この貯蓄ゼロのデータをれいわ新選組や党首である山本太郎が党首討論d根使用していました。この表は元々は2018年の参議院予算委員会で使用していた以下のものが出所とも言える。
つまりはここで表示されているデータ自体は2017年のものです。2021年のこの時期に出すにははっきり言って古い。で、このデータ元自体は「家計の金融行動に関する世論調査」がもとで現在2020年までのデータが出ており、該当の表は「単身世帯」なので今回も単身世帯のデータを見ます。それによると2020年の貯蓄ゼロ世帯の割合は以下の通り。
これだけだと分かりにくいのでピックアップすると。
【2020年の貯蓄ゼロ世帯の割合】
20歳代:43.2%
30歳代:31.1%
40歳代:35.5%
50歳代:41.0%
60歳代:29.4%
以上の様になっており、いずれの世代においてもれいわ新選組が提示するデータから改善がみられています。ちなみに年齢別ではないデータにおける近年の推移は以下の通り。
さて、この件については以前も書きましたが2017年と2018年に奇妙な破線があります。これは2017年と2018年で集計の仕方が異なるためデータの連続性が崩れたためです。なので単純に2017年から2018年の数字の改善は必ずしも状況の改善とは言えません。
ちなみにですがこの「家計の金融行動に関する世論調査」における「金融資産の非保有(貯蓄ゼロ)」は以下の様に試算されています。
【貯蓄ゼロ世帯のカウント方法】
①問1で現在保有している金融商品の選択肢で「いずれも保有していない 」を選択
②問2で預貯金の合計残高で「うち運用または将来の備え」がゼロの世帯
※参考「https://www.shiruporuto.jp/public/data/movie/yoron/tanshin/2020/pdf/shukeit20.pdf」
上記をそれぞれ金融資産非保有(貯蓄ゼロ世帯)とカウントしています。特に②ですが、「預貯金の合計残高」がゼロの世帯ではなく、「うち運用または将来の備え」がゼロの世帯であることに注意が必要で、記入にあたっての注意を見ればわかる様に「日常的な出し入れ、引き落としに備えている部分は除く」というものです。つまりはれいわ新選組が提示している「貯蓄ゼロ世帯」とは実際の貯蓄ゼロも含みますが、日常的な生活を送る上で貯蓄がある世帯ですら「貯蓄ゼロ世帯」とカウントされます。ということを考えると、貧困を訴えるのにはいささか微妙なデータと言わざるを得ません。
厚労省のデータにおける貯蓄がない世帯
なお貯蓄有無のデータですが、厚労省の2019国民生活基礎調査においては以下の様なデータがあります*1。
全世帯だと13.4%が貯蓄なし世帯となり、母子世帯に至っては31.8%が貯蓄なしとなっています。年齢別のデータがないために表にすることは難しいですが、母子世帯などのデータは示唆に富むものかとおもいます。
10/23追記
年代別を作ったので置いておきます。れいわ新選組が提示するデータとは全然違いますね。
とりあえずれいわ新選組の示しているデータは単純に古いと共に数字が悪いところでデータの更新が止まっている点で宜しくない。このデータを振り回している身でありながらもしも政府の恣意的なデータを指摘するとしたらちょっと図々しいと言わざるを得ない。またそのデータの性質上、これを「貯蓄ゼロ」と大々的に言っていいのかも疑問が残ります。なんにせよ、今後このデータを使うのは止めた方が良い。
*1:2020年の調査が休止になり、2019年が最新となります