電脳塵芥

四方山雑記

日本以外にも無人販売所ってあるよ

 というツイートがなされ、それに対して無人販売所は日本以外にもあるという突っ込みがなされていました。そういった突っ込みは以下のまとめにありますので、世界の無人販売所について知りたい方はどうぞ。

togetter.com

また、以下の様な記事もあります。

人の誠実さを前提とした無人販売所はスイスで何年も続いており、農家はファーマーズマーケットに出品するよりも、無人販売所という手段を選びます。日本やアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、ノルウェーといった国において無人販売所は珍しくありませんが、世界的に見ると非常に特殊です。
野菜だけでなくチーズや手作りクッキーまであらゆるものが無人販売できる理由とは? - GIGAZINE

引用には無い韓国、台湾、中国の事例もありますので記事にある様にどこまで「非常に特殊」と言ってよいのかは分かりませんが、少なくとも「信頼を前提とする無人販売所」は日本以外にもいくらかの国で存在する事は確かです。

 さて無人販売所は日本に限らず世界にあって、なんら日本の特殊性を喧伝するようなものではなさそうな存在といえそうですが、何故かたまに日本人の道徳性や治安の良さを喧伝する為に使用される傾向があります。「無人販売所で盗まない日本スゴイ」という様なやつ。分かりやすい所でいえばyoutube。絶対数は多くありませんがいくらか散見されるネタでありますし、再生回数をみると50万回超えもあったりして影響力はそうそう馬鹿にできません。

WEB記事に目を転じると、

2013年11月28日
日本にある『野菜の無人販売所』に外国人が驚愕「日本人の正直さは世界トップレベル」「ここまでくると感動」 | ロケットニュース24

2014年6月10日
野菜の無人販売所に驚き - 日本経済新聞

2016年4月19日
なぜだ!野菜の無人販売が成立する日本社会は恐ろしすぎる=中国 (2016年4月19日) - エキサイトニュース

2018年3月6日
外国人が熱狂する「田舎では普通の光景」7選 - ライブドアニュース

という様にたまに記事になるレベルでのある意味で鉄板の「ネタ」なのでしょう。日経の会員でないので全部は読めないので読める範囲での引用となりますが、

日本人の礼儀正しさや社会の安全はよく知られているが、地方でもこれは変わらない。ある牧場を訪れた時に目にした、野菜の無人販売所には衝撃を受

と、日経ですらそれ系と思われる記事を書いているのですから。ちなみに記事そのものの主旨とはずれますが、2011年のデイリーポータルZの記事の序文において、

無人販売所は日本では珍しくもなんともないが、外国人から見たら信じられない光景なのだと聞いたことがある。治安がいい日本ならではのものらしい。
日本の美徳・無人販売所 :: デイリーポータルZ

といった記述がなされていることから少なくとも2011年にはこういった言説が一部で定着化していることが伺えます。個人ブログをさかのぼれば2008年頃にも確認可能。何処かで起点となる初出の様な情報はあるのかもしれませんが、無人販売所系の持ち上げ方と似ている「日本の自販機が多いのは治安が良くて盗まれないからだ」という話からの派生かもしれません。いずれにせよネット上を少し検索しただけでは出所は分からないものの、少なくとも利用のされ方はyoutubeやWEB記事などを見ると日本スゴイに利用されるネタであり、今回のツイ―トの様に「他者」を排除するための言説として利用される「錯誤」と「排外」を呼び込む危ういネタといって良いかなと。

 ちなみに無人販売所は信頼の上で成り立っていると言えますが、それでもやはり盗む人はいる訳で。勿論、日本で。「無人販売所での窃盗犯罪対策に役立つ防犯カメラ・監視カメラ」という様に無人販売所用の防犯カメラは存在しますし、以下の様な記事も存在します。

「実は、年間で計算すると、全体の商品の1割弱は盗難にあっています……。一番悲しかったのは、妻の友人が野菜を持っていっていたこと。それも、ご近所さんにおすそわけしていたことで発覚しました……。そのため、盗難対策として、監視カメラを設置しています。取り付けてから、盗まれることはだいぶ減りましたね」(馬場さん)
https://mikata.shingaku.mynavi.jp/article/5332/

上記の記事では1割弱の盗難とありますが、2010年の記事では売り上げの半分ほどしかお金が入っていなかった例もあります(http://www.at-s.com/sbstv/program/eye/2010/02/post_434.html)。それこそ「無人販売所 盗難」などで検索すれば対策はしっかりする様にという情報はかなり出て来るので、日本において無人販売所がただ信頼のみで成り立っているというのは幻想と言ってもいいかもしれません。
 ちなみに外国においてですが、アメリカの社会実験においては9割がお金を払い( 「あなたは正直者?」ちょっといじわるな質問ではじまる無人販売所のゲリラ社会実験、あっと驚く結果とは? | greenz.jp グリーンズ)、中国の無人販売でも1年の収益率は90%に達している( 无人菜摊帮贫困户卖菜 90%顾客自觉付钱_网易新闻)とあります。中国の収益率が回収率なのかが良く分からない面もありますが、「日本の1割弱が盗難にあっている」という事例を考えると世界的に9割くらいの人は払うのではないだろうかなと。売り上げの半分がなかった事例を考えれば、その地域の人口やコミュニティの在り方でかなり変動はあるのでしょうが。
 とりあえず無人販売所に対する日本人の道徳性は他国とそこまで変わらないであろうし、特筆すべき事例では別にないと思いますよ。ただの勘違いした井の中の蛙では。


【余談】

ツイートした方が貼ったこの写真、霧島市隼人町にある無人販売所で初出は2015年(霧島市隼人町内「かわいい野菜の無人販売所」 | 姶良霧島 aira&kirishima)。何故かこの写真、日本だけで使われているのではなく韓国、ベトナム、タイなどの外国にも少し拡散してる模様で。

中には今回の様な日本の特殊性をアピールする様な言説もある様なのですが……。にしてもこの画像があんなに拡散するとは撮った人は思わなかったろうなあ。



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