電脳塵芥

四方山雑記

護国神社で慰霊のためにストリップを行い、遺族会が宮司に抗議した際に放った宮司の逸話は細部で過ちが多いと思う

 今回はnoteではなくこちらで。


https://web.archive.org/web/20230610053549/https://twitter.com/anago9648/status/1667316955806842880
※リンクは貼るけど、鍵垢になってたのでアカウント名はキャプチャから外しています。

 という話がバズっていたんですけど、これ細部の話が異なっているのでメモ的に置いておく。これが今後のネットの「逸話」になるかもしれませんし。それはともかく神社で慰霊の為にストリップが行われれば遺族会が怒るのは仕方ない。っていうか、神社でガチストリップをやったら警察案件。

 ただこの話にかなり似ていると思われる事例が存在します。それが以下の写真の事例です。

 行われたのはストリップではなく、上記の様なパフォーマンス。これは「ささらほうさら」というグループによるパフォーマンスでどう考えてもストリップではない。これが行われたのは2015年4月11日の「花見ボノボ」という催しでその4か月後に朝日新聞などで記事になっていたりする。

2015/8/11 境内で半裸ライブ「戦没者に失礼」 遺族ら宮司退任要求
茨城県護国神社水戸市)が境内で開いたライブをめぐって、県遺族連合会が宮司の退任を要求している。半裸の男女の出演が「戦没者に失礼だ」と反発。だが宮司は退任要求に応じておらず、県遺族連合会が、神社の行事に参加しないよう市町村遺族会に呼びかける異例の事態となっている。
 県護国神社によると、ライブは、若者に神社への関心を持ってもらおうと4月に開いた。本殿前の石畳をステージに7組のアーティストが参加。うち1組が全身を金色に塗った半裸の男女で、ダンスパフォーマンスを披露したという。
 県遺族連合会によると、ライブを見た参拝者から連絡を受け、役員で協議した結果、「まつられた戦没者に失礼だ」などとして、ライブ開催を認めた佐藤昭典宮司(70)の退任を求める嘆願書を5月に神社に出した。神社側はライブの内容を反省したものの、宮司退任の意思を示さなかった。
 県遺族連合会は7月中旬、神社主催の行事に協力しないと決定。各市町村遺族会に、8月15日の終戦70周年記念臨時大祭や春と秋の例大祭などに協力しないよう通知した。
 佐藤宮司朝日新聞の取材に対し「ライブ前に出演者全員で祈禱(きとう)をし、英霊に誠意を示して開いたつもりだった。事前にライブの内容を細かくチェックせず、見抜けなかったのは大変申し訳ない。遺族連合会とは時間をかけて解決の道筋を探りたい」と話している。今後はライブ開催の可否も含めて見直しを検討するという。(村田悟)

この話題自体は催しのあった4月11日時点でネットの保守界隈で話題になっており、現状で確認できるまとめとして、が存在。現在削除されているっぽいツイートでは以下の様に反感が混じっています。

togetter.com

またこのまとめで宮司に質問した話が紹介されていますが、これが「女も知らずに戦死した若い兵士にスト リップ見せるのは最大の慰霊だろうが!」 の部分。

Nさん 「これは何をなさっているのですか?」
宮司 「戦没者を楽しませるためですよ」
Nさん 「素朴な疑問なのですが、拝殿の上で、菊の御紋にお尻を向けて、
     まして寄りかかったりしてましたが不敬ではないですか?」
すると声を荒げて
宮司 「私はね、あなたみたいな人間が一番腹が立つんですよぉ」
Nさん 「???」
宮司 「あなたね、知らないの?戦争で死んだ人は楽しいこともしてないんですよ、
    だから彼らは一生懸命涙流しながら演奏して死んだ人を楽しませてるんですよぉ。
    ほんと!あなた腹が立つ!分かります?」
宮司は酒臭く口に食べ物が残った状態で話していた。
さらに他の神職者が
神職者 「特攻はね、行かないと殺されるの。軍が家族にも危害を加えるから仕方なくいったんだよ」
    「抗議するならいくらでもやればいいよ。軍歌じゃ戦争で死んだ人は喜ばない。」
    「アレは殺されるからイヤイヤ歌ってたんだ。」
    「特攻もしょうがないから行ったんだ。イヤなら帰りなさいよ」

もともとストリップではないから「女も知らずに~」という文言はないですが、このやりとりを見る限りはどうにも発言内容との共通性の様のものが感じられ、これが原型だと察せられる。ちなみにこれはその後にチャンネル桜などで話題になっており、また朝日などの記事により8月にも話題になるなど、当時やや広がった話の模様。
 ちなみにこの催し「花見でボノボ」ですが、フリーコンサートという位置づけ。該当の騒ぎの起る5年前の記事では、

2010/4/12「水戸でフリーコンサート「花見でボノボ」-満開の桜とライブ楽しむ」
ステージではロック、ソウル、民族音楽、ジャズなどさまざまなジャンルのグループがライブ演奏。また、ファイヤーアーパフォーマンスやベリーダンスなど歌と踊りのコラボレーションが繰り広げられた。併せて、黒澤明監督作品の照明を手掛けたライティング集団「ムーキー」が桜を幻想的にライトアップした。

とある様に慰霊祭というよりも地域との交流の一環で開かれた神社としての催しという性格が強いのかなと。

 ってことで、とりあえず冒頭に貼ったツイートの様な内容は多分存在しないと思う。「神社でストリップ」案件が本当にあったなら別だろうけど、00年代以降ならなんかしらの記事にありそうなもののない。「豪快昔話」と言っているので例えば昭和期の話の可能性だってあり得るかもしれないけれど、それはそれで逸話が残ってそうなものの少なくともネット上だと残ってないっぽい。なのでこの件を読んでからの内容の伝言ゲームだと思う。


【6月20日追記】

https://twitter.com/anago0515/status/1669707892809949186

 鍵垢から復活していたので尋ねてみたら、「別の事例です」という返事をもらいました。そこで、じゃあどこの事例ですかと聞いたら何故かその部分は無視。無視された悲しみは置いといてもう少しだけ調べてみましたが、とりあえず、

ツイッター検索では今回以前にはなさそう
・5chの過去ログで類似情報なさそう
google検索でも類似情報は茨城県護国神社の件以外はなさそう
・新聞データベースで朝日新聞クロスサーチ、毎索、ヨミダスで三大紙の記事にはなさそう
※ヨミダスは図書館が昭和版以前の契約をしていないので平成以降のみ確認。ただ昭和時代には「神社 ストリップ」で2件ヒット。昭和地域版は0件ヒット。
国会図書館デジタルコレクションでもなさそう

というように現状で手軽に使用できる検索方法を駆使してもチンアナゴ氏がいうところの「護国神社でストリップ」の事例は見受けられません。こちらの検索抜けは十分考えられはしますが、とはいってもそれにしても全然見当たらず、この事例の存在が確認できません。このことから今回の話で考えられる可能性としては、

①新聞などに掲載されない程度の話だった
チンアナゴ氏の創作実話
③別の事例を誤って覚えていて今回の話になった

という感じになるかと。①については「護国神社でストリップ」というスキャンダラスともいえる事例を考えれば新聞や雑誌などに何かしら掲載されている可能性は高いと考えられ、形跡がないのは少し怪しい。あえて言うならばデジタルコレクションにはまだ検索できない書籍には載っている可能性はありますが、そうなると今現在追う事は困難と言わざるを得ない。またチンアナゴ氏の記述内容としては何かしらの文章を見て書いた考えられる宮司とのやり取りがあり、何かしらの元ネタはありそうな記述ではある。元々のツイートの後に「宮司が凄いのは確かだが、神道のおおらかさの一つのエピソードだとは個人的に思った」というツイートもあることから創作の可能性はやや低いような気はする。次に②ですが、チンアナゴ氏のツイートの不自然な点は「いつ」「どこで」が欠けており、その出処がどこであるかが不明であること。こちらの問いかけにもソースの提示含めて情報が著しく欠如しており、痛快(?)なエピソードのみで構成されている。ツイッター上ではこの手の人間はよく存在はするけど、ほんとソース出してほしい。そして③。別の事例で考えられるのは上述した茨城県護国神社の事例以外にはあまり考えられないのだけれど、これに対して別の事例と明言しているので、そこは信じるしかなし。
 結局、じゃあこの話題がなんだったのか。創作なのか、事実なのか、誇張なのか。正直わからない。チンアナゴ氏のbioには「読書」とあり、このバズツイの後に護国神社の紹介ツイートもしてるので彼の読書や行動の中でこの事例が書かれた話があったというのが好意的な解釈ですが、それならそれで「○○で読んだ」みたいなツイートは欲しく、しかしそれすらない。結論としては胡乱としか言いようがない。



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