電脳塵芥

四方山雑記

埼玉県において一部の「児童養護施設において男子寮・女子寮を撤廃」という事実はないのではないか

 富士見市議会議員である加賀ななえ氏が次の様な内容を投稿。


https://twitter.com/Nanaekaga/status/1721802768221130890


https://twitter.com/Nanaekaga/status/1721876350213226633

一番最初の投稿は削除されており、その内容を知ることは現在できないのだが、要は「埼玉県で一部の「児童養護施設において男子寮・女子寮を撤廃」される」という内容。


【11月8日 20:00追記】

Xの方で消された投稿スクショを頂きましたので追加。修正版との一番大きな差異は、

男子寮・女子寮の撤廃がなされたとの事実が確認されました(具体的な開始時期は不明)

が、

男子寮・女子寮の撤廃がなされたとの情報をもとに、八子県議が質疑しました。

となり、「確認されました」が「情報をもとに」へと表現が変更されたこと。これは八子県議との「認識の相違」からの表現変更と言える。「確認」ならば確定事項といえるが「情報」ならば未確定であったり、噂話レベル、懸念レベルの話であると言い張れる可能性はある。この変更から加賀市議自身が「確認」という表現が悪手(早とちり)であることを認識している可能性は高い。ただ初回から「開始時期は不明」などの逃げられる状態を作っているので、元からそういう曖昧さがあった無責任さと扇動の伴った情報とはいえる。


加賀氏の投稿以前に児童養護施設において男子寮・女子寮を撤廃するという内容の投稿は見当たらずにどこからの情報かは不明。現在、埼玉県では令和4年度の決算審査が行われており、内容と投稿時期から11月6日(月)の福祉部で八子県議が質問したと思われる*1。八子県議のブログXからもその質問内容や経緯は現状では謎であり、当然ながら議事録もまだできていない。削除された投稿は引用を見る限り影響力は大きそうで、右派インフルエンサーの門田隆将の投稿もそれなりに拡散。


https://twitter.com/KadotaRyusho/status/1721783194188677513

 とはいえ外側からはわからない事案なので埼玉県にこの件(男子寮・女子寮撤廃の事実はあるか、あるならば「性の多様性」が理由か、男女間の誠意の問題が起きているかの三点)直接問い合わせをして、その返事が次。

埼玉県こども安全課でございます。
この度は、ご心配をおかけしており申し訳ございません。
まず、埼玉県が児童養護施設において男子寮・女子寮撤廃したという事実はございません
そのような予定も一切ありません
そもそも「性の多様性」を理由として、男子寮・女子寮を撤廃した児童養護施設はありません。
児童養護施設はほとんどの施設が男女別の寮になっており、一部の施設で、兄弟や幼児さん向けに一部男女混合のユニットを持つ施設もありますが、年齢や子供の持つ特性や背景など、1人ひとりの子供の状況に合わせてユニットを十分考慮して構成しています。
男女間の性の問題が起きているという事実もありません。
X上の書き込みにつきましては、どういう意図なのかわかりませんが、誤った情報が拡散していることは誠に遺憾に思っております。
どうか、ご理解いただきますよう、お願いいたします。

埼玉県側としては完全否定と言って良い。八子県議の質問や情報源自体もよくわからないものだが、とりあえず加賀ななえ市議の投稿は誤報(デマ)である可能性が高い。のちに質疑内容など詳細な情報は出てくる可能性はあるが、ひとまずこの話に乗っかるのは危うい。


【11月9日追記】
 11月9日の読売新聞で記事になってました。

養護施設で「男女別の寮を撤廃」の誤情報、市議のSNSで拡散…「性被害の温床」と批判広がる
子どもの虐待や貧困などに対応して設置されている埼玉県内の児童養護施設で、「性の多様性の取り組みの一環として、男子寮と女子寮が撤廃された」とする誤った情報が7日、SNSで拡散した。「性被害の温床になる」などと批判が広がり、県には8日までに苦情の電話が複数寄せられた。県は「(男女別を)撤廃した施設は一つもない」と全面的に否定している。誤情報が拡散したきっかけは1本の投稿だった。
(略)
今回の騒動を受けて県が全施設に確認したところ、性の多様性の観点から男女共用の寮を設けた施設はなかったという。これらの中には、寝室以外で男女共用の食堂やリビングを設けている所が8施設あるが、小規模で家族的な養育をするといった目的があり、性の多様性とは関係のないものだった。
 加賀氏は外部から指摘を受け、8日までに内容を変更した数回の投稿で「一部の施設で撤廃されたという情報をもとに(質疑があった)」などとした。読売新聞の7日の取材には「(男女別の撤廃が)女子児童にリスクがあるという問題意識は変わらない」と語った。

こちらと同じく完全否定ですね。加賀市議がどこから情報を得たのかもわからず、また誤情報に対して反省もしてなさそうなことが見受けられますが、結局のところ今回のこの件は以前このブログでも扱った埼玉県の介護施設の男女別トイレ撤廃デマと同類のトランス排除(LGBTQ関連の政策に対する反対)に起因するデマと言えます。一番の違いは前回は胡乱な匿名アカウント、今回のは市議という立場でデマを流した事です。該当市議自身がトランス排除の言説は以前からしていたのである意味で不思議はないですが、今回の方が地位を鑑みれば悪質。埼玉県がターゲットになりやすいのは「埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例」などによるわけですが、仮に政策に反対だからと言ってデマを流して棄損していいわけではないし、その様なデマにのって反対するならばその程度の理解で反対している事にもなるし、デマに憤っているならばそれは悪意に操られてるとも言えます。デマであることの判断は確かに難しいですが、今回の「男子寮・女子寮撤廃」を「性の多様性」を理由にして撤廃というのは「常識」的に考えてかなりおかしいわけです。デマの手口的にはそういった「常識」が「思想(今回はトランスジェンダー、過去にはジェンダーフリー)」によって危うくなって「おかしな政策」が行われようとしているから反対(常識や「社会」を防衛)しましょうというわけですが、それはデマを肯定しないし、安易に乗ってしまったことへの反省は必要だと考えます。やはり踏みとどまって欲しい。
 最後に若干話は変わりますが、児童養護施設については2011年7月の「社会的養護の課題と将来像」で小規模化が推進され、2012年には「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」の取りまとめや知事などへの通達も出てきています。今回のデマに乗った人がどの程度の施設規模を想定していたのかは不明ですが、それはともかくとしてもしもそれなりの大規模施設を想定している様だったら今は変わってきているよ、ということで。



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