電脳塵芥

四方山雑記

来月(7月)以降のファイザー製ワクチンの供給量減少についての話

 ツイッターで次の記事を見たので、それに対しての雑記。

自治体が行う集団接種についてです。この接種にはファイザーのワクチンが使われているのですが、この供給を巡って自治体から困惑の声が上がっています。ファイザーワクチンの全国への供給量の推移は、当初は量が限られていましたが、先月から段階的に拡大、安定的な供給が続いていました。しかし、国は、今月4日、来月以降、大幅に減少すると発表ファイザーとの契約に基づくもので、やむを得ないとしていますが、突然の減少に、打ち手の確保に努めてきた自治体からは困惑の声が上がっています。
ワクチン 来月以降 供給量減少へ 自治体から困惑の声|NHK 関西のニュース

最初にこの記事を読んだときに私は勝手に高齢者向けワクチンの話と勘違いしてたんですが、これ記事の後半の方を読むと高齢者接種後の一般向け(12歳以上の市民)の話ですね。そんな勘違いは置いといて本題。

厚労省のワクチン配布スケジュール

 厚労省による6月4日の発表は「新型コロナワクチンの供給の見通し」 で確認可能です。4日の発表が15日に報道される時間差は謎ですが、好意的に考えるならば自治体が気付いてそれを察知したのがそれくらいだった、とか。それはともかくワクチン配布スケジュールは現在のところ以下の通り。

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上記のスケジュールにある6月末に「6月末までに、高齢者約3600万人2回分の配布を完了」とある様に今月末に高齢者向けのワクチン配布は完了の予定。なので今回供給量減少によって足りないと言われているワクチンは高齢者向け以降の話になると思います。実際には自治体によって異なるところもあるかもしれませんが。ちなみに4月30日に厚労省が通達した「新型コロナワクチンの高齢者向け接種の前倒しについて」では高齢者向けワクチンの配布計画が載っていて、4月30日時点で6月末に高齢者向けワクチンの各自治体への配布が終了する計画でした。つまりはこの高齢者向けワクチン自体は4月末の配布計画から外れることなく進んでいることが伺えます。なお「配布」であって「接種」ではないので注意。
 そしてファイザー製ワクチンは上記厚労省HPから「【第10クール】7/19の週・7/26の週」までに医療従事者(936万回分)、高齢者向け&一般向け(8223万回)を併せて9159万回分のワクチンの配布・計画されている状態です(5回で計算)。

ファイザー製ワクチンの輸入計画

 さてNHKの記事にはこう書いてあります。

厚生労働省は、「ファイザーとの契約に基づくため減少はやむをえない」

この契約とは何か。報道を見ると単純に7月からの輸入量が落ちるということです。まずファイザー製ワクチンの契約数は年内に約1億9400万回分。12歳より下の子どもなどがいるとはいえ、単純に今現在日本に住む全住民にファイザー製ワクチンを接種できる分だけの回数は契約していません。少なくとも年内に限っては。で、5月28日の朝日新聞の記事を参考にするとその輸入スケジュールは以下の様なもの。

ファイザー製ワクチン輸入時期>
6月末  :約1億回分(5千万人分)
7~9月 :約7千万回分(3500万人分)
10~12月:約2400万回分(1200万人分)

見ればわかる様に7月からファイザー製ワクチンの輸入量が減少します。そして6月末までに9000万回分くらいのワクチンを使用するので在庫もほぼなし。この供給量について河野氏5月28日の記者会見で以下のように語っています。

自治体の皆様から、6月に入るということで7月以降のワクチンの供給の見通しについて、今後の準備を効率的に進めるためにもできるだけ早く知らせてほしいという声がありました。
(中略)
市区町村がスピードアップをするために、あるいは一般の方、基礎疾患をお持ちの方に移行するために接種会場を新たに設けるという要望もかなり強くあるようでございますので、今までのファイザー社製ワクチンを使った集団接種と会場を明確に分けていただくという条件でモデルナ社製のワクチンを市区町村にも供給してまいりたいと思っております
6月11日を目途に厚労省がモデルナ社製のワクチンを使った集団接種、大規模接種の希望がどれぐらいあるかというのを調査しておりますので、市区町村でご要望があれば、都道府県を通じて手を挙げていただければ、我々としてもしっかり供給してまいりたいと思っております。モデルナ社製のワクチンについては、毎週のご要望の数を、おそらく週ごとにお届けするという形で供給ができるのではないかと思っております。

まずワクチンの供給量については透明性を持てばいいだけの話なので早く知らせるとかじゃなくてそういう仕組みを作っておいた方が良いのではと。それとファイザー製ワクチンの供給量が鈍化することは確実なのですが、それを補うためにモデルナ製を市町村にも供給したいと語っていますが、ただスピードアップという論理はちょっとおかしくて単純に減少分を補うためには使うんですよね、と。市区町村の要望があればとも書いてありますが、モデルナ製がなければファイザー製は物理的に数が減る。ここら辺は国と自治体でどの様にワクチン接種の構想を練っていたのかのズレが生じている可能性はあるような。ファイザー製だけで計画を練っていた自治体は確実に有ったであろう反面、国はファイザー製だけでは足らない事は認識していたはずですから。そして同日の会見では以下の様な質問と答え。

(問)ファイザー社製のワクチンを7000万回分、3か月で12週間換算すると、2週間当たり約1万箱の配送になると思います。大型連休以降は、1万3000箱以上安定的に供給されてきたと思います。一転減少する形になりますが、このあたりをどのように分析されているかお伺いします
(答)ファイザー社製のワクチンに加えて、モデルナ社製のワクチンが入ってまいりますので、量的にはしっかり維持していきたいと思っております。具体的なスケジュールは今、交渉しているところです。
(問)確認ですが、そうしますと7月5日以降の供給量自体は、トータルではモデルナ社製のワクチンと合わせれば減少しないという理解でよろしいでしょうか。
(答)減少しないように、供給量がダウンしないように我々もしっかり調整していきたいと思っています

つまりは5月28日のこの会見にある調整がNHK記事にある6月15日時点でまだついていないという事かなと。それは6月11日の記者会見でもちょっとうかがえます。

モデルナ社製ワクチンによる集団接種、大規模接種、職域接種をお願いしてございますが、自治体からこれまでファイザー社製ワクチンで集団接種を行っていたが、ワクチンをモデルナ社製ワクチンに転換したいというご要望をいただいております。(中略)ファイザー社製ワクチンでないと小分けができないということから、かかりつけ医にファイザー社製ワクチンを分配すると集団接種会場でファイザー社製ワクチンが足りなくなるのではないかというご心配をいただいております。現時点では、恐らく全ての都道府県にまだファイザー社製ワクチンの在庫がかなりございますので、県内の融通をしっかりやっていただきたいと思っております。

6月11日を目途にモデルナ製ワクチンを使った接種希望がどれくらいあるのか調査すると5月28日に発言していますが、11日時点でも話は進んでいるがまだ全体像を掴んでいるとは言えない状況かなと。
 モデルナ製はファイザー製とは異なり自治体ごとに接種会場を新たに設けるという仕組みや接種方法なども異なりますから各自治体側はファイザー専用のロジの他にモデルナ専用のロジも新たに構築しなければならず現場は大変なのは想像に難くない。職域接種も始まるし、大規模接種会場もあるし、全体を把握して理解するのも大変。


余談。

接種記録の入力が滞ると、実際は接種が進んでいてもシステム上は当該自治体の在庫が積み上がっているようになる。河野氏は、自治体の中には入力数が1~2桁のケースがあることを明らかにし、「極めてシステムの数値が低い自治体がある。在庫を積み増しても仕方ないという考え方もある」と強調。「あまりに接種が遅いところは、1回クール(配送を)飛ばすこともありうる」と、厳しい対応で臨む姿勢を示した。
接種記録遅い自治体、ワクチン配送見送りも 河野担当相 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

 記者会見のページに15日会見分がまだ上がってないので詳細は分からないですが、上記の話は今回のとは直接関係ないとは思います。ただ記事にある様に単純にシステムが使いづらいんだろうなー、っと。