この報道に騙されるべからず。日本国内観光における訪日外国人客のシェアは5パーセント程度。観光地や観光産業の冷え込みは95パーセントの日本人客が動き出せば大方解消できる。日本人が国内旅行しやすくする助成策を終息後に即実行。
— 有本 香 Kaori Arimoto (@arimoto_kaori) 2020年3月19日
詳細は先週木曜の虎ノ門ニュースで。
https://t.co/eBZN5gtV64
この報道に騙されるべからず。日本国内観光における訪日外国人客のシェアは5パーセント程度。観光地や観光産業の冷え込みは95パーセントの日本人客が動き出せば大方解消できる。日本人が国内旅行しやすくする助成策を終息後に即実行。
2019年の訪日外国人ってJNTO(日本政府観光局)によると3188万人を超えているわけですが*1、それすべてが観光客ではない*2とはいえ訪日外国人の日本国内観光におけるシェア5%程度というのは感覚的に違和感を覚えたので調べてみた次第。
ただひとまず詳しく調べなくても言えることですが、例えば韓国人観光客の大幅減で対馬などは相当な打撃を受けています。2017年3月の対馬市観光振興推進計画によれば2015年の観光客数の58万人中21万人が4割近くが韓国人観光客、それが2018年では韓国からの訪日観光客数は41万人。対馬は3年で20万人もの観光客が増加し、そしてその増加分が著しく低下したわけですが、その減少分をカバーできるほど日本人は対馬に行ってはいない。というか常識的に考えてその数を一時的にではなく恒常的に日本人観光客で補える分の観光客を呼ぶのは甚だ困難というか、無理でしょう。よしんば、対馬でそれを実現できたとしても日本国内の数々の観光地で訪日外国人減少分をカバーする為に日本人が国内旅行をするのは不可能といっても過言ではないかと。
閑話休題さて本題。
「日本国内観光における訪日外国人客のシェアは5パーセント程度」ですが、この「シェア」が具体的に何を指すのかがわかりません。「旅行人数」もしくは「旅行消費額」の何れかと考えるのが妥当と考えますので双方を見ていきます。で、それが判るデータですが
「観光庁 観光白書」を参照するのが妥当でしょう。
まずは「旅行人数」ですが、2019年度版の観光白書によると、
【2018年の日本国内旅行客数】
日本人国内宿泊旅行 :2億9105万人
日本人国内日帰り旅行:2億7073万人
訪日外国人 :3119万人*3
日本人の旅行客は5億6178万人、訪日外国人は3119万人でその割合は約5%となり、確かに有本氏の言う通りの人数視点で見た訪日外国人旅行者数のシェアは5%の様です。では旅行消費額という視点で見ればどうか。これも同じく2019年度版の観光白書を見ますと、
【2018年の日本国内における旅行消費額】
日本人国内宿泊旅行 :15.8兆円(60.6%)
日本人国内日帰り旅行 :4.7兆円(17.9%)
日本人国内海外旅行(国内分):1.1兆円(4.2%)
訪日外国人旅行 :4.5兆円(17.3%)
以上のような結果となります。
金額ベースで見れば日本国内観光における訪日外国人客のシェアは17.3%となり、5%を大きく上回っています。さらに宿泊に絞ったデータも存在しており、そこでは、
【日本人・外国人の延べ宿泊者数の推移】
日本人延べ宿泊者数は4億2043万人泊(83%)
外国人延べ宿泊者数は8859万人泊(17%)
となり、宿泊数上でのシェアは17%。こちらも5%を大きく上回ります。それとシェアの話ではありませんが観光白書では訪日外国人向けに「コト消費(スキー、スノボ、マリンスポーツ、温泉入浴などの体験型観光)」を強化して消費額が成長している地方も存在しており、2012年から2018年で訪日外国人は3.7倍にまで拡大しましたが、旅行消費額は4.2倍と人数を上回る伸びを見せています。また日本人・訪日外国人の平均旅行消費額ですが、
【日本人・外国人の旅行消費額】
日本人宿泊旅行 :5万4243円
日本人日帰り旅行 :1万7264円
訪日外国人旅行支出:15万3029円
以上の様に日本人と訪日外国人では落とす金額に大きな差異が存在します。(差別心から端を発する)一部界隈では落とす金額の少ないと言われる韓国人でも8万ほどですので、言い方は悪いですが訪日観光客は日本人よりも多くのお金を落とすお客でもあるわけです。単純に失った訪日人数分を日本人で補ったとしても金額ベースで言えば補えない状況です。
「人数」という一面から見れば有本氏は正しいことを言っています。しかしながらより重要であろう「金額ベース」で言えば訪日外国人のシェアは17%であり、数値の矮小化を図っているというそしりを受けても致し方ない数字の利用でしょう。訪日外国人は様々な場所に旅行に行き、2019年を考えれば3000万人規模なわけです。上述しましたが、助成策で日本人が国内旅行をすれば「ある程度」は解消できる問題ではあるもの恒常的にすべての観光地を救うかといえば、難しいでしょう。