電脳塵芥

四方山雑記

選択的夫婦別姓についての話 推移とか歴史的な経緯とか

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若い男性から「交際女性から『姓を変えないといけないから結婚できない』と言われた」と相談されたことを紹介したうえで、「夫婦同姓も結婚の障害になっている」と指摘した。この際、ヤジが飛んだという。

 というニュースがあったので夫婦別姓についての話でも。

◆最近の選択的夫婦別姓に対する世論

 選択的夫婦別姓に対する世論の推移ですが、手っ取り早く内閣府から。

2017年 内閣府 家族の法制に関する世論調査

Q10 現在は、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗らなければならないことになっていますが、「現行制度と同じように夫婦が同じ名字(姓)を名乗ることのほか、夫婦が希望する場合には、同じ名字(姓)ではなく、それぞれの婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めた方がよい。」という意見があります。このような意見について、あなたはどのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。
 
(29.3) (ア) 婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない
(42.5) (イ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない
(24.4) (ウ) 夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない
(3.8) わからない

 選択的夫婦別姓にあたるものは(イ)であり、その選択者が42.5%と一番割合が多くなっています。(ア)は現行制度、(ウ)は旧姓の通称使用という現行制度+αという内容であり、これらを合わせれ5割を超えているわけであり、まだ選択的夫婦別姓過半数を超えているわけではありませんが、しかし現状でも4割は賛成という結果となっています。
 ちなみに選択的夫婦別姓への賛否の態度は男女では特に変わらず共に42.5%となり、そこに性差はありません。ですが年齢による賛否は大きく分かれます。

f:id:nou_yunyun:20200123005937p:plain ※わかりやすくするために内閣府調査と文言を少し変えています

年齢別調査においては18~19歳は59%と過半数を超え、その後の年代でも50代前半までは賛成が半数附近に推移、その後の年代では目に見えて賛成の割合が減少していき、逆に現行制度のままの割合が増加していきます。結婚をする当事者の事を考えたならばよりその制度を利用するであろう若い世代ほど賛成です。それと、これらの賛成者に限って選択的夫婦別姓制度が導入されれば使用するかという問いに対しては希望するが19.8%、希望しないが47.4%となり、必ずしも賛成者が全員夫婦別姓を希望するわけではありません。

 なお内閣府の選択的夫婦別姓に関する調査は名称にはある程度の揺らぎはあるものの1976年ごろから継続的に調査をしています。今確認可能なのは2012年2006年2001年1996年1994年1990年1987年1976年。1996年以前の質問は質問内容と選択肢が少し違っていたり、1976年の調査は女性のみに聞いている為に完全な連続性を持つデータではありませんが、それらを無視してそのデータ推移を見ていくと以下の様になります。

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※「わからない」などの回答はグラフ上無視しています。

グラフを見ればわかる様に「別姓を認める」は増加傾向ではありますが、1996年が42%以降からは伸び悩み一時30%台へと下がった後の2017年で久々に40%越えという推移となります。なお、1996年から「通称使用」という選択肢が増えてから「別姓を認めない」が大きく減っていますが、しかし旧姓の通称使用可能も「別姓を認めない」の亜種でもある為に依然として全体を見れば別姓を認めない割合が別姓を認めるを上回っている状態です。
 内閣府調査以外の世論調査に関しても短く触れますが、

NHK 夫婦別姓に関する世論調査(2015年)
 夫婦は同じ名字を名乗るべきだ:49.7%
 同じ名字か別の名字か選べるようにするべきだ:45.9%

毎日新聞世論調査(2015年)
 選択的夫婦別姓
 賛成:51%
 反対:36%

ネットで簡単に参照可能な世論調査は以上の2つ。2015年と少し古いですがいずれも賛成が4~5割近辺となっています。これらの傾向は今やっても変わらないでしょうし、むしろ今回のニュースなどを含めた報道や前述した様な別姓反対に対する年齢層の偏り、また現在は政治的議題として定期的に語られている事からも、相当なバックラッシュが起きない限りは今後は別姓を認める割合が増加していく可能性が大かなと。


【1月27日追記】
 朝日新聞世論調査がアップされていたので追記します。

朝日新聞社が実施した全国世論調査(電話)で、選択的夫婦別姓について尋ねると、69%が「賛成」と答え、「反対」24%を大きく上回った。自民支持層でも63%が賛成し、反対は31%だった。
選択的夫婦別姓、賛成69% 50代以下の女性は8割超:朝日新聞デジタル

記事内で2015年の調査は「49%」となっており、NHK及び毎日新聞とほぼほぼ同じ値です。それが2017年には58%、そして今回の2020年調査では賛成69%とかなりの伸びが記録されています。調査方法の変更による変動や、調査日が25、26日と例のヤジ後の調査となりそれへの反動的要素もあるのかもしれませんが、約7割賛成というのはかなりのものです。
 なお朝日新聞の調査は内閣調査とかなりの差異がありますが、朝日新聞調査は賛成・反対の二択、内閣府調査は賛成・反対・通称使用の三択による差異と考えられます。この記事では旧姓の通称使用を夫婦別姓反対と捉えて述べましたが、実際の通称使用選択者は二択であったならば選択的夫婦別姓賛成者がそれなりに多いのかもしれません。というか、データ上ではそう解釈した方が自然でしょう。

【5月29日追記】
(朝日・東大谷口研究室共同調査)賛成、自民支持層でも浸透 夫婦別姓54% 同性婚41%:朝日新聞デジタル

という記事が新しく上がっていました。この調査によると自民支持層でも「夫婦別姓賛成54% 反対21%」です。「中立」というのが何を指すのかが無料記事部分だけですとよくわからないですし、自民党支持層(賛成54%)と回答者全体(賛成57%)となり数字の乖離があまりにも少ないのがちょっと不思議ではありますが、少なくとも最早世の流れとしては選択的夫婦別姓は民意としては肯定すべき内容と考えるのが良いのかなと。


 それと若干脇道ですが、結婚した男女の名字に対する意識の変化を見るうえで参考になるものとしてNHKによる第10回「日本人の意識」調査があります。その名の通り「日本人の意識」を1973年から5年おきに同じ質問で行われている調査です。その中に「男女のあり方(名字)」というものがあり、その推移は以下の通り。

f:id:nou_yunyun:20200126001305p:plain ※その他などは省略

上記調査は選択的夫婦別姓の是非を問うているわけではないので、実質的に夫婦同姓か夫婦別姓かの話になっています。なので別姓の割合は選択的夫婦別姓制度を調べた割合よりも別姓の割合が少なくはなっていますが、とはいえ「別姓でよい」が5%以下から15%近くまで上昇している事、また「当然、夫の性に」の割合低下など確実に日本人の「姓」への意識の変化が伺えます。

◆簡単な歴史的経緯について

 さらっと(?)歴史的な経緯を記述しておきます。

【戦前】
・1876(明治 9)年の太政官指令
 妻は夫の「家」を相続する場合は「夫家ノ氏」を称する。それ以外は「所生ノ氏ヲ用ユヘキ事」とされ、これが元々は夫婦別姓だったとの一つの論拠となっているものです。なお余談ではありますが、これに関する事柄を扱った記事が1964年の朝日新聞夕刊にあったりして、そこでは以下の様に記述されています。

研究ノート 妻の不改姓
「婦女、人ニ嫁スルモ、仍ホ所生ノ氏ヲ用ユベキコト」-これは明治9年内務省に石川県の伺いに応じて発した指令である。その後、明治二十四年まで八回ほど、同様の指令がその他の諸府県に対しても出されている。いずれも妻の性は夫家の姓に改むべきか、もしくは生家の姓(所生ノ氏)のままにしておくべきか、との問い合わせに対する回答であった。戸籍上の記載においても、妻の名前には生家の姓を冠すべきことが指令されていた。
朝日新聞1964.11.12 夕刊

この記事自体は「研究ノート」という題名やその時期から別姓論議という話とは別ベクトルから生まれたものだとは思います。ただ記事の意味合い自体はここでは置いといて、兎にも角にも元々の話で言えば日本は夫婦別姓が普通だったという事です。ただ、法務省の「我が国における氏の制度の変遷」を見ると、 妻が夫の姓を名乗るのが慣習化されていたという指摘も存在します。

・1898(明治 31)年に明治民法が施行
 明治民法によって「家」制度と共に夫婦同姓が始まり、「家」に「氏」は一つ、家族は全員戸主と同じ氏(姓)を名乗るようになる

 上記二つが選択的夫婦別姓の歴史が語られる際の主な二つです。夫婦同姓という「伝統」は明治期中~後期あたりで生まれた制度であって、「明治」から生まれた「伝統」は多くありますが夫婦同姓もその一つです。なお戦前にも平塚らいてうは結婚による改姓に反対して事実婚をしたという事も有る様に、当時から全ての女性がこの制度に従っていたわけでもないでしょうし、想像力を逞しくすれば夫婦同姓システムへと切り替わる際に、以前は別姓でよかったのに強制的に同姓になるというシステムへの変更への違和感を持つ人間がそれなりに存在していたとしてもおかしくはありません。

【50年代】

1955年の法制審議会民法部会第 2 回で、「夫婦異姓」を認める案が議論されている。一方で「婚姻によって夫婦いずれか一方の氏に変更するという現行制度に不便を感じる人々が次第に多くなり民法でも夫婦の異姓を認める 社会的必要があるのでは」という意見があり、他方で「そこまでの社会的必要があるか疑わしい、現行どおりでよい」という意見があり、最終決定は留保となっている(久武 2001b:41)。
笹川 あゆみ

 引用の参照元の久武の文自体は読んでいないのでどういった背景のもとに発案されたのかが分かりませんし、その後に続いている印象も薄いですので今と連続した繋がりある運動なのかは不明ですが、とりあえず50年代から既に意見自体はありました。

【70年代】
 朝日新聞データベースでは70年代にはすでに夫婦別姓運動をする女性団体が出現しています*1。この時の記事は今の様な切実さは薄く、そういう運動の紹介という枠を超えるものではありませんでしたが、これらの運動が後に続いていったと考えて不思議ではないかと。
 なお国会議事録で「夫婦別姓」で検索すると昭和50年が最も古いものとなり、この70年代中盤あたりから政治的議題にあがる話題であることが確認できます。なお、当時のやり取りでは、

佐々木静子
働く婦人がこれだけふえていて、婦人が結婚している、しておらない、あるいはすると否とにかかわらず社会的に活動している機会が大変ふえているわけでございますから、結婚しても名字はそのままで婚姻届が、本人の希望によっては受理できる方法ということも、(中略)やはり夫婦同氏の規定というものも、これは一遍にいかなくても、おのおのの人格を尊重するということになってくれば自然緩和する方向に向かっていかなければならないんじゃないかというふう(中略)
香川保一
御指摘の夫婦別姓の問題も、(中略)現在のわが国の国民感情あるいは国民意識として、すべて夫婦別氏というふうなことがそのまま受けられるかどうかというふうな実態の問題。(中略)直ちにいま夫婦別姓を採用するというのは、ちょっと時期尚早ではなかろうかというふうなのが大方の御感触のようでございます。
第76回国会 参議院 法務委員会 第3号 昭和50年11月18日

時期尚早から約45年経ちました。

【80年代】
 この時期から夫婦別姓運動が社会的な動きになってきています。当時の記事では井上治代『女の「姓(ナマエ)」を返して』が火付け役になった記述されており、その他にも『夫婦別姓時代』、『楽しくやろう 夫婦別姓』などなど夫婦別姓を扱った書籍が出版されており、また新聞記事においてもその件数が増加していきます。
 それと1989年には首相の私的諮問機関である婦人問題有識者会議にはじめて夫婦別姓が取り上げられています(石山玲子)。

【90年代】
・1991年 法制審議会 婚姻及び離婚制度の見直しのための検討開始
・1996年 法制審議会民法部会 民法の一部を改正する民法改正要綱案を決定

民法 750条の改正案は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする(下線筆者)」という文言となった(久武 2001b:43)。同年 2 月、選択的夫婦別姓制導入と非嫡出子の相続分差別撤廃を主な内容とする民法 改正要綱案が法務大臣に答申された。しかし、政府・与党自民党内での反対が強く、6 月に国会提出は見送られた。
笹川 あゆみ

という様に1996年の時点で選択的夫婦別姓に対する民法改正要綱案が決定されています。この時点で与党自民党がその気であれば選択的夫婦別姓制度は通っていた可能性が高いでしょう。ちなみ97年に書かれた松本タミの書いた 調査には「選択的夫婦別姓制の導入がかなり確かなものになってきた昨今」という文章が書かれており、当時は割と改正が現実に起こり得るものとして認識していた方々がそれなりにいたのかなと。
 なお当然ながら夫婦別姓への反対も存在しており、例えば97年に長谷川 三千子 や高橋 史朗などによる『ちょっとまって!夫婦別姓―家族が「元気の素」になる』( 編集:日本の教育を考える母親の会 , 夫婦別姓に反対する女性フォーラム )という本が出版されています。これらの著者は自民党保守派との親和性はかなり高いでしょうし、恐らくほぼそのままの意見を持っていても不思議ではないと考えます。

【00年代】
・2001年11月 法務省の「選択的夫婦別姓」案が再提出、再度見送り
・2002年4月 原則は同姓で別姓は例外とする「例外的夫婦別姓」案が新たに法務省により提示、意見集約ならず
・2002年7月 反対派の意向を考慮した案が、一部の自民党の国会議員によって「家裁許可制夫婦別姓」案提示。原則同姓で別姓を望む際には家裁の許可を必要。見送り。

 「例外的夫婦別姓」にしても「家裁許可制夫婦別姓」にしても自民党内部の推進派が反対派の納得を得る為に生み出した案です。特に「家裁許可制夫婦別姓」にはその色が濃く表れており、要件の通り家裁の許可が必要なのですがその要件として、

「職業生活上の事情」と「祖先の祭祀の主宰」が挙げられている。「今の姓が好きだから」とか「改正によって自分らしさが失われるのがイヤだ」といった抽象的な理由は認められないのだという。
伊藤哲夫 〈『明日への選択』平成14年8月号〉

があげられています。反対派の賛成を得るためとはいえ、これでは選択的夫婦別姓制度を欲する方々が欲する別姓制度ではなかったでしょうし、また逆に上記の『明日への選択』の後半では否定的な意見が述べられており、保守派はこの案ですら反対しています。神道政治連盟もこの案に反対だった様です。

【10年代】
・2011年に民法750条を憲法違反と訴え、最終的に2015年の最高裁判決で訴え却下。なお、ニュー選択的夫婦別姓訴訟がある様に別の論点からの訴えが進行中です。

・2010年「[夫婦別姓問題] 夫婦別姓に反対する国民大会 (概要・運動方針)
民主党政権が別姓に対する改正案を出そうとした動きに反応した日本会議の運動の一環です。当時の石原都知事や上田埼玉県知事、森田千葉県知事などの自治体首長や自民党議員などが参加しているものです。なお、この中の運動方針の中で「一、政府に対して旧姓を通称として使用するための法的整備を働きかける。」というものがり、現政権の通称使用というのはここら辺の下支えもあるのかなと。

・2010 自民党政策集 J-ファイル 2010

270 民主党夫婦別姓法案に反対自民党は働く女性を応援
 夫婦別姓を選択すれば、必ず子どもは両親のどちらかと違う「親子別姓」となります。わが党は、民主党夫婦別姓制度導入法案に反対し、日本の家族の絆を守ります。また、女性の社会進出については、旧姓の使用範囲を拡大する法整備などで支援します

 上記は選挙の際の公約集ですが、他の資料を見ると2010年の自民党的には民主党夫婦別姓案は「暴走」との認識だったようです。
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なおこれは余談ですが、この選挙時に使われたであろうチラシでは相手の鳩山氏に対して「宇宙人」という言葉を使ったり端々の文言がまとめサイト的であったりと甚だ公党のチラシとしては品がなく、怪文書に近い内容です。今でも自民党HPにあります

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 閑話休題
 言わずもがなですが現在の自民党夫婦別姓制度は反対の方向性です。反面、野党は「「選択的夫婦別氏法案」を5野党1会派で衆院に提出」という様に賛成の立場ですし、自民党が決意さえすればもう通るという状態でしょう。その決意がもう20年以上されてないし、される気すらないわけですが。なので通称使用という別の手法で夫婦別姓を極力避けるという手を今後も推進するという方向性かなと。

◆行政における制度への対応など

法務省
 「法務省:選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について」で制度が説明されています。審議会など歴史的経緯やQ&Aなどもありますし、どのような制度なのかを知るのには一番いいのかなと。

法務省としては,選択的夫婦別氏制度の導入は,婚姻制度や家族の在り方と関係する重要な問題ですので,国民の理解のもとに進められるべきものと考えています。

とある様に法務省は推進の方針です。

内閣府
第4次男女共同参画基本計画(平成27年12月25日決定)」「>第9分野 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備
 現在の安倍政権は夫婦別姓ではなく通称使用という方向性へと向かっていますが、安倍政権下での男女共同参画基本計画においても選択的夫婦別氏制度の導入について検討を進めるとあります。進めた(進めたくない)結果が通称使用なのかもしれませんが。内閣府男女共同参画についてのページがあるので夫婦別姓制度に対する反応は多くなりがちです。
 行政の話で大きなものは法務省内閣府の二つかなと。

安倍晋三首相の認識

 最後に現在の首相であり、歯止め役の自民党総裁でもある安倍晋三の選択的夫婦別姓に対する認識でも。

・2019年6月30日 ※選挙期間中

安倍首相は、選択的夫婦別姓の是非については答えず「いわば夫婦別姓の問題ではなくて、しっかりと経済を成長させ、みんなが活躍できる社会を作っていくことではないか」と述べた。(中略)すると安倍首相は「いわば経済成長とは関わりがないというふうに考えています」と、またも明言を避けた。
安倍首相 夫婦別姓への見解に批判殺到「もはや支離滅裂」 | 女性自身

・2019年7月3日 ※選挙期間中

「選択的夫婦別姓についての考え方」を安倍総理に尋ねる。
安倍総理:あのー、まず冒頭ですね、星さんが、働きやすい、女性が働きやすい、ということを言われましたね。で、あの、この、おー、5年間でですね、280万人の女性が働き始めました。25歳以上の、ですね、全ての世代で、え、就業率、は、ですね、アメリカを超えています。そして、えー、いわば、役員、だ、あ、あのー、大企業の役員の、ボードメンバーのですね、これは政権とる前の倍になっている、ということは申し上げておきたい、と、えー、思います。それから賃金格差もですね、今までで一番少なくなっている。えー、そして、賃金の上昇率も一番高くなっている、ということは申し上げておきたいと思います。ま、その上で、えー、今のグラフ、うー、においてもですね、意見が、えー、もちろん賛成の方が多いのですが、分かれているという状況で、え、まさに、えー、基本に係ること、でありますから、あのー、慎重に議論していきたいと思っております。
TBS『news23』党首討論信号無視話法分析で露呈。安倍政権の「選択的夫婦別姓」へのスタンス « ハーバー・ビジネス・オンライン « ページ 2

・2019年10月9日 ※国会

安倍晋三:夫婦の別氏の問題については、家族の在り方に深く関わる事柄であり、国民の大方の理解を得て行うべきものと考えていますが、平成二十九年の世論調査の結果でも国民の意見が大きく分かれている状況です。引き続き、国民各層の様々な意見を幅広く聞きながら、慎重に対応を検討してまいります。
第200回国会 参議院 本会議 第3号 令和元年10月9日

 選挙期間中のやり取りは意味不明ですが、とりあえず選挙期間中にしても国会にしても賛意の姿勢は極力避けようよしています。国会では上記の様な文言がもはや定型句化してそれ以上の事はほぼほぼ言いません。それと最後に有名なのを。

・2010年 右派系雑誌

安倍首相は野党時代に右派雑誌の対談で「夫婦別姓は家族の解体を意味します」と発言。さらに夫婦別姓は「家族の解体が最終目標」、「左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)」(『WiLL』2010年7月号)などと敵視する異常な持論を展開していました。
選択的夫婦別姓を敵視/これが安倍首相の本音

 図書館で現物を確認したかったのですが私の地元には無かったので引用記事で。2010年と言えば民主党政権ですし、その頃には上述したような怪文書的な民主党批判が成されていた時期です。その際の語り口であったり、日本会議などでの右派での夫婦別姓反対を鑑みればこういう発言をしていても不思議ではないです。どこまで本気かは分かりませんが、本気でないにしても甚だ意味不明です。


 現在、安倍政権下では夫婦別姓はしたくないであろうことは想像に難くありません。その代替物として旧姓の通称使用という別手段の推進で夫婦別姓に対抗しています。しかし通称使用が加速すれば加速するほど、それは実質的に夫婦別姓へと近づくであるという不思議な代替案であるなと私などは思ったりしますが。コスト面から考えても、姓を変えないという選択肢の選択的夫婦別姓と姓を変えるけど旧姓も使用や併用可能な通称使用では、後者の方がフォーマット作成や対応などがかかる気がして甚だ良い対応とは思えません。
 それと選択的夫婦別姓で国も家族も壊るとは到底考えられません。ただ各々の選択の幅が一つ増えて少しだけ変容し、その変容によって生じた隙間で楽になる人が増える方が大きいと考えます。壊れるのはただかつて国が決めたからというだけでただ形骸化した括弧付きの「伝統」。特に壊さぬ様にとありがたるような代物ではないかと。
 大体、過去を振り返るならば夫婦同姓制度によって国と家族が壊れたとも言えるわけで、ならもっかい壊したって良いはずかなと。私たちは「姓」によって家族の絆とやらを享受しているわけでもないのだろうし。


【参考文献】
石山 玲子『選択的夫婦別姓をめぐる新聞報道の分析 : 賛否理由におけるニュースフレームを視野に入れて』 2009
松本 タミ『民法改正・夫婦別姓に関する意識動向 : 地域・地方の視点で』 2012 北原 零未『夫婦別姓は何故「嫌われる」のか?』 2017
笹川 あゆみ『選択的夫婦別姓制度は何故実現しないのか : 「女性活躍推進」の陰で』 2019

*1:記事を記録し忘れたので引用とかはしていません。なので少しふわっとしてますがご勘弁を