悪書追放運動についての補足的な記事です。毎日新聞社の読書世論調査というものが存在しており、1955年には悪書追放運動の影響なども調べられています。ってことで、それらについての情報でも。
※いずれも書店調査です。
1)1955年によく売れた幼少年ものの書籍
マンガは「少年ケニヤ」、「サザエさん」、「おもしろ漫画文庫」、「イガグリくん」など。正直この時代のマンガには疎いので他にもあるかもですが、幼少年ものの書籍売れ行きはこんな感じです。
1年間で売れた方の雑誌では「キング」は確かマンガも載っていたと記憶していますが、他の雑誌は入っていない模様。
2)1955年に最もよく売れた幼少年向け雑誌
幼少年向け雑誌ではマンガ系雑誌がしめます。ちなみに鉄腕アトムが連載されていた「少年」は11位。小学高学年向けになると4位になります。推測となりますが、ここら辺の雑誌は悪書追放運動でいくらか焼かれた雑誌かと考えられます
3)悪書追放運動が行われたか(読者世論調査)
読者世論調査上では悪書追放運動が行われたと答えた割合は、最高の六大都市でさえ「17.8%」ととなり、かなり低い割合です。当然ながら都市の方が悪書追放運動が多くなっています。読者の認識レベルでは悪書追放運動はそこまで活発ではなかった模様です。
4)悪書追放運動の影響があったか(書店調査)
書店調査では「影響があった」が44%、「影響がない」でも「運動はあったが影響がない」と答える書店があるなど、運動そのものは広範に及んでいたことが想像できます。ただし、書店の所在地は市街地に多いことから、農村漁村方面ではどうなったかは定かではありません。
文章にもある様に「夫婦雑誌」、「性もの」が廃刊、幼少年ものも十数点の廃刊があります*1。写真では見切れているので、その後の文章を引用しておきます。
幼少年向雑誌の「冒険王」「漫画王」などの実数の落ちているのはこのためとみられ、おとな向雑誌では「平凡」があげられている。「平凡」については雑誌の項で取り扱ったが書店の回答からすれば若い年代-中学生ぐらい-が敬遠したとするものが相当ある。これに伴う意見として、悪書追放運動の影響としてある種の本はかわないが、立読みするものの数は増したと答えているものがあることは面白い現象であった。
一部の地方では悪書追放運動とともに警察の没収が行われたと報告されているものもがあり、学校の読書指導は当然としても、警察力の干渉までして悪書追放をすることはその本や雑誌の内容にもよるが程度を越したものは言論抑圧にもなりかねないので今後は関係者の良識による是正をまつほかないものと思う。
以上で引用を終わりにしますが、この「読書世論調査」での悪書追放運動に関する項目を含め、焚書には触れていません。「焚書事件」って今は特徴的な語り口ですが、当時の認識は絶対に記述する社会問題としてまでの認識はされていなかった模様です。
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