電脳塵芥

四方山雑記

レジ袋有料化の効果を少しだけ調べて見た

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 2020年7月に有料化したレジ袋有料化政策が1年を経過したくらいの時期から上記の様なレジ袋有料化反対を思わせる表現物が見られ、それらがツイートなどでも散見された状態でしたので環境省にレジ袋のメリット・デメリットが書いてある資料を開示請求してみた。デメリットを書いてある資料は届かなかったんですが、それはともかくとして環境省資料やそのほかの記事でその効果を見ていきます。この記事で書かなくっても環境省辺りが環境白書なりなんなりでいつか書くとは思うんですけれども*1

レジ袋使用の削減率

 日本チェーンストア協会日本フランチャイズチェーン協会、日本チェーンドラッグストア協会調べによる資料ではレジ袋の辞退率は以下の様になっています。

日本チェーンストア協会
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日本フランチャイズチェーン協会
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【日本チェーンドラッグストア協会】
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 日本チェーンストア協会は(おそらく)各月の削減率(辞退率)を表示しているのと思われますが*2、有料化後に辞退率が平均8割へと上がっているのが確認できます。ちなみにチェーンストア協会は主にスーパーなどが加入している協会となり、スーパー自体が有料化以前からマイバック運動などを推進しており元から他業界と比較してレジ袋辞退率が元から高いという業界特性があります。詳しくはこちらの記事で書いているので興味のある人はどうぞ。次に日本フランチャイズチェーン協会は2030年度までの60%以上辞退率という目標を有料化後に既に達成しています。そして日本チェーンドラッグストア協会は前年同月比の削減率のみの表示ですが、この資料からは相当量のレジ袋が削減された事がわかります。
 いずれにおいてもこれらの資料からは有料化によって相当数のレジ袋が削減されている事が伺えます。レジ袋をごみ袋として使用していた家庭では代わりにごみ袋を購入するようになった家庭もありますからこの減少分=プラごみの削減とはなりませんが、ひとまずこの削減は政策の効果として見て良いでしょう。

Web記事などからわかる効果

 以上で開示請求での資料は終わりますが、その他にWEB記事などでのレジ袋有料化についての記事を置いておきます。

ITmedia ビジネスオンライン】

レジ袋有料化から1年が経過したが、この施策をどう評価するか聞いた。すると「どちらとも言えない」が38.7%で最も多かった。「成功だった」は38.3%で、失敗だったは23.1%という結果に。
レジ袋有料化は「成功だった」と考える人が「失敗だった」を上回る

上記の調査からはこの政策において「成功だった」は「失敗だった」を上回っている事が分かります。ここら辺は辞退率などを見る限り、特殊な場でのアンケートでもしない限りは成功>失敗という感じにはなりそう。

NHK

セブン‐イレブンはことし2月まででおよそ8000トンのプラスチックごみの削減につながったとしていてレジ袋の収益はペットボトルのリサイクルのための回収容器の設置費用などにあてているということです。
またファミリーマートは、有料化の収益は、海洋ごみを原材料にした買い物かごを作る費用に充てています。
(中略)
レジ袋の有料化からまもなく1年になりますが、街なかにいわゆるポイ捨てされているレジ袋は減ったものの、弁当の空き容器などプラスチックのごみそのものは今も減っていないという声もあります。
レジ袋有料化1年 辞退率7割以上 導入前の3倍程度に増加

記事にあるコンビニの調査は環境省資料とほぼ同じ事が記載されていますが、セブンイレブンなどの記述はより具体的になっています。これらの事を見る限り「レジ袋」によるゴミが減ったことは分かります。ただ記事にある様にレジ袋以外のゴミはそのままなので、ここら辺は意識改革なり、街中でゴミが捨てやすい環境なりを作っていく必要があるでしょう。

データから見るレジ袋(ポリ袋)量の変化

 上記で引用したNHK記事には次のような記述があります。

ごみ袋メーカーが行った調査によりますと、去年7月以降、レジ袋と同じような形をした取っ手付きのポリ袋の購入量が2倍以上に増えているということで、有料化がプラスチックごみの削減につながっているかどうかは不透明です。

無料でもらったレジ袋をゴミ袋として再利用という家庭は多かったでしょうから、この指摘は重要です。ではデータ上でレジ袋を含む袋の変化はどの様になっているか。このデータでは「日本ポリオレフィンフィルム工業組合」が【2016~2020年 ポリオレフィンフィルムの年別出荷状況】というデータで以下の様に示しています。

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HDPEフィルムの項目をみると2020年のレジ袋は前年比で64.3%、ごみ袋は前年比95.7%となり、ごみ袋の消費量が上がったという記事の記述があるものの、その出荷総量自体はあまり変化はなさそうに見受けられます。また【ポリエチレン袋輸入量の年別推移(2016年~2020年)】を見ると輸入量からもポリ袋そのものの減少が見受けられます。

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更におまけで2019年から2021年の6月までの輸入量はこちら。

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これらを見ると2021年もポリ袋の輸入量は減少傾向と見受けられ、ゴミ袋の消費量が増えていると言っても総量としてのポリ袋は現在のところは減少傾向と見て良いかと思われます。

万引き数の変化

 レジ袋有料化によってマイバックが増え、そして万引きが増えたという指摘があります。これに関しては量販店などに行くと「マイバックをお持ちの方は~」などというアナウンスがされる店も存在しており、実際に店舗側が気を付けていることが伺えます。またスーパーマーケット白書における「レジ袋有料化によるスーパーマーケットへの影響 実態調査」では以下の様に万引きについての調査をしています。

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この調査によれば盗難の増加は「かなり増加」が5%、「やや増加」が26%で合わせて31%。「変わらない」が26%、「わからない」が43%となっています。ここから3割程度の万引きが増加している可能性が見受けられ、その割合は決して少ないとは言えません。
 では万引きの統計はどうだったのか。こちらに関しては警察庁に問い合わせて2019年から2020年までの万引きに関する認知件数、検挙人数、検挙人員の資料をもらいました。それによると以下の通り。

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万引き認知件数だけを見ると、
 2019年:93812
 2020年:87280
となり、2020年は万引きそのものの数は減っています。また月ごとの認知件数をグラフ化すると以下の通り。

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2020年の4月、5月などは新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響なのか前年と比べて大きな減少をしている事が伺え、この二つの月が前年からの万引き大幅減の主要因であることがが伺えます。ただしその後、レジ袋有料化の7月以降に関しても前年と比べてもやや少ない月が多いことから、スーパーへの調査で3割が増えたという回答があったとしても、万引き全体を見ればレジ袋有料化が万引きを増やしたという結論はかなり微妙なところです。結論としては個別の店で増えた店はあるかもしれないけれど、全体としては変わらないという玉虫色的なものになるかなと。


 一番最初に貼った画像に関して、レジ袋有料化はひとまずポリ袋の消費量は確実に減ったという事だけは言えます。それに伴う「ポリ袋」そのもののポイ捨ては減ったでしょう。ただしそれ以外のごみが減った可能性は少なく、またプラスチックごみという問題そのものを考えた場合はレジ袋以外にもやらなければいけない事が存在しており、それらの政策が今後進む可能性は十分にあるでしょう。これらの政策は直接的な生活変容を起こすものでもある為にツイッターなどでの拒否感はかなり強いものとなる事が予想されますが。
 

*1:令和3年版環境白書には効果自体は書いてないので実際に書くかは微妙

*2:日本チェーンストア協会の資料は添付した画像以上の情報がないために「おそらく」と書いています。資料名は「2020年度レジ袋削減率調査(日本チェーンストア協会)」なので各月の削減率(辞退率)を調べているのかなと。少なくとも前年同月比とは考えにくい。