韓国のゲーム業界がかなり揺れています。発端はメープルストーリーのPV中の1フレームでキャラクターが示している「手の形」が男性嫌悪、要は「チンチンが小さい事を示している」のではないかと男性ネットユーザーの指摘が相次いでいるからです。その該当画像はこちら。
何言ってるんだ？ って感じですが、この左手の形が「チンチンは小さい＝男性を馬鹿にしている」、そしてそこにこれを描いたのはフェミニストだというのも加わっており大炎上という流れ。やはり何を言ってるんだって感じではありますが、アニメーション会社は謝罪や修正をすでに表明している状態です。
https://twitter.com/studioppuri/status/1728673116979896589
さらにメープルストーリーを展開するネクソンは26日0時に問題のPVを非公開化、その日のうちに緊急ライブ放送を行い、ディレクターによる謝罪やこの「手の形」に対しても批判側の意見を受けた形で批難をしている状態で「他人に対する嫌悪を公然と表わす文化と、その文化を享受する人々がメープルを蹂躙するように絶対に許さない。」などという発言がされている状態です*1。また該当アニメーターは多数の作品に関わっており、例えばブルーアーカイブなどをはじめとして多数の韓国産ゲームが対応を追われている状況です。こういった多大な影響からネクソンは法的措置をとるのではないかといった声まで存在します（余談だが、そうなると裁判で被告アニメーターは1フレームに男性器が小さいというハンドサインを挿入して会社に損害を与えた、とかいう主張になるのだろうか……）。当然、ネクソンの対応に反対する声もあり、デモも行われました。そして今回の「事件」は政界にも及んでおり*2、韓国ゲーム業界の中でエポックメイキングな出来事になることは確実でしょう。
今回の発生の経緯
事程左様に韓国ゲーム業界に禍根を残すであろう重大な問題なわけですが、そもそもこの発生の経緯はなんでしょうかと。1フレームを偶然に見つけた？
この動画の流れで？
実際のところこの動画の流れからこの部分を見つけたから問題になっているわけですが、そもそもの発端はこのアニメではなく別の問題発覚後にこのシーンが見つけられて今に至ります。まず今回問題となった「メープルストーリー エンジェリックバスターリマスター」は、過去にあったエンジェリックバスターのリマスターとして11月23日に更新がなされ、新曲や今回の新しいアニメーションが出てきたわけです。韓国のゲーム系掲示板のメープルストーリーへの投稿を見る限り23日から25日の18時ごろまでは平穏でした。それが一変したのが新曲を歌った歌手への「フェミ疑惑」です。
https://www.inven.co.kr/board/maple/5974/2834409?my=chuchu
※自動翻訳済み。以下同様
これの投稿が11月25日の18時半。これだけだと何のことやらわかりませんが、簡単に説明すると2016年に「GIRLS Do Not Need A PRINCE」というTシャツを着てアップロードした声優がおり、それがきっかけで炎上し、やがては該当声優が交代されたという事件がありました。このTシャツの文章はわかりやすくフェミニズム的な文章で何故問題になるのかの理解が日本にいると難しいですが、後述するメガリアという男性の女性嫌悪に対するミラーリングとして男性嫌悪を行うフェミニズム系サイトがあり、そこが販売するTシャツで、さらに声優がメガリアを擁護したことにより交代にまで至りました。詳しくはナムウィキ（ナムウィキが「公平」であるかというと、批判側の男性的視点が入っているのでそこには留意してください）やBBCの英版記事に譲りますが、この2016年に起きた声優交代劇そのものは今現在まで幾度かあるゲーム業界などの大衆市場におけるフェミニズム、男性嫌悪／女性嫌悪「事件」の初発とされています。そして今回の新曲を歌った歌手は当時この声優交代に対して疑問を持ち、かたやイルベ会員（韓国の掲示板サイトの事。保守傾向、女性差別などが顕著。男性が多い）である記者が記者生活をしているというツイートをRTしたことが「発掘」されてこの歌手（나래）が「フェミ」ではないかという疑惑が論争として現れます。この件については後に歌手側が謝罪をするに至りますが、その謝罪の際の該当投稿のRT動機としてはTシャツを着ただけで解雇されたという内容をおかしく思いしたと言うものです。
そしてこの歌手の「フェミ」発見によって掲示板がその手の話題で火が付き、次はアニメそのものに目が向けられて「手の形」の「発見」に至ります*3。それが「歌手フェミ疑惑」の投稿から約50分後の25日の19時21分。
https://www.inven.co.kr/board/maple/5974/2834615?p=437
この投稿自体には疑問の声も割とあるのですが、この「認識」が広がった結果、わりと素で信じているであろう人の投稿も行われています。
手の形がたったの1フレームなので、無理があると思うかもしれませんが
한창 女の子の間でフェミが流行っていて恥ずかしくてたまらなかった
20年頃にこんなの合理的な疑い実際にたくさん上がってきていたしいろんな企業の広報映像、デザインアートなどこれよりもっと無理矢理なものも多かったけど本当に調べてみると全部フェミ工作でした。全部修正されていた
1フレームだから無理があるかもしれないって？ 彼らを見下さないでください。
こんなの一回や二回くらい1フレームならありえるだろーと思った瞬間本陣フェミに食われるのは一度や二度じゃない。
少し落ち着いたからって3年でもう忘れたのか、メバンども。
https://www.inven.co.kr/board/maple/5974/2835126?p=432
上記は20時18分の投稿ですが、もはや「疑惑」がなかば「確定事項」の様に変化している事、またフェミニズムに対する強い不信感を感じる内容です。そして20時55分にアニメーターと共に過去投稿とRTが発掘される投稿がなされて今現在にいたるという流れになります。
https://www.inven.co.kr/board/maple/5974/2835528
ほかにもスクショが撮られていますが多くなるので割愛。韓国語でわからない人が多いと思われますが、一番最初のnengneng339というアカウントが該当アニメーターで普通にアニメシーンを作った事に対する投稿です。RTも過激かと言えば、一つ目は被害者に対して350回の出会い要求や違法撮影を撮って海外にアップロードしたりのストーキングが女性嫌悪殺人で無ければなんであるのか、二つ目はイルベにいるからフェミもこんな事をするだろうと妄想を膨らませて陰謀論唱えてんじゃねーよ的なやつで以降は略しますが、基本この程度のレベルです。ちなみに本人の発言もいくつかスクショされており、
男に嫌なこと言ったからSNSのアカウントがブロックされたことはあるけど、フェミを辞めたことはないよ...... ㅇㅇはそっとそっとフェミを続けてあげるよ
このような発言からアニメーター自身がフェミニストであることは確実ではあるものの、メガリア、酷い男性嫌悪まで持っている「フェミ」かどうかまでは不明。実際にそこまで過激レベルのスクショはされてないようなので見つからなかったんでしょう。ただこの「フェミ」認定が決定打となり、他ゲームにまで波及していきます。その後にこのアニメーターや会社の関わった作品がどんどんと探し当てられ*4、以下のようにこの「手の形」が「発見」された多くの動画が非公開となります。
これでも一部で、日本でわかりやすいのだとブルーアーカイブでも非公開化された動画が存在します。そしてこのアニメーターは退社して、職を失うに至ります。
ちなみに一部ではエンジェリックバスターをリメイクした際にストーリーが「ポリコレ」に屈したからという話があり、手の形は言い訳であるという見方も存在します*5。例えばこれはオリジナルとリマスター版とのキャラクターの変身シーンアニメがわかりやすい。
これが
リマスター版ではこう変化。胸の揺れなどがわかりやすいですが、結局これも「フェミ」に回収される気はしますし、今その対象となっているのは「手の形」になってきているのでいずれにせよ議論はもう次に進んでしまっています。そう、進んでしまっている。ナムウィキの方では一種の表現狩りかの様に一例が載っていますし、
最早陰謀論的レベルの様な例も載っています。
※これは元画像を圧縮したために出現したようですが……。とはいえ「見つけた」わけです。
またこの余波がわかりやすい形で見えるのが別会社から出ているロストアークというゲームの対応です（後述しますが、ここも「手の形」で過去に批判を受けました。）。そのディレクターの発言には次のようにあります。
ロストアークは、「意図の有無にかかわらず」議論になるほどの可能性のある表現要素でも 少しでも関連性のある対象画像、モーションなどの交換作業を進めています。特定のシーンでその表現をする理由がまったくない場合や、その画像を交換しても 意図伝達に全く問題のない部分の場合、交換をしない理由が特にないため、該当基準に基づいて交換作業を進めます。
（例えば、ビキニアイランドのミニマップの場合、その地形がビキニを意味するのではなく、意味のない地形ですが、修正するようにします。何の意味もないからです。）
ロストアークはユーザーの皆さんが楽しい心でゲームを楽しむことを願っています。
そのため、特定の嫌悪文化を含む論争や不快感を感じられる状況が存在してはならないと考え、 今後も継続的にその要素がゲーム内に含まれることを指摘していきます。
※自動翻訳
https://lostark.game.onstove.com/News/Notice/Views/12614
意図の有無にかかわらず交換作業をするというのもすごいですが、ここではビキニアイランドのミニマップが何の意味もないから修正されます。そのビキニアイランドがこちら。
https://twitter.com/suicide_urself/status/1729409014495346885
この赤丸を囲ったところが「手の形」に見えるから修正されるのではないか、という様な事を上記リンクのアカウントが書いています。ディレクターの発言では何故ビキニアイランドを修正するのかの意味が全く分からないのでこの発想そのものが果たして正しいのかまでは不明ですが（例えば「ビキニ」という単語と島の形が「ビキニ」に見えて「フェミ」からクレームが来るのではないか、的な発想も可能）、いずれにしても時期的とその内容から今回の件に影響を受けた可能性は否定できないでしょう。これらの対応はゲーム業界が主な顧客層であろう男性層の荒唐無稽な意見に阿った行動だと言え、事なかれ主義であり、また当初の批難発言などを含めて男性側の陰謀論的な「フェミ」嫌悪であり女性嫌悪を後押しもしているものだと言えます。
事程左様に今回の件は他社にまで、そして韓国の政界まで話が波及している韓国ゲーム業界内だけの話では終わりそうにない状態で、日本のゲームなどが韓国に進出する際にも変な事が言われかねない。またそもそも発端を考えれば女性の思想を探って、それが「フェミ」認定された場合には苛烈な対応をするという流れが「手の形」騒動に行き着いたわけで、その思想検証的な行動もかなり危うい。今回の件を受けて中にはフェミニズムに同調せずに反対しますという宣言をするイラストレーターも出てきており、事態は結構深刻と言えるかもしれません。
ところで長々と書いたんですが、そもそも問題になった該当箇所のアニメの原画は男性が書いたんですけどね！ 記事名は、そのものずばりで「メープル「人差し指」を描いた作家は男性… 「フェミ検証」虚像が明らかに（自動翻訳）」です。
ネクソンが去る23日公開した「メープルストーリーエンジェリックバスター」の広報映像に登場する女性キャラクター「エンジェリックバスター」（エンバー）の人差し指の手の形が込められた映像コンティを描いたのは40代男性ㄱさんであることで30日確認された。。ネクソンの外注会社である「スタジオプリ」の女性アニメーターがこのコンティを描いたものと指摘され、「南嫌フェミ」という攻撃を受けたが、事実ではなかったのだ。
特にこのコンティは50代男性である総括監督の検収を経て最終通過したものだった。総括監督はキャラクターの全般的なポーズを演出する役割で、監督の演出の下、アニメーターが背景作業と動作を具現する原画・童話作業を引き受ける。エンバーが出た映像を描くには30人余りのアニメーターが投入されたが、人差し指を描いた'男嫌いフェミ'で攻撃された女性アニメーターはこれらのうちの1人だっただけだ。ネクソンも映像を企画し、プリ側と8回以上コンティなどを確認したと伝えられた。
結局この件は「フェミ」という思想検閲的なものから端を発した魔女狩りであり、陰謀論であり、そしてその陰謀論によって一人の女性が職を失い、酷い中傷を受けた件だと言えます。
【12月4日追記】
韓国報道の続報が出ており、それによると中傷のターゲットになった女性は退社していないとのことです。今回の件を発端としてターゲットとなった女性の顔写真やカカオIDが流布され、多数の中傷が行われていました。そして彼女以外の従業員に対しても顔写真を撮って流布したり事務所の扉を叩くなどの行為が発生し、彼女自身の身の安全や従業員の保護のために退社したとの嘘を代表から提案され、被害女性もそれに同意して「退社した」という話になった模様です。
ネクソンがナムチョコミュニティの主張によりエンジェリックバスターの指の形を「男性憎悪」と規定した後、スタジオプリに責任を問うと強硬な対応を予告すると、集団的な嫌がらせが始まった。新男性連帯は先月26日、ユーチューブコミュニティに「当該フェミ職員を解雇し、確実な法的措置を取らない場合、事務所の前で一ヶ月間テントを張って座り込みはもちろん、断食闘争の断髪までする」という投稿を掲載した。DCインサイドの利用者たちは、プリの事務所に来てA氏を探したり、他の従業員の顔を無断で撮影して流布した。一部の利用者は事務所のドアをノックしたこともあったという。
チャン代表は、A氏と従業員を保護するため、A氏が退社したという内容の2次立場文を上げるしかないと説明した。チャン代表は「知らない人が会社に何度も訪ねてくるので、何が起こるか心配だった」とし、「刺殺のような恐ろしいことが起こるかもしれないと考え、安全のためにA氏と合意した後、2次声明を出した」と話した。
12.4 넥슨 다른 ‘집게손가락’도 남자가 그렸다···입 연 뿌리
※自動翻訳
嘘は新たな攻撃手段になるために会社が虚偽を述べて対応したことが果たして正しいかまでは判断が付きかねるところがありますが、とはいえ顔写真などの件から最悪の事態として被害女性の命にかかわる事件もあり得たであろうし、数多くの中傷という攻撃は記憶は一生残ってしまう。被害妄想的な陰謀論から端を発した量を伴う中傷を一個の人間が受け止めるには無理であろうし、当然ですが批難すべきはこれらの加害男性側というのは言うまでもない。
「手の形」の起源
ある意味で「事件」そのものは陰謀論による酷い勘違いという決着と言えますが、そもそもじゃあ、この手の形＝男性器が小さいの起源はなんなのか。直接的な発端としてはメガリアというフェミニズム系のサイトのロゴが由来です。
2015年、韓国でMERSに感染した 2 人の女性が隔離を拒否し、香港へ買い物旅行に行ったという噂がDCインサイドのMERS ギャラリーという掲示板で広がり、対象の女性に対する女性蔑視が始まります。しかしこれは虚偽であったことから、それをきっかけとして女性ユーザー側がその蔑視へ反発、そして「女性蔑視」を「男性蔑視」へとミラーリングすることによって対抗するに至ります。英語のwikipediaでは初期のメガリアンの投稿として「私たち男性は合理的であるため、女の子のようにおしゃべりして何かをする前に躊躇しません」というタイトルを投稿し、そしてそれを開くと「我々はただあなたを殺すだけだ！」と韓国の重罪の94％が男性による犯行であることを示す統計を貼るという例を紹介しています*6。
実際、これらは「荒らし」行為の様なもので、ミサンドリー（男性嫌悪）が発露されているといえます。これは注目を浴びた投稿とのことですが、要はこういう系統の投稿がなされており「女性蔑視」に対する「男性蔑視」の可視化というのは格式ばった言い方であり、基本的には荒らし行為に近いものだったと言えるかもしれません*7。これらの投稿手法が話題を呼び、そして韓国ネット圏に広がり、これらを投稿する人たちがMERSギャラリーのMと、女性が支配的な性別で男性が従属的な役割を強いられている世界を描いたフェミニスト小説「エガリアの娘たち」を合わせた「メガリアン」という名前を採用し、のちに活動の場がDCインサイドから独立して「メガリア」というサイトへと成長します。
そしてそのロゴの由来ですが、メガリア４（メガリアはホームページ、メガリア４はフェイスブック）の運営者は新東亜のインタビューに対して以下のように答えています。
▼ホームページのロゴの意味は。
"韓国男性のペニスの大きさに対する嘲笑である。韓国男性の平均サイズは6.9cmだ。マック(Mac)の銃弾の大きさだ。嘲笑する意味を込めるために'お前はこれくらいしかない'という感じで指を表現した。女性の容姿は常に評価の対象となってきた。 その基準は男性が決めた。胸の大きさは日常的で、性器の形まで評価対象になった。しかし、男性は女性の言葉で評価されたことがない。女性はあえて男性の性器について話すこともできなかった。しかし、今、言おうとしている。ロゴのもう一つの意味は「平等」である。指をよく見ると'='の形でまっすぐ伸びている。フェミニズム活動を通じて、メガリアン（メガリアに参加する女性）が目指すのは男女平等という理念を表している。"
2016.1.20 “6.9cm ‘한남충’들아 폭력에 맞서는 게 폭력적이라고?”
一つには韓国男性の男性器のペニスが小さいという揶揄、そしてもう一つとして手の形の「＝」部分が平等を示し、男女平等を理念としていると言います。ちなみにこのロゴ以外にも直接的な表現としてメガリアに以下の様な投稿がなされています。
https://archive.is/o3KkX
下の方の絵に関しては五枚の画像が連なっており、どちらに見えますか的な問いかけもでもあり、インタビューの様にどちらの意味も含む、という手の形と取れますが、認知として実際に生き残っているのは前者だけでしょう。メガリアへと独立する前にDCインサイドにマッドマックスの一部分をキャプチャして該当の手の形が男性器の大きさを表すという意味合いの投稿がされてますし、男性器の大きさへの揶揄の意味が先行していると考える方が自然です。
そんなメガリアですが2017年には閉鎖しています。まず2015年12月に同性愛者、特にゲイに関しての侮蔑が許されるかどうかで論争が起き、その決着として運営者が同性愛嫌悪の投稿を禁止しためにユーザーが離脱します。こういう論争や離脱した人の存在からもわかる様にメガリアは同性愛、特にゲイに対する論調は差別的なものでありゲイコミュニティに潜入してアウティングを試みようとする例も存在します。そのほかにも盗撮をしたという告発からの身元調査や勤め先への報告をしたもののそれが冤罪だったという事件、度を越したミラーリングと言える幼稚園勤務者による児童への性加害発言、男児の性器写真のアップロードなど、短い間ですが複数の事件を起こしています*8。一方、違法ポルノ共有サイトに対する廃止運動をはじめとした社会運動による存在感や成果があったのも事実であり、韓国のフェミニズム史を語る際には避けることのできない存在でしょう。メープルストーリーの話に戻れば2016年の声優交代事件時に対して今回問題になった歌手の方がRTしたというのもフェミニズム運動の広がりの一端と考えられ、こういった運動によってフェミニズムに目覚めた女性もいるでしょう。だからこそ男性側の嫌悪感情も強いのだろうともいえます。なおサイト閉鎖によってこのような場が完全に消えたかというと、同性愛差別に親和的な層が移り住んだ後継サイト的存在としてのWomadの出現があり、依然としてその様な場自体は残っています。
「韓国人の男性器が小さい」という認識の流布と日本のネット右翼
ところで、この「韓国人の男性器が小さい」という認識とはなんでしょうか。「韓国男性の平均サイズは6.9cm」とあり、それがこのロゴや認識の論拠となっていると言えます。まずこれは2003年にソン・ファンチョル という教授が自身が思う男性器のサイズ認識と実際のサイズを測定して比較することによって男性器のサイズに対する歪んだ認識をあらわにするという論文を書きます。この論文の中に弛緩時の男性器を手で伸ばした際の韓国人の男性器の長さを9.6cmであるという部分が注目され、のちに「韓国男性9.6cm説」というべき様な内容がネット上に伝播します。この9.6cmは手で伸ばした長さであり、勃起時の長さではありません。ですが、そもそも該当論文に勃起時の大きさがなかったことから誤解、もしくは意図的な歪曲で韓国人の男性器の勃起時の大きさが9.6cmとして広まった（広めた）のでしょう。ちなみにこの論文における通常時の男性器の大きさは「6.9cm」であり、メガリアは勃起時と明記していないもののより小さい方を揶揄として使用していることになり悪意が感じられます。さらにちなみにですが韓国人の平均的な勃起時の大きさは13㎝くらいであるとか*9。
そしてこの流布の時期ですが、ナムウィキによれば2004年当時日本の2ch掲示板などからEnjoy Koreaへの流入もあり広まったとされています。ただしここに詳細なリンクや記述はなく、Enjoy Koreaも2009年に閉鎖されており当時の広がり具合は確認ができません。日韓共に個人サイトやブログなどの閉鎖などもあってほぼほぼ確認困難な状況ですが、ただ2013年に記述された韓国の「Korean Penis Facts（現在削除済み。アーカイブ）」でもEnjoy Koreaでその様な記述が日本のネット右翼によって広められたとあり、のちに世界に広がった事を述べています。果たしてこの流布の時期が正確に何年かは不明ですが、少なくとも2007年6月時点で「全世界1万2千本のペニスの集大成データ発表 ― 標準は14～16センチだが、韓国だけ数値が異常に低いとの指摘」というブログ記事が存在し、そこではスペインのメーカーが9.4cmであるという結果を出しています。これは9.6とは少々異なりますが、後述しますが同様のソースで9.6㎝説は流されていますし、そのソースとされるページでは「韓国の研究」とある事、直接的な大きさはHP上では書かれていないことから9.6cm説からの間違いの可能性があります。そして同記事に対する2008年2月のコメントには9.6cm説に否定の投稿があるのが見受けられます。
26 hjk 2008年02月26日 18:37
韓国人:9.5 日本人:12‾13cm
----->単純に思ってもこれは変だ. ww
enjoy koreaでもう論破,証明された内容 www
->http://bbs.enjoykorea.jp/tbbs/read.php?board_id=pstar&nid=242568
可哀相な嫌韓 wwwwwwww
なんでも評点
※何故か9.5と書いてあるが、単純に誤り。この前の24の投稿では9.6とある
これらを鑑みるに2007年時点でスペインのメーカーが確認できるくらいには流布されていたこと、また少なくとも2008年には反論が存在している事がわかります。
【12月1日 7時ごろ追記】
ヒントを貰い検索したところ、2005年7月に該当話題が日本であったので追記します。まず2005年7月に「
おち○ちん国際比較サイズ－膨張率に強い日本人－」というページが存在しており、そこから派生して5chなどでの拡散が多少見られます。また2006年にこの記事をソースとして5chなどで流行ったであろう下記の様なAAなどが存在するブログ記事が存在しており、当時の嫌韓層による使用文脈が読み取れます。
＼ チョ ッ パ リ め ハ カ ッ タ な ？ ！ ／
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
｜ |ｌｌｌｌ|ｌｌｌｌ|ｌｌｌｌ|ｌｌｌｌ|ｌｌｌｌ|ｌｌｌｌ|ｌｌｌｌ|ｌｌｌ
｜ 0. 1 2 3. 4. .5 6 7. .8 9|
｜ <#｀Д´> ｜
｜ U ,,つ |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣| ￣ |￣
なお、この情報のソースは「altPENIS」という外国のページであり、その記事が2005年4月。内容を読む限りはスペインの医師が他の国の調査結果を探して記述したとありますが、この調査結果の際に件の情報を得たのでしょう。その後においてスペインのメーカーがソースとなることがありますが、この調査結果がスペイン内でも残った影響によるものだと考えられます。スペインの医師が果たしてどのように情報を得たかは不明なものの、参照先は例の論文でしょう。これらのことから2005年にはすでにこの言説そのものが広まっていたと類推できます。
これらのブログ記事などからもわかる様にこの説が広まった場としてはEnjoy Koreaにおいて、そして「誰」かと言えば「日本のネット右翼（嫌韓層）」によって「韓国人男性9.6㎝」説が広めるられたと考えるのが自然でしょう。
そしてその後の動きとして、ソウル新聞が2008年12月に韓国人の平均的長さは約10cmという9.6㎝説に準拠したであろう記事が確認できますし、個人ブログなどでは2009年8月にアメーバブログに「外国人の世界国別男性器の大きさランキング」でその形跡が見え、あとは各国のベニスサイズ表というものが2009年には確認できます。
そして2011年5月のNEWSポストセブン記事ではおそらく先ほどのスペインのメーカー『アンドロメディカル』によりこの9.6㎝説が採用され、紹介されるまでに至っています。かころぐβによる5chの過去ログ検索で「韓国 9.6cm」と検索するとこの記事をきっかけとして日本で流布されたことがわかります。
過去ログ検索の検索性は完全なものではない為に過去に遭った可能性もありますが、2011年にこの説が広まったことは確かでしょう。ちなみにXにおける流布もこのポストの記事が出発点で2011年5月16日から観測。ネットでの書き込みが曲がりなりにも一般のメディア媒体によって記事化される事による影響がここから見えてきます。余談ですがNEWSポストセブンは2013年には高須克弥に対してこの話をふって談話記事も載せています。
さて上記は日本の話ではありますが、韓国においても上記のスペインのメーカーによる表の記事が2011年に存在しており、2014年には医師がラジオで平均9.6㎝という説を紹介しています。なおラジオではソースが英国での調査となっていますが、2007年に「1万2千本のペニスを～」が発表された媒体は英国なのでおそらくはそれの事でしょう。この様に韓国でも9.6cm説が膾炙している様が観測できます。また最近だと2023年2月に泌尿器科の医師がテレビにおいて「韓国の男性性器サイズは6.9cmではなく9.6cm」という発言をしています。その際の説明が「9.6cmを6.9cmと間違ってコピーして書いた」というもので、正直謎なんですが、それはともかくとして事程左様に「韓国人男性9.6㎝」説はネット右翼が広めた結果、悪い意味で韓国で根付いてしまったミームで、さらにそこからメガリアが発想を得てロゴに転用したものだと考えられます。
「手の形」に関する嫌悪
経緯を述べた上で再度「手の形」に話を戻しますが、今回のメープルストーリーにおける事件は男性が描いたものであると最早判明しています。ですが、陰謀論側としてはこういえばいいだけです。その男性やそのチェックを通したのは「フェミ」だからだ、と。実際、この「手の形」における事件は今回が初めてではありませんし、書き手の性別や思想からの問題ではなく、「シンボル」から問題認識へと発展している例があります。
これは2021年5月におこったコンビニチェーンのGS25がキャンペーンの際に告知したポスターです。このポスターも男性嫌悪だとして燃えました。ポスターの修正や、果ては報道資料における写真の手の形まで疑われています。
正直、陰謀論的な話で、どこまで本気かすら不明ですが騒げば本気に信じる人もいる。この件は当時大きな騒ぎになっており、この他にもにわかに理解しづらい陰謀論的な主張がいくつかありますがそこは割愛します。もしも読む気があればナムウィキでも。
次に2011年6月。
これは国防省のポスターですが、この敬礼の手の形に対して批判が起こり謝罪をしたと記事にあります。また2021年8月には下記の黄砂や微細粉塵に対するポスターもターゲットにされます。
これは行政部が謝罪したと記事にあります。同じく2021年8月には「男性嫌悪禁止ステッカー」が発売されるという記事が。
このステッカーに対しては議論が起こりページは削除、そして販売中止になっています。販売者側は特に意味はなかったとしていますが、ただたとえ冗談の可能性があっても商機をそこに見出したのは確かでしょう。それとゲームでいえばこの年の10月にはロストアークがアバターのジェスチャーにこの手の形があるといって問題視され、削除されるに至ります。この件はCNNが記事にしており、攻撃側といえる男性のインタビューが短く載っています。
「2つの店のうちなら、（フェミニズムを）支持していないほうを利用する」と、フルネームを伏せたハは言った。
ハは、彼は一人ではないと言った。たとえば、彼の友人たちがGS25のキャンプポスターについて議論していたとき、彼らの多くが彼と同じように感じていることに彼は驚いた："私は、多くの男性が黙って歯がゆい思いをしていることに気づいた"
この様に2021年ではGS25から端を発した今回の様な事件が幾度か出ており、成功体験ともいえる事例が観測できます。それがまた2023年現在の今に出てきたと言えます。
そして若干話が遡りますが、2019年にとある絵文字が追加され、以下のような反応がありました。
https://twitter.com/thebettinaarndt/status/1093993358941405186
※bioを見ると男性の権利擁護を～的なアカウント
そう、極々一部の欧米圏の人間においてもこの手の形が「small penis」を表すという認識が芽生えているのです。上記投稿は馬鹿にされている感もありとはいえ、わずかながらですがメディアとしてはデイリーメールなどでも記事にされています。実際、まともそうなメディアはほぼ扱ってませんし、果たしてどこまで本気にされているかは不明ではありますし、全然流布しているというレベルでもなさそうですが、そうなるとおそらくこの認識は韓国のメガリアのロゴに起因する可能性が高い。今後の韓国でもこの「手の形＝男性器が小さい」として男性嫌悪の「シンボル／ハンドサイン」として広まり続ければ、今後本当に韓国以外でもその意味が根付く可能性がないところがわりと怖いところ。日本でそれを信じる人は今のところいないでしょうが、ネタ的な陰謀論が広まる可能性はいつだってある。少なくともこの記事を含めて「認識」を得てしまったことだし。
今回の形が実際にどう決着するのか、そもそも「決着」があり得るのか。少なくとも今回「男性嫌悪」だと言った側の多くはこれを機会にして態度を改めることはない事は簡単に予想でき、女性側にとってもこれを「男性嫌悪」として認知する男性と歩み寄れるかといったら大体が無理でしょう。メガリアそのものには問題があったでしょうが、今現在は「フェミ」であることが強烈なバッシングを浴びる思想検閲的な状況になっていると言えるかもしれません。これらの嫌悪が表出する形なのか、11月には女性がショートカットだったというだけでフェミニスト認定されて暴行を受けた事件が報じられており、韓国の女性嫌悪は目に見える暴力として降りかかることがあります。そんな社会に黙ってはいられないでしょう。
そして何よりも最悪なのは「韓国の男性器は小さい」という話題に日本のネット右翼が関与しており、それが韓国に流布した影響によってメガリアがあの「手の形」のロゴに結実したという可能性がある事。それによって今現在、「手の形」に対する表現狩りや思想検閲的な事が発生している事を考えると悪意による最悪なバタフライエフェクトなのかもしれない。
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