電脳塵芥

四方山雑記

「エネルギー関連予算13兆円が中国に流出している」というデマについて

 東京新聞が「YouTubeでデマ「エネルギー予算13兆円の流出判明」が拡散 名前を使われたデータベースの開発者「なぜ…」」という記事を出していたが、少しだけ抜けがあったし、金額系のデマは今後残る可能性があるのでこのブログにも記録しておく。記事によれば国会議員の政治資金の収支に関する情報が検索できるデータベースがあるのだが、そのシステムを使用して「エネルギー関連予算13兆円が中国に流出していることが判明」という動画がyoutubeにアップされたというものだ。しかしこれについては東京新聞、またデータベースを作成した西田尚史がX上でデマであると指摘している。


https://x.com/nQgKxEUosj19235/status/1944720364405465332

このデマの出所を東京新聞youtubeの動画としている。該当動画は7月2日にアップされた「国民みんなの雑学」というチャンネルの「【衝撃】国会議員、東大院生に全てバラされてしまうwww」という動画となる。

ただこのデマ情報自体はもう少し遡れる。それが5月13日の「田舎暮しの唱悦@shoetsusato」による下記の投稿だ。


https://x.com/shoetsusato/status/1922050484073861440

この投稿ではニュースシェアリングの「【朗報】国会議員のカネの流れ、東大生に全て特定される…東京大学大学院生の西田尚史さん、議員の政治資金をデータベース化し、キーワード検索が可能なWebサービス「政治資金収支報告書データベース」をリリース!」をリンクに貼ってあるのだが、こちらの記事内には23兆円、13兆円という数字は存在せず、そもそも「再エネ賦課金」という文字すら存在しない記事だ。そのために「田舎暮しの唱悦」が何故このような反応を示したのか不明だ。ただ「再エネ賦課金23兆円」と「約10兆円中国に流失」というワードを3月に使用している。


https://x.com/shoetsusato/status/1906164755540435075

つまりは「田舎暮しの唱悦」はこの情報を広めたいと考え、そしてニュースシェアリングの記事をみて「使える」と判断してこの記事にデマ情報を付加したのだと思われる。これが後に生き残って冒頭のyoutubeへと繋がったのだろう。またこのアカウント以外にも日本保守党の百田と有本の動画の文字起こしで「再エネ賦課金23兆円の6割くらいが中国に渡っている」という発言が3月末頃に投稿されている。再エネ賦課金の2012年からの「累積」が23兆円を超えてはいる様なのだが*1、ではこの「6割」は何処から来たのだろうか。X上では2023年11月3日のトータルニュースによる「自民党の利権まみれで電気代を高騰させる「再エネ政策」/再エネ買い取り費用の6割は中国へ?」が確認できる。見出しにある「6割」は記事内には存在しないのだが、記事の文中には「KOJI HIRAI 平井宏治@KojiHirai6」の次の投稿をソースの一つとしている。


https://x.com/KojiHirai6/status/1720266162142118290

5兆円をのうち2~3兆円が中国に回っているので「6割」としたのだろう。そして該当の産経記事は2023年11月2日の「【阿比留瑠比の極言御免】再エネ賦課金を廃止しよう」と思われる。その記事でのソースは次の通りだ。

経済産業相経験者はこう実情を指摘する。
「令和5年度に想定される再エネ買い取り費用は5兆円近くになる。そのうち少なくとも2兆円、あるいは3兆円分ぐらいは回りまわって中国へと流れているのではないか」

つまり何らかの資料に基づいたものではなく「経済産業相経験者」の語る実情なのだが、果たしてどこまでこの「実情」が実態に即しているかは不明だ。ただこの数字が日本保守党系の支持者と思われるアカウントからこの「6割」という数字を用いた投稿がちょくちょくと行われるようになり、累積の23兆円にも適用されたという事だろう。ソーラーパネルなどの再エネの発言装置において中国企業のシェアが多いのは確かなのだが、再エネ賦課金は再エネで発電された電気を決まった額で買うという制度だ。なぜその再エネ賦課金の6割が中国に回るのかは不明で、唯一のソースは「経済産業相経験者」の発言のみとなる。



投げ銭用ページ note.com

*1:例えば産経新聞は25兆円を超えるとしている。