12月3日の22時15分ごろに始まったユン大統領が発した戒厳令に伴って発生した韓国におけるデマの記録をメモがてらに記しておく。韓国メディアにおいてフェイクニュースが氾濫したという記事も既に存在している様に戒厳令による混乱に伴い数々のデマが流れていた。この記事では名前自体は出ていないが「@akkxxe」という韓国のアカウントがデマを列挙していたので、基本的にはこのアカウントの情報を活用しつつ流れていたデマを列挙しておく。
※筆者は韓国語が不明なために自動翻訳を使用しています。
①午後11時以降通行時不視検問・逮捕
投稿削除済み。画像は別の投稿から
テレビ朝鮮によるユン大統領の戒厳令宣布のライブ配信を切り取った画像であり、テロップには「午後11時以降通行時不視検問・逮捕」と書いてある。ただしこの字幕部分は合成であり、その様な事実は存在しない。出所は不明だが、韓国の各コミュニティ内に流れた画像らしくこれによるネット内の混乱も見られた模様。
②過去の装甲車画像の使用
ソウル市内に軍による装甲車が現れたこと自体は事実であるが、その中には下記の様に過去の画像も使用されており偽の画像も流用されている。これらの画像は日本の投稿でも使用されており、いくらか拡散したものも存在している。
・韓国からは既に撤退したミニストップが映っている
・木に草が生い茂っており、季節が違う
・今年1月の記事で使用されている画像
③Naverが繋がらなくなり、政府側が制御しようとした
実際にはアクセスが集中して接続障害が出ただけだと思われるが、タイミングだけにそういった懸念が存在していた模様。ネイバーについては他にも「疑惑」が生じており、監視体制に入った、戒厳令体制の単語は公開されない(「大統領」、「弾劾」、「ユン・ソクヨル」などの単語か)などがあったようだが、悪口や他のユーザー申告によって規制に見える状態となったようだ。関係者によれば「トレンド順位はトラフィックに基づいて選定される。戒厳令直後監視体制によって順位にランクされなかったという主張は事実無根」と掲載されている記事もある。
④教育部長官が学校に休校令を宣布した
上記のニュース速報が流れたという情報もあるようだが、実際にはその様なものは発令されておらず偽情報であることが確認されている。
⑤李在明党代表室のドアが破壊された
投稿削除済み。画像は別の投稿から
李在明が拘束されそうになったことは事実だが、上記のドアは李在明の部屋のドアではなく備品室のドアで議員には関係がない。
⑥市民に「申し訳ありません」と述べた兵士における「解釈」
https://x.com/yoox960093/status/1864132882895392804
翻訳投稿が拡散していたので上記画像を引用する。これは「解釈」の問題と言えて「デマ」とは若干ズレるが韓国ではこれは動画撮影者の作為的な解釈であるという投稿が拡散している。
https://x.com/taekie/status/1864140515920499132
※230万のインプレッション
実際の動画ではこの撮影者(記者)は去っていく兵士に数分以上語り掛けながらついていくというシーンの最後ともいえる場所で兵士による謝罪といえる発言が行われるに至る。果たして兵士自身がどの様な文脈で言ったのかは言葉数の問題から不明であり受け手側の「解釈」の問題ともいえ(なので画像に引用した「ゆーすけ/유스케/Yusuke @yoox960093」は同様の指摘をされているが本人が訳した解釈を採用していると思われる)、撮影をやめてほしいという文脈ではという指摘投稿には賛否が存在し議論が分かれてはいるようだ。ただ兵士の心情が実際にどうだったであれ、過度にこの兵士の対応に意味を見出すのは少々危ういかもしれない。
【12月5日 19時追記】
上記の投稿を経て韓国で記事が出ていたので貼っておく。ネチズンの反応的なものといえるが撮影した記者の目から見た兵士の状態が書かれている。結論はわからないが韓国内でもどの様な文脈で言ったのかは議論が分かれるところの様だ。
⑦戒厳令の影響で輸血用の血小板が不足している
戒厳令で軍病院から血小板がすべて持っていかれたことによって輸血用の血小板が不足しているという投稿が拡散しているが、赤十字社から公開されているデータでは有意な低下は見られず、またもともと血小板は不足しているという指摘が存在している。情報の拡散元となっているアカウントは友人の医者からの情報と言っており、ソースと言えるほどのものは存在しないといえる。確実にデマとまでは言えないが、怪しい情報といえる。
以上が主に韓国で流れていたデマと思われる。最後におまけとして日本で拡散していた投稿も紹介しておく。
https://x.com/komukaepapa/status/1864150516206588286
※二枚目の左下に「胸に銃」というスーパー
戒厳令時に銃を持った兵士と相対しているこの女性「안귀령(アン・ギリョン? 共に民主党の広報担当者)」のシーンは世界中に拡散しており、兵士とのもみあいの終盤でアン・ギリョンは銃に手をふれ、その後に兵士の銃が1、2秒ほど実際の意図はどうあれ彼女の胸を狙ったかのように見える場面があった事は事実であるが、その部分を「胸に銃」とスーパーをつけて強調するのがふさわしいかと言えば疑問な部分があるし、番組中にそこまでの表現をしたかは不明だが「銃をつきつけられていた」とまで表現すればデマの類と言えるかもしれない。とはいえこの投稿自体がモーニングショーの切り抜き画像であり、実際に番組中の「動画」でどの様な紹介をされたのかまではわからないのでその表現についての適切かの可否は控える。「マスコミの切り取り」に「画像の切り取り」で語るのは不思議である。なおインタビュー記事によればアン・ギリョンは当時について次の様に応えている。
「瞬間的に体を投げて防いだようだ。その過程で(兵士たちが)私の腕を握って防いだから私も(軍人を)押したりもしていたようだ」とし「捕まえる腕を振りかけて、ちょうどこんなに何をつかんでいるから(銃をつかむ)になった」とした。
https://www.joongang.co.kr/article/25297489
※自動翻訳
「本人の発言=事実」とは必ずしも言えないが、投稿にあるような「兵士の銃を奪おうとして暴れていた側」という表現には飛躍を感じる。
【追記】
BBCによる日本語記事が出たので追記として貼っておく。
「何もしないなんて無理だった」 戒厳騒動の中で兵士の銃をつかんだ女性が心境を語る
【12月7日追記】
ユン大統領の狙いが不正選挙を暴くことであるという背景が語られ、日本でも同調するような投稿が拡散されている。ただこれはユン大統領が韓国における極右系ユーチューバーの話を信じているというだけで、確固たる不正選挙の確証などはない。ユン大統領自身がどの様な「説」を信じていたかは不明だが、例えば韓国では事前投票における得票率と当日投票における得票率が異なる(事前投票では左派の得票率が多く、当日は右派の徳両立が多い)ことを理由として、これは選挙システムに不正が仕込まれているのでプログラムを見れば不正有無がわかるという主張をしている個人が存在しており、今年4月の選挙を含め同様の首長で複数の選挙における「不正選挙」を訴えている。ただしその訴えは「無嫌疑」で終結している。無嫌疑という答えが出ても蔓延るのが陰謀論と言えるが、ユン大統領はこの陰謀論にはまっていた可能性は指摘できる。