電脳塵芥

四方山雑記

いうほど若者は低身長化してない


https://twitter.com/wildriverpeace/status/1494130907984568322

「若者の給料」と同様に、30年間伸びていない「若者男子の低身長」問題

 さて、この著者に関する記事は以前「10代の身長が低下しているという話について」というものを書き、今回の件についても大方問題点は変わりません。まず、若者の身長がすこし低くなっているというのは本当ですが、この著者の記事は正直データの出典元やグラフの仕様の仕方が駄目なんで今回も一応書いておきます。

低身長化はしてるけどデータが恣意的

 令和2年度学校保健統計調査から男子学生の平均身長を見てみると以下の様になります。

このグラフを見ればわかる様に17歳男の身長は昭和60年度あたり、つまりは35年以上前くらいから170cm近辺で落ち着いています。当然ながら平均身長が青天井に伸び続けるということはなく日本人の栄養状態が十分になっていれば身長はこのあたりで落ち着くという事でしょう。そして17歳男性の平均身長が一番高かった時期は170.9㎝であり、そして令和2年度の平均身長は170.7㎝。たしかに低くはなっていますが、これをもってして

日本人男性の平均身長は、明治時代から100年間で約15cmも伸びた。しかし、その身長の伸びが近年止まってしまったどころか、逆に若干低身長化の傾向にあるという事実をご存じだろうか?

というように「低身長化の傾向」と言えるかと言えば甚だ微妙なところ。そしてその後に以下の様な事を記述しています。特にここが問題。

2019年時点において、20歳以上の男性の平均身長は、167.7cmにすぎない。平均が170cmにも達していないのが事実である(2019年厚労省国民健康・栄養調査」より。2020年はコロナ禍のため調査自体不実施)。
「20歳以上の平均にしたら、中年や高齢者も含むのだから、それは低くなって当然でしょ。若い人だけに限定したらもっと高いでしょ」と思われるかもしれない。しかし、同調査によれば、20歳男性の平均も170.2cm、21歳の平均にいたっては168.7cmしかないのである。

令和元年国民健康・栄養調査報告の「第 2 部 身体状況調査の結果」がデータの出典ですが、そこには以下の様なデータが記述されています。

    人数 身長平均値
17歳 14 171.5
18歳 19 171.1
19歳 16 170.4
20歳 12 170.2
21歳 11 168.7
22歳 26 172.3
23歳 16 171.6
24歳 12 172.7
25歳  5 171.3

以上を見ればわかる様に20歳男性の平均170.2㎝とは12人という人数の平均であり、21歳男性の平均は11人の平均です。流石にこれでは平均値を求める為のサンプル数が少ないと思わざるを得ない。よしんばこの数値を採用するならば17歳、18歳の171㎝台も採用しなければならず、だのにそれを無視しているのははっきりいってこの著者がデータを自身の言説の為に恣意的に利用しているとしか思えません。このデータを使用する際にこの人数の値を無視するのは不可能に近く、それを無視した論を書くのは著者はおかしい。
 その他にも、

18-19歳の男子の身長は、40代の中年おじさんよりも低くなっているのである。

とありますが、ただ学校保健統計調査では40~49歳が学生であったであろうころの17歳身長は今の17歳身長とさして変わりません。それを考えるとこれもサンプル数からの平均問題、18、19歳からも少なからず身長が伸びる場合も考えられますので、正直鵜呑みにするには微妙。
 事程左様に若者の低身長化そのものは「嘘」の類ではなくほんの少しミリ単位で下がっていることは事実です。ただしそのために使用するデータ、そしてそれを用いたグラフの作成と記事への使用に問題があると言わざるを得ない。結論や扇情的な記事にするためにデータを使っているとしか思えず、何はなくともこの著者は信用が置けない。

※もっと詳細に見ようと思えば、学生の身長推移で低身長層、高身長層の推移とかを見ていくと面白いかもしれませんが、そこまでコストをかけたくはないのでこの記事では扱いません。



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