電脳塵芥

四方山雑記

アベノマスクの使用率ってどれくらいだったのか

 結論だけ先に書いておくと困難であり不明な面はあるけど、やっぱそんなに高い効果はなかったよね。

www.asahi.com

田村憲久厚生労働相は30日の参院本会議で、「国民の皆様より感謝や御礼の声もいただいており、一定の効果はあった」と答弁した。(中略)ただ、具体的な効果については、「個々の対策がどの程度寄与するか数字を示すことは困難」と述べた。

って記事があったのでアベノマスクの使用率の話。まずとりあえず言っておくと「一定の効果」はあったのは確かというか、誰も使用しないということが起こらない限りは効果はあったといえるし、安倍前首相がずっとしていたので極論すれば安倍晋三氏が使ってたから効果があったとすらいえなくもない。ま、そんな屁理屈じみたことは置いといて。

各種調査によるアベノマスク使用率

 今までで幾つかの調査によってアベノマスクの使用率が出ています。それらを羅列していくと……。

アスマークによる調査
・調査人数:一都三県500名
・調査期間:5/14~15
・届いた:20.2%
使っている:22.8%

・調査期間:5/21~22
・届いた:34.4%
使っている:11.6%

アイクリエイトによる調査 ・調査人数:20代以上の男女145名
・調査期間:5/14~21
・届いた:33.8%
使っている:4.1%

週刊文春による調査
・調査人数:10代~80代まで1501票
・調査期間:5/26~29
・届いた:29.4%
使っている:12.2%

プラネットによる調査
・調査人数:4000名
・調査期間:7/17~20 ・届いた:不明
使っている:3.5%。今後使いたい人は2%

さらっと見て目に付く調査は以上の通り。どれもインターネット調査でもあるし、ちょっと精度はどうなのかなと思うこともなくはないですが、これらの調査を見る限り押しなべてアベノマスク使用率はどんなに高い時期でも2割程度という結果です。マスク不足がほぼほぼ解消された時期であろう7月末の調査で使用率3.5%。使用率が高いとは口が裂けても言えません。5月中旬の調査に限って言えばまだマスク不足といえる時期であろうし、その時にすら20%の使用率というのも高いとはいえそうにない。なおついでに言えば厚生労働省のページを見ると配布状況は「全国で5/27(水)時点 約25%」。4月7日閣議決定ということを鑑みれば1か月ちょっとかかって全国に25%は緊急時であることを考えればやはり遅いというそしりを受けてもやむ得ないかなと。この配布がもっと早ければまだ使用率は上がっていたのかもしれませんが、だがしかしタラレバをいっても仕方ない。

マスク輸入状況

 アベノマスクの効果として「東京などに届き始めてから、店頭での品薄状況も徐々に改善され、価格も反転したので非常に効果があった」という弁がありました。これについては「4月のマスク輸入量、むっちゃ増えたよ - 電脳塵芥」にも書いたんですけど、輸入量がむっちゃ増えたからじゃない? と書いたのですが、それ以降の推移とかも一応書いとこうかなと思って置いときます。貿易統計を参照してグラフ化すると10月までの不織布マスクに限った輸入量は大体以下のとおり。

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グラフを見ると現在でも輸入の大半は中国から。6月に何故マスク輸入量が減ったのかはよく分かりませんが(供給過多、もしくは他国のバイヤーにとられたなど?)、その時期にもマスク不足的な事は起こったとは実感はないですし、それ以降の輸入推移からも最早マスク不足が起こることは難しい感じかなと。

国内でのマスク生産状況

 こちらはデータがないのでいまいちよくわからない面もあるのですが、とりあえず以下の記事を信じれば現在のマスク国内生産量は5億枚を超えていると考えてよろしいかと。

官房長官は(8月)26日の記者会見で、今月のマスクの国内供給量が約10億枚に達し、そのうち約5割が国内生産となる見通しを明らかにした。
8月のマスク供給量10億枚、「国産」5割に…菅長官「国内生産能力高める」 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン

8月時点で5億枚。これは去年の国内マスク生産量である約15億枚の3分の1にあたることを考えればかなりの量が国内生産で賄えるようになって来てると考えていいでしょう。ちなみに11月に入ってマスクの生産、輸入総量動向の実態調査に乗り出すらしいです。その調査自体は大変宜しいけど11月にこの調査に乗り出すというのはかなり遅い気……。

国内生産・輸入総量の動向について実態調査に乗り出したことが14日分かった。国による大規模調査は初めてで、来年度にかけてサプライチェーン(調達・供給網)も踏まえた調査を本格化する方針。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/68458/


 現在までにアベノマスクを使用している人間がどれくらいの割合いるかわからないので、必ずしも効果がなかったであるとか、逆にどこまで効果があったというのは確かに困難です。実際に使用してる人もいますし必ずしも効果ゼロとは言わない。けれど数百億円を超えるコストやそれに割いた時間コストに比べればその効果が高かった、とはとてもじゃないが言えそうになく、その資金でもっと効果的な施策ができた可能性は高いでしょう。どんなに高くて見積もっても大都市圏に多少配布されていた時期での使用者が2割、全国的に見たらもっと使用率は低いはずで1割程度とみてもそうは間違ってないでしょ。前政権とはいえ連続性のある内閣だから効果(影響)の否定やマイナス評価はしたくないんでしょうけれど、それらを認められない政権が危機対応にあたるの怖いですし、エビデンスベースの政策立案とか果たして出来るのかと。