
https://x.com/airi_fact_555/status/1981360054348763237

https://www.threads.com/@kichan5407/post/DQ8FZ07k5Yo
数か月前から以上の様な「足利市で夫婦が多人数のイスラム教徒に襲われ、奥さんはレイプされ、そして奥さんは妊娠、その後に自殺した」といった言説が反移民層の中で流布しており、例えばそういったデモで使用されることにより人々の目に触れて、といった感じで拡散している言説の一つだ。なお場所が「公園の散歩中」であったり「家」という情報があるなど、その言説内容は安定していない。何故安定していないかと言えば、このような事件は報道上では確認できず「流言/都市伝説」の一種であからだろう。
元ネタの一つは日本第一党による「行政交渉」か
まず直接的な元ネタとしては2021年4月7日に日本第一党の桜井誠らが足利市役所に出向き、イスラム教徒が市に在住している事について市の職員と「行政交渉」をしており、それがyoutubeで公開された。その動画中にイスラム教徒の「危険性」を語る中で「強姦された女性が自殺した」といった旨の発言し、それに対して相対した職員が「そういうのもあります」といった返事をしたのが一つの論拠とされるものだ。この職員が実際にそういった事件を認識して「あります」といったのか、若しくは桜井らからの連続する詰問に対しての曖昧な「あります」といったのかまでは不明だ。しかし足利市の市議会議員小沼みちよがこの言説の拡散を察知して市に問い合わせたところ、以下の様な返答を得ている。
また、動画中で市職員が発言した件についても、市の側に確認したところ、「足利市で実際に起きた事件として認識しての発言ではない」とのことでした。
他の職員もそのような事件を把握していません。
当時の職員の発言はその場においては曖昧な肯定ととれる不用意な発言ではあるものの、足利市側としては実際にはこの様な事件は実際に把握していないというのが現状だろう。なおこの時点では女性が強姦された場所、夫婦、妊娠したなどの情報は存在せず、ただ「女性が強姦された」、「自殺」という情報のみが使用されていた。また桜井誠だが2024年の都知事選の街頭演説でこのネタを使用しており、その際にはミニスカートを履いているという理由で強姦され、その後に自殺したという話になっている。ただしここでもやはり夫婦などの情報そのものは出てきていない。桜井らがこの「足利市で女性が強姦」という情報をどこで入手したのかは不明ではあるし、今流布している情報とは若干異なることから元ネタの一つだろうが、まだ今現在の言説にまではなっていない。
今現在流布している言説の出処
上記の桜井の言説を受けてなのかはまでは不明であるが、今流布している言説の直接的な出処は2023年1月16日に「外国人犯罪撲滅協議会リンク」と名乗るブログに「【栃木】足利市山前地区 スリランカ人問題リサーチ」だろう*1。そこでは次の様な記述がなされている。
地元民なら誰もが知る「事件」もまだ20年と経たない時に発生している。
木々に覆われた山前地区の大きな公園内を散策していた日本人夫婦が5~6人のスリランカ人と思しき男たちに襲われた。夫が羽交い絞めにされ、その目の前で妻がレイプされたのである。それも夜に発生した事件ではない。白昼の時間帯にそのような事件が起きているのだ。
夫の証言では「色の黒い、毛むくじゃらな男たち」による犯行だったとされたが、事件を報じた地元紙にもほんの小さく数行程度の記事で載った程度である。
結局容疑者らは捕まらなかったが、事件後、強姦された妻は妊娠が発覚して自殺。ほどなく夫は他の地域へ転居したという。そのような「都市伝説」として実しやかに伝えられていそうな事件が「事実」として起きているのだ。
このブログ上では「事件を報じた地元紙にもほんの小さく数行程度の記事」とある様に、実際に新聞記事が書かれたとある。しかしながら下野新聞の過去記事をデータベース上で検索しても足利市においてスリランカ人による強姦事件の記事は存在しない。この記事自体の不在は小沼みちよ市議も同様の事を述べており、やはりこの様な「事件を報じた地元紙」が存在したのかは非常に疑わしい。また常識的に考えればこの事件は「白昼の時間帯」に「外国人複数人」に「夫婦という複数人の被害者」がおり、「女性はレイプ」されたというショッキングな事件である。これを地元紙が数行程度しか載せないというのは不自然であるとしか言いようない。なおこの「新聞記事」についてだが、10月末ごろにnoteにおいて「深刻な性被害:地方の不都合な事実は隠ぺいされる?」という記事が書かれ、その中でこの足利市の事例が紹介されていた。その中では新聞記事として"報道規制: 下野新聞(2017年9月3日)に4行記事のみ 「足利市山前町で夫婦暴行事件。県警捜査中」"と挙げられていたが、この様な記事は存在しない。このnote記事はAIによって書かれたものであり、SNSでバズった投稿として存在しないアカウントの投稿をピックアップするなど杜撰な出来で、新聞記事もAIによって生み出された嘘記事であろう。そういった嘘デタラメな為にこのnote記事は今現在削除されている(アーカイブも取っていないので今現在確認するすべはない)。
ただこの「言説」そのものはこのブログ以前に遡れる。例えば2021年の5chの書き込みには次のような書き込みがある。
350ニューノーマルの名無しさん 2021/07/18(日) 23:01:09.42ID:ZIQxrgxc0
>>287
この事件知ってる?そうとう胸糞。
栃木の足利で約10年前
自然公園内で白昼数人の外国人によるレイプがあった。
夫婦で散歩中に襲われ、奥さんが被害にあう。
女性は後に妊娠が発覚し、自殺。
犯人は肌が黒く、長い髭をはやしムスリムが着る白装束の者もいた。
まだ犯人は捕まっておらず、報道も殆どされていない。
足利にはモスクがあり、スリランカ人が多く住んでいる。
仏教国のスリランカでは迫害されるのかしらんが、
ムスリムのスリランカ人が多く集まりっている。
ほぼほぼ類似の書き込みが2021年7月22日にもされている。この書き込みの出典だが、おそらくはXアカウントの「鹿之 丸三@shikama04187269」の投稿だろう。このアカウントによる該当言説の投稿は削除されているが、2022年1月に次の様な5chのコピペが存在する。
shikamaru @shikama04187269 7月14日
「北関東の小さな町で10年前山林公園内で白昼数人の外国人による
強姦事件があった。夫婦で散歩中に襲われ奥さんが被害に。後に妊娠し自殺。
犯人は肌が黒く、髭が長く白装束の者もいた。
犯人は捕まっていない。
すぐ近くにモスクがある。
報道は小さく近所で知らない人も多い。近隣は事件多発で今や危険地帯。」
「鹿之 丸三」は足利市や栃木県についての投稿がいくつかあるので周辺地位在住だと思われる。これらから見ると2021年時点でこの言説が足利市周辺で存在していた可能性が高いことがわかる。ただこの時点の情報も今とは細部が異なっている事が見て取れる。なお当時この言説が拡散した形跡はあまり見られず*2、今流布しているのは2023年のブログの影響の方が大きいだろう。
小沼みちよ市議のブログでは住民から聞いた話を3件あげており、その内2人はその件を一切らず、1人はその話を聞いたことがあるが20年以上前、数年前という説あるという証言に留まっている。言ってしまえば、現地の住民そのものが知らないか「流言/都市伝説」の類として知っているのみとなる。つまりは「外国人犯罪撲滅協議会リンク」における記事は流言の類と言えるだろう。
流言としての「外国人に強姦され、妊娠して自殺」
そもそも足利市以外でもこの「外国人に強姦されて自殺」という言説は都市伝説的な定番の様に見える。例えばこの話を調べる中で次の様な反応が見られた。
忘れられない怖い事件294件目
491可愛い奥様 2023/07/03(月) 23:22:27.05ID:pQx9kkh20
すみません
今もツイッターで見たんですが15年程前にに、栃木県足利市山下町大前町で、散歩中の夫婦が白い服にヒゲの5人組(ムスリム?)に襲われた事件を知ってる方いますか?
妻がレイプされ妊娠し自殺。犯人は捕まっていないそうです。
全然知らなくて検索しても出て来ないんです。
492可愛い奥様 2023/07/03(月) 23:44:43.95ID:HWa66po20
検索して出ないならガセなんじゃないのかね
493可愛い奥様 2023/07/04(火) 00:10:06.24ID:Jq1/LJRp0
それ、都市伝説の亜型でないかしら
私が20年くらい前に聞いたときは、山口のとある公園を夫婦が散歩していたら
黒人の集団に以下同文だった
それから5年くらい後に、埼玉のとある公園にも同じ話があると聞いた
494可愛い奥様 2023/07/04(火) 01:39:09.51ID:Rl/fnxyg0
都市伝説だよね
私も別バージョン聞いたことある
いまフランスでムスリムが暴動起こしてるからムスリムバージョンになったんだろうね
また野口道彦による「鈴鹿市の流言と外国人差別」では次の様な流言が記録されている。
1997年11月から12月にかけて、鈴鹿市で流言が拡がった、その内容は、「シ ョッピングセンターの トイレで小学生の女の子が、外国人数名によって強姦され、母親はシ ョックを受けて自殺した」、「散歩中に老夫婦が外国人数人によって襲われ、夫の見ている前で、妻が強姦された」 というものである。
上記の流言は警察がこの事案を実際に捜査の上でその様な事件は存在しなかったとしたチラシを一万枚配布するに至った事態を紹介している。これらの言説はいずれも今現在足利市をターゲットにした言説で流布している話と酷似しており、ある意味でありふれた外国人を危険視する「都市伝説」の一種なのだろう。ちなみに信用性は低い嘘か真かのネットの書き込みであるが、爆サイにこの足利市の件のスレッドが建っており、その中では"近所で評判の引きこもり親父が適当こいてデマ流したらしい"という話まで出てきている。この「デマの出処」が事実かも、そもそもの発端を探るのは無理だろうが、いずれにしても今現在流布している「足利市の事件」はその実在を確認できないし、流言の類だろう。
*1:なおこのブログを書いたのは「侍蟻」というHNを名乗るもので実際のブログは「侍蟻(SamuraiARI) ~特定非営利活動法人 外国人犯罪追放運動 BLOG~」が出典だろう。このブログが10月下旬に「佐々木ジャーナル💙@yukari5648」などのXアカウントに紹介されることでソースとしての流布を果たす。「外国人犯罪撲滅協議会リンク」ははあくまでも外部リンク的な記事であると思われるが、タイムスタンプ上は「外国人犯罪撲滅協議会リンク」の方が1日早い。
*2:鹿之による該当投稿は削除されているがデマだから消したかは不明。ただ周辺時期の投稿が多く削除されている様なので何らかの理由から当時の投稿を一斉削除したのだろう。
