熱されたアスファルトが語り掛ける、暑い、暑すぎる、ってな酷暑。先日、「メガソーラー温暖化加速説」などについて少し書いたのだが、ここ最近やけにメガソーラー関連についてのミスリードや誘導を行う投稿が多い。前回書いた「メガソーラー温暖化加速説」などは最早ある種の「定説」化している。

https://x.com/KEa92vx5BiIh6Ox/status/1951637195749748812
上記の画像は何故か2022年08月02日のtenki.jpの記事における画像を使用しているのだが、それはともかくとしてメガソーラーどころかソーラーパネル自体を温暖化の原因と言っている様なものだ。この「説」については多くの批判が存在するし、例えばnoteでは「太陽光パネルはどれくらい悪いか計算する」などで計算をしている人がいる。ただそもそもこの「説」の発端自体が特に科学的な考えのもとに生まれたものではないし、加速させた原因はサーモグラフィーによって森よりもソーラーパネルが熱いという画像によるものだ。なのでこの記事では深入りはしないが、おそらく今後生き乗っていく「説」だろう。思えば気候変動(地球温暖化)に対する懐疑は昔から存在したが、昨今の酷暑はその温暖化を否定できないほどの体感を各個人に強制的に味合わせている中において、メガソーラーによる温暖化説はメガソーラーの環境破壊と共に偽であっても「原因」を糾弾できるという魅力があるから好まれるのだろう。【追記】日本ファクトチェックセンターがこの件について記事を出していたのでリンクを貼っておく。
そして上記の「メガソーラー温暖化加速説」の他には次のような「説」まで生まれていた。

https://www.threads.com/@doboku_kouji/post/DM0AvazRj6H
メガソーラーによって雨が降らない、というものだ。この写真程度のメガソーラーの規模で水蒸気が蒸発できずに雨が降らないというのは流石に無理があるので最早紹介にとどめる。
そのほかのメガソーラー関連のミスリード
そのほかにもここ最近、メガソーラーに関する不正確な情報がいくつか見えたので追記しておく。
■手掛けた業者は中国人

https://x.com/sxzBST/status/1952203844546609561
一時はコミュニティノートが付いていたのだが、おそらく「いいえ」評価が多くなったためか非表示となった。ただそもそも「あーぁ@sxzBST」の論旨は「手掛けた業者社長は中国人」であり、「中国人は儲かる」といっているし、元々の動画を2024年にアップした「穂積茂行@shigeyuki696」は「事業主体」が日本企業(株式会社二川工業製作所)、パネルが「中国製」といってコミュニティノートが嘘だと言っている。しかし「あーぁ」の主張は「手掛けた業者」が「中国人」だが、「手掛けた業者」は通常の文章解釈ならば事業主体を指すのが普通だろう。コミュニティノートは今は消えているが、「あーぁ」の投稿は誤解を招く不正確な投稿であるとの指摘は免れ得ない。ちなみにこのメガソーラーは2018年に竣工した兵庫県稲美町の水上太陽光発電所だが、当時のリリースを見てもパネルが中国企業の日本支社であるだけで、フロートは日本企業、施工業者も日本企業である。ソーラーパネルという製品において日本は中国の後塵を拝しており、パネルが中国製になるのはこの市場で日本が負けているからだろう。また水質悪化的な話をするならば、事業者である二川工業製作所による説明という前提はあるが、「水質悪化の原因となるアオコなどの発生を抑制する」、「農業従事者が減り過疎化していた地区のため池に賃料を生み出す(水面に付加価値をつけることができる)」などのメリットが挙げられている。水質に対する科学的な情報は説明には存在しないが、少なくとも「賃料」は溜め池管理者にとっては大きな要素なのだろう。なお他の資料としては四国電力の「ため池を活用した水上太陽光発電事業への取り組みと課題」において、賃料の他に池の蒸発量を抑えるなどのメリットが紹介されている。一方でアオコを抑制できる可能性もあるが光が届きにくくなるので生態系のバランスが崩れる可能性の指摘は存在する。
■伊勢の周りはソーラーパネルばかり

https://x.com/k68960189/status/1952548735294283982
伊勢という地域を特別視(神聖視)し、その周辺にメガーソーラーによって破壊されているという論旨だが、ある意味でいえば「不敬」概念との接続と言える。ところで「kcs🎌@k68960189」が一枚目に貼っている写真は日経クロステックによる「松阪市で100MWのメガソーラー、中国ジンコがパネル供給」という記事なのだが、実はこの写真は茨城県日立市にある高萩太陽光発電所である。記事の写真は松阪市の事業を行うQuantum Group社が開発したメガソーラーの例としての写真としてこの茨城県の写真を使用していたのだが、それに気付かずに松阪市と誤解したまま写真例として使用したようだ。ただ当然、実際に伊勢市にはメガソーラー自体は存在する。

ただそれは伊勢神宮、豊受大神宮から規模の大きいメガソーラーは数km離れている(※地図検索で出現する「メガソーラー」以外にも中規模のソーラー施設が山近くにあるが、それでもキロ単位で離れている)。「kcs🎌」が果たしてどの程度の範囲を「お伊勢さん」と言っているかは不明であるし、実際にソーラー発電施設そのものは散見されるが、一般的な概念としての「お伊勢さん」と思われるような範囲が「メガソーラーだらけ」というのは少々疑問である。なお引用されている「🇯🇵三重県は乗っ取られた。平和ボケに県民は目を覚ませ!Ⅱ@mieinfomation2」が三重県のメガソーラーの写真を示している。確かにこの場所は[メガソーラーに覆われた地区]があるのだが、この場所は過去の航空写真を見るとゴルフ場が存在しており、土地利用をゴルフ場からソーラー発電へと変更したのだろう。
■ソーラーパネルを付けると火災保険に入れない

https://x.com/riedo0519_d/status/1952627455992418696
コミュニティノートで色々突っ込まれているのでこれ以上は触れない。
個人的にも山を切り崩したりのメガソーラーは好かない部分は多く、そもそも環境アセスメントが重要であることは言うまでもない。しかしながら今現在のSNS空間ではネガティブ感情を誘引する投稿が拡散しているし、その中身はトンデモレベルの非科学的なもの、誤認を誘うもの、特定の土地を神聖視して愛国心を誘発するもの、ただのデマなど多様だ。このSNSの傾向は変わることもないだろうし、参政党や日本保守党あたりはこういった意見を政治の場へフィードバックしてくる可能性もある。こういった言説の影響はSNSには収まらないかもしれない。
