電脳塵芥

四方山雑記

旧500円硬貨と500ウォン硬貨の話

最新版をアップロードしました。↓の方が詳しいです。

 

nou-yunyun.hatenablog.com

 

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 togetterにまとめたやつを一応こちらでも簡易的に残しておこうかなという記事で、特に突っ込んだ話はないです。

 

◆発端

・500ウォンと500円玉が同じサイズなのはコイン鋳造技術がない韓国が日本から鋳造機を払い下げられたのを使ったから

・日本政府は韓国に偽造対策を要請したが韓国は無視した

 

という情報がSNS上で氾濫していたわけです。以下、それへの検証。

 

◆各硬貨の時系列

500円硬貨
 政府発表 :1980年11月 ※国会議事録から
 発行決定日:1981年5月 ※臨時通貨法採決月を決定日と判断
 流通   :1982年4月
500ウォン硬貨
 発行決定日:1981年1月 ※韓国のナムウィキから
 流通   :1982年6月

 

以上の様に時系列を考えればほぼほぼ同時期に各硬貨を流通しようという動きが出てきています。韓国の政府発表日は残念ながらよくわかりませんが、とはいえこれくらい同時期で動いていた時点で鋳造機を払い下げたというのは普通に考えればあり得ない話でしょう。そもそも韓国はそれ以前にも貨幣を製造していたわけで技術がないというのは理屈は謎です。

 

造幣局への問い合わせ

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造幣局への問い合わせ

1.鋳造機は韓国へ払い下げをしたのか

当時の資料等を確認いたしましたが、 そういった情報は確認できませんでした。

2.日本政府は偽造対策を要請したのか
税関における500ウォン硬貨の密輸の取締りを強化するため、当時の大蔵省(現財務省)より、韓国国税庁に対して500ウォン硬貨の密輸出に対する取り締まり強化と情報提供を要請したことは確認できましたが、偽造対策を要請したという情報は確認できませんでした

 以上の様に造幣局へ問い合わせた結果、払い下げの確認はなく偽造対策の要請もないとされています。つまりは鋳造機払い下げという話は【デマ】でしょう。

 

◆デマ情報元

 このデマの発生元は管見の限り2013年の2chの書き込みが情報発生源。そこからのまとめ系ブログが拡散元と考えられます。

韓国が500円玉そっくりの500ウォン硬貨を簡単に鋳造できた理由が判明

インターネットアーカイブ

 

◆貨幣デザインについて

 このデマの亜種で韓国は隣国とは貨幣デザインを似通ったものにしないという国際常識があるのに韓国がまねたという話もあります。時系列を考えればこちらも考えにくいですが質問主意書によると、

韓国五百ウォン以外にも五百円硬貨に類似した硬貨が存在する。このような犯罪を防ぐには硬貨のサイズや重さを変える以外に抜本的な対策はない。今後、新しい五百円硬貨を造る際、外国の硬貨と類似した硬貨にしないことも考慮すべきである。その意味でも、国際協調のなかで類似の貨幣を造らないような取り決めをすべきと考えるが、いかがか。

 

答弁
御指摘の国際協調については、諸外国との間において貨幣の製造等に関する情報交換を行っており、今後、新しく貨幣を製造する際における他国の貨幣の形式等への配慮について、各国の協力を得られるよう努力してまいりたい。

  変造外国硬貨等使用による自販機荒らしに関する質問主意書

 以上の様に「今後新しく貨幣を製造する際には配慮する」というものとなり、当時にそういった貨幣デザインの配慮があったかと言われれば、なかったでしょう。

 

 ◆なぜ同じような硬貨になったのか

 正味な話、分からないです。素材に関していえば数か国で使用されていたポピュラーなものなのでかぶっていても不思議ではないです。大きさに関しては500円硬貨と同じ26.5mmの硬貨は外国にいくつか存在していたので、その大きさを双方ともに参考にしたなども考えられます。もしくは、ただの偶然。

 こういった貨幣のデザインに関する議事録などは公開されているものではありませんし研究論文もありません。厳密に調べるならば情報公開請求を日本、韓国双方で必要になるものでしょう。ただ、さすがにそこまでは手が負えないです……。

 


◆ 2019/12/30追記

 冬コミに合わせてまたそういう話になったので改めて調べたら韓国銀行(韓国の中央銀行)HPにこの件に関するコラムがあったので、情報を追記しておきます。

※自動翻訳です。

日本の500円より先に作られた韓国500ウォン

発券企画チーム(010-759-5374)

登録日 1999.12.15

日本では、私たちは500ウォンを変調して、500円で使用する犯罪が大きな悩みの種となっている。私たちは500ウォンと日本の500円の材質(銅75%、ニッケル25%)と直径(26.5㎜)が偶然に同じに作られて重量が少し重い私たち500ウォンの表面を削ったり穴を掘る場合、日本国内の自動販売機で500日本円で認識してタバコ、ラーメン物品を購入したり、返しレバーを押して、日本の500円(ウォン基準で約5,700ウォン)で交換可能である点が犯罪の標的にされたものである。

(中略)

ところで、このような一連の状況を把握した日本のNHK放送などは「問題の根源が、韓国が500ウォンを作成当時の日本の500円を中心にしたもの」という推測のもと、韓国銀行これから真実究明を要請したりした。

  しかし、日本の500円よりも、私たちが「500ウォンを先に作った "は、明らかな真実が私たちの自尊心を守り、日本のマスコミの心配や疑いを一挙に解消させることができた。韓国の500ウォン発行決定の時期(政府承認日)は、1981年1月8日、日本の500円発行の各の議決日の1981年6月30日より先んじるだけでなく、当時の私たちの500ウォンの発行は最高額面コインの導入という点などで政府承認日数年前から絵柄の選定などの作業が非公開で推進された記録が、その事実を証明しているからである。幸いなことに日本の通貨当局が500円の材料を変えるというニュースが聞こえてきていますが対策が早急に講じられて、両国間の微妙な問題が早く解決したら良いだろう。

http://www.bok.or.kr/portal/bbs/P0000547/view.do?nttId=7233&menuNo=200387&pageIndex=9

 

 追記前の記事でも書きましたが、このコラムでは日本の議決日を1981年としていますが発表は1980年11月ですし、500円硬貨に関する法律である臨時通貨法は1981年5月8日に参議院を通過しています。そもそも1981年6月30日は国会は閉会していますので6月30日の議決日が何を指すのかが不明です。「五百円の臨時補助貨幣の形式等に関する政令」の閣議決定日かな。あと韓国は非公開情報、日本は公開情報からの比較となりその比較は不適切です。なのでこのコラムは指摘として欠点のあるのは事実です。

 ただし韓国政府が1981年の政府承認日数年前から絵柄などの選定作業をしていたという記録があるという指摘は重要だと考えます。欲を言えばその情報が書かれた資料を公開してほしかったりはしますが。日本においても数年前からかは不明ですが1980年11月の政府発表(なお割と唐突な発表であった模様)から1年以上前くらいからは水面下で進んできたことは想像に難くありません。いずれにしてもどちらかが先であるか、パクった云々はかなり不毛なやり取りであり、コラムでも書かれている通り偶然と考えるほうが自然です。

 あと2ch発のデマかとおもいましたがNHK含めた日本メディア発っぽく書かれていますが、ちょっとにわかには信じがたい内容と言えます。時系列を少し調べればちょっと無理があるといえる内容ではあるので、断言するリスクが強すぎますし、そのような放送があった変造硬貨などの問題時にあったならばもうちょっと今の流布にその痕跡があってもよさそうなものの、それについては微妙。「日本のマスコミ」という範囲の広さもややいぶかしむ点で、それが言えるくらい多かったらネット情報ももっとおおいであろうで。ただここら辺の放送の聞きかじりが噂が人間が尾ひれを付けて2chで流した可能性はあるかもしれませんが。当時の雑誌を探せば今回の発端となった情報が書かれているのかもしれませんね。

 

 ちなみに韓国の硬貨ですが、1970年代から硬貨が作られているわけで1982年時点で韓国に硬貨を造る技術がなかったという指摘はあたらないかと。韓国銀行の「貨幣連帯資料 >1970年〜1982年」でその当時の硬貨が見られます。ご興味があれば。

 

 


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