電脳塵芥

四方山雑記

ウクライナ難民に「月60万円」は日本国としての支援ではないし、単純にデマ


https://twitter.com/binbou415/status/1519520646971400192

 この話がバズっているが、「月60万円」自体はこのアカウントが元ネタではある*1。 ただこのネタ自体はこのアカウントが初ではなく、初出はおそらくは以下のアカウントによるツイートでしょう。


https://twitter.com/realworldscope/status/1518939164573544449

ちなみにパクツイもあり、すでに極一部ですがミーム化しています。


https://twitter.com/moemoe_pi0306/status/1519229221725347840

月60万円(1人当たり15万円)について

 まずウクライナ難民に対して日本国としての生活費支援はNHKによる以下のまとめが分かりやすいので貼っておきます。


出典:ウクライナ避難民 相談や支援は?住宅やことば 自治体など支援まとめ
※「・11歳までは500円10歳未満 19人」の19人が謎。誤字と思われる

以上の様に一時滞在先ホテル、住居に移った後などで支給額は異なります。一番支援額が多いものを見ていっても1日当たり2,400円となり、月当たりで言えば72,000円程度です。同一家族で2人目以降は1600円となる為に48,000円。日本国としての生活費支援月15万円はデマです。またこの額は朝日新聞報道によれば生活保護費を参考にしているために日本国民と比較して特別手厚いとも言えません。
 なお、この月15万円の元ネタ自体はおそらくは前橋市の支援内容です。

前橋市 ウクライナから避難の人に政府支給含め月15万円支給へ
市内に避難してきた人に生活費を独自に補填し、政府からの支給分と合わせて毎月15万円を受け取れるようにする方針を決めました。
期間は、自立するまでの間、最大で1年間で、家族などで避難してきた場合は、2人目以降の人にも補填する方向で調整しています。

という様に前橋市は独自支援によって政府からの支給分に乗せて月15万円を支給するというものです。なお前橋市のHPを読むと月15万円は単身世帯のみであり、世帯員数によって支給額を調整するとあり月60万円は前橋市においてもあり得ません。ちなみに財源は税金ではなく募金。

スマホをもらえる

 これの元ネタはソフトバンクによる支援でしょう。

ソフトバンク、日本到着のウクライナ避難民にスマホ無償提供
ソフトバンクは5日、政府専用機で日本に到着したウクライナの避難民20人への支援として、希望者に対してスマートフォンを無償で貸し出したと発表した。ソフトバンクが政府に協力を申し出たもので、避難民は音声通話やデータ通信を無制限で利用できる。

政府としての支援ではなく企業が政府を通しての支援であり、通常考えるならこの支援は企業負担と考えられます。千葉市が1世帯に1台スマホを無償貸与するという報道もあり、自治体によってはそういった施策をしている事がありますが、企業にしても自治体にしても無償「貸与」とあるように字義通りの貸与であるならばいつかは返すものであり「もらう」というのはデマであると言えます。

家賃無料

 これも企業や自治体による支援内容が元ネタと思われます。まずは静岡市の支援。

静岡市、避難民3人受け入れ 市営住宅へ入居調整 ウクライナ侵攻
静岡市は8日、ロシアの侵攻を受けるウクライナから避難した同国籍の未成年3人を市内で受け入れることが決まり、市営住宅への入居の調整を進めていると発表した。住宅の敷金と家賃を最長で1年間無償とする。

また企業支援では上述のNHK記事に以下の記述も。

ウクライナ避難民 相談や支援は?住宅やことば 自治体など支援まとめ
避難してきた人のなかには、日本での受け入れ先が決まっていない人もいて、住まいについての支援が必要となります。受け入れに向けては、自治体だけでなく民間企業の間でも支援の動きが広がっています。
このうち、賃貸住宅などを手がける不動産会社の「APAMANグループ」は、避難してきた人たちに全国でワンルームや3LDKなどの賃貸住宅、およそ100部屋を用意して無償で貸し出しています。

静岡市にすると1年間無償、アパマンの無償支援は期間は書いてはいないですが生涯無償はあり得ませんので何らかの期限はあるでしょう。ただ、この件に関していえば全くのデマとまで言えません。

電動自電車でもなんでも無料プレゼント

 これは画像を根拠にして言っているのでしょう。この画像の出典はRKB毎日ニュースによる「弁当業者に就職したウクライナ人女性~その後の生活は 福岡」。

www.youtube.com

映像を見ればわかる様にこの電動自転車はウクライナ支援をする企業の社長のプレゼントです。確かにこれは「プレゼント」ですが、それを「なんでも無料プレゼント」とするのはこの社長の好意を馬鹿にしているとしか言えませんし非常に質の悪い紹介の仕方としか言えません。

そのほか

以下はちょっと雑ですが、簡単に紹介。


・パスポート不要で入国
 → 本当

・新築マンションに審査なしで入居
 → 不明。住居支援はあるが、マンションに審査なしというの特に見当たらない

・生活必需品は最新型
 → 読売新聞『「無印良品」、ウクライナ避難民に就労機会・生活必需品提供へ』などの様に必需品の支援自体は存在
   日本財団のウクライナ難民支援による生活環境整備費なども存在

・移動費全額支給
 → 出入国管理庁の支援に「支援先への移動手段の提供」とあるが「全額」という表記はない
   他を探してもそのような「全額」支援はなさそう

・選考試験なしで就職
 → ではなぜ「就労支援」があるのか
   選考試験なしの企業があってもおかしくはないが、それは企業によると考えられる


 事程左様に大抵の表現には誇張があります。一部には出典不明と思われる情報もありますが、正直デマの部類に入るものもあります。月60万円とかはあり得ませんし、電動自転車などは個人の好意のプレゼントにもかかわらずこの紹介では悪意を持った切り取り方と言われてもしたかたないでしょう。
 最後に出入国管理庁のウクライナ支援情報について貼っておきます。大まかに見る場合には「日本に在留しているウクライナのみなさんへ」ですが、しかし探し方が悪いのか1日2,400円などの情報は出入国管理庁HPに見当たらない……。なので支援の大枠について書かれた「・ウクライナ避難民に対する支援内容について」を貼っておきます。



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