電脳塵芥

四方山雑記

レバノン爆発に関する硝酸アンモニウムで流布される韓国関連の話について

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 一部で有名なShare Nwes Japanがレバノン爆発の原因とされる硝酸アンモニウムが韓国から輸入されたというツイートをしている。現在サイトもつながらないためにその内容自体は不明だが、サイトが繋がったので見ましたが、下記のネタ元であろうAFP通信の記事の要約でした。

インド当局によると、レバノンでの大規模爆発の原因となった硝酸アンモニウム約700トンが、印南部チェンナイ(Chennai)の港に保管されていることが分かった。2015年に韓国から輸入されたものだという。
レバノン爆発の原因物質、インドの港にも約700トン 韓国から輸入 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

以上の様にインドの港にも硝酸アンモニウムが保管されているというニュースであり、レバノンにおける爆発の硝酸アンモニウムは韓国産という記事ではない。記事そのものを把握できないために何とも言えませんが、記事への反応を見るとミスリード記事と言っているツイートもあるのでまた「見出し詐欺」をやったというところでしょう。ニュースサイトを仮にも名乗るなら恥を知って欲しいけど、恥を知ってたらあんなサイトは作らないだろうしで絶望しかない。
 さらに別のまとめサイト

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今度はインドの港にと書きながら韓国が肥料用と「偽り」輸出というニュースに変じて煽る形となっている。これ自体はAFPの記事自体を読むとインド企業が誤って輸入したのか、韓国側が誤って(偽って)輸出したのかはやや微妙な記述ではある。

コンテナ37個に保管されているこの硝酸アンモニウムは、2015年にインド企業が肥料用として韓国から輸入したものの、実際は爆発物用だったことが判明し、押収された。

レバノンの硝酸アンモンニウムについて

 まずレバノン硝酸アンモニウムについてですが、こちらはジョージアグルジア)産ですツイッターで韓国産と勘違いしている人が見受けられますが、それは間違った情報です。

それぞれの袋には「高濃度 硝酸アンモニウム」「1千キログラム」「ジョージア」の文字のほか、危険物を示す黄色のマークが印刷されている。
火薬原料を山積み、倉庫内に長く放置か レバノン爆発:朝日新聞デジタル

さらに言うなら会社はロシアの船会社が所有する船で船籍はモルドバジョージアグルジア)からアフリカ南東部モザンビークの民生用爆発物製造企業宛てとされています。
参考:
化学物質はアフリカ企業が購入か ベイルートの化学物質|全国のニュース|佐賀新聞LiVE
CNN.co.jp : ベイルート爆発の死者135人 現場の倉庫に大量の化学物質

いずれにしても現在出ている情報から察するにレバノンにおける爆発に韓国は関係ありません。

インドにおける硝酸アンモニウムについて

 AFP通信ではらちが明かないのでインドメディアの記事から。

チェンナイ港の備蓄は、5年前のカルールに拠点を置くスリアンマンケミカルズの輸入委託の差し押さえに関する事件に関係しています。同社は、2015年9月に、37コンテナに詰められた化学物質の通関手続きを申請しました。
同社は輸入に必要な免許を持っていると主張し、税関当局は誤分類とその結果の義務の回避を主張し、その後、2019年11月にマドラス高等裁判所は税関当局に有利な判決を下しました。
(中略)
税関は、同社が化学物質の1000トンの所持と販売のためのちょうどP-3ライセンスを持っていたが、それはその輸入のために必要なP-5ライセンスではないと述べた。税関当局はまた、スリアマンケミカルズが硝酸アンモニウムを販売した実際のユーザー/会社が爆発物のディーラーであったと主張しました。
(中略)
マドラス高等裁判所での嘆願書の中で、同社は2014年12月に取得したP3ライセンスを爆発物・石油・爆発物安全機構(PESO)のチーフコントローラーに申請したと述べています。
同社は2015年8月5日にPESOにP5ライセンスを申請した。同社は、PESOは同社に通知したり意見を聞いたりすることなく、2015年8月19日に申請を却下する命令を出したが、その時にはすでに740トンの硝酸アンモニウムがチェンナイに到着していたと主張している。
After Beirut, alert out for ammonium nitrate, TN stockpile on radar | India News,The Indian Express
※自動翻訳

記事を見る限りは輸入企業側が必要なライセンスと許可を得ずに輸入しようとして税関に差し止められたと考えた方が良いでしょう。さらにこの時の裁判については2016年に記事になっており、その内容は以下の通り。

マドラス高等裁判所中央政府の命令を支持し、カルールの硝酸アンモニウムの販売業者の免許を停止し、その業者は化学物質の販売と供給において違法行為を行っていたと主張し、その業者の輸入許可を与えるようにとの申し立てを却下した。
https://www.deccanchronicle.com/nation/in-other-news/140816/madras-hc-upholds-suspending-license-of-ammonium-nitrate-dealer.html
※自動翻訳

なおこの裁判のさらに詳しい内容については、こちらのページに長々とその内容が書かれています。文章がかなり長く、内容も専門的なために自動翻訳だとわかりづらいですし、硝酸アンモニウムについてはインド内でその取扱いに関しての法律(基準?)が2012年に変わっているっぽいことから該当法律に関する知識もある程度必要でしょうが、これを見る限りは韓国の問題というよりもインドの輸入企業側の問題という可能性の方が大きい。また、「硝酸アンモニウムの全量が鉱山と採石場で爆破作業に使用され、農業目的には使用されなかった」との記述もあり、さらにインドのメディア論調を見る限り韓国を責める言説は一切見当たりません。そのことからも韓国側がインド企業に偽って輸出したとは考えづらく、インド企業側が偽っていたという理解が妥当でしょう。

 事程左様に今回の件で韓国云々を叫ぶ人間は情報に対してあまりにも釣られやすすぎです。特定の感情フィルターを通すと人間は脆いものですが、それにしても脆すぎるし、その脆さに付け込まれて胡乱な情報発信者のPV稼ぎに使われてるといっても過言じゃない。あとAFP通信の記事はその内容から背景が良くわからないという欠点を持った記事と言えますが、とはいえあの記事をもってして韓国に問題がある様に見ている方も多数見受けられました。それも迂闊ですし、日本政府の行った輸出規制に端を発する感情に意識を持ってかれすぎかなと。