電脳塵芥

四方山雑記

バリアフリー化費用で運賃値上げは数年前からの既定路線です

 であったり*1

などなど。テレビ朝日による「鉄道バリアフリー化費用 運賃に上乗せ検討 国交省」を受けての反応がありました。なお記事は今現在削除されているのでアーカイブから記事を引っ張てきます。概要は以下の通り。

国土交通省が、鉄道のバリアフリー化にかかる費用を運賃に上乗せする仕組みを導入する方向で検討していることが分かりました。
 
 今後5年間の交通政策の方向性を示す第2次交通政策基本計画の素案には、「都市部において、利用者の薄く広い負担によりバリアフリー化を進める枠組みを構築する」とあります。
鉄道バリアフリー化費用 運賃に上乗せ検討 国交省|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト

 私自身は伊是名氏の話を全然追っていませんし、そもそもこの運賃値上げに関しては伊是名氏も社民党も一切関係ないので言及はしません。さてもう結論は書きましたが、この運賃の値上げにはサヨクも車椅子クレーマーなる人物も社民党も関係なく、自民党政権下において以前からの既定路線です。

第2次交通政策基本計画の素案

 まず記事を読めばわかるようにこれは「第2次交通政策基本計画の素案」です。この素案自体が出たのが「第10回交通政策基本計画小委員会」で開催日は2021年3月29日。伊是名氏のブログで波紋を読んだ記事は4月4日です。そしてそこには以下のような記述があります*2

○ 高齢者、障害者を含む全ての利用者が安全かつ円滑に鉄道施設を利用し得るよう、都市部において利用者の薄く広い負担によりバリアフリー化を進める枠組みを構築するとともに、地方部において既存の支援措置を重点化することにより、従来を大幅に上回るペースで全国の鉄道施設のバリアフリー化を加速化する。
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001397812.pdf

以上の様に3月時点の、それも議論の遡上ではなく「素案」の時点で利用者負担は明記されています。この時点で伊是名氏や社民党がこの運賃値上げに関して一切関係ないことがわかります。ちなみに案の概要でも以下のように記述。

出典:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001397811.pdf

また2021年2月1日の第9回の議事録では以下のような記述もあります。

バリアフリー化というのは、年齢や障害の有無にかかわらず、全ての利用者が安全・安心かつ円滑に移動できる環境の整備に資するものでありまして、先送りすることなく着実に進めていく必要があると認識してございます。そのための財源をどのように確保していくかについては、さきの臨時国会で赤羽大臣からも答弁を申し上げておりますとおり、利用者負担を含めた、聖域なく検討を進めていく必要があるということでございまして、(以下略)
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001387772.pdf

以上の様に大臣の答弁でも利用者負担を含めた検討を進めていく必要があると記述されており、そして当の赤羽国交大臣は国会で今年3月に以下の様な答弁してます*3

赤羽一嘉
バリアフリーを幅広く展開してほしいという強い要望もありますので、こうした財源についても、利用者負担も含めてちょっと幅広く検討も始めなければいけないのではないかというふうに思っております。
第204回国会 参議院 国土交通委員会 第2号 令和3年3月16日

以上の様に伊是名氏の話が話題になる前のここ最近の動きでさえ利用者負担 (運賃の値上げ)についての話は出ており、伊是名氏の行動が利用者負担に影響を与えた可能性は過大評価も良い所であり、影響は微塵もありません。なお念のために書いておきますが伊是名氏の様な行動が無駄だったという意見に与するものではありません。世界は粛々と変わる時もあるけれど、しかしキッカケとしてはある種の行為や意思表明の胎動による表面化がなされない限り変わらないので。だがしかし、この話については時系列的な因果関係はありません。

「都市鉄道における利用者ニーズの高度化等に対応した施設整備促進に関する検討会」

 そして運賃の値上げに関してはここ最近の第2次交通政策基本計画からの話ではなく以前からの議論においてもされています。例を挙げれば2017年から開催されている「都市鉄道における利用者ニーズの高度化等に対応した施設整備促進に関する検討会」。この検討会の2018年9月の報告書(概要)には以下のようにあります。

利用者負担制度の検討において「更なるバリアフリー加速化料金(仮称)(案)」とある様に今回の件とドンピシャ。そしてこの報告書は9月ですが、中間とりまとめは2月。そしておそらくこの動きを受けて3月に日経新聞で以下のような記事が出ています。

駅のバリアフリー化にかかる費用の一部を鉄道会社が運賃に上乗せできる制度の導入を検討
駅のバリアフリー整備費、運賃に上乗せへ 国交省検討 - 日本経済新聞

つまりは2018年時点でこのバリアフリー化の利用者負担という名の運賃値上げについてはほぼほぼ既定路線になっていることがわかります*4。またこれらの動きについてはバリアフリー改正法やユニバーサルデザイン 2020 行動計画 なども関わってくるものでしょう。特にユニバーサルデザイン2020行動計画については東京五輪の影響が指摘できます。

東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部の下、2020年東京オリンピックパラリンピック競技大会開催に向け、全国展開を見据えつつ、世界に誇れる水準でユニバーサルデザイン化された公共施設・交通インフラを整備するとともに、心のバリアフリーを推進することにより、共生社会を実現する必要があります。
ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議

運賃値上げは(額にもよるけど)賛同の方が多い

 最後に運賃値上げですが基本、賛成派の方が多いです。調査は「高度なバリアフリーに係る新たな利用者負担制度に関するアンケート調査結果について」から。

まずバリアフリーそのものについては当然ながら賛成派の方が圧倒的に多いです。

そして利用者負担については一部・全額にかかわらず賛成の方が多く、また反対派かなりの少数派であることがわかります。

ちなみに10円程度の上乗せなら妥当とする回答が過半数以上であり、現実的に導入するならここら辺になりそう?  なお「仮想的市場評価法(CVM)の調査概要」というのもあり、そちらではもうちょっとだけ高い支払意思額が示されています。

また別の調査「鉄道バリアフリー施設設備の効果と費用負担のあり方」においても運賃上乗せへの賛成は多く、仮に運賃上乗せが現実化した場合には額にもよるでしょうがツイッターでは今回のような声の大きい反対者が散見される可能性はあるでしょうが、実際には賛成の方が多いという事態にはなりそう。


 事程左様にバリアフリーの為の運賃値上げについては数年前から議論されてきた話であり何も突飛の話ではありません。反対するならするで良いけれど、事実を弁えましょう。今の彼らはデマ拡散屋。



■お布施用ページ

note.com

*1:どうでもいい話ですが、黒瀬氏、シェアニュースジャパンから私はブロックされてるのでこういう時に動きを察知できない。

*2:第10回における「素案」とパブコメサイトにおける素案がありますが、今回は第10回にリンクされている素案を使用。

*3:ホームドアについての質問に対しての答えであり車いすの件についてとは若干異なりますが、バリアフリーという枠組みでは同様であり、鉄道会社の認識においてもホームドアはアフリーの範疇ですので赤羽大臣の言う「バリアフリー」には今回の件も含まれていると考えていいかと考えます。

*4:議論自体は2017年11月の第5回で利用者負担に異論はないとなっています。それについての資料はこちら。事業者は当然ですが消費者団体も賛意を示しています。