電脳塵芥

四方山雑記

レジ袋有料化の簡単な歴史的経緯について

 さて。

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とか。

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とか。

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こんなのとか。

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事程左様にレジ袋有料化は日本学術会議が発端とばかり(一番下のは「提言」にとどめているとはいえ、言いたいことは変わらないでしょう)にまとめサイトやネットの特定界隈が騒いでいます。そもそもこの話題の発端となったのは日本学術会議大西隆元会長が東京新聞に寄稿した下記の記事なのですが、その記事では

◆レジ袋有料化も学術会議の提唱がきっかけ
微細なプラスチック片が分解されずに海に滞留し、摂取した魚、さらに人に害を及ぼすから、プラスチックの利用を大幅に削減しようというキャンペーンが、レジバッグ有料化やマイバッグ携帯につながった。このきっかけの1つは学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱であった
「総理は多様性を認め、政策に生かして」 日本学術会議・大西隆元会長が本紙に寄稿:東京新聞 TOKYO Web

というものであり、大西元会長は確かにレジバック有料化の「きっかけの一つは学術会議」と書いてあります。そういう意味においてはまとめサイトらのいう事も間違いではない。ただ学術会議が「提唱」したとしてもそれを政策として実現するのは政治家であり、もっと言ってしまえば政権与党なので、学術会議はあくまでもきっかけの「一つ」で直接的な批判をするならばそれを最終的に実行した安倍政権を批判するのが筋というものです。ただそれはともかくひとまず置いといて。
 レジ袋の有料化の歴史が結構忘れられて語られているようなので、そこら辺を少しこの記事で掘ってみます。なお、wikipediaみればいいじゃんって思って見たところ……、

レジ袋有料化(日本)
2019年(令和元年)9月26日、国際的な潮流を受け、日本国政府有識者会議で、プラスチックごみの削減に向け、レジ袋の有料化を義務付ける制度案を示した。環境省は法案をまとめ、早ければ2020年4月に実施する予定となった。
これは日本学術会議の提唱がきっかけである。
レジ袋 - Wikipedia

という様に10月10日時点においてはその歴史的経緯は忘れ去られて日本学術会議が提唱のきっかけと書かれる様なので、wikipediaはこの件に関しては役に立ちません。

日本学術会議の提唱について

 まずは大西元会長が書いている提唱ですが、10月10日現在日本学術会議HPで「レジ袋」で検索してヒットするのは5件。その内訳は以下の通り。

日本学術会議HPにおける「レジ袋」の検索ヒット】
1)第20期 環境リスク分科会活動記録 ―リスク概念の普及と啓発―
 平成20年(2008年)8月28日
2)提言マイクロプラスチックによる水環境汚染の生態・健康影響研究の必要性とプラスチックのガバナンス
 令和2年(2020年)4月7日
3)上記提言の素案 4)提言 被服学分野の資格教育の現状と展望
 令和2年(2020年)9月7日
5)上記提言の素案
※素案についてはリンクなど省略

内閣府共通検索 - 内閣府 - レジ袋

検索に引っかかるのは5件ですが、提言の為の素案が二つなので実質的には3件ととらえていいでしょう。そして2020年のレジ袋の有料化は2020年7月1日ということは2020年9月の提言である「被服学分野~」は有料化には関係ない提言にあたり、またレジ袋有料化の前である2020年4月の提言「提言マイクロプラスチックによる~」は有料化の前に出された提言ではありますが、当然ながらこの時点でレジ袋の有料化は決定しています。それは経済産業省環境省による「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン」でも明らかです。

プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン
令和元年12月
2019年5月に政府は「プラスチック資源循環戦略」を制定し、その重点戦略のひとつとしてリデュース等の徹底を位置づけ、その取組の一環として「レジ袋有料化義務化(無料配布禁止等)」を通じて消費者のライフスタイル変革を促すこととした。
(中略)
ラスチック製買物袋を有料で提供することにより、 プラスチック製買物袋の排出の抑制を促進するものとし、2020年7月1日から全国で一律に開始する。

2019年12月の時点で有料化のガイドラインがある様に2020年4月の提言もレジ袋有料化とは無関係です。というか、その2020年4月の提言には、

2019年6月に大阪で開催された主要20ケ国・地域(G20)首脳会議の議長国としての積極姿勢をアピールする必要に迫られていた。そこで、環境大臣(当時)がG20を前に、 レジ袋の無料配布を禁じる法令を制定すると発表し、2020年7月1日からレジ袋の有料化が義務化された。

とある様にこの提言はレジ袋有料化という政策には寄与していません。なお、2008年のものは「提言」ではありませんし、2020年のレジ袋有料化のきっかけになっているとはほぼほぼ思えませんのでこれはスルーします。それといずれも「海外の学術会議と手を携えて」はいなさそうですし。では、大西元会長が書いている提唱とは何なのかというと、それはG20サミットに対して共同で科学的提言を行うことを目的とするG20各国の科学アカデミーによる会議「サイエンス20(S20)Japan2019」における「海洋生態系への脅威と海洋環境の保全-特に気候変動及び海洋プラスチックごみについて-(仮訳)」でしょう。これは当時の安倍首相に渡されています。その中身ですが、レジ袋有料化という文言は一切使用はされていません(買い物バックならあるので、それがレジ袋にあたるとも言えますが有料化までは踏み込んでいません)。あえて言うならば以下の箇所がレジ袋有料化に関連するといえるでしょう。

2.海洋プラスチックごみ-新たな脅威の出現-
海洋プラスチックごみは、海洋環境の汚染において直面すべき課題となりつつある。プラスチック製のボトルや買物バックのような大型のプラスチックごみは、誤飲や 捨てられた漁網によるゴーストフィッシング等が原因となり海洋生物が死に至ることもある(以下略)
 
3.基礎研究の促進、科学と政策における協力の必要性
プラスチック汚染のない革新的な社会を実現するためには、研究者、技術者及び政策立案者の協力に基づいて、廃プラスチックを集荷、加工、再利用するシステムの能力強化が必要である。(中略)課題の進歩は、政府、企業、 科学者、市民の協力を通じ、市民、民間・公的機関の態度と行動の変化が求められる。これに関して、都市と地域における循環型経済社会の現実がプラスチックごみの追跡において重要な取組となる。ステークホルダーとの協力、科学的根拠に基づく目標設定とその追求を通じ、使い捨てプラスチック使用の削減、3R(リデュース、リユース、リサイクル)と適正な廃棄物管理が行えるよう、都市と地方自治体の能力を高めることが必要である

という様に海洋プラスチックごみの削減という観点から大局的に語ってはいますが、個別の政策提言までは語ってはおらず、この提言を受けて「そうだ、レジ袋を有料化しよう」という発想は有料化議論の素地がなければないといえるでしょう。だのにレジ袋有料化になったというのは元々議論の素地があり、そして安倍政権が実行したというだけのことです。大西元会長は「きっかけのひとつ」と言っていますが、正直なところこの提言が「きっかけ」になったのかは甚だ疑問です。2019年の問題意識を考えればさして目新しい話ではないですし。


【10/13追記】
 BuzzFeedの記事によると大西元会長のいう提言は2015年に行われたものだとインタビューに答えています。

寄稿の「学術会議が海外の学術会議と手を携えて行った提唱」について、大西名誉教授はBuzzFeed Newsの取材に対し、2015年のG7サミットに提出された「Gサイエンス」による共同声明のことである、と明らかにした。
学術会議が「レジ袋有料化を提言」は誤り。ネット上で拡散、実際の内容は?

その提言自体はこちらで確認可能(海洋の未来:人間の活動が海洋システムに及ぼす影響 )。記事にもある様にレジ袋ではなく海洋プラスチックなどについての話をしており、例えば「ゴミの投棄を止め、廃棄物や有害物質の排出を規制する。あらゆるものから発生するプラスチック片の海洋システムへの流入を削減するため、緊急行動を起こす。」という部分がそれにあるかと。いずれにしてもレジ袋有料化には直接的な影響はないです。大西元会長は海洋プラスチック問題のムーブメントへの寄与という文脈で語っているようです。


レジ袋有料化までの過程について

 長々と書きましたがここからが本題の日本におけるレジ袋有料化の過程の話です。個人的感覚ですが、そもそもレジ袋有料化って2000年代初め~中ごろあたりから話題になっていたはずで、マイバック運動もその後にやって来てという感覚があります。ただそれは感覚なので、書籍や新聞から大まかですがレジ袋有料化の流れを追っていきます。
 で、この歴史を振り返る際に大変に参考になるのが2006年に発行された舟木 賢徳『「レジ袋」の環境経済政策: ―ヨーロッパや韓国、日本のレジ袋削減の試み』です。2006年時点でレジ袋削減の話を政策的課題として扱い、そして基本的にここで語られている削減方法の大きな手法として挙げているのがレジ袋の有料化です。つまりは2006年段階で書籍にはなるほどにその手の話は既にあったわけです。
 まずレジ袋そのものですが、現在で言うレジ袋は1972年に四国の中山製袋、中川製袋化工が開発*1し、それが日本全国、やがては世界に広まったものです。それまでは各底紙袋(茶色の包装紙であるクラフト紙製の袋)が一般的だったようですが、その各底紙袋の製造機を数百台ストップするという事態を招いたと程といい、これによって買い物ではレジ袋が主流となったようです。

マイバック運動、生協での有料化方式など90年代までの動き

 舟木の調査によればマイバック運動が始めた例で最も早いのは(社)北海道消費者脅威会で、設立した1961年から買い物袋持参運動をしているといいます。レジ袋出現よりも早いですし、この件については資料がなくどのような論理で持参運動をしていたのかは不明です。証拠資料がある中で最も早いのは1974年の高山生活学校によるものであり、そのチラシには「買い物かご(袋・風呂敷)運動、二重三重のムダな放送は消費者である私たちから辞退しましょう(高山市婦連・生活学校提唱)」と書かれているそうで、現在の過剰包装批判と通じる論点で運動が展開されていることが分かります。これらは地域的な動きですが、もっと広範囲の動きでは1992年に「ごみ減量化推進国民会議」が設立され、1995(平成7年)年に同国民会議がマイバック運動を展開しています。また1998年(平成10年)には東京都が環境にやさしい買い物キャンペーンを呼び掛けており、90年代ころから徐々にマイバック運動に広がりが見受けられます。そして舟木が団体別(47都道府県、85の市町村、64の市民団体、5つの企業体)にマイバック運動を調査した例においては、以下のような結果が出ています。

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表から見ても分かる通り1995年(平成7年)以降から多くの場所でレジ袋以外の選択肢としてマイバック運動が開始されていることが分かります。これらのマイバック運動はレジ袋有料化とは若干別個のものではありますが、これらはごみ削減という意識などがあったことは確かでしょうから、有料化にも繋がる動きと言えるでしょう*2
 上記のマイバック運動の広がりが分かる記事も存在として、読売新聞1998.8.26には「レジ袋減量化運動20年 買い物袋持参広がる」があります。これは1978年にコープこうべがスタンプ還元方式が紹介されながらダイエーイトーヨーカドーなどでもレジ袋の使用量減少について書かれています。
 そして全国的な動きではないでしょうが舟木の調査によれば90年代の時点でレジ袋の有料化方式をとっている店は存在し、特に生協は多くの店で早い段階でレジ袋有料化を実地しています。

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※廃棄物学会の指摘によれば上記調査店以外にもトポスも有料化を実施していたとのこと

早い店では70年代から有料化に踏み切り、90年代にかけて生協のかなりの店でレジ袋有料化が行われていることが分かります。当時のダイエーイトーヨーカドーなどの大手のスーパーでは無料ではあったものの、生協などの一部店舗ではすでに有料化が始まっており、またレジ袋の使用量減少については読売記事を見る限り大手スーパーも実行したいものであることがうかがえ、その後のレジ袋有料化にも繋がる動きだといっても過言ではないかと。
 ちなみに90年代の消費者の意識ですが読売新聞1994.6.17には「簡易包装やレジ袋の有料化に消費者の9割が協力的 首都圏7都県市アンケート」という記事が存在し、レジ袋の有料化に対して商品の値引きや代金のリサイクルへの使用などの条件付き賛成派を合わせると9割ほどが賛成であったという記事があったりします。レジ袋有料化の賛否は調査によってかなりの差があるので素直に鵜呑みにはできない部分もありますが、90年代時点でも調査によってはそういう数字が出る下地があったのは分かります。

レジ袋有料化施策を行う自治体の登場

 2001年には豊田氏が「マイバックDAY」、狭山市では「ノーレジ袋デー」の設定など、自治体によるレジ袋減少運動が目立ち始めます。この語りの中で大きな動きのひとつといえるかもしれないのが2001年の杉並区によるレジ袋税の提案です。これはレジ袋1枚に5円の税金を課すというものであり、2002.1.29の読売新聞の記事によれば当時の杉並区長である山田宏(当時無所属、現自民党議員)が街頭で通勤客に訴えたという熱意がうかがえる記事も見受けられます。2000年代初頭の時点で自治体によっては実質的なレジ袋有料化への施策を訴える自治体も出てきたということであり、このレジ袋減少や有料化の動きは広がりを見せています。そこから少しだけ時を進めますが、環境省が行った「レジ袋に係る調査(2008度)」によれば、有料化を行う自治体が複数存在することが可視化されています。下図は「都道府県レベルでレジ袋有料化を全域一斉実施している又は実施予定の状況」というものですが、2008年時点で実施、もしくは実施予定の都道府県は8件存在しています。

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これらは自主協定であり杉並区のような条例化ではないですが見逃せる動きではないでしょう。また市町村レベルで言えば23都道府県381市町村が実施、もしくは実施予定とありかなりの数の自治体が2008年時点で意識的に有料化への動きを始めていることが分かります。

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上記のページには都道府県についてはその経緯が書かれており、市民団体や単純なレジ袋削減などの理由が記される中、地球温暖化防止を理由に挙げる県も存在しています。これは定量的な観測とは言えず感覚的な話ですが、温暖化の話は2000年代以降に強く言われるようになり、例えばアル・ゴアによる『不都合な真実』は日本でもヒットしたことを考えれば環境意識の芽生えによる動きが各自治体に影響があった可能性は否定できないかと。今で言えば海洋プラスチックによる汚染があそれに当たるでしょうし。それとこれらの動きのいくつかは以下の「容器包装リサイクル法」も関連してるでしょう。

容器包装リサイクル法による影響

 環境意識という意味ではリサイクルがありますが、朝日新聞2000.1.27の記事には以下のような記事があります。

タダの袋、レジからなくなる? リサイクル費、企業に負担感
「買い物袋はご持参を」と言われても、タダだからと、もらい続けてきたスーパーのレジ袋。「容器包装リサイクル法」が完全施行されて、レジ袋やトレーなど、小売店の買い物で出る紙やプラスチックなどのゴミをリサイクルしなければならなくなるからだ。
(中略)
しかし意識だけで、レジ袋なくすのは難しい。チェーンストア協会でも「有料化が最も効果的、とは言われている」とし、消費者団体も有料化推進の方向だ。
朝日新聞2000.1.27

2000年時点でチェーンストア協会(総合スーパー、スーパーマーケットなどのチェーンストアの業界団体)は有料化が効果的と言い、この時点では賛成の方向性すら見えます。これが2005年になるとチェーンストア協会は総会で法律で有料化するよう国に求める方針を決めています*3。また生協も同じく類似の提言を発しています。この動きは容器包装リサイクル法の改正に対する動きであり、そして改正案の中間取りまとめにおいてレジ袋の有料化があげられています。省庁、チェーンストア協会は有料化の方向に行きましたが、百貨店は有料の強制的な義務化への反対、コンビニ業界は有料化自体に異を唱え*4結局法改正で有料化の「義務化」は見送られ「努力義務」の方向性となり、実質的なレジ袋有料化は見送られます*5。つまりはこの時点で強制的なレジ袋有料化が行われていれば改正法が施行された2007年にはレジ袋が有料化されていた可能性があったわけです*6*7

プラスチック資源循環戦略からのレジ袋有料化への流れ

 上記の改正容器包装リサイクル法によってレジ袋の有料化は努力義務とされ、環境省による継続的なレジ袋に係る調査が定期的に行われて自治体によっては有料化に踏み切る場所もあるといった流れでしたが、それが今の一部素材などの例外を除けば完全有料化へとという流れは2018年ごろから見受けられます。それが「プラスチック資源循環戦略」。これは2018年6月19日に閣議決定された第4次循環型社会形成推進基本計画*8*9によって策定をすることが決められた戦略であり、その背景には海洋プラスチック問題*10、中国等によるプラスチック廃棄物の禁輸措置に対応した国内資源循環体制を構築するといったものがあります。
 このプラスチック資源循環戦略については環境省HPにある「プラスチック資源循環戦略小委員会」で議事録はすべて公開されており、委員名簿があります。委員名簿を見る限りは大学教授が多数ですが、そのほかの団体の人間も入っており必ずしも学者のみで議論されていたわけではありません。そして議事録を見る限り2018年8月17日の第一回からレジ袋有料化についての話の俎上に挙がっており、第三回の10月19日では有料義務化の話が具体的に行われ、この回で作成されている「プラスチック資源循環戦略(素案)」にはレジ袋の有料化義務化が案の中に入っています。つまり2018年10月19日の段階でほぼほぼレジ袋有料化が決定されていることが伺えます。また10月19日の少し前である10月4日ですが、この日には原田環境相が以下のような発言*11をしています。

原田環境大臣は、4日の記者会見で、日本でどのように減らしていくのか尋ねられると、「レジ袋は有料化も義務づけるべきではないかと個人的には考えている」と述べました。そのうえで、必要があればみずから産業界や関係省庁と意見を交わす考えを示しました。
「レジ袋 有料化も」ごみ削減へ 原田環境相 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン

この発言がプラスチック資源循環戦略に対してどれほどのインパクトを及ぼしたかまでは分かりませんが、少なくとも環境相、省庁における議論の間で意志の祖語はそこまでなかったことだけは分かります。そして有料化の動きに関しては11月13日の経団連「プラスチック資源循環戦略」策定に関する意見では有料義務化へ賛意を示す意見が書かれていますし、当然ながらチェーンストア協会生協なども賛意を示しています。コンビニが加盟するフランチャイズチェーン協会、百貨店が加盟する日本百貨店協会についてはその態度が定かではありませんが、朝日新聞2018.11.19「(フォーラム)使い捨てプラスチック」において、

今後についてフランチャイズチェーン協会は「プラスチックが地球規模で問題になる中、国として法律で定めるなら反対しません」、百貨店協会は「審議中のことについてコメントはありません」としています。

という態度を示しています。コンビニ業界が2005年段階で反対していたことを考えれば、この時点でのコンビニ業界は強い反対の姿勢は見えないことが分かります。またプラスチック資源循環戦略案が了承後の2019年3月19日の日刊工業新聞において、

日本フランチャイズチェーン協会は「レジ袋有料化はコンビニにはなじまないが、プラスチック使用量削減のためにはやらざるを得ない」と認識する。今回の小委員会の決定を受け、セブン―イレブン・ジャパンは「日本フランチャイズチェーン協会の方針に従い、レジ袋有料化も検討している」、ローソンも「義務化の際には法律に基づいて実施する」という。

とある様にコンビニは実質的にレジ袋有料義務化を受け入れています。またこの戦略案策定前に行われたパブリックコメントでは有料義務の賛成/反対双方の意見が載っていますが、数は定かではないとはいえ賛成への意見のほうが取り上げられている意見が多く、パブリックコメントでも多くの賛成があったことが伺えます*12
 そして2019年。原田環境相が2月26日の記者会見で「全国一律のレジ袋有料化義務化を進める決意を固めたところでございます」と発言しています。その後プラスチック資源循環戦略の答申が出たのは2019年3月26日同年5月21日にプラスチック資源循環戦略が策定されます*13。そして6月15日に開かれたG20において世耕弘成経済産業相が早ければ2020年4月にレジ袋有料化を義務付けるとの方針を示します*14。この方針は海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」にねざしたものでしょう。ちなみにこの時期の毎日新聞における世論調査でレジ袋有料に対して7割が賛成を示しており、世の中の流れとしても有料化自体には賛成が多いことが分かります。
 上記の戦略やG20での発言に基づき同年9月26日からは「レジ袋有料化検討小委員会」が開始、11月1日の第三回委員会ではスケジュール案ができ2020年7月1日に有料化開始が盛り込まれ、同委員会の最後の12月25日にはパブリックコメントなどを受けてガイドラインや制度改正のイメージ資料が作られるにいたります*15。そして2019年12月27日に省令が改正されて、2020年7月1日のレジ袋有料義務化が決定されます。

国会における日本学術会議の提言について

 個々の議論を国会で見ていくのはかなり時間を消耗するので割愛しますが、ここでは日本学術会議の行った提言について国会でどのような議論が行われたかだけ紹介していきます。

第198回国会 参議院 予算委員会 平成31年3月18日
(S20の提言を受けてG20でどのように活用するのかという質問に対して)
安倍晋三「本年のS20提言にもありますが、例えば、海で分解される、先ほど申し上げましたような、バイオプラスチックのような素材が量産されれば問題解決に大きく寄与することになります。先般、S20に参加した各国の研究者にも申し上げましたが、革新的なイノベーションを起こすためには世界の英知を結集していく必要があります。G20の議長国として、S20のような世界の科学界と連携しながら、新たな汚染を生み出さない世界の実現を目指してリーダーシップを発揮していく考えであります。」

 

第198回国会 衆議院 環境委員会 平成31年4月2日
務台俊介環境大臣として、この科学者の知見であるS20の提言をG20の場でどのように生かしていくのか、お考えを伺いたいと思います。」
原田義昭「S20の提言においては、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、科学的知見の集積や研究開発の推進、代替素材への転換等の対策など、おおむね六項目が指摘されたところであります。
 我が国としては、提言で指摘されている科学的基盤の強化も踏まえて、実効性のある取組の推進をG20の場で打ち出して、新興国を巻き込んだ国際的な議論をリードしていく必要がある、こういうふうに考えているところであります。また、今後策定する海岸漂着物等処理推進法の基本方針やプラスチック資源循環戦略においても、これらの対策をしっかり取り込み、積極的に取り組んでまいりたいと思っております。」

S20がらみの答弁はこのあたりで首相はS20のようは科学界との連携を、環境相はその提言による指摘されている部分を強化するという発言をしています。なおレジ袋有料義務化についての話には触れていませんが、これは提言には直接的にはないので不思議ではありません。影響を語ったのは事実ですが、しかし下記の時系列を見ればわかる様にレジ袋有料義務化については事実上の決定の流れの後の中で提言でしかありません。「きっかけ」のひとつというよりも進めたい政策の論拠となる一助といったほうが良いかもしれません。

レジ袋有料化への簡易的な流れのまとめ

 さて、以上のことから現在のレジ袋有料化への流れを簡単に記述します。


【レジ袋有料化への流れ】
2006年 容器包装リサイクル法改正(レジ袋有料化の「努力義務」の発生)
2015年 日本学術会議も携わったGサイエンスでの共同声明 ※(※レジ袋有料化の提言無し
2018年
 6月19日 第4次循環型社会形成推進基本計画の閣議決定
 8月17日 プラスチック資源循環戦略小委員会の開始
 10月19日 原田環境相がレジ袋有料化を検討すべきと発言
 10月19日 プラスチック資源循環戦略(素案)作成、レジ袋有料化が入る
2019年
 2月26日 原田環境相が「レジ袋有料義務化を進める決意を固めた」と発言
 3月6日 日本学術会議が関わるサイエンス20(S20)共同声明の安倍総理へ手交(※レジ袋有料化の提言無し
 3月26日 プラスチック資源循環戦略の答申(レジ袋有料化の提言有)
 6月15日 G20において当時の世耕経産相がレジ袋有料化義務化方針発表
 9月26日 レジ袋有料化検討小委員会開始
 11月1日 同委員会で2020年の7月1日に有料義務化のスケジュール案が示される
 12月27日 省令改正、レジ袋有料義務化決定
2020年
 7月1日 レジ袋有料義務化


という流れになるかと考えます。上の流れを見ればわかる通り、学術会議の提唱は既にレジ袋有料義務化は業界団体や市民の強い反対でもなければほぼほぼ決定していたであろう流れの中で発せられています。つまりは大西元会長は「きっかけのひとつ」と言っているものの、正直なところS20における提唱がなくてもレジ袋有料義務化は止まらなかったでしょう。原田環境相が有料義務化の決意を固めたのも提唱の前ですしね。
 大西元会長に関しても事実関係の軽視が見受けられますが、2015年の話なら時系列的には問題なしですが、とはしても今現在レジ袋有料化を日本学術会議が原因だとして批判するのはお門違いもいいところではないかなと。政府自身が海洋プラスチックなどの問題を受けて主体的に選択した流れでもありますし、歴史的に考えれば生協などや各小売店が対応してきた問題でもあり、そしてチェーンストア協会などもそこに加わり、さらに消費者自体もレジ袋有料化に対しては賛意の声が多いことから、「レジ袋有料化」といういつか来る避けられない変化が2020年に起こった、と考えるのが正しいかと。なお最後に言っておきますが、だから日本学術会議の提唱が無意味だったというものではありません。学者による提言は政策決定に対して参考にすべきものであり、またそこには例え政府にとって都合の悪いことが書かれていようとも一考の余地があるはずです。

現在のレジ袋有料化への賛否

 最後に最近の有料化に対する世論調査を置いておきます。2020年のレジ袋有料化施行前である2月の時事通信世論調査においては「レジ袋有料化、賛成約8割」、統計分析研究所の6月の調査では「レジ袋有料化となった経緯に「賛同する」 53.0%が 「賛同しない」 21.7%」、7月の朝日新聞では「「評価する」が67%で、「評価しない」は29%」などなど。ツイッターでは反対の声も目立ちますが、世論調査を見る限りはレジ袋有料化についての賛否は大抵賛成が反対を上回りますツイッターと実社会の違いか、もしくは観測範囲が歪んでるだけかなと。

*1:舟木の書籍では「中山」と書かれていますが、「中川」と指摘を受けました。調べる限り「中川」のほうが正しい。

*2:ただ調査の欠点として市民団体や民間企業がどの様なものかは書籍からは分かりません。市民団体はごみ削減に関わっている団体が多いでしょうし、民間企業の5つというサンプルは数として少し寂しい……

*3:朝日新聞2005.5.21「レジ袋「法律で有料化」 チェーンストア協会が国に要望方針」

*4:読売新聞2005.11.28「レジ袋有料化 議論難航、割れる業界 コンビニは有料化自体反対」

*5:読売新聞2005.12.29「レジ袋有料、義務化せず 法改正案「削減努力」に経産省環境省が方針」

*6:強制義務されなかったひとつの理由として「営業の自由」の侵害などの理由もありました。

*7:2019年作成の「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン」ではこの改正を「事業者による排出抑制促進の枠組みを活かしつつ、プラスチック製買物袋についてはその排出抑制の手段としての有料化を必須とする旨を規定した」とある様に2006年に義務化自体はされているとも受け取れるんですよね。努力義務であるし、大抵の場所での実質は伴ってなかったわけですが。

*8:循環型社会形成推進基本計画自体は「循環型社会形成推進基本法」に基づくものです。2000年に公布され、2003年に一番初めの計画が国会に報告、その後は法律に基づき5年ごとに見直しが行われています。

*9:第三次循環型社会形成推進基本計画においてもレジ袋の辞退率についての話をしていますし、基本的にはレジ袋は削減されるべきものとして扱われています。

*10:なお2018年6月に行われたG7シャルルボワサミットにおいて「海洋プラスチック憲章」が掲げられましたが日本は米国とともに署名せず、国際的に見れば積極性が疑われる行動をその当時しています。

*11:なお、この発言は国会において自民党務台俊介氏が賛意を示しています。自民党としてもこの方向性に大きな異論はなかったのでしょう。第197回国会 衆議院 環境委員会 平成30年11月20日

*12:それ自体を「印象操作」ととらえることも可能ではありますが、意見の多様さという意味では賛成派のほうが多かったのはおそらく事実かと考えます

*13:なお5月に策定された理由はG20が開催される前の6月までに策定するというスケジュールだったためです。

*14:ちなみに当時の世耕大臣は6月18日の大臣会見において「日本が率先をしてレジ袋の有料化をやることによって、人々の行動変容を進めていこうとしていることに関しても評価の声が聞こえたところであります」と発言していますが、どちらかというと日本のレジ袋有料化は遅れているために「率先」というのは少々言いすぎです。これはレジ袋有料化検討ワーキンググループにおける「レジ袋有料化に係る背景について」などの諸外国事例を見れば明らかです。

*15:詳しくは配布資料を参照のこと