電脳塵芥

四方山雑記

2006年の潘基文の国連事務総長出馬で日本は反対したか

ボルトン回顧録によると、潘基文が出馬した国連事務総長選挙で、無記名で1カ国だけ潘基文に反対票を出す国があった。みんなどこ?と疑問だったが、ボルトンはそれが日本だとわかった。ボルトンは日本代表を訪れ、潘基文に反対しないことを要求した。その後の投票では、反対票は棄権に変わった。

 ってツイートがありました。まぁ、昨今の日本外交から考えると不思議ではないわけですが。というわけで調べてみました!

 まずそもそもですが、この「ボルトン回顧録」は2020年現在で各地で話題になっているボルトン回顧録ではなく2008年に出版された「Surrender Is Not an Option」という過去の回顧録ですので注意が必要です。また脇道ですが、韓国圏のツイッターを見る限りこの話題をしている人は片手で数えるほどですし、拡散もしていません。最近のネット記事もなく上記の日本語ツイートのみが少し拡散されている、という現状です。ではなぜ2008年の話題がなぜ今出ているのかというと、ツイート主の情報源はおそらく韓国の左派系掲示板「ppomppu」*1で投稿されたスレッドかなと。憶測なので間違っていたらごめんなさい。
 で、2007年*2に出た記事は以下の通り。

彼(ボルトン)は特に、自分は韓国と日本の間の外交的緊張関係を考慮すると、「個人的に反対票が日本で出てきたことがあると推測した」とし「だから(国連駐在日本大使である)大島大使に会って(潘候補を)支持するように、日本政府の立場を変えること説得することに決めた」と明らかにした。
http://m.hani.co.kr/arti/international/international_general/248275.html#cb
※自動翻訳

まず前提として潘基文には賛成13、棄権1、反対1という投票がなされ、この反対1票がどこの国かとなりました。そしてこの反対国をボルトンは日本だと「推測」します。また大島大使に対しての忠告も為されて結果的に反対票は消えていますので、状況証拠的にはほぼほぼ日本といっても良いでしょう。記事の最初には「常任理事国ではない島国*3」が反対したという話も流れていたらしく、そこにボルトンの推測と合わせれば信ぴょう性は高い。大島大使も否定はしませんでしたし。ただナムウィキの潘基文の項目には以下のようにもある。

ただし、正確な物証はない脾臓ひたすら日本が反対票を投じたと思うのは難しい。実際に当時潘基文選挙陣営の外交官と側近たちは、別の候補だった、インドのシャーシクリスタル専任事務総長のコフィ・アナンとの個人的な親交のある状況であった脾臓ガーナを疑っていたし、日本はないだろうと、この本を疑っている視線もている模様。
https://namu.wiki/w/%EB%B0%98%EA%B8%B0%EB%AC%B8#s-3
※自動翻訳

というように日本の可能性は高いが、ガーナの可能性も指摘されています。当時はインドの対立候補者もおり、そこからの反対の可能性も存在します。なお、当時の非常任理事国は以下の通り。

カタール
日本
ガーナ
コンゴ共和国
タンザニア
ペルー
アルゼンチン
ギリシャ
デンマーク
スロバキア

 さて、というように日本ではない可能性を書きつつも、当時の読売オンラインの記述を見るとやはり日本かなーと思うような記述がみられます。

麻生外相は3日午前の閣議後の記者会見で、「アジアから(次期事務総長を)出すことをずっと言い続けてきた。予定通りで良かったと思う」と述べ、潘外相を支持する方針を表明した。
 そのうえで、9日に予定されているソウルでの日韓首脳会談で、安倍首相が正式に潘外相支持を表明することを明らかにした。
 次期事務総長について、日本政府内では当初、韓国が日本の国連安全保障理事会常任理事国入りに反対してきたことから、「潘氏が事務総長になれば、日本の常任理事国入りは一層遠のく」との懸念が強かった。
(中略)
2日の4回目の非公式投票で米国を含む5常任理事国が韓国の潘外相を支持していることが判明したため、日本としても「潘外相を支持し、日韓関係修復の一助とするべきだ」(外務省幹部)との判断に傾いた
(2006年10月3日14時23分 読売新聞)
アーカイブでも確認不可のよう。ネットで転がっている記事ですが右派系ブログなのでリンクは控えます。

 あ、反対してたの十中八九日本だ。反対したとまでは書いてませんが、ほぼほぼ反対していたと類推可能な内容……。日本、変わってないな。ただ麻生氏にしても安倍氏にしても昔のほうが大人な対応はできていたような受け答えなのが時の流れを感じなくもない。

余談。

ボルトン回顧録によると、日本は潘基文国連事務総長出馬の時も妨害しまくったらしいね。

 ボルトン回顧録に書いてある内容は日本が反対していたというだけと思えるので「日本は潘基文国連事務総長出馬の時も妨害しまくった」というのは本人が原本を読んで確認したなら話は別ですが、高確率で誤謬というかフェイク的なものでしょう。ネット記事にはそんなことは書いてありませんし、「反対票」が「妨害しまくった」に当たるならば他の負けた候補者はもっと妨害にあったという批判が成り立つほどの穴しかない論理です。またこの方は「妨害しまくった」ツイートの後にしれっと記事内容に即したツイートに修正しています。それが過ちに気づいた自己反省なのか、うざいうざい私が指摘したからの修正なのかは知りませんが。私がうざすぎてブロックされたので関係ないかな。
 別に批判をするのは良いです。それが事実に即したものならば。ただし批判の仕方にフェイク的な要素が入ってるなら、それ、あなたが嫌ってる人間の手法ではないのではと思うんですよね。ミイラ狩りのつもりでミイラになりたくはない。

努力の証―第八代国連事務総長 潘基文物語

努力の証―第八代国連事務総長 潘基文物語

  • 作者:辛 雄鎭
  • 発売日: 2008/10/10
  • メディア: 単行本

*1:ナムウィキによると極左掲示板とされ、かなりアクの強い政治性を持つ掲示板といえるかもしれません。

*2:本は2008年発売だけど2007年には話は出てたっぽい。

*3:英語のウィキペディアにないのでどこまで信じてよい噂かは微妙