電脳塵芥

四方山雑記

避難所における間仕切りの話(2020)

 去年、こんな記事を書きました。

nou-yunyun.hatenablog.com

今年も状況が変わってない様で上記記事で引用したツイートと同じ写真と同じような文面の投稿がありました。ですが、一部で出回る写真が変わってたのでそれに対しての出所や状況などを。

フィリピン

 今回出回っている写真の中でよく見るのです。出典元はツイッターアカウントですが、そちらはというと、

という様に元々はフィリピン国内にある避難所格差を指摘するツイートの中の良い対応の中の一つの写真。ちなみに何からの避難かというとこれは今年1月に起こった火山からの避難所となります。またその他にもこちらの記事を参照すると、

という様に場所によってその格差は歴然となっています。このほかにもいろいろと写真がありますが、


出典: QI Philippines staff distribute relief goods to Taal victims - RYTHM Foundation


出典: ‘Expand emergency employment aid for Taal victims’ | Samuel P. Medenilla

やはり地域格差というものが大きい。それとGoogleの画像検索で「taal victims evacuation center」と検索すると色々なフィリピンの避難所の画像が出るのですが、

テント型もあればテント無しの雑魚寝の様な避難所があるのが分かります。この格差の要因や比率は分かりませんが、自治体や指定避難所であるかの有無などがあるのかなと。少なくともフィリピンの避難所においてもテントがデフォルトなわけではありません。ただし、避難所の居住環境向上、間仕切りなどのパーソナルスペース確保にはテントがスタンダートだという事は分かります。なお、なんでこのタイプのテントが普及しているのかはよくわからないものの、2018年にこのタイプのテントによる避難所が設営(主体は国ではなく市)されてフィリピン国内で記事になったので、それによる正の影響があったのかなと。あくまで憶測になってはしまいますが。

マレーシア

 こちらはマレーシアの避難所の写真です。この避難所の性格は自然災害とは異なり、新型コロナにおけるホームレスの社会的距離を保つための避難所となります。それについての記事をみると移動管理命令の期間中ともあり、悪い言葉で言えば隔離施設的な意味合いをも持つものと言えるかもしれません。ちなみにこのテント自体も最初からテントがあったわけではなく、


出典元: On mattresses one-metre apart, KL’s homeless placed in shelters to tide over Covid-19 | Malay Mail

という状況だったようです。マレー語の自動翻訳などを解しているので正しいのかは少し不明ではありますが、この状態が連邦領土大臣Annuar Musa氏が訪れた後、その指示でテントが配置されたという流れだと思います。

なお、記事の時系列を見ればわかりますがテントが配置されるまでは数日間のタイムラグが存在し、また大臣が訪れていなければテントがあったかも不明です。また自然災害とは少し趣が異なる避難所ですので、これがマレーシア一般の避難所と捉えるのは拙速かと考えます。

■日本

 日本の場合、避難所は自治体が設置、運営するものとなっています。そして平成28年に作られた避難所ガイドラインでは、

出典元:http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1604hinanjo_guideline.pdf

「間仕切り」の設置は「応急」にあたり準備の項目には入っていないのが現状です。なので自治体によっては常備していない自治体もあるかもしれませんし、そもそも「間仕切り」がテントであるか、段ボールであるか、それ以外であるかの指定もない状態です。なので自治体間で間仕切りなどの居住環境は統一されておらず、その自治体の災害への認識や予算状況、人口規模などの種々の要因によって変わるものです。それと政府の対応ですが、政府の「避難所について」という資料で熊本地震北海道胆振東部地震などにおけるプッシュ型支援の実績が記載されて、こちらにはパーテーションも存在しますが、書き方から見るとテントではなさそうです。どのような部類のパーテーションかは不明ですが、少なくとも政府としてテントという選択は現時点ではあまりなさそうです。
 なお、現状日本ではテントを含め、いくつかの間仕切り用の品が存在している状態です。

【避難所用・紙の間仕切り】

2020 九州南部豪雨 / 避難所用・紙の間仕切りシステム

こちらは実際に今回の豪雨で提供されたものです。ただし自治体が常備していたものではなくNPO法人からの提供という形となります。ちなみに、

こちらの写真が出回ってますが、これは人吉市の体育館。上記の紙の間仕切りが提供されたのは人吉市ですので恐らく改善されたはずです。それが提供ではなく、自治体常備の品(公的な備蓄品)でできればもっと良かったのでしょうが。

【テント的なパーテーション】

これは2019年の台風19号での上田市の避難所の写真です。たしかツイッターで少しだけバズったと記憶しています。

「テントのようなものは、『ワンタッチパーテーションファミリールーム』という名称の製品で、避難生活におけるプライバシーの確保の声が高まっているため、ここ数年で整備しました。上田市では299個備蓄しています(2019年4月1日時点)」
https://j-town.net/tokyo/column/gotochicolumn/296257.html

とある様に自治体によって備蓄されたものです。製造業者のHPを見ればわかりますが、パーテーションには種類があり、最大で1.8mの高さのものまであります。

【テント】

災害用テントです。これは新型コロナ対策用に新たに購入されたものらしく、また常備するといったものです。購入数は600、購入費は3300万とそれなりの金額です。(参照記事:<新型コロナ>テント600張り、避難所に 流山市が購入 災害時の感染防止に:東京新聞 TOKYO Web

【段ボール】

出典元:https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1079759

あくまでも避難練習なのでこれが実際にどのように運用されるのかは分かりませんが、とはいえ上3つと比べた場合はその見た目はあまりよろしくない。ツイッターで出たら多分批判される類の者でしょう。ただ、段ボール間仕切りはピンキリで、例えば、


出典元:https://www.gifu-np.co.jp/news/20200529/20200529-243737.html

という先ほどよりもさらに狭そうな間仕切りがあったり、


出典元:避難所のコロナ対策、段ボール間仕切りを開発…飛沫防止とプライバシー考慮 : 読売新聞

逆に高さとスペースが兼ね備えているものも存在します(なお、これは段ボール製造会社による間仕切り商品です)。さらに、極めつけはこの段ボールシステムパーテーションかなと。


出典元: ダンボールシステムパーテーション【カーテンタイプ】 – 株式会社 タカムラ産業

災害用として今年6月に販売が開始されたもののようで1ユニット当たりの値段も45,000円。それなりなのでどこまで普及するか不明ですが、このレベルなら多分批判は少なそう。

 最後に令和2年5月21日に内閣府から出された「避難所における新型コロナウイルス感染症への対応の参考資料について」から。

テープ、パーテーション、テントなどの3つのスペースレイアウトが書かれている事からも、少なくとも国として避難所の統一された仕様はなく、やはりパーテーションであるか、テントであるかなどは自治体マターなのだなというのが分かります。自治体に避難所の設営が任されているのであり、初めの方に書いたとおり自治体の災害への認識や予算状況、人口規模などによって状況が大きく異なるものでしょう。毎年の豪雨被害は珍しくもなくなり、日本は気候破壊の影響を最も受ける国だとされています。それを考えれば今後これらの被害は日常化する可能性は高い。避難所の在り方は徐々に更新されつつあるとはいえ、自治体による格差が今後は問題になりそうな感じ。おたくの自治体、どうですか。


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