電脳塵芥

四方山雑記

韓国や台湾におけるマスクの供給対策について

 全世帯への布マスク配布が近しい昨今なので韓国や台湾ではマスク需給についてどうしているかの記事なり~。なお記事は自動翻訳なので悪しからず。

◆韓国の状況
 当然ながら韓国でもマスクの品薄が発生してます。あちらの記事を見ると3月中旬までは全国的に品薄状態が発生しており、このような記事も3月2日に出ています。

マスク日の供給量わずか1,000万枚...総人口の20%はわずか
【コロナ19マスク大乱】
■ドタバタ行政...需給対策何が問題か
一日に生産されたマスクの半分以上の500万枚を薬局・郵便局などの公的物量で解いているが殺到する需要に耐えが不可能なのが実情である。特にコロナ19が急激に広がっ後になって、輸出制限措置を実施するなど、後の祭り行政に続いて、今、先のとがっ代替がないで1つのマスクを三日ずつ使ってもなるなど、お手上げだ国民の不満が増幅されている
(略)
一日500万枚以上の公的物量供給方式も議論の対象である。5つを購入するために農協ハナロマート、郵便局、薬局などに2時間以上並びが繰り返され、高齢者や会社員は購入するのが難しいという反発が出てくる。

という様に今の日本とおそらく似たような状況が繰り広げられています。自動翻訳ですし、どこまで膾炙してるかは分かりませんが、「マスク大乱」という言葉も出来ていたようです。なので、上記記事もそうですが、数百メートルの行列が出来たり、一部ではマスクが貨幣のように使用された事が記事という事もあったようで。ですが、この状況に対して韓国は以下の様な対策を行い、品薄状態は3月末〜4月初めの頃にはなくなっているといいます。

【韓国での対策】
1)マスク増産
 当然ながらマスク増産をしています。マスク供給量が1日500万枚から1000万枚へとなってるようです。月産約3億枚。ちな、韓国の人口は5100万人。

2)マスク買い占めの摘発
 言葉そのままの意味で買い占めの摘発です。「シクヤク先、なんと105万個にも及ぶマスク買い占め摘発 」という件もあり、それなりの大捕り物(?)もあったそうですが、品薄解消に対する効果は薄かった模様。

3)公的マスクの導入
 これが効果を挙げたとされているものです。公的マスクは政府が公平なマスク需給を為、次の三つの原則を打ち出しています。Q&Aはこちら

 ①1株当たり1人2枚購入制限
 ②曜日別購入5サブタイトル
 ③重複購入確認システムの稼働

このシステムは大韓民国国民の誕生年端数を起点に、

  月曜日:1、6
  火曜日:2、7
  水曜日:3、8
  木曜日:4、9
  金曜日:5、0
  週末:平日非購入者に限って購入可能

にマスクが購入可能となるシステムです。誕生年は身分証明書を持参、本人の数量に限り購入可能で全国の薬局ネットワークに共有されるために再度の購入は不可能とされています。なお代理購入は可能ですが相応の手続きが必要です。ちなみに「公的マスク」はあくまでも政府が確保したマスクであって通常のマスクもある様で、通常のマスクは買い占めの事例が示すように一時期値段が高騰していましたが公的マスクの導入によって値段が下がったという効果も見られたようです。この対策でも「必ず買える」わけではありませんが、買うハードルが下がったのは確実です。

4)公的マスク販売データのAPI民間公開
 上記の公的マスク販売データをオープンAPI方式で民間に公開することによりアプリケーションとポータルサイトで販売時間や在庫量が判る様になりました。

5)マスク需給状況ブリーフィング
 一週間に一回、マスクの需給状況が流されていま。KTVで放映されているのかまでは分かりませんが、KTV 국민방송のページで確認可能となっています。なお、上述した公的マスクも韓国の新型コロナに関するHPに日毎の公的マスク供給の現状がUPされており、情報周知が良くなされていることがうかがえます。


 韓国の記事を見ていると、「公的マスクの導入」およびそれによるAPI公開からのアプリケーションなどでマスク大乱は終わったとされている模様です。それを示すかのような4月3日の記事では、

「薬局の前の行が消えてしまった」... マスク大乱本当に局面
先週から薬局の前に列が減る始め、今週は並ぶ場合がほとんどないということだ。キムさんは「マスク供給量は増加し、市民の需要は減少した」とし「マスクが使い切られなく残る日もある」と述べた。
(略)
食品医薬品安全処によると、2日、全国に供給されたマスクは、995万8000枚であり、過去1日には1267万4000個まで供給量が増えた。公的マスク5サブタイトル実施初期に一日のマスクの供給量が500万枚に過ぎなかったことに比較すると2倍ほど増加したことになる。
(略)
マスクの供給量が増え、マスクアラートアプリは「緑」を帯び始めた。マスクアラートアプリは、マスクの在庫が100枚以上の薬局に緑色で表示する。「品切れ」と表示された薬局もあったが、在庫が残る薬局が圧倒的に多かった。

という感じに書かれています。公的マスクは1週間2枚となり、数が足りないなどの欠点はあるもののこの数を3~4枚に増やすという検討がなされているかのような記事も存在します。公的マスク導入はマスク製造業側との調整、薬局の負担や利益の問題などなどあった様なので欠点がないシステムとはいえそうにありませんが、それはともかくとして1月末から出てきて2月以降に本格した問題が4月頭に一応の解決をしたことになります。
 最後にこれは脇道ですが公的マスク導入の話には代理店選定疑惑があり、それを保守YouTubeチャンネルや野党議員(今の政権が革新なので、おそらく保守系でしょう)が批判しているという件があるようです。ただしこれはデマと断定されているらしく、FBやtwitterの書き込みが是正要求をされるまでに至ったようです。何処の国にもデマがある。


◆台湾の場合
 台湾においても他国と同様にマスク不足が発生します。まずはマスクを政府が買い上げ(徴収)ますが、効果は上がらず。そこで以下の様な対策をしています。

1)マスクの増産
 マスクは1日188万枚から現在は1月の約7倍に当たる1日1300万枚。月産約3億9000万枚。ちな、台湾の人口は2300万人。(関連記事:台湾マスク生産7倍に 官民一体ライン増強 友好国へ無償で1000万枚 - 毎日新聞

2)実名制の導入

マスクの購入が実名制に、購入できるのは7日に1度で1人2枚まで
慢性疾患の患者に対する処方箋のケースにならい、購入を希望する人は台湾全土に6,000あまりある健康保険特約薬局へ行き、全民健康保険カード(健保カード)を機器に差し込めばマスクを買うことが出来る。外国人でも台湾での居留証があれば購入は可能。
(略)
新制度では各薬局のマスク在庫量も透明化。唐鳳政務委員(無任所大臣に相当)が、「コンビニエンスストアにおけるマスク在庫現況」マップを設置したエンジニアチームと協力して「薬局版」のマスク在庫量システムを開発することにしている。これにより、どの薬局にどれだけの在庫があるかがインターネットを通じて一目瞭然となる。

そしてその実名制度は上述した韓国の公的マスクと同様にマスクを購入できる日は曜日によって決まっています。

(1)一人につき、一週間に購入できる数は2枚。
(2)身分証番号(日本でいうマイナンバーカードに相当)の下一桁により購入できる日数が異なる。
  奇数(1、3、5、7、9):月曜日、水曜日、金曜日
  偶数(0、2、4、6、8):火曜日、木曜日、土曜日
(3)日曜日は番号問わず、全ての人が購入可能。
(4)1人につき、1人分の代理購入が可能(ただし身分証は要持参)。
(5)販売店舗には、毎日大人用マスクが200枚、子供用マスクが50枚ずつ入荷する。
台湾、パニック鎮めた「すごい」マスク購入システム 実名&アプリ連動で転売封じる : J-CASTニュース

なお上記記事では一人2枚としていますが、3月末の記事では「子どもの買えるマスクの数を14日間で10枚とし、成人も14日間で9枚」とするとし、また曜日の制限をなくすとしています(関連記事:マスクの海外郵送を条件付きで解禁、二親等内の親族に1回30枚まで

3)インターネット予約販売
 実名制導入だけでは実際にその場所に出向かなければ買えませんが、特設サイト「eMask口罩預約平台」で購入が可能(関連記事: 3/12からインターネットでマスクを予約販売、まずは試験導入 : Taiwan Today

)。記事を見ると家に届くのではなくコンビニで受け取る形式の様です。なお、事前に特設サイトや専用アプリ「全民健康行動快易通(アンドロイド版 / iOS版)」などで本人登録をすます必要あり。また多かった場合は抽選制となります。

 台湾の大きな動きは以上かなと。韓国と同じく、というか時系列的には台湾の方が早いですが実名制の導入で購入者を絞り、さらにアプリやインターネット販売を通じて供給のコントロールをする。且つ、台湾で1日1000万枚を超えるマスクの生産体制。台湾の人口が2300万人と考えればこの生産体制は需要にこたえる供給を実現するためにかなり寄与していると考えられます。


◆日本の場合
 一応、日本の対応を書いておきます。

1)マスク配布  全世帯への布マスク2枚配布。説明不要だと思うのでこれは省略します。その他にも「児童生徒及び教職員に対して、4月以降を目途に1人2枚の布製マスク」というのもあります。あと医師へのマスク配布もあります。学校や医師への配布は他国などでもやってますが、全世帯というのは多分世界初ではないかなと。それが良いか悪いかの評価は各々でしてください。

2)マスク増産
 マスクの増産は日本も同じ。日本のマスク国内生産数は日衛連によると2018年に11億1100万枚。これを月当りにすると約9300万枚、日毎にすると310万枚ほど。人口を考えればこの数は少ないと見た方が良いでしょう。ただこれは通常時の話であって後述するように増産体制を敷き、倍増近くになっている工場もあるようです。なお政府では対策本部にて3月の6億枚から、4月は7億枚を目指すと言っています(関連記事: 令和2年4月1日 新型コロナウイルス感染症対策本部(第25回) | 令和2年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ )。この6,7億枚という話は輸入マスクも含まるでしょうからすべてが国産マスクではないと考えるの自然です。従来の国内供給量は輸入分も含めて最大で月4億枚。そこから2,3億枚を上乗せしなければならず。
 で、先ほどの官邸HPの安倍首相の発言には「月6億枚を超える供給を行ったところです」とあり、3月は6億枚の供給が達成されたことが明言されています。正直、数が明記された資料がないので達成/未達成の判断が出来ないのがかゆいところで、その数が分かる資料を公表してくれ~、って思うしかないのですが、周辺状況から増産体制はどうなっていたのかを探ります。国内マスクの増産については経産省の「マスクや消毒液やトイレットペーパーの状況 ~不足を解消するために官民連携して対応中です~ (METI/経済産業省)」を参照します。それによると、

 ・2月28日:マスクの生産設備の導入等を行う事業者を3件採択
   ⇒ 合計1,500万枚の増産・供給を開始
 ・3月13日には、8件を採択(内1社辞退)
   ⇒ 増産設備の規模は約5,000万枚規模
 ・3月25日に4件を採択(内1社辞退)
   ⇒ 増産設備の規模は約260万枚規模

となり、合計6760万枚の増産体制がうかがえます。また、既存企業も先ほどの経産省HPに”国内メーカーで24時間の生産体制を敷いており、供給は2月末に毎週1億枚を超えました”とあり、週1億枚という増産体制を敷いています。また、輸入に関しては中国等から週に1000万枚レベルで輸入、4月からは週に2000万枚の輸入、それとアパレル企業がガーゼマスクをミャンマーで製造、3月中には100万枚の輸入(生産キャパは月に1億枚分)と経産省は公表しています。
 週1億枚の体制に他の輸入分や新規分を合わせれば6億枚を達成できる……? と少し疑問だったのですが、下記の東京新聞に内訳が書いてありました。

<新型コロナ>マスク不足 解消遠く メーカー「供給追いつかない」
 政府も国内メーカー十三社に設備投資の補助金約五億円を出し、四千八百万枚以上の増産につなげた。また、二月上旬ごろから中国にある日本メーカーの工場で生産されたマスクの輸入量が停滞したことを受け、中国以外の輸入先も新たに開拓。その結果、月平均の生産量三・五億枚を上回る六億枚を生産。四月以降も同様の対策を進め、七億枚の供給を目指す。 f:id:nou_yunyun:20200410173516j:plain

ところどころの数字が経産省HPとあわないというか、経産省HPの方には5億円補助の件や海外生産の数字などが欠如しているために情報に齟齬が出ていますが、とりあえずは上記の内訳で国内6億枚は達成している模様です。情報をちゃんと書いて!


 日本の体制は以上。基本はマスク増産というレベルです。韓国にしても台湾にしても共有するのはマスクの増産と購入者側の行動抑制。そしてただ行動を抑制するだけではなくマスク在庫などをアプリで可視化をしており、これは消費者側の心理としてもありがたいことは想像に難くありません。ただ、これらの身分証明書系による行動抑止、アプリによる在庫管理が日本で出来るかはよく分かりませんが。マスク買い上げはともかく配給店舗あたりで問題になりそう。アプリも一斉買い上げと供給が無ければ難しいでしょうし。
 あと日本の状況の最後に書きましたが経産省のマスクに関する情報ページの情報が薄い……。多分、あそこが日本のマスク情報を収集するHPだと思うんですが、

f:id:nou_yunyun:20200410173938j:plain

f:id:nou_yunyun:20200410174000j:plain

という様にマスク供給についての情報が書かれても何枚確保したのかが謎であるし、月の生産量、供給量の情報もない。詳しい情報があるのかと思って(参考)というリンクを押すと経産省ツイッターに飛ばされるという謎仕様。マスクの供給自体は数値上実行されています。ですが、それを外側から見える情報が記されていないという著しく透明性の低い状況になっています。PR作業だけではなく供給情報の透明性確保も不安解消につながるはずなので、せめて情報の透明性とあと情報が分かりやすいページであれば良いのになと切に思います。そこら辺は出来るはずですし。

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