係ない女性


https://twitter.com/mt_yamamoto_/status/1755429113031250123

 投稿内容と画像からネタ元は2018年11月1日にテレビ東京で放映された「しあわせ買取隊」という番組と思われる。これの放映後にtogetterに「「父の“積みプラ”を売って旅行に行きたい」という家族に、ご本人が前向きでも同情が集まる #しあわせ買取隊」というまとめができるくらいに反響が起きる。そのまとめに放送前の10月30日に番組予告を見ての投稿が挿入されている。


https://twitter.com/trapezohedoron/status/1057270295516471297

こちらの投稿自体も拡散はされている&まとめに取り入れられたことから、この画像の女性が「夫のコレクションを勝手に処分する主婦」として扱われるにいたると思われる。ちなみにこの冒頭の「やまもとやま(美少女)@mt_yamamoto_」とというアカウントは今回の投稿が初めてではなく、2023年8月にもほぼ同様の内容の投稿を画像付きでしている。この女性の画像を検索すると使用者はこのやまもとやまなる人物以外には使用していない様にも見えるので、このアカウントがまとめを見て事実を歪曲して覚えていたのだろう(とはいえ掲示板などで使用されていた可能性はあるので断言はできない。)。それはなにも画像の話だけではなく、元のまとめの時点で夫はテレビに出ており、家族との相談は見られるのでそもそも「夫のコレクションを勝手に処分する主婦の姿」など少なくともこの番組では映っていない。とはいえこの部分は「しあわせ買取隊」のことを言っているのではなく、画像はたまたま象徴的に覚えていたものを使用した、という論理は可能だが。
 そして画像の女性だが、この女性の買取査定を担当したエコスタイルバイヤーが自身の公式youtubeに「ブランドデータバンク査定士!エコスタイルバイヤー出演。突撃!しあわせ買取隊 2018年11月1日毎週木曜日19時~」アップロードしている(公式にアップロードしていることから許可を得ていると判断してリンクを貼っておく)。キャプチャされている部分までは映っていないもののお金を受け取る前までのシーンは存在する。

画像からもわかる様に売ったのは「ブランド品」。売ったのも自分で収集したものであり、関係のない画像をあげて個人をさらしていることとなる。これも11月1日放送であり、つまりは一時間番組なので「ブランド品」と「詰みプラ」の話など、複数扱われたうちの一つなのだろう。「人のコレクションを勝手に処分する人」的な話はSNSでウケやすい性質のものでたまに類似の情報は上がってくるが、関係のない人の画像を使用してまで広めるのはダメだろう。
 当たり障りのない結論をいうと、コレクションを集める以上コミュニケーションちゃんとしよう、ってなってしまう気。



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埼玉県の各地の河原でクルド人が動物の解体をしているという話は疑わしい

 昨年から埼玉県川口市における「クルド人問題」とでもいう様な動きが目立ち、メディアでもいくらか出ている。例えば昨年7月にあった病院前における100人程度の集団でのグループ的な対立からの騒動があり*1SNSでは「クルドカー」などの蔑称も生まれている状況だ。当事者としての川口市による国への要望や存在する問題点についてはNHKが2月2日に出した記事「埼玉・川口市がクルド人めぐり国に異例の訴え なぜ?現場で何が?」などが参考になる。ところでこの「SNSにおけるクルド人問題」そのものはつい最近生まれたもので、原因としては2023年4月に当時の国会で審議入りされた入管法改定案で4月15日からネット右派系の投稿が増えていき、そのいくつかはそれなりに拡散される状況となる*2。今ある「SNSクルド人問題」が実質的に「始まった(発見された)」のはこの時であり、例えばネット右派系アカウントである「T.M@TM47383445」は4月15日~30日の間に「クルド人」を含む投稿は50を超えている*3
 そんな状況のなかでジャーナリスト「石井孝明@ishiitakaaki」というアカウントがこの流れに4月21日から参加する。石井孝明という人物は実質的にこの「クルド人問題」を率先して扱っていると言える人物で、時に煽動的内容や支援者への嫌がらせ的な行動を行っている人物だ。石井のHPでは2023年5月8日からクルド人に関する記事をアップしはじめ、2月4日0時付近の24時間のアクセスランキングを見る限り「クルド人」に関する記事がウケている事がわかる。

つまり1年近くは「クルド人問題」を扱っているわけであり、石井がこれによってどれほどの収益を受けているかはわからないがこれらを見ると「ジャーナリスト」としてそこに狙いを定めたともいえる。そしてこれらの情報源のいくらかは匿名の情報提供によるもので、それを活用することで「クルド人問題」を訴えようとしている。例えば典型的なのは次のような投稿だ。


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1742815829400629711

どうにもこれはお気に入りのネタなようで記事の小項目としても取り扱っているし、複数回記事紹介の投稿をSNSでもしている。その中では「日本人の人通りが増えると、携帯から大音量で緊急地震速報を流し、日本人が驚くのを見て笑っていたという。伝聞ではあるが、実話の可能性が高い。」とあり、駅前という場所やその異常ともいえる行動から目撃情報がありそうな状況なのだがX上における情報源は石井孝明のみとあって事実性が疑わしい。


https://twitter.com/search?q=%E8%95%A8%E9%A7%85%E5%89%8D%20or%20%E8%95%A8%E9%A7%85%20or%20%E9%A7%85%E5%89%8D%20%E7%B7%8A%E6%80%A5%E5%9C%B0%E9%9C%87%E9%80%9F%E5%A0%B1%E3%80%80since%3A2024-1-3%20until%3A2024-1-5&src=typed_query&f=live

クルド人が河原で動物を解体しているという情報について

 そして本題なのだが、石井孝明によって次の様な投稿がなされる。始まりは9月。


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1702297761235001700


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1702460632807993702

上記の様に埼玉県の秩父長瀞の河原で羊を解体してバーベキューをやっているという「証言」があるという投稿をし、そしてこの投稿が下記の様にまとめサイトに転載されることによりさらに流布するという状況が生み出される。


https://twitter.com/nonbeiyasu/status/1702770688191586421

そして少し間が開いた12月にふたたびいくつか同様の投稿を石井は行う。


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1732928566789038468


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1737334257595593201


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1737653973262401796
※引用元の写真は園芸センターヤマオカが所持する牧場とヤギであり、クルド人は関係ない*4。引用元は近くにクルド人解体屋が存在しており窃盗を心配している体でありそれは石井孝明も同様なのだが(「クルド人=山賊」と解せる表現は論外だが)、なぜかこの牧場がクルド人によるものだと勘違いしていた人間も存在している。それは単純に事実と反する。


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1737819685675213027

12月21日の投稿では「長瀞」は消えて「飯能」が追加されており、また「河原」という場所は消えている。ただ一連の発言を素で信じるならば「秩父」、「長瀞」、「飯能」においてクルド人が羊、もしくはヤギを河原で解体しており、そしてその「目撃情報は多数」だということになる。


農林水産省HPに存在する地図から作成

クルド人が主に居住している場所が川口市であり、そこから秩父長瀞、飯能となるとそれなりに距離が離れており、そこで羊などを解体してバーベキューをしているという状況はやや不思議だが、好意的解釈をすれば娯楽としてのキャンプをしに遠出をして現地で解体を行っている、という解釈は成り立つ。ただ「目撃情報多数」にしてはX上において河原で羊、もしくはヤギなどの動物を解体している外国人の投稿は石井の投稿以前以後、いずれも特にみられない。つまりはこの話の発端は石井孝明が媒介した「証言」となる。この「証言」なるものが石井孝明自身が取材して対面した相手から聞いたのか、それともDMなどネット媒体によって得たものか、果たして実在するのかさえ不明だがいずれにしてもその実態は不透明と言える。ただ少なくとも石井の投稿を読む限りは決定的な証拠のようなものはないと見える。

自治体への問い合わせ

 ネット上の情報だけでは河原での動物解体は不透明であるのでこの件について各自治体にその様な事例や苦情などは存在するかどうかを尋ねてみたところ、以下の様な返答を頂いた。

秩父市
生活管理課
お問合せ頂きました河原でのヤギ・羊の解体に関しましては、市に対する苦情や目撃情報等は届いておりません
なお、ヤギ・羊の解体は、と畜場法が関係すると思われますので、その関連業務を行っている埼玉県(食肉衛生検査センター北部支部)や、河川(水路)の管理者等へ情報提供を行いました。
飯能市
農業振興課
本日時点で、本市に対し本件に関する市民の方からの苦情や目撃情報は寄せられておりません
また、関係機関からの情報提供も受けておりません
今回いただきました内容をもとに、今後につきましても情報収集に努めてまいりたいと考えています。
長瀞町
お問い合わせいただいております件につきましては、現在のところ、当町へ苦情や目撃情報は入っておりません
また、実態の把握のため、関係機関、関係部署と連携し情報を収集しておりますが、こちらにつきましても情報は得られておりません
今後も引き続き、河川管理ならびに環境衛生保全のため関係機関、関係部署と連携し情報収集を行い、事実であれば然るべき対応を検討してまいります。

当事者といえる三つの自治体はその様な苦情は届いておらず関係機関からの状況提供も受けていないとあり*5、事実上は石井孝明による情報は否定された形となる。石井孝明がいうところの「目撃情報多数」の「多数」が石井孝明にだけ情報を流し、各自治体などへの問い合わせもせず、SNS上での投稿もしていなかったという可能性も決してゼロではないが、その可能性は低いと思わざるを得ない。そもそも石井孝明にどの様な情報がもたらされたのかも不明であり、石井のHPにも該当記事は挙がっていない様に見受けられる*6。邪推をするならばこれらは虚偽の情報提供に釣られたか、もしくは自らによる情報の捏造の可能性もゼロではない。石井孝明氏は「ジャーナリスト」を名乗っているので裏どりをしているだろうし、そんなことはないと信じたいものだが現状では「クルド人が河原で動物を解体」という情報は疑わしいと判断せざるを得ない。



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*1:騒動の背景については、週プレ「在日外国人の暴走に「住民は恐怖している」は本当か? 現地で見えた埼玉県川口市「クルド人騒乱」の真実」が詳しい。

*2:例えば4月15日~4月20日において「クルド人」でRT数が100を超えるものを見るとネット右派系と思われる投稿が目立つが、それ以前の時期において2023年4月1日以前の「クルド人」でRT数が10以上を見るとバッシングと言える内容の投稿はほぼ見受けられない。ただし例えば外国人排外投稿を主に行いデマも多い高安カミユによるクルド人の危険性を煽る投稿なども存在はする

*3:当該アカウントはそれ以前から「クルド人」を含む投稿をしていたが、ここまでの執拗な投稿はこの時期から

*4:ヤマオカのHPはないが、こちらの学校の「ヤギさんと散歩」というページを見ると状況がわかる。

*5:「関係機関」が何処までかは不明だが、こちらとしては埼玉警察に問い合わせを行っていた。しかしながら問い合わせをしてから1か月以上たっても返答がない事から警察が情報を持っているかまでは不明。

*6:例えば「河原」で検索しても記事はヒットしない

穴水高校における自販機破壊案件に関してのメモ ~読売新聞を含めた記事の変遷~

nou-yunyun.hatenablog.com

 上記内容の続き。
 1月20日に読売の報道があり、それ以降も他社を含めた複数の報道が存在。この記事では読売を中心としたそれらの報道の流れを見てゆく。

1月6日

 まず、6日朝に読売新聞が「石川・穴水の避難所、40~50代の集団が自販機破壊し金銭盗む…目撃者「避難所がパニックに」」という記事を掲載する。この記事の大きな特徴(印象付け)としては下記の部分が挙げられる。

同日午後8時頃、校庭に金沢ナンバーの車が見え、40~50歳代の男女4、5人の集団が校内に入ってきた。集団は「緊急だから」とだけ話し、女の指示を受けた複数の男がチェーンソーとみられる道具を使って自動販売機を破壊し、飲料水や金銭を盗んだという。

「金沢ナンバー」とあり県内ではあるものの地元以外の人間でありえそうなことであり、震災後数日後に流布した地元以外の不審車両デマを想起させる表現である事。この部分は「金沢ナンバー」が事実であるので読売が不審車両デマを意識してまで用いたのかは不明だが表現手法としては同類のものと言える。またそのあとに「4、5人の集団」、「道具での自販機破壊」、「飲料水や金銭を盗んだ」という書きぶりから「震災に乗じた窃盗団」を思わせる記事内容になっている事は指摘できる。なのでこの記事が当初報道された時点では「震災に乗じた窃盗団についての報道」という反応が多数見られた。しかし、この読売記事は避難所にいてこの件に関わったであろう当事者アカウントからの反論、また6日夜の北國新聞〈1.1大震災〉自販機破壊、避難者のためだった 「飲料水確保するため」 穴水高」によって自販機破損に関しては飲料水などを確保する為に避難者の一部による行為であり、また石川県警によって「事件性はない」という判断がされたという追加報道が行われる。つまり、この時点で読売の報道が匂わす「窃盗団」的な存在はいないことがほぼ明らかになる。

1月20日

 そこから少し時が過ぎての20日に読売は追加報道として「石川・穴水の高校に設置の自販機破壊、北陸コカ・コーラが被害届…住民ら100人避難先」を掲載して話(論点)が変わってくる。初報からの一番の変更点は「窃盗団」というニュアンスを消した報道といえ、例えば6日の読売記事に記述のあった「飲料水や金銭を盗んだ」という表現は消え、以下のように「飲料を取り出して避難者らに配った」としている。

目撃した男性らによると、同校には1日午後4時過ぎの地震発生後、住民ら100人ほどが次々と避難してきた。午後8時頃、4、5人の男女が「緊急だから」と周囲に告げながら校内にある自販機を工具でこじ開け、内部も破壊し、飲料を取り出して避難者らに配ったという。

また「金沢ナンバー」という情報も消えており地元以外の人間であることを示唆する情報も消えている。この様に「窃盗」という部分は後退してはいるものの無断で自販機破壊と共に次のように「校舎は施錠されていた」、「窓ガラスなどが壊れていたため、校舎内に立ち入ることができた」などの無断侵入を想起させる表現があり、違法性を匂わせる部分は存在する。

校長によると、校舎には当時、同校の教諭や事務員はおらず、自販機を破壊する許可は出していなかった。校舎は施錠されていたが、地震で窓ガラスなどが壊れていたため、校舎内に立ち入ることができたという。

後述する21日の記事を見ればわかるが事件とされる20時には校内に100人ほど避難者が存在しており、ならば全避難者が(おそらく)無断で侵入したともいえる。この表現部分は読者に対して当時の避難所の状況説明をしただけともいえるが、ミスリードを誘っているとの判断も可能とはいえる(ちなみに続報である21日版だと「校舎は施錠されていた」という表現はない。とはいえ文脈から施錠されていたとは判断はできる)。そして20日の読売記事の一番のポイントは見出しにもある「北陸コカ・コーラによる石川県警の被害届」だろう。読売としてはこれをもってして初報が誤報ではない、というロジックになると思われるが*1、当初匂わせた「窃盗団」的な存在を有耶無耶にして「無断で自販機破壊」のみに焦点を当てていることから内容の軌道修正が見られる。記事の最後にコカ・コーラの担当者が「自販機を壊してもいいという許可は出していない。緊急時だからといって、壊して飲料を取り出すことを認めることは出来ない」という言葉を紹介していることからも論点をこちらにずらしている。しかしこの北陸コカ・コーラの担当者の発言に関しては、北國新聞が21日朝に「穴水高の自販機破壊で被害届 北陸コカ「罰したいわけでない」」という記事をアップしておりそのニュアンスの違いが興味深い。内容としては「罰したいわけではなく、自販機を破壊された以上、被害届を提出しなければならない」とある様に実行者そのものへの刑罰を望んでいるとは言いにくい。また緊急時には壊さずに自販機に表示された問い合わせ先に連絡という旨も紹介しており、情報そのものはそこまで違わないものの論調は読売よりも温情的といえる。少なくとも北國は実行者たちを「犯人」かの様な書き方をしていないといえる。この発言を20日記事の読売新聞を把握していないとは考えづらく、意図的に今の様な表現にしているとも考えられる。

1月21日

 そして21日朝にも読売は「避難先の自販機破壊は計3台、責任者の許可得ず…カギ開ければ無料で取り出せる「災害支援型」」という記事を出している。より詳細な記事であり、論調そのものは20日の記事のアップデート版と言える。ただし、以下の様な差異も存在する。

複数の学校関係者の話では、校長や事務長などの責任者は不在だった。

上記は21日の記事だが、20日の記事では「校長によると、校舎には当時、同校の教諭や事務員はおらず」とあり、責任者ではなく学校関係者の不在ととれる表現であった。これが21日の記事では「複数の学校関係者」による発言として「責任者は不在」となり微妙に修正が図られている。つまりはいつ取材をしたかは不明だが20日記事の「校長」の認識は関係者の不在だったが、「複数の学校関係者」の認識では責任者の不在であり、とすると教諭などの関係者は発災日当時に現場にはいたと考えられる。校長に関しては1月4日に初めて学校に訪れたという証言もあり*2、校長は発災当日の状況に関しての認識が拙い可能性、ひいては校長に対する当時の状況の情報伝達が正しく行われていたのか疑問符がある。それと21日版には20日版にあった「校舎は施錠されていた」という表現が消え、地震で窓ガラスなどが壊れていたために立ち入ることが出来たという表現も次のように微妙な言い回しの違いが見られるし、さらに今までにない情報として次のようなものをあげ、この自販機破壊は避けられた案件だったのではないかという可能性を示している。

災害時には鍵で扉を開け、無料で商品を取り出せる「災害支援型」だった。校長によると、鍵は学校が同社から預かり、事務室で管理していたという。学校の責任者に連絡していれば、自販機を壊さなくても飲料を確保できた可能性がある。

また記事の締めとして専門家のインタビューとして犯罪行為に当たる可能性や冷静な対応を求める発言を取っており、論調としては自販機破壊という行為そのものに懐疑的で拙速な行動であったのではないかということが見て取れる。この21日記事も20日記事と同じく「窃盗団」というニュアンスは消えており、自販機破壊の是非の様な話へと論点が移っている。そしてこの記事によって壊された自販機は3台あるとするが北陸コカ・コーラ以外の明治、雪印メグミルクは現状のところ被害届を出したという情報はない。
 21日夕方に今度は中日新聞が「地震直後の避難所で自販機3台壊し飲料を確保 「罪に問われる可能性」と弁護士指摘、非常時なのに?」という記事を掲載する。ここで次のようなことが明らかになる。

100人以上が避難した同校は停電して自販機が利用できなかった。車中泊をしていた女性は複数の避難者が「飲み物が必要だから自販機を壊そう」と話すのを聞き、ジュースを受け取った。「物資がない中でうれしかった」と振り返る。

件の自販機は「災害支援型」であり災害時に無料で商品がとれるタイプだったものの、当時の穴水高校は停電によって自販機が利用できない状況だった。読売がなぜ停電によって自販機が使用できない状況であったのかを記述しなかったのかは不明だが(付け加えればこの日の記事に限らず、読売の一連の記事において「停電で使用できなかった」旨は記述されていない。)、カギがあれば開けられたという状況の説明をするならばこちらの情報も必要だったと思われる。記事内容自体はやはり自販機損壊の是非、というよりも専門的に見ればやはり次の指摘に収束はするのだろう。

今回は管理会社に連絡するなど他に取るべき手段があったため、緊急避難に当たるとは考えづらく、民法上の損害賠償責任を負う可能性も高い。

なお同記者によるほぼ同内容の記事が1月22日の東京新聞「非常時とはいえ…飲み物確保のために「自販機破壊」は許されるのか 能登半島地震直後、避難場所で発生」という記事名で掲載。特に新しい内容はないが、中日新聞版にはない”お金の保管場所も壊された。”という表現があり、ここだけ読むと金銭が盗まれた可能性があることを匂わせているとはいえるが、盗まれたかどうかは記事だけを読むと不明。

1月23日

 23日朝にも読売は「自販機破壊で1人から謝罪、北陸コカ・コーラは弁済求めず」という記事を掲載。この記事によって破壊した一人からの謝罪及び、北陸コカ・コーラは以下のように北陸新聞時記事の様に罰するつもりさないこと、そして弁済は求めず被害届は経理上の都合であるとも記載している。

「罰するつもりはない。平時であれば被害弁済を求めるが、今回は事情が異なるため申し出を断った」としている。被害届については、自販機損失の経理上の都合で取り下げる予定はないという。

読売の初報からの流れを考えるとこの部分は「犯人による罪の告白とそれを許す権利者」という邪推もできる構造ではある。20日北國新聞には同じニュアンスで存在した北陸コカ・コーラの温情的とも言えるコメントが23日版にようやく書かれているが、その遅さにはやや意図的なものを感じざるを得ない。
 そしてこの23日には産経新聞「切羽詰まり」 能登地震の混乱で自販機破壊 関与の女性が謝罪 災害支援型も停電で機能せず」とNHKによる記事「地震発生時 住民が避難した穴水町の高校で自動販売機壊される」という記事も掲載される。この二つの記事は各社の初報だけあって状況説明と謝罪の件などが記述され、当時責任者が不在であったことも書かれているが、一連の報道の流れとして注目すべきは次の場所だろう。

<産経記事>
同社によると、被害を受けた自販機は、災害時に専用キーを差し込むと支払いなしに商品が得られる状態になる「災害支援型」だった。キーは学校側が管理していたが、同社広報担当者は「当時は停電していて自販機が通電しておらず、仮にキーがあっても無償で取り出すことはできなかった」とする。

 

NHK
設置していた自動販売機は「災害支援型」と呼ばれるタイプのもので、通電していれば、管理者やメーカーの担当者が専用の鍵を使って操作することで飲み物を無料で取り出せるようになるということです。
ただ、穴水町では、地震のあと全域で停電となり、当日は元日で鍵を管理している教職員がいなかったため、災害支援のための機能が使えなかったと見られるということです。
メーカーでは、停電時でも作動する自動販売機の展開を始めているということで、今後、増やしていくことも検討しているということです

NHK記事であるとカギには触れてないのでわかりづらいが、産経の記事によって読売の21日版にある「カギ開ければ無料で取り出せる「災害支援型」」という見出しに対して、カギが例えあっても飲料などが取り出せなかった可能性が高いことを示唆しており読売記事は記事の状況説明が足らないと指摘できる。なお事業者は上記二つの記事に限らず緊急連絡先に連絡してほしいという話もあるしそれは正論でもあるのだが、そもそも緊急連絡先に連絡が不可能な状況でもあったために実行が難しいアドバイスでもある。それと派生記事としてNHKは24日に「自販機 災害時どうすれば?災害支援型には複数のタイプが…」という記事も掲載している。記事では事件の概要に触れつつ停電しているときでも取り出せるタイプであるバッテリー式、ハンドル充電式、ワイヤー式などの説明がされており、23日記事を含めて今後の災害支援用自販機が変わっていく可能性を示唆している。それと23日には中日新聞も「自販機を壊した女性、コカ・コーラへ謝罪 「気が動転」告訴はしない方針」という記事を掲載するが、こちらには新情報と言えるものはないので内容は割愛。

1月24日

 1月24日の日テレ「災害時の自販機…どう活用? “無料で取り出し”「災害支援型自販機」」が放送される。この記事も今までのまとめの様な内容だが、他の記事にはなく、そして重要なのは以下の一文である。

北陸コカ・コーラによると、自販機の中にあったお金は警察に預けられていたそうです。

これによりようやく1月6日の読売記事にある「自販機破壊し金銭盗む」の、「金銭盗む」が否定されたといえる。この記事では北陸コカ・コーラのみについての記述であり、他の二社の自販機の金銭についても同様の対応を行われたのかは不明だが通常の思考で考えれば他の二社の金銭は盗まれていたという可能性は低いだろう。つまり読売新聞の初報である「自販機破壊」に対しては否定もしようのない事実だが、同見出しに存在した「金銭盗む」という窃盗団的な報道部分は誤報であったと言える。読売を含めて20日以降の各社の記事にこの「金銭を盗んだ」という件について一切触れられていなかったのはその様な事実はなかったからだろう。そして読売はその部分についての弁明をせずに一連の報道をしていたことになる。また「飲料水や金銭を盗んだ」の飲料部分についても他二社である雪印メグミルクと明治の対応は未だ不明だが、少なくとも北陸コカ・コーラは日テレ記事に「弁済を求めず刑事告訴もしない」とあり、報道における警察の動きなどを見る限りも窃盗扱いはされない可能性が高そうではある。

 
 穴水高校の自販機破壊案件に対する報道は2月2日時点では1月24日の報道が最後となり、それ以上の報道の進展は見られない。なお私的にだが1月21日に穴水高校に対して「金銭的盗難があったか」、「その場に教諭などがいたか」、「学校施設に無断で入ったという認識は正しいか」などを訪ねたメールを送付したものの現状では返事は戻ってきておらず、10日以上経過したことを考えればおそらく返事はないだろうと思われる。震災対応などで良くわからない個人からの問い合わせに答える余裕はないとも思われるので致し方ないが、惜しむべくは現段階の報道ベースにおいて「穴水高校」の公式見解の様なものは存在しないということ。責任者として「校長」の発言が存在するがこの校長は当時現場にはおらず、当時教諭が現場にいなかったなどの発言は「複数の学校関係者」との発言と齟齬をきたす可能性があり、事実認識があやふやという欠点がある。また自販機破壊報道に対して読売に強い反論をしていたアカウントは当時事務長がいたという投稿を幾度かしており、それなりに具体的に何故そう思ったのかを述べている*3。これらの発言は意図的な虚偽の可能性もゼロとはいえないが、あえてそこまでの虚偽をいうメリットも薄く感じられ、その書きぶりからは事務長がいたか事務長と誤認出来る相手と説明者が現場に存在した可能性が高い。とはいえ、ここの状況に関して「学校」としての正式な意見を得ることはどうやら難しそうだ。
 以上、結局詳細が不明な部分がどうしても拭えない部分があるのだが追えるのはひとまずここまでとなりそう。今回、能登半島地震の発生時間は1日16時10分。ここから避難が始まったと考えると夕飯などを取らずにそのまま避難してきた人間も多いと考えられ、ちょうど夜になると飲食が欲しくなる頃合いで、そして指定避難先ではなかった穴水高校では備蓄食料も特になく、あるのは災害支援型だが停電で使用できない自販機のみ。責任者か、少なくとも鍵の存在を知る人間がおそらく近くにはおらず、そして当時穴水高校で電話はほぼできなかった状況であったことは想像に難くない。緊急時のシミューションとしてどうすべきかと考えると難しいところはあるのだと考えられる。ただ開けるための器具が手元にあったかという要素もあるだろうが、同様の状況に陥った地域自体は複数はあったろうものの自販機破壊をした案件はこの穴水高校だけともいえる。また自販機破壊というレベルまではいかなくとも類似の案件として避難所の玄関などを破壊して「侵入」した案件は複数存在している。例えば富山チューリップテレビ津波が来る!でも避難所の鍵が開かない…学校の窓ガラス割るケース相次ぎトラブルも 富山」、朝日新聞金沢の避難所8校で玄関周辺破損 解錠方法わからず?住民周知が課題」などがそれだ。元日の災害というイレギュラーとはいえ関係者がいない閉まっている避難所に入るための緊急対応としての「器物破損」はおそらくこれらの記事以上に発生している可能性はあり、今後の防災と避難を考える際の課題ともいえそう。だがしかしそれらはともかくとしてこれでは「自販機破壊の是非」という論調に乗せられてしまっている。初報では「窃盗行為」の方に報道のフレームがあったはずだ。それが後景に追いやられているが、その部分だけを見れば読売の初報の表現は取材が足りていない部分は否めずに誤報的な要素を含む記事だったことは拭えないとはいえるのではないかと。



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*1:故に前回弊ブログで記述した記事のタイトルから「誤報」を外して、お詫び文を載せるに至る。

*2:詳しくは前回記事を参照

*3:例えば「男性教諭、女性事務長、役場職員もご家族で一日から穴水高校へ避難」、「事務長、ずっとおられたよ。私は穴水町高校在籍の高校生から紹介されたので間違いありません。」などの投稿。

穴水高校における「自販機破壊による窃盗」の読売新聞記事についてのメモ

 読売新聞で1月6日6時38分に以下の記事が配信される。

石川・穴水の避難所、40~50代の集団が自販機破壊し金銭盗む…目撃者「避難所がパニックに」
被害を目撃した避難者の30歳代男性や同校によると、発生したのは地震発生直後の1日夜。当時、避難者が続々と校内に集まり、100人ほどが身を寄せ合っていた。学校は地震の揺れでほとんどのガラスが割れており、誰でも自由に入れる状態だった。
 同日午後8時頃、校庭に金沢ナンバーの車が見え、40~50歳代の男女4、5人の集団が校内に入ってきた。集団は「緊急だから」とだけ話し、女の指示を受けた複数の男がチェーンソーとみられる道具を使って自動販売機を破壊し、飲料水や金銭を盗んだという。
 目撃者の男性は「けたたましい音が学校中に響き渡っていた。避難所はパニックになり、誰も止められなかった」とおびえた表情で語った。同校の島崎康一校長は「避難者も不安に感じているので、許せない」と憤った。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240105-OYT1T50183/
※7日13時ごろに記事削除

しかしこの報道自体は北國新聞の同日23時32分配信の検証記事で誤報であることが分かっている。 (読売が1月20日に続報。「誤報」というレベルではないかもしれないのでこの部分は撤回いたします。)

〈1.1大震災〉 自販機破壊、避難者のためだった 「飲料水確保するため」 穴水高
自販機を壊した人は「自分も避難者で、飲み物を確保するために自販機を壊していいか(管理者に)確認した」と話しており、石川県警は事件性はないとの見方を示している。
https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1282981

なので基本的に検証する必要はないものの一応残しておくためにメモ。北國新聞の記事が出る前の話で、読売の記事が出た後に当時穴水高校に避難していた方が反論を書いており、それが拡散していた

まさにこの穴水高校に避難していました(今は愛知の実家に一時帰宅しています) 裏取りしてこの記事書きましたか?憶測で、見ただけの事を記事にしないでください。高校の備蓄が、僅かな水しか無かったから、仕方なくパンを取り出してくれました。飲料水としてジュースでしのぎました。支援のこない状況で道路も寸断されていたので、次の日から我が家と職場から食料持ち寄って130名分の炊き出し始めました。
集団で車で入ってきた?あんなに道路がズタボロで来られる訳ないでしょ。ナンバーの確認?そんなの帰省してる他県ナンバーいっぱい居たじゃん。
避難メンバーの正確な記録を取るために、1台ずつ、果物を配りながら名前記録しました。不審者ひとりもいませんでした。報道が入ってきた辺りからのがよっぽど怪しい人増えた。トイレの使用、水……勝手に持っていきませんでしたか?
センセーショナルな写真と内容で人目引くのはやめて下さい。
https://news.yahoo.co.jp/profile/comments/4cfb2a21-ea79-4474-8b51-c9b769e45c17

北國新聞によりこの方の証言は肯定できると言え、さらにその後の投稿において以下の様なことは明らかになっていると言える。


https://twitter.com/HARUpin_u/status/1743686246139101363


https://twitter.com/HARUpin_u/status/1743725653797843228


https://twitter.com/HARUpin_u/status/1743740262848065937


https://twitter.com/HARUpin_u/status/1743773365863944671


https://twitter.com/HARUpin_u/status/1743743997401805042


https://twitter.com/HARUpin_u/status/1743746833409769933

・穴水高校は本来の避難所ではなく備蓄が少ない
・写真以外のパンの自販機も同様の行為をした
・事務局長の許可を得た
・お金は事務局長に渡した
・読売で証言をした校長は4日に来て当時の状況を知らない
・自販機は古いタイプ
・チェーンソーではなくサンダー

というもの。ちなみにその他の目撃証言として、


https://twitter.com/ter_bou777/status/1743575722525175999

これは2日に穴水高校に来た人の証言(投稿自体は6日)。「バーベル」といっているが「バール」のことだろう。この写真の一部を拡大すればわかるが、この時点で少なくとも小銭は盗まれていないことがわかる。

ただ2日来て現場にいなかった人の話時点でもはや窃盗的な扱いを受けているとも言え、現場レベルでは情報の行き違いが発生したことが窺える。これは別アカウントの以下の様なやり取りからも伝わる。


https://twitter.com/5oripon/status/1743543017615855682
※上記投稿に対して1日当日に穴水高校に避難していたアカウントがRTしていたことを付記する


https://twitter.com/5_UGER/status/1743573951421583491

上記は現場にいた避難者の知り合いに聞いた話と受け取れるが、これらを見る限り現場レベルでは「お金回収」、「飲食の配布」の話が周知徹底していなかったことが見て取れるし、それは現場にいた避難者の総意としての行動というよりも一部グループの話内で進んだと考えられる。避難者が150人という事が本当と考えればおかしくはない。

ちなみに7日時点の石川県防災ポータル上では避難人数は200人。この人数が何日何時時点かは不明であるものの初日に150人近い人間が避難してきてもおかしくはない。読売にある「緊急だから」という証言に集約されているといえる。また「サンダー」を知らない人間が「チェーンソー」という分かりやすい機器名に変化したとも考えられる。先生などの現場の人間がそこに関わっていなければ怒るのは不思議ではない。
 読売新聞の報道はわかりやすい写真と現場にいた人間の目撃証言及び校長の弁を取っており、北國新聞らの事情がない場合ならばこれ単体で報じても問題ない報道の類ではあった。しかし実際のところはもう少し証言などを探っていけば「窃盗」という扱いで記事にして良いかはわかっていた可能性が高いし、情報精査が不完全のまま勇み足の誤報の類と言って良い。この報道を受けて中国人かと言っているような投稿も見られたので、読売への批難は免れ得ない。


【17:30 追記】
 見逃していましたが、反論を書いていた投稿者がさらに詳しく書いていたので追記。

https://twitter.com/HARUpin_u/status/1743789247981830254

この画像にくわえて1月4日まで通信障害との情報が投稿に記されている。これは自販機の写真をあげたアカウントである「たぁ@ter_bou777」も1月2日の投稿後に5日の投稿でようやくネットが繋がったとかいている事から当時現地がネット不通状態であったことがわかる。


【1月20日 追記】
 読売新聞が続報。

石川・穴水の高校に設置の自販機破壊、北陸コカ・コーラが被害届…住民ら100人避難先
自販機を管理する北陸コカ・コーラボトリング富山県高岡市)は、石川県警に被害届を提出した。
(略)
担当者は「自販機を壊してもいいという許可は出していない。緊急時だからといって、壊して飲料を取り出すことを認めることは出来ない」と話している。

読売初報の様に現場にいなかった校長は破壊に納得していないし、壊された企業側からしたら緊急時だからと言って破壊は認めないというスタンスといえるか。ここは文字通り企業側からしたら緊急だからとはいえ破壊するなという事だろう。なお反論をしていたアカウントの証言と大きく食い違いが出ているかもしれない部分として以下が挙げられる。

校長によると、校舎には当時、同校の教諭や事務員はおらず、自販機を破壊する許可は出していなかった。校舎は施錠されていたが、地震で窓ガラスなどが壊れていたため、校舎内に立ち入ることができたという。

証言者によれば「事務局長」がいたとのことで、ではこの事務局長は誰かとはなる。1月1日なので学校関係者がいなかった可能性は高い。ただ石川県の公式的には1日の17時45分には避難所が開設しているとあり(ちょっと追記。「翻って開設」の様に時間軸をさかのぼってこの時間に開設したという解釈の可能性もある。)、それが誰かは不明なもののこの時間に設置したと判断できる人物が当時の現場にいても不思議はない。もしくはそれが「事務局長」か。備蓄食料がなかった状態なので関係者がいない可能性のある現場の判断での緊急的な器物損壊をしたことと、それに対して現場にいなかった関係者がその行為に対して怒り、被害届を出すこと自体は両立する。つまりは北國新聞の「石川県警は事件性はない」と判断したのと読売による「北陸コカ・コーラが被害届」も両立はする。読売は初報の記事を削除したものの今回の記事も論調そのものはその延長線上ととれる報道。ただし「チェーンソー」が「工具」に変更したり、「避難所がパニック」に類する情報はなくなり「金銭を盗んだ」の下りもないなど事件性を感じる部分は続報では感じられない。

【反論アカウント「HARUpin_u」が記事に反応していたので追記とそれに伴いやや表現を修正】
読売新聞は反論していたアカウントとコンタクトを取っており、読売の続報はそれを受けての追加取材後の記事と言える。ただし「HARUpin_u」は再度いくつかの反論をしている。初報における窃盗部分がなくなった事に対してなどの論調の変化に対するものなどがあるが(実際に読売の初報から続報にかけて、この部分の変化が見えるという事は読売の初報内容のまずさと言える。)、一番の反論のポイントは以下の点だろう。


https://twitter.com/HARUpin_u/status/1748606708694609922

これが事実ならば読売の追加記事は誤報となるが、これらの真偽を判断することはこちらからは判断が付きかねるので言及は出来ない。ただ「事務局長」なる人物は「事務長」だとのこと。主張が真っ向に対立しており現時点でどうなるかまでは不明といえる。

【お詫び】
 今回の記事に伴い当初記事タイトルに「読売新聞記事の誤報について」と、「誤報」をつけていましたが読売はスタンスを曲げたとは言えない続報であり、その内容からは「誤報」という強い批難に値するかは疑問であると判断し、本記事タイトルから「誤報」は削除しました。これは北國新聞記事と証言者の発言に引っ張られ過ぎた当方の落ち度と言えます。「誤報」という言葉には強い誘導が伴う単語であり、使うには慎重であるべきでした。この場を借りて読売新聞、並びにこれを読まれた方にお詫び申し上げます。


追記分。

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能登半島地震における不審車両デマ

 以上の様に現地と思われる場所で貼られた張り紙に不審車両情報が載っている。明確に記載されているのが「岐阜 400 ひ 86-67」と「神戸 68-36」の2台。しかし、2台とも既にSNS上でデマであると指摘されている。ただ前提として現地で詐欺と思われる案件が確認自体は北國新聞が報道しており、志賀町長がそういった発言をしている。つまりは現地において詐欺的な犯罪行為や窃盗などと思われる行為があることの理解も必要。ただしこの志賀町における「詐欺と思われる案件」が実際にどのようなものであったかまではいまだ不明である事にも留意。なお、一枚目の画像は老人ホームに貼られている紙だとのことだが、それを投稿しているアカウントは「ゴリゴリな方々が貴方がたの討伐をする ために、アップを始めました。」と暴力を示唆している。アカウントは削除済み。


https://twitter.com/0816Jimmy/status/1742828068618768412/photo/1

岐阜 400 ひ 86-67について

別ver

 まずこのナンバーが拡散されたきっかけは上記の様な画像群(他にもあるが割愛)。これがインスタグラム当たりで流布していたものがXにまで来て以下の様に紹介されて拡散される。


https://archive.is/JBtfl

志賀町と限定した一枚目の投稿を見る限り、上述した北国新聞との報道と合わせて現地でこのような情報が出回っており、そこに「岐阜県」という県外のハイエースが目撃されたことで「怪しい」となってこのような情報になったものと考えられる。しかしながら当該ハイエースに対しては下記ですでに検証済みで、通信設備復旧のために被災地入りしているイズミ通信の車両。


https://twitter.com/geo_vitya/status/1742813792919323046

また現地で実際に尋ねている人がおり、そちらでも通信機器の整備であるとしている。

Xで該当情報を広めた上記アカウントは既に謝罪済みだが、その謝罪の前段として一度、該当会社の人が通信設備のためにはいった車と指摘したところ、デマ拡散アカウントからそれなりの情報を提示してくださいという詰問があるなどひと悶着であったりと指摘アカウントはアカウント削除の憂き目に遭っている。会社などの情報を述べなかったのは匿名アカウントなだけに自身の所属会社を述べることによる身バレを気にしたと思われるが、過剰な詰問だったと言える。ちなみに何故かこの岐阜ナンバーハイエースと下記のカップラーメン1500円のぼったくり販売が紐づけられているが、何故かは不明であるし元々のカップラーメン1500円投稿をしたインスタアカウントは現在投稿を削除しているか、ストーリー削除のために内容は確認できない*1。こちらも伝聞情報の域を出ない。

神戸 68-36について

 写真などもなく何処の情報から拡散しているかまでは不明だが、ただ下記指摘アカウントの祖父母が住んでいるのが志賀町であることから、「志賀町にいる県外のハイエース」ということで「不審」だからピックアップされたと考えられる。ただ該当車両を所持しているのは祖父母の身を案じて駆けつけた車。


https://twitter.com/mika_Leone/status/1742745432575590664

該当アカウントは個人でいくつかのアカウントにリプライなどで訂正活動を行っている。該当アカウントの親戚だとおもわれるアカウントも自分の親戚の車だとも投稿、さらには知り合いの親戚の車という投稿もあり、身内や知り合いにも訂正投稿を頼んだか自発的なのかまでは不明なのものの複数の証言があります。少なくともこれらの投稿の方が真実性が高い。

マイクロバスに乗った中国人窃盗団

 これはtogetterにある「能登の被災地で「マイクロバスに乗った中国人窃盗団」というデマが拡散中。情報源の消防団長は「誤情報だった」と認める。」が詳しく、そこに基本的には依拠。これも舞台は志賀町

インスタではこのような感じの注意喚起が消防団からの情報として流れる。上記まとめにはないが1月3日21時50分時点で中国人が窃盗しているという投稿がX上になされている。


https://twitter.com/kose8pikapika/status/1742528873567555588

この後の22時25分(下記スクショはアーカイブなので時間がずれてます。)に下記の様に情報の出所が消防団であることがわかるLINEが投稿されており、これが現地の関係者に出回っていたのかもしれない。


https://archive.vn/8a2wN

LINEでは「中国人」という情報はないが、この前の投稿を見る限りは「中国人」という情報は一部で漏れ伝わっていると考えられる。また付随されている写真のハイエースは今まで見てきたようにデマであり、このLINE投稿はデマを用いたものになっている。 そして実際にデマであり、1月4日の午前2時46分、消防団長自らが確認し中国人による窃盗は誤報であったと投稿される。


https://twitter.com/FUKURA58/status/1742603448191943027

この消防団長が何故「泥棒、入られたそうです」と判断したまでかは原因が不明だが、ただ前段として事前に出回っていた「ハイエース」情報から窃盗団の情報を想起した可能性が高い。また「中国人」という情報が付記されたのもSNS上における震災以前からある外国人犯罪者像としての「中国人」からの発想と考えられる。これらから「県外のハイエース」が不審と不安からデマを生み出し、そしてそのデマがさらなるデマを生んだ一例と言える。

 以上の様に志賀町において「県外」の人間が不審者であるとされる傾向が見られる。これは以下の投稿からも見て取れる。


※この画像に対して「足立ナンバー」という情報を付加された画像も存在しているが、この情報は全く拡散はされていない。

上記画像の該当アカウントはストーリーで公開したのか、現在投稿削除済みだが上記アカウントの投稿自体もどこからの転載の可能性が高いし、写真とナンバーを書いた紙の組み合わせは別の人間がやった可能性が高い。この写真自体にはハイエースは映っていないし、遠くで写真を撮られている人間が本当に「悪いことしてるのこいつらだそうです」にあたるような人物かも不確かとしか考えられず流言の域にあると言える。また志賀町でスモークを貼った県外ナンバーのハイエースを見て注意喚起をしている投稿も存在。上記に挙げたのは結局はデマであるが、ただしそれが志賀町における集団心理状態であり、インスタグラムなどのSNSがそれを加速させて今回の様に現地以外の人間の目にも入っていると言える。

大阪の黒のハイエースについて

 これはデマとまでは確定は出来ないが、注意すべきハイエースとして大阪とされる黒のハイエースもあるのでこちらについて。この件は以下の事案の事だろうが、しかしながら作成された画像では黒のハイエースとだけあり「大阪」がどこから来たのかまでは不明。

この事案は4~5人の男性が女性を連れ去ろうとしていたという話で衝撃的だが、黒のハイエースの目撃情報、写真などは皆無であり、なんらかの確度の高い情報は現状において存在しない。つまりは伝聞情報のみで流言の域を出ない。また誘拐系の投稿で言えば「子ども達をさらう誘拐が多数発生」というものがあるが、その様な報道も現地の声も存在しないことからこちらも流言の域を出ない。

能登町鵜川のハイエース

 大きく拡散しているのは上記2台なものの、他には以下の様な投稿がインスタグラムに存在。

これは能登町の鵜川に関する投稿。文を見ればわかる様に元々は横画像だったものを、インスタ投稿で見やすいようにか縦画像にして不審車両と危険性を訴える文をさらに付け加えているし、ナンバー特定を呼びかけており「自警」の促しでもある。話はやや脱線するけれど、インスタ投稿は元画像に対して新たな文章を載せる投稿などが多い。話は戻り、ただしこの車両については持ち主がインスタに投稿している。


https://www.instagram.com/mi2noli/p/C1o4TBYSntL/

これ俺のハイエースです、自分の住んでるところから、車で10分くらいのところに住んでる母へ、もちろん石川ナンバーです、川からバケツに水を汲んでトイレや使い水にしてと、届けてるところを撮られ、SNSにあげられました、あげた本人もすぐに特定でき、訂正と削除してくれたのですが、一度上がったのは、やっぱりというか、予想以上というか、凶器持ってるかもなど、尾ひれがついて話大きくなって拡散されちゃってます。
SNSとかネットの怖さというか、ネットリテラシーの低さというか、母の部屋で、休憩してたら、窓の外が騒がしくなったので、外を覗くと、地元の青年方が、「オラ〜ッ」「出てこい!」とか言ってて、見てみたら知った顔ばかりだったので、「それ俺のハイエース」「SNS上げれたのも知ってる」っていうと、皆さんも「なんや、みつのか!」ってすぐに誤報とわかってくれました。
午後からは作業に行くのも奥さんの車で回ってるので、作業効率は落ちました。

上記の投稿を見る限り、顔見知りで無かった場合には暴力沙汰が起こっていても不思議はない状況と言える。

当たり屋グループ

 ちょっと毛色は違うが上記の画像もやや拡散している。ただこれは有名なデマ。「「他県から当たり屋グループが来ている」富山で情報拡散その全文…警察に聞いてみると」、「デマ広めないで 県警が呼びかけ 「当たり屋注意」は偽情報」などを参照のこと。

 実際に現地で窃盗などの犯罪がある可能性は高いが、その反面、今出ている不審車両は大阪の黒いハイエースなど不明なものがあるもののすべてデマといっても過言ではない。大災害による不安と不信によって「県外」、「ハイエース」などのわかりやすい符号を結びつけ、さらにインスタなどのSNSで情報共有と情報の上乗せがされる事によって半ば事実と信じる人が出てきてしまった注意喚起であり、だがしかしその中身はデマでしかなかったと言える。そしてこのデマによって標的者に危害が与えられる危険性があった。以下は現地の人間ではないがラッパーの呂布カルマの発言に近しい思想の人間が現地にもいても不思議ではないし、実際にいる可能性は高い。


https://twitter.com/Yakamashiwa/status/1741751568490484173

ただ今回の一連の流れを見ればわかる様に、そもそも確たる情報など一つもないのに「怪しい」だけが独り歩きしているのが現状であり、ただの印象で暴力が発動される危険性すらあった。外国人などの属性による偏見と先入観も無意味だ。警戒そのものは否定しようがないが、不確かな情報の下での警戒と情報の拡散は何の益にもならない。不安を下敷きにした不審の共有と増幅でしかない。その情報が人を殺す可能性がある。
 「井戸に毒」はジョークにはなりえない。



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*1:該当アカウントの投稿は0件になっている。https://www.instagram.com/manabu.hirose.126/

パレスチナ・イスラエル戦争におけるAI生成画像 その2

https://nou-yunyun.hatenablog.com/entry/2023/11/04/090000

 これの第二弾。第一弾に付け加えていたのだけど、やはり新規に。

廃墟の中で食事で輪になるガザ住民

11月6日ごろから流布インドのメディア司会者の投稿によってバズる。わかりやすい破綻として、画像左下の青い服を着た少年の右腕が2本ある。

入院するネタニヤフ首相

10月9日ごろから流布。大きな破綻は見られないけど、ネタニヤフとされる人物がやけに肌艶がよくてきれいすぎる。戦争初期のデマなのだが、ネタニヤフは入院してないので情報含めてのデマ。

廃墟の中で食事で輪になるガザ住民

おそらく10月13日ごろに流布し始めた画像*110月15日の投稿では万バズしており、この画像をアイコンに使用してるアカウントも存在。子どもがかけているパレスチナ国旗の柄があり得ませんし、右肩近くの部分では衣服と不自然な一体化をしています。遠景に映る炎も不自然。

パレスチナに従軍するアメリカ兵

わかりやすいのはアメリカ国旗の不自然さ。ちなみに以下のようにI"’m an American"で始まる投稿で使用されているAI画像。お前はAI画像だ、というのはおいといて。


https://twitter.com/REVMAXXING/status/1737302564289249565

この「Rev Laskaris@REVMAXXING」は他の投稿でもAI画像を使用しまくっているので、そういうアカウントなのかと。


https://twitter.com/REVMAXXING/status/1737599229520957871

ほかにも色々と使用しているのだが、多いので割愛。

イカを食べる子どもたち

11月頭くらいから流布し始められたと思われる画像。バズったのは11月末くらいから。真ん中の子どもがの右手など、指に不自然な場所が見られる。ちなみに「スイカと子ども」という一連のシリーズが存在している*2

序盤の画像からもわかる様にシリーズ全体を見渡せばAIなのがわかるような造りなのかもしれない。何故スイカなのかというとパレスチナ国旗の色の配色と同じであるから抵抗のシンボル的な扱いをされているからの模様。

猫を抱く子どもたち

 足が五本ある猫。11月末から広まったシリーズもの画像。

他にもあるものの割愛。youtubeなどでは一連のシリーズを繋げたスライドショー的な動画も存在。ちなみにBBCの@Shayan86によればAI生成画像を定期的に共有するアカウントによってはじめて登場とも。

レイプ被害者のイメージとしての少女

12月23日の投稿でパレスチナヨルダン川西岸のジェニンにおいて13歳の少女がイスラエル軍兵士につかまり、レイプされ、その後に釈放されたものの病院で今夜緊急手術するという投稿がされ、その投稿に付与された画像。


https://twitter.com/Seriewoordenaar/status/1738371448626929946

このショッキングな内容の投稿の真偽は不明だが、例えばパレスチナのジャーナリストAnan Quzmarはその様な情報はないと否定しているし*3、彼が属するパレスチナのジャーナリスト団体であるPalestinian Journalists Syndicateも否定している。Ananはパレスチナ人の子どもたちの人権を守る市民社会組織のDefense for Childrenにも連絡を取り、西岸出身の12-13歳の少女が捕まった記録はない事から、少なくとも情報元の@Seriewoordenaarというアカウントのみが知る情報と現状なっている。これらのことからこのレイプされたという情報は現状では怪しい情報としか判断できないのであるが、その反面、「メディアに話したら9歳の妹にも同じことをする」という事を付け加えているために該当の行為が記録に残らない様に秘密裏に刑務所及び拷問が使用された現場の暴走である可能性そのものは否定出来ない。
 前情報としてはこんなもので、真偽は不明としか言いようない。ただしこの@Seriewoordenaarによる投稿そのものには少なくとも2点ばかりは真実が辿られないように嘘を混ぜているという。その一つが名前で「ラヤン」というのは本名ではないと述べており、そしてもう一つが少女の写真。


https://twitter.com/Seriewoordenaar/status/1738514780715925570

この画像自体は画像検索しても過去には存在するほどに流れてはおらず、また他人の写真を使用するほどの恥知らずでもないでしょう。ただ画像は大きな破綻もなく、かなり判断が難しい。ただAI判定によればAIの可能性が高いとされている。肌の質感や目に若干の違和感があるし、背景の建物はジェニンのイメージとも違う。過去にも以下の様なAI画像(足の指付近がおかしい。全く拡散していない画像)を投稿しており、今回もこの話のためにAIによって作られた画像であると考えるのが自然。


https://twitter.com/Seriewoordenaar/status/1738167605561557261

さらに言うならば実はこの投稿の約4時間前にほぼ同じ内容で投稿していますが、そちらには画像はついておらずに拡散はあまりしていません。つまりこの4時間の間に拡散させる為にAI画像を添付した、という可能性が高いでしょう。

 最後のエピソードと絡めた画像の使用は結構怖いかもしれない。ことの真偽そのものに怪しいところがあるが、画像は確実に事実と異なる。現実的な「被害に遭った少女」のイメージをこちらに想起させる。現状、AIはスイカや猫などを見れば現実っぽく見える「イメージ」としての使用が多いのだが、最後みたいに具体的な情報と写真的なイメージが付与されることによって仮にデマであってもより真実味を帯びさせることに成功している。



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*1:リンクをつけた@SprinterX99880はパクリアカウントともいえるので、どこかの拾い物でしょう

*2:画像はインスタグラムのこちらこちらから

*3:例えば、これとかこれ