https://twitter.com/CYXuAxfGlfFzZCT/status/1580122079529082881
めんどくさいけど、今後こういう情報が流布して育っていく可能性もあるから書いとく。まず、闇のくまさんのソースは時期的に週刊新潮の以下の記事でしょう。アノニマスポストの可能性もありますが、結局は新潮の記事なので。
長渕剛の「土地を外国人に売らないで」発言の背景にある「北海道の中国化」
国土買収が進むこうしたエリアでは外国人従業員が増え、ガバナンスへの波及も無視できなくなっています。トマム地区の外国人比率は、50.5%(2019年7月末)。とうとう半数を超えました。地元の女性と結婚するなど、何組かのカップルも誕生しています。
ということで、この外国人比率は2019年7月末の話です。ちなみに既にですがクマさんの時点で「ほとんどが中国人」とは言っているものの、直接的に「外国人」を「中国人」に脳内変換してるツイートも見られたり。
https://twitter.com/nonnonchacha_S/status/1580177680254717952
これは、まあデマです。
で、この外国人人口ですが、トマム地区限定のものはありませんが、占冠村全体での人口は外国人を含めてその数の推移を月ごとに発行される「広報しむかっぷ」で確認可能です。そして2018年ごろからの各月の村全体の人口、トマム地区の人口、村全体の外国人人口の推移は以下の通りです。
まず見ればわかることは外国人の人口変動が村の人口変動に直結するほどに村の人口が少なく(2022年8月末の時点で日本人のみの人口は1082人)、また日本人の流入が少ないことが伺えます。そして外国人の人口推移とトマム地区の人口推移も連動しており、基本的には外国人転入者≒トマム地区への移住者と考えてよいでしょう。また外国人人口はシーズン毎の変動が激しく、このことから大半の外国人はリゾート地に関わる季節限定の労働者の様なものであると考えられます。しかしそれも2020年2月からのコロナ禍による入国者激減の影響が顕著に表れており、それ以降はほぼほぼ平坦な推移となっています。大体、コロナ禍前の底の数値やコロナ禍後の数値を考えるとその底の値は150~170人近辺と思われます。ただ2022年5月末の外国人人口は114人という事もあり「定住者」という意味では100人程度かもしれません。
そして割合ですが、占冠村の外国人人口の大半がトマム地区に住んでいると仮定した粗い数値を出すと次のようになります。
シーズンによっては6割を超えているであろう時期もありますが、それは瞬間的な割合であって、常にいる外国人の数で言えば3割から4割という事でしょう。そういう意味では「北海道トマム地区の住民の50%が外国人」は現時点では過去の話ではあります。「デマ」、と言えなくもないですが、完全な嘘とも言い切れません。あと、この3割という値でも大問題だと言い出すでしょうし。
次に外国人の国籍内訳ですがこれは在留外国人統計により半年ごとの記録が確認可能です。それによれば占冠村の2021年12月末の在留外国人内訳は以下の通り。
【占冠村における在留外国人(2021年12月末) ※在留外国人統計より】
総数 163
その他 45
ネパール 25
台湾 23
中国 19
フィリピン 15
インドネシア 14
韓国 12
タイ 5
米国 4
ベトナム 1
これを見る限り突出して多い国というのはなく、東~東南アジア地域の数か国から15~25人程度が来ていることがわかります。あと、「その他」って何処だよって感じではありますが、令和3年第7回占冠村村議会で村長は「令和3年11月末現在の外国人登録者数は28か国147人」と答弁しており、内訳はわからないもののそれなりの国の数が「その他」に含まれていると思われます。ちなみにコロナ禍前の外国人口が500人を超えていた時期である2019年12月末の数字は次のようになります。
【占冠村における在留外国人(2021年12月末) ※在留外国人統計より】
総数 547
台湾 185
その他 163
中国 57
韓国 37
ネパール 35
タイ 20
インドネシア 19
フィリピン 15
ベトナム 10
ブラジル 4
米国 2
この数値を見る限りは観光客シーズンに多く補充(?)されるのは台湾ということになる模様です。さあ、お次は在留資格。
【占冠村における在留外国人の在留資格(2021年12月末) ※在留外国人統計より】
総数 163
技術・人文知識・国際業務 55
技能 38
企業内転勤 23
特定活動 18
家族滞在 16
技能実習2号ロ 6
教育 2
永住者 2
日本人の配偶者等 2
特別永住者 1
これだけだと中々判断が難しいところはありますが、大半はトマム地区内での仕事で、という印象はありますね。ただ、正直よくわかりません。
以上、トマム地区というよりも占冠村全体で見ていきましたが、過去にその数字は本当ではあったが、現状においては3割程度になっている、という所ですね。北海道は沖縄と同じくこういう扇情系の話が多く、例えばこのブログでも過去に「【デマ】帯広市において、「中国人は市営住宅を占拠してない」 - 電脳塵芥」だとかでちょっと扱いましたが……。今回の「北海道トマム地区の住民の50%が外国人」に関して言えば「かつて」は事実であったものの今現在はそうでもないという所ではあります。ただ、今回はコロナによる入国制限などが緩和されて中国人観光客などが増えればまた外国人住民そのものは増えはする可能性はあるので、やがてはまた「本当」になることはあると考えます。これは今や日本が相対的な競争に敗れ、安い国になり、観光に適した国になったという事でもあり、それこそ安倍政権からの「観光立国」の成果ともいえるんじゃないかなと。あと現状、やはり「従業員」的な性格の外国人が多くて「侵略~」的な言説には向きませんし、また在留外国人も一つの国に偏っているわけではなく、例えば一部の人が懸念しているような「中国人に~」的なのは今の段階では妄想の域と言わざるを得ません。住んでいる外国人も季節に左右される腰を据えない在留者が多いように見受けられますし。
ちなみに令和3年の占冠村村議会では外国人居住者に対するサポートをどうするかなどが話し合われている様で、外野が「外国人の住民が50%!」みたいな煽りをしているのは下品だなあと。
■お布施用ページ