電脳塵芥

四方山雑記

生活保護は別に「定員制」ではない

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 というツイートがあってこのグラフや「定員制」というのは少し問題をぼやけさせるかなと思ったので記事として残しておきます。このグラフは出典も明記されているので誤りではないのですし、その問題(生活保護の数が増えないことへの疑問だと類推)自体は良いと思います。あと揶揄としての「定員制」なのもわかりますが、それはともかくグラフを0万人から省略なしで200万人にしていることからミクロ的な変化が見えなくなっています。
 さて上記のグラフとほぼ同期間のものが厚労省自身が発表している資料(プレスリリース)「生活保護の被保護者調査(令和2年 11 月分概数)」にあります。この資料にもグラフが書かれており、それは以下のようなもの。

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言ってしまえばグラフを省略するか否か、グラフの見せ方問題にしか過ぎないとはいえむしろ被保護実人員はここ最近は減少傾向となっており、ただ2020年8月あたりからこの人数の減少が足踏みしているという方が「定員制」という認識よりも良いかと考えます。

受給世帯の変化

 人員ではなく世帯数というくくりで見ると以下のように増加も減少もほぼほぼない状態で推移。

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で、世帯数全体に関しては大きな上下は少ないですが、その内訳自体には変化が生じています。代表的なところで「高齢者世帯」と「母子世帯」の生活保護受給推移は以下の通り*1

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高齢者世帯は増加傾向であり、母子世帯は減少傾向であることがわかります。その他に「傷病者世帯」も減少傾向、「障害」、「その他」の世帯は近年はあまり変化のない状態にあります。

申請件数の変化

 お次は申請件数及び保護開始世帯数の推移。

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2020年(11月まで)は2019年よりほんの少しだけ上昇しているものの「目に見えて」というレベルでは上昇していません。ただこの申請件数ですが、対前年同月比でみていくと傾向がわかりやすくなります。

f:id:nou_yunyun:20210213174104p:plain 出典:被保護者調査(令和2年11月分概数)|厚生労働省

コロナ禍といえる影響は2月あたりからになると考えますが、1回目の緊急事態宣言である4月になると対前年比24.8%とかなりの申請件数になっています。ただ5月から8月にかけて一気に申請件数が対前年比でマイナスになっており、その要因で一番でかそうなのはやはり10万円の一律給付かなと。この一律給付は自治体によって配布時期が異なっており早い自治体では5月、遅い自治体では8月頃になっていた場所もあったと思います。報道からもそのばらつきが観測でき、例えばNHKでは

給付率は35.9%
4月末の第1次補正予算の成立から1か月以上たっても、給付率は総世帯数の35.9%にとどまっています。
(2020年6月12日時点)
 
現金10万円の一律給付は7月17日までに5412万世帯に対し、合わせて11兆8500億円の給付が完了し、給付率は予算額ベースで93%となっています。
(2020年7月27日時点)
10万円一律給付 対象や手続きは|特設サイト 新型コロナウイルス|NHK

とあり、これが生活保護申請件数が減った一番の理由である可能性は高いと考えていいでしょう。ただ8月以降はその10万円給付の様なものはありませんから、9月以降は前年より増えていったのでしょう。ちょっと雑な考えてはありますが*2。  なおこの申請件数は厚労省HPを見る限り公表し始めたのは2018年度末である3月から、プレスリリースにも書かれるようになったのは2019年度からです。なので過去の比較として遡ることは情報公開請求のようなものをしない限りは難しそうです。  


 厚労省の資料をパパッと並べただけですけれど、以上のように変動がありますので決して「定員制」みたいな批判は的外れで、むしろ近年は生活保護が減少傾向なのが果たしてどの様な成果の果てでこうなっているかなどは検証が必要かなと。以前に以下の記事を書きましたが、

nou-yunyun.hatenablog.com

民主党 → 自民党政権になる際の選挙で自民党生活保護に関しては削減の方向性をとっており、その公約によって生活保護の減少が進んでいる可能性はかなりあります。2015年からをグラフにすると以下のような感じ。
※もっと長期間のグラフは上記記事にあります。

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なおこのグラフの下限は200にしてるけれど、これを下限0にすると

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変化がほぼ見えないグラフになるのでグラフの使い方は難しい。なんていう遊びは置いといて。この生活保護受給者の減少は自民党や支持者にとっては公約達成と言えますが、その削減が社会にとって良いかはまた別の話。そしてコロナ禍においても申請件数がほぼ増えていないのは不思議な感。

*1:ちなみにグラフの下限値はエクセルでグラフ化する際に自動で与えられた値になります。特に意図はありません。

*2:生活保護開始件数、生活保護廃止世帯数などのデータもあるので、ここら辺も加味する必要はあると思います。ただ、今回は面倒なのでパス。