電脳塵芥

四方山雑記

インド首相ネルーが「日本が300万人という尊い命を犠牲にして戦ってくれたお陰で、我々は独立できた」との発言はあり得ない

インドのネール首相から「日本が300万人という尊い命を犠牲にして戦ってくれたお陰で、我々は独立できた」

 という書き込みをツイッターで見ました。……怪しい。こういった「名言」はデマも多く、そしてそのデマをまとめて書籍にしたり、ネットの有象無象に書き込まれたりするのですが、上記発言を検索すると全然出てこない。現状、グーグル、ツイッター、5ch過去ログを見た限り、下記の3つのツイートのみです。なお「ネルー」、「ネール」とこの記事では表記が揺れていますが、一般的には「ネルー」の方が多いようなので基本的には「ネルー」、デマ発言の引用の際には「ネール」と記述しています。


https://twitter.com/2cnVN0qBlipIR7U/status/1058248483814039552


https://twitter.com/PNFBLRp1Ulm4pGh/status/1294479409257181185

上記2つはリプライに対する一つのツイート内で完結していますが、下記のイサク氏による連投ではさらに詳細が語られています。ただその前にこの発言の胡乱さへの指摘ですが、この発言のいくつかの特徴的なワードを抽出して検索しても類似の発言は出てこず、どうにも2018年にツイートされた「イザヤペンダサン」氏による書き込みが現状確認できた最古の書き込みです。初めの方にも書きましたがこの手の「大東亜戦争肯定名言」的な書き込みは書籍、そして特にネットでは結構はびこっています。にもかかわらず、この「名言」は2018年時点で表に出てきた内容であり、またネットにおいても膾炙しているとは言えません。「イザヤペンダサン」というどうみてもイザヤ・ベンダサンが元ネタの名前のアカウントが発言している時点で大変に胡乱さが増すのですが、ただイザヤペンダサン氏のツイート自体は広まった形跡はなく、その後のイシマエル氏によるツイートも少しだけ広まった程度です。下記のイサク氏に限らずネタ自体の内容には共通性があるためにどこかに元ネタがある可能性も多少はあるのですが、しかし不明。もしもイザヤペンダサン氏が創作したならば、イサク氏はさらにそこから細部のディティールを創作したわけで……。なおこの発言自体のネタ元は推測ができますので後述します。
 で、下記から始まるイサク氏によるツイートは結構バズっています。以下、長いのでツリーのはじめのツイート以外は文章をまとめて引用にします。

私がまだ20代の頃に、友人に誘われて元外交官の講演会に行った事があります。名前は失念しましたが、講演内容は当時サヨクだった私には目眩がするほど衝撃的なものでした。有名な話しなのでご存知の方も多いと思います。終戦後まもなく、インドでアジアのリーダー達が集まって平和会議の様なものが開催された。日本も招待されたが戦後処理に追われていた日本は、結局外交官一人を送る事になった。しかし官僚たちは誰もが出席を嫌がった。そこで入省したばかりのS氏が出席する事になった。「何を言われても口答えせずに黙って耐えろ」とか「ひたすら謝れ」とか、先輩達から脅されたのでビクビクしながらインドに向かったそうです。
所がインドに到着してみると万雷の拍手で迎えられ、インドのネール首相から「日本が300万人という尊い命を犠牲にして戦ってくれたお陰で、我々は独立できた」と言われたそうです。これだけでも、共産党サヨクが主張している大東亜戦争が日本による侵略戦争であると言うのが真っ赤な嘘である事が分かります。あのマッカーサーですら公の場で「大東亜戦争は日本の祖国防衛のための戦争だった」と証言しているほどです。防衛のための戦争は国際法で認められているのです。一日も早く憲法9条を改正し、防衛力を強化をすべきです。
インドではなくインドネシアのバンドンで開催の間違い村山富市が総理の時にマレーシアを訪問し、日本が大変ご迷惑をお掛けしました、と謝罪した所、当時首相だったマハティール氏から「日本が謝る理由など1つもありません」と窘められている。この様に日本を侵略国家などと批判しているのは、中国と朝鮮半島そして日本共産党など野党とメディアだけです。(公明党など親中派政治家も含まれる?)
https://twitter.com/bER2YpZXY3TapXc/status/1592795700743798784
https://twitter.com/bER2YpZXY3TapXc/status/1592795703671418886
https://twitter.com/bER2YpZXY3TapXc/status/1592795706859089921
https://twitter.com/bER2YpZXY3TapXc/status/1592795710868848640
https://twitter.com/bER2YpZXY3TapXc/status/1592851886675480576
https://twitter.com/bER2YpZXY3TapXc/status/1592851893822582785

かなり詳細に語られていますが、とりあえずイサク氏によればこの発言は「インドネシアのバンドンで開催の間違い」という事から1955年に開催されたアジア・アフリカ会議であることがわかります。まず1955年が「戦後まもなく」と言えるかは微妙ですが、2022年に生きる人間からすれば一応「まもなく」と言えなくもないかもしれないのでそこは無視します。で、イサク氏は「外交官一人を送る事になった」と最初の方で語っていますが、そもそもアジア・アフリカ会議には国立公文書館のアジア歴史資料センターでまとめられた資料が複数確認できますし、当時の国会で参加に関する議論がそれなりの頻度で複数回されているように日本はこの会議に代表団を率いて参加しています。まとめられた外交資料も複数にわたり、この会議に注力していることは確認できます。そして日本は代表団の首席代表として高碕達之助経済審議庁長官、谷正之外務省顧問や加瀬俊一外務省参与が参加*1、国会でのやり取りからは衆参両議院から議員が派遣されている事が確認できます*2。この時点でイサク氏の言っている「外交官一人を送る事になった」は明確な虚偽であり、この部分についてはデマであることがわかります。

会議におけるネルーの発言はどうか

 上記の参加人数の虚偽部分については講演をしたという元外交官の嘘であるとか、もしくはイサク氏の記憶違いの可能性はあるので、ネルーの発言自体が本当である可能性自体はまだあります。では、アジア・アフリカ会議でのネルーの公的な発言で確認できるかどうかを見ていきます。ネルーの発言についてはインドでかなり広範な時期についてその発言をまとめた資料が存在しており、「公的」に発言しているならばその発言は高い可能性で記録されています。ちなみにですが、ネルーは日本の代表団について「おそらく一番多かっただろう」という事を記述しており、その数は34人としています*3。インド側の資料からもイサク氏の外交官一人発言は否定できます。
 件の発言で特徴的なところの一つは「300万人」という数字ですが、この類の発言を検索しても件の発言は出てきません。「独立」に関しては色々な趣旨の発言で使用されていますが、日本が戦ってきてくれたおかげ的なニュアンスでの発言は無いように見受けられます。「japan」で検索しても件の発言は確認できずにこの時点で「公的」な発言はしていないと考えられます。この意味で2020年にこのデマをツイートしたイシマエル氏による「公式に述べている」はかなり高い可能性で除外できます。ただしイサク氏は「インドに到着してみると万雷の拍手で迎えられ、インドのネール首相に」件の発言を言われたとあります。つまり公的な場の発言とは限らずに立ち話的な発言の場でされたためにこの発言記録が残っていない可能性はまだあります。

件の発言には後世の知識の混入が見られる

 さて、この「日本が300万人という尊い命を~」というネルーの発言ですが、実は発言の「下限」はある程度特定できます。その年は1963年です。何故かというと、「日本が300万人」とありますが、第二次世界大戦の戦死者」が300万人(正しくは310万人)という数字になったのは1963年(昭和38年)5月14日の閣議決定戦没者追悼式の実施に関する件)からだからです。まずこれを示したわかりやすい例としては2001年8月に保坂展人氏が出した質問主意書「「大東亜戦争」と靖国神社に関する質問主意書」に関する以下の返答を見ていきます。

一の(23)について
 お尋ねの我が国における「第二次世界大戦の戦死者」の数については、「第二次世界大戦の戦死者」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、政府としては、昭和三十八年五月十四日の閣議決定戦没者追悼式の実施に関する件)において、同年八月十五日に実施する全国戦没者追悼式における戦没者の範囲について、「支那事変以降の戦争による死没者(軍人・軍属及び準軍属のほか、外地において非命にたおれた者、内地における戦災死没者等をも含む者とする。)とする」と決定したところである。そして、政府としては、右の戦没者の数について、約三百十万人であるとしてきたところである
 また、我が国以外の国における「第二次世界大戦の戦死者」の数については、これを政府又は政府関係機関において公表している国及びその公表数は、調査した限りでは、別紙四のとおりであると承知している。
衆議院議員保坂展人君提出「大東亜戦争」と靖国神社に関する質問に対する答弁書

 全国戦没者追悼式は1963年から今現在も続いている日本武道館で行われ散る追悼式ですが*4、この追悼式という性質上、この時期に戦没者数が何人であるかをある程度確定させる必要が出てきたようです。「全国戦没者追悼式の実施に関する件」の閣議決定内容については国会図書館で確認できますが、こちらの閣議決定そのものには310万人という数字は出てきません。ただし、国会で以下のやり取りがある様にこの1963年に日本国政府としての戦没者数が310万人であると一応の確定をしたと言ってよいやり取りがあります。

中村英男
そうすると戦没者の範囲は、軍人戦死者、軍属、準軍属、民間戦災者、原爆でなくなった方はもちろん含めまして、こういう範囲になるわけですね。そうすると、そういう民間戦災者の実態といいますか、実数、あるいは生活の状況というものを政府は一体調べておいでになるかどうか、お伺いしたい。
 
山本(淺)政府委員
ただいまどれだけの数があるかということでございますが、まず軍人軍属、それから援護法の対象となっております準軍属を含めますと、約二百三十万弱であります。それから次に外地におきまして非命に倒れた者が約三十万おられます。これは、御案内の引揚者給付金法によります遺族給付金をもらっておられる方々から推定いたしました数字でございます。それから最後に、原爆及び戦災でなくなられました人々の総数約五十万と考えておりますが、これらのすべての方々に対しまして、国民あげて敬弔の誠をささげるような機運のもとに、この行事を行なわさしていただきたいという趣旨でございます。
第43回国会 衆議院 社会労働委員会 第47号 昭和38年7月5日

軍属230万、外地30万、原爆及び戦災50万の合計310万人という数字がここから導き出せます。そしてこの1963年以前、例えば1952年の国会での戦死者についてのやり取りでは以下の様なものがあります。

政府委員(田辺繁雄君)
今回の援護法の対象になりまする戰死者遺族の数を計算する基礎となりました戰死者の数は太平洋戰争におきまして百八十五万今ございます。太平洋戰争以前のものを集計いたしますと二百十四万八千人になるのでございます。
第13回国会 参議院 予算委員会 第24号 昭和27年3月22日

この数字の変遷はこれは新聞報道からも確認でき、例えば朝日新聞によれば以下の様な変遷が見受けられます。

1952年5月2日 朝日新聞夕刊
全国戦没者追悼式 陛下、哀悼のお言葉
二百四十万の霊に

 

1963年8月14日 朝日新聞朝刊
あす終戦18年
310万柱に国民の祈り

1952年に開かれた追悼式では240万、それが毎年開かれるようになった1963年からは310万という数字へと変化しています。なぜこの様な変化が発生したかで言えば、1963年の閣議決定によって戦没者の数の範囲が「支那事変以降の戦争による死没者(軍人・軍属及び準軍属のほか、外地において非命にたおれた者、内地における戦災死没者等をも含む者とする。)とする」に変化し、軍属以外の数字も含むようになったためです。事程左様に戦没者数の数は戦後すぐに確定したわけではなく、1963年の閣議決定後に確定してものであって、これは朝日新聞で記事を検索してもこの「310万人」という数字は1963年以降しか出てきません*5。つまりは1963年以前には日本の戦没者数が300万人という言説は存在しえないのです。つまりは件のネルーの「日本が300万人という尊い命を~」という名言はアジア・アフリカ会議が開催された1955年時点では存在するはずもなく、後世の知識を得た人間による捏造であることが明らかです。

おそらくの元ネタ

 この発言の元ネタとなった事象ですが、ヒントはいくつかあって「外交官の講演」、「アジア・アフリカ会議について語った」というものです。そして多少なりとも有名な講演であった事も予想できます。そして該当条件に合致するものが1994年にあったとされる加瀬俊一による京都外国語大学での講演でしょう。この講演自体はネットで多くはないものの流布しており、それは以下の様なものです。

-1994年7月、京都外国語大学における講演より-
1955年4月、インドネシアのバンドンという所でバンドンA・A会議が開かれました。A・Aというのはアジア・アフリカです。この中心はインドと中国とエジプトです。インドのネール、中国の周恩来、エジプトのナセルが中心になって、独立したばかりの新興諸国29ヵ国代表が集まりました。その時、日本にも招待状が来たんです。国内ではアメリカに気兼ねして参加に慎重な人が多かったんです。私は『出た方がいい』と言ったんです。敗戦後間もない日本にとっては、国際社会に復帰する絶好のチャンスだった。それで出席することにはなったけれども、外務大臣は都合が悪くて私が行くことになったんです。特命全権大使として『出た方がいい』と言ったのは私だけなんだけれども、内心不安だった。というのは、アジア・アフリカというけれども、アジアは大東亜戦争の戦場でした。日本はいいこともしているけれども、ご承知のように悪いこともしなかったわけじゃない。それでね『行ったら白い目で見られるんじゃないか』と思ってあまり気がすすまなかった。しかしその会議に行くとね、あちらこちらからアフリカの代表、アジアの代表が出て来てね、『よく来たね!』『日本のおかげだよ!』と大歓迎でした。それは『日本が大東亜共同宣言というものを出して、アジア民族の解放を戦争目的とした。その宣言がなかったら、あるいは日本がアジアのために犠牲を払って戦っていなかったら、我々は依然としてイギリスの植民地・オランダの植民地・フランスの植民地のままだった。日本が大きな犠牲を払ってアジア民族のために勇戦してくれたから、今日のアジアがある。』ということだった。この時は『大東亜共同宣言』を出してよかった、と思いました。我々が今日こうやって独立しました、といって『アジア・アフリカ民族独立を祝う会』というのがA・A会議の本来の目的だった。こんな会議が開けるのも日本のおかげですと、『やぁー、こっちへ来てください』『いやぁ、今度は私のところへ来てください』と言ってね、大変なモテ方だった。やっぱり来てよかったなぁとそう思いました。
( 中略 )
その翌年、日本は晴れて国連に加盟して、私は初代国連大使になりました。アジア・アフリカグループが終始熱心に日本の加盟を支持した事実を強調したい。A・A諸国から大きな信頼と期待を寄せられて、戦後我が国は今日の繁栄を築いてきたのです。
https://www.facebook.com/ww2asia/photos/a.470602659624148/562416100442803/

 本題に行く前に。加瀬俊一の発言内容には深くは突っ込まないですが、例えば"『アジア・アフリカ民族独立を祝う会』というのがA・A会議の本来の目的"は外交資料などから考えても明らかにおかしいですし、かなり本人のイデオロギー的な主観が見え隠れしています。また、チヤホヤされているのも外交儀礼であるとか、冷戦構造化にあった世界で第三世界に属したであろうアジア・アフリカに日本を取り込もう、また経済的支援の考えなど複数の思惑も考えるべきであって、純粋に「あの戦争は正しかった」的な受け取りはちょっと単純化しすぎかと考えます。
 脇道から戻りますが加瀬俊一(かせとしかず)はイサク氏がいう所の入省したばかりのS氏ではないですし、そもそも会議に行ったのは外交官一人でもありません。類似発言ととれる場所はネルー発言でもないし、細部に限らず異なる箇所が複数見受けられます。なのでこれは元ネタかもしれない、程度の話ではありますがおそらくこれが変形して今回の発言が捏造されたと考えられます。なお、この「京都外国語大学における講演」ですが出典が何処か不明なのが痛いところです。例えば産経新聞の論説副委員長である榊原智氏は「 「アジアの解放」と日本――「戦後70年談話」有識者懇が振り返らなかった視点」において上記部分を一部引用して以下のような記述をしています。

これは1994年7月、京都外国語大学で加瀬氏が講演した話だ。『シリーズ 日本人の誇り1 日本人はとても素敵だった』(揚素秋著、桜の花出版、2003年刊)の巻末に、同出版会長、山口春嶽氏が記した文章「シリーズ刊行にあたって」の中で記録されている。

出典は『日本人はとても素敵だった』とありますが、この書籍にはそんなものは存在しません。なんならこの「シリーズ刊行にあたって」はwebでも読めて、シリーズ作すべての巻末に書かれている内容であるのですが、当然ながら加瀬の講演についての文字など一言も存在しない。榊原智氏の書きぶりから見る限り、なんらかの書籍などからの引用なのは確実であるものの、しかしながら出典書籍に誤りがあるために追えなくなっているという状況です。では、この加瀬の講演はどの本に記述されているのか。今流布しているものとは若干文章が異なりますが、展転社『昭和の戦争記念館第5巻』での記述が山際澄夫氏のブログや、田母神敏夫『自らの身は顧みず』で引用されており、それは以下の様なものです。

加瀬俊一外務相参与(のちに初代国連大使となる)は、外務大臣代理で出席したのだが、その時の模様を次のように語っている。「この会議の主催者から、出席の案内が来た。日本政府は参加を躊躇していた。アメリカへの気兼ねもあったが、何分現地には反日感情が強いに違いない、と思っていた。私は強く出席を勧めて遂に参加が実現した。出てみるとアフリカからもアジアの各国からも『よく来てくれた』『日本のおかげだ』と大歓迎を受けた。日本があれだけの犠牲を払って戦わなかったら、我々はいまもイギリスやフランス、オランダの植民地のままだった。それにあの時出した『大東亜共同宣言』がよかった。大東亜戦争の目的を鮮明に打ち出してくれた。『アジア民族のための日本の勇戦とその意義を打ち出した大東亜共同宣言は歴史に輝く』と大変なもて方であった。やっぱり出席してよかった。日本が国連に加盟できたのもアジア、アフリカ諸国の熱烈な応援があったからだ。
 ところがこのように評価されている大東亜戦争の勇戦や、大東亜会議の意義だが、日本のマスコミや学会では取り上げられない。この辺にも日本の歴史認識や外交の未熟さがあるように思われてならない」(平成六年七月二十二日、京都外国語大学における講演より)>

どうにも近くの図書館にないので原著は確認できていませんが、複数の著者が出典としていることから信頼性はあり、そして加瀬が講演で話したニュアンスというのは以上の様なもので、最初のより長いバージョンと大きな違いはないことがわかります。ちなみに産経新聞の榊原智氏については”『アジア・アフリカ民族独立を祝う会』というのがA・A会議の本来の目的”という文章が引用されており、この文面は『昭和の戦争記念館第5巻』には記述されていないことから別書籍からの引用でしょう。
 ただ返す返すもイザヤペンダサンから始まったと思われるこの「名言」的なデマは発言もそうですし、状況的差異、イニシャル違いなどあまりにも細部が異なり、イサク氏が果たしてどこまで創作したのかは謎です。ただ、これだけは言える。デマ。


11月21日追記
 加瀬俊一氏の1994年の京都外国語大学での講演についてですが、初めにあげた長い文章の方は出典が不明としましたが、出典がわかりましたので追記します。この京都外国語大学の講演をまとめた書籍は『祖国と青年』1994年9月号における「大東亜戦争〈歴史の証言〉――大東亜会議とバンドン会議です。またこれが再録されたのが『祖国と青年』の2015年6月号です。産経新聞の榊原智氏の引用元もこの本の可能性は高いと思われます。

【関連記事】
【デマ】アジア諸国の首脳が太平洋戦争における日本の功績を認めているといういくつかの「名言」は存在しない - ネルー編

■お布施用ページ

note.com

環球時報による玉城デニーのインタビュー記事で、玉城デニーは独立云々はなんて当然答えてないよ


https://twitter.com/yaBImITlwUvk0Vo/status/1590829449658126337

 この元ネタは三木慎一郎氏の以下のツイートと思われる。


https://twitter.com/S10408978/status/1590110588361138176

環球時報をアップしている三木氏はこの記事自体には「独立」は書かれおらず、あくまでも中国国民が「琉球独立支持」などそういう反応が見られるというツイートで、間接的に煽っているわけです。だのにそれを理解してなのか、理解していないのか沖縄のケン氏は「機関誌に、沖縄は嫌いだから独立したいと、協力を求めているような記事」という意味が分からない解釈をしている。「沖縄は嫌いだから独立したい」沖縄県知事って日本語がおかしいだろってのは置いといて、それはともかく自動翻訳した記事を以下に記述しておきます。

web版はこちら 冲绳县知事接受环球时报独家专访:美军基地的负担,已让我们忍无可忍!
※下記の自動翻訳はWeb版ではなく上記の紙面イメージの翻訳です。

2022年11月7日

玉城デニー沖縄県知事への環球時報独占インタビュー
米軍基地の負担は大きすぎる
 
編集部注:これは「日本の分断」の現実版である。日本の面積の0.6%しかない沖縄が、在日米軍基地の70%以上を抱え、人口が集中する中南部の首都圏で市街地の大部分を占め、都市から分断されているのである。 日本政府は「台湾に何かあれば日本に何かある」と頻繁に推測し、沖縄を日本本土を「守る」ための天然の防壁とみなしているが、本土決戦の時間稼ぎのために行われた1945年の沖縄戦が10万人以上の沖縄県民の命を奪ったことを忘れてはいないだろうか。 本土決戦の時間稼ぎのために行われた1945年の沖縄戦では、10万人以上の沖縄県民の命が奪われた。 「沖縄を戦場にするな」「米軍基地問題に反対」......沖縄県民が50年来訴えてきた不満は、日本政府によって何度も何度も無視され続けてきたのです。 玉城デニー沖縄県知事は最近、環球時報の独占インタビューで、"There must not be another war!" と発言しています。 鋼鉄の嵐」と表現された第二次世界大戦中の沖縄戦に言及し、残酷な戦争に苦しめられた沖縄の人々が心の底から世界平和を切望していると語った:玉城氏はこれまで2度訪中し、2018年に沖縄知事に初当選後、初めてアジアを北京まで訪問した。 また、今回のインタビューは、沖縄県知事である玉城デニーが中国メディアの取材を受ける初めての機会でもあります。 今後、沖縄と中国の友好交流をさらに進めていくことを約束し、いつかまた中国を訪れたいと繰り返し強調しています。
 
"辺野古に新基地建設は賛成できない"
環球時報: あなたの沖縄県知事再選は「沖縄の世論」であり、「沖縄県民と日本政府との闘い」であると広く信じられています。 再選を果たした心境はいかがですか? 今後、北谷の新基地建設など沖縄の米軍基地の問題について、どのように対応されますか。
 
玉城デニー:再選できたのは、この4年間の私の努力と実績を、地元の皆様が信頼してくださったからだと考えています。 私が選挙戦で提案した課題は、「沖縄の経済と暮らしを再生する」「子ども・若者・女性への支援をさらに拡充する」「北谷の新基地建設に反対する」「米軍基地問題に反対する」というものでした。 選挙期間中に出されたこれらの要求は、県民に効果的に伝わり、支持されたのです。 また、私が着々と進めている「21世紀の新しい沖縄ビジョンの基本計画」や、「取り残されない沖縄らしい共生社会」の実現に取り組む姿勢も、多くの沖縄県民から支持されました。 今回の選挙では、米軍新基地建設の是非が議論の焦点となった。 私は、辺野古への新基地建設には同意しないと明言し、今回の勝利は、私が多くの県民から信頼され、国民から託された重荷を感じていることの表れだと思います。辺野古への新基地建設に反対する世論は、2019年2月に行われる、辺野古への越境の是非を問う県民投票に明確に反映されることになるだろう。 辺野古での新基地建設をめぐっては、対話を通じて解決策を探ることが重要だと考えています。 辺野古に新基地を建設しないという約束を果たすため、私たちは日本政府に対し、民主的な姿勢をとり、対話と協議を通じて問題を解決するよう粘り強く求めていきます。
沖縄の米軍基地問題では、戦後77年、「引き渡し」から50年経った現在でも、国内の米軍専用施設の約70.3%が県内に集中している。 騒音や水質汚濁などの環境問題や、米軍関連の事件も後を絶ちません。 日米安保体制の必要性は理解できるが、沖縄の基地負担は異常であり、いずれにしても耐え難いものになっている。 2022年は「復帰」50年の重要な節目であり、沖縄は昨年5月に早くも日本政府に対して、以下の6項目の要求を行った。 沖縄の米軍基地の整理統合と負担軽減」「訓練水域・空域の縮小」「日米地位協定の抜本的見直し」など6項目を要求している。 "沖縄の米軍基地のさらなる統合と縮小のための合意形成"、"アジアの緊張緩和"、"信頼関係の構築 "を目指す。 沖縄県は、沖縄の過剰な基地負担を軽減するため、今後も日米両政府に対し、積極的かつ不断に、明確な形で要望を続けていきます。
 
環球時報: 沖縄はまだまだ貧しい県で、沖縄県民の世論調査では、約9割が「本土との格差がある」と考えているそうです。 このような経済格差は、どうすれば縮まるのでしょうか。 米軍基地があれば、沖縄の経済がある程度活性化されるという話もある。沖縄にとって「基地問題」と「経済発展」はどのように折り合いをつけるべきとお考えでしょうか。
 
玉城デニー:1972年の沖縄返還時、沖縄と本土の間には、社会経済状況、産業や生活などのインフラ、県民の所得水準の低さなど、大きな隔たりがありました。 その後の政策により、沖縄はダム、港湾、空港、道路などのインフラ整備や、観光、情報などの関連産業の発展を遂げることができました。 一方、沖縄の一人当たりの所得は日本全国の7割程度に過ぎず、最下位から脱却できていない。 さらに、沖縄は非正規雇用の割合が高く、子どもの4人に1人が貧困状態にあります。
沖縄の経済発展のためには、観光や情報などの関連産業を主軸として活性化させ、「東アジアの中心」という沖縄の地理的条件をフルに活用することが必要です。
沖縄経済の発展のためには、観光や情報などの関連産業を主軸に活性化させ、「東アジアの中心」という沖縄の地理的条件を最大限に活用して、グローバルなビジネスを展開することが必要です。 そのため、2022年4月にスタートする「新沖縄ビジョン21基本計画」では、すでに第2滑走路がオープンした那覇空港那覇港をハブとして、沖縄に航空・港湾都市を形成し、アジアの発展を喚起することを目指しているのです。 同時に、電子商取引の発展、人材産業のデジタル化、およびこれらの分野の人材育成を積極的に推進する必要があります。
基地問題」と「経済発展」をどう両立させるかという問いに答える前に、中国の読者のために、その背景を補足しておきたい。 沖縄の米軍基地は、人口が集中する中南部都市圏を中心に配置され、細分化された市町村圏の大部分を占めている。 基地の存在は、騒音の発生や環境汚染に加え、都市計画や交通システム、産業基盤の整備など社会経済活動にも制約を与えています。
沖縄県の経済構成に占める軍事関連収入の割合は、「返還」当初(1972年)の15.5%から2019年には5.5%へと大きく低下している。 米軍から返還された基地跡地で行われている経済活動は、直接的な経済効果、雇用者数ともに元の基地の経済効果を大きく上回っているのが現状です。 今後、米軍基地の返還を進めていけば、沖縄の経済が飛躍的に発展することが期待できます。
 
"中国を2度訪問し、福建省に行きたかった"
環球時報:流行以前は、「中越数次ビザ」によって多くの中国人観光客が沖縄を訪れ、中国人と沖縄の交流も促進されました。 今後、沖縄と中国との関係を強化するために、どのようなことができるとお考えでしょうか。
 
玉城デニー:データによると、発生前の2019年、沖縄を訪れた外国人観光客は約250万人で、そのうち中国本土からの観光客は61万3700人で、24.6%を占めています。 上海、北京、天津、杭州、南京、重慶の6都市は沖縄に航空路を有しており、中国人観光客のアクセスが容易になっています。 今後、防疫措置が緩和される中で、北京などにある中国在外事務所をフルに活用し、観光やビジネスの相互訪問で培った文化・経済・風土のつながりを活性化し、地域間交流を促進する予定です。
私は過去に2度、中国を訪れたことがあります。 1回目は2011年でした。 衆議院議員として、経済交流を目的に議員団で中国を訪問し、万里の長城などにも足を運びました。 2回目は2019年4月、日本国際貿易振興会のメンバーと中国を訪れました。 2018年に初めて沖縄県知事になってから、初めてアジアの都市を訪れたのが北京でした。 沖縄と中国各地との経済交流をさらに進めるにはどうしたらいいか、中国の政府関係者や経済界の方々と議論したことを覚えています。 今年は沖縄県福建省の友好提携25周年にあたりますが、残念ながら私は福建省を訪問することができませんでした。 今後、福建省を訪れる機会があれば、沖縄と深いつながりのある福建省の歴史や文化、美しい自然に触れてみたいと思っています。
 
環球時報:先ほどのお話にもありましたが、沖縄県福建省は今年で友好提携25周年を迎えます。 実際、沖縄のいくつかの都市も、福州や厦門泉州と友好都市関係を結んでいる。 今後、中国の他の省や都市と姉妹提携を結ぶ予定はありますか? 
 
玉城デニー:沖縄と福建省は、琉球王朝時代から600年以上にわたって交流があります。 この間、文化、経済、人と人との交流により、沖縄独自の文化が生まれ、貿易で栄え、「諸国之翼」(「諸国之翼」は琉球王国のことで、「諸国之橋」の名を持つ)と称されるようになったのです。 また、「ブリッジ・オブ・ネイションズ」とも呼ばれている)。 沖縄県福建省は、友好の歴史を踏まえ、1997年に正式に県・省間の友好を締結し、今日まで文化・経済・交流の促進を図ってきました。
沖縄と福建省の友好提携25周年を機に、改めて友好関係の重要性を認識し、沖縄と中国各地に特有の交流をさらに強化していく所存です。 他の中国都市との友好関係締結の予定はありませんが、中国での海外事務所開設を機に、両者の友好交流をさらに進めていきたいと思います。
 
"戦争は二度と起こしてはならない"
環球時報: 日本政府が「台湾に何かあれば、日本に何かある」と言う中、沖縄では「沖縄を戦場にするな」などのイベントが行われている。 沖縄の本当の脅威は何なのか? 沖縄の人たちが本当に求めている安全・安心とは?
 
玉城デニー:1945年の沖縄戦は、多くの人々が命を落とし、貴重な歴史的・文化的遺産が破壊された、非常に残酷な戦争でした。 この悲惨な体験から、沖縄県民は平和の尊さを感じ、世界の恒久平和を心から願うようになった。 中国国民も戦争で大きな被害を受けましたが、「戦争は二度と起こしてはならない」という考えは両国民が共有していると思います。
すべての県民が豊かで、安全で、安心で、幸せだと感じられる沖縄にしたいです。 この目標を達成するためには、アジア太平洋地域の平和と安定が不可欠です。また、国民の安全と社会の発展が目指すべき目標であり、平和はその実現のための不可欠な条件だと考えています。 この考え方は、どの国でも共通しているのではないでしょうか。
沖縄は、地域の緊張が高まり、不測の事態が発生することを懸念しており、いわゆる「台湾に何かあれば、日本に何かある」ということで、沖縄が軍事攻撃の対象となることを許してはならないのです。 関係者間の冷静かつ平和的な外交対話を通じて信頼関係を構築し、緊張を緩和することが極めて重要だと考えています。 あらゆる機会をとらえて、日本政府に働きかけていきたいと思います。 私たちが平和的な関係を築き、経済、観光、文化、学術の交流を積極的に行い、相互の発展を図ることは、沖縄県民と世界の人々の利益となります。 そして、このインタビューを機に、中国をはじめとする世界各国の読者にも、この考えを伝えていきたいと思います。
 
環球時報:今でも多くの取材で、沖縄の人たちが「差別」「いじめ」「人権侵害」について話しているのを聞きます。 外国人ジャーナリストの立場からすると、「民主主義」を自負する日本で、沖縄の「返還」から50年経った今でもこうした問題に直面し、しかもそれが外野が思っている以上に深刻だとは思ってもみなかった。 これについてはどう思われますか?
 
玉城デニー:沖縄には、在日米軍専用施設の約70.3%があるばかりでなく、不平等な日米地位協定に起因する問題があります。 在日米軍基地の使用や米軍の地位などを定めた日米地位協定は、1960年以来、改正されていない。 社会情勢が変化し、人権や環境保護への意識が高まる中、日米地位協定は時代の要請や県民のニーズに応えられず、基地管理権や環境汚染などの問題がしばしば批判されるようになった。 米軍基地があることで事件が発生した場合、日米地位協定の制約から国内法が適用できず、自治体の権限も十分に生かせない。 このような状況から発生する差別を「構造的差別」と表現している。 さらに、沖縄の状況や県民の思いが日本国民全体に十分に理解されていないため、沖縄や県民に対する批判や誹謗中傷が行われています。
沖縄県は、日本政府に対し、過重な基地負担の軽減と日米地位協定の抜本的な見直しを引き続き訴えていきます。 また、沖縄が抱える問題を全国に発信し、すべての国民が解決に向けた議論に参加できる機会をつくります。 私たちは、沖縄県民のみならず全人類のために、差別的な発言を許さず、すべての人々の人権を尊重する、調和のとれた共生社会の実現を目指します。



■お布施用ページ

note.com

2000年夏のコミックマーケット58 西館シャッター前における群衆事故について

 なんか上記が軽くバズったのでもう少し丁寧に事実に近づいてみましょっという記事。この話がなぜ今頃話題になったのかは割愛しますが*1、そもそもこの話、今ではもはや5ch(旧2ch)の過去ログくらいしか情報が残っておらず、まともな情報が残っていない状態と言えます。本記事においても事実と言えるところと「おそらく」事実と言える「かもしれない」という所で切り分けますが、事程左様にコミケ58における群衆事故はちゃんとした検証は行われてはいないという印象を受けます。

西館シャッター事故の概要

 まず西館シャッター事故についてですが、これは2000年8月13日(日)のコミケで発生した群衆事故(将棋倒し)です。この事故についてはその流れがわかりやすく書いてある書き込みがあるので、それを引用します。

23 :名無しさん@どーでもいいことだが。:03/06/04 23:38 ID:4fyrAAiP
【西館シャッター前事件】
平成12年のC58にみつみ美里のサークルスペース前で起こった大惨事。
買い専の身勝手さを世に知らしめた事件であった。
 
当時の状況の概略は
7:30 西館内シャッター前に行列が出来始める。
8:30 このころからスタッフが蹴散らしにかかるが効果なし。(この時点でおよそ500名)
9:20 行列が西1館からはみ出てアトリウムへ流れ出したため行列を分断。
同  シャッター前には・シャッター正面列、南北外周からの大手を目指す行列が3方向からできていた。
9:45 西1海側中央シャッター開く。
   この際、3つの行列が一つのシャッターに殺到したため人の流れが錯綜し、さらに
   折からの雨で床が滑りやすくなっていたこともあり10名ほどが転倒し、将棋倒しとなった模様
   その際後続の参加者に踏まれるなどして負傷者3名発生(脳震盪、骨折?)。救急車で搬送。
   (シャッター前中1名、シャッター前外2名)
   さらに参加者群は強引に開放途中のシャッターに強行突入を続け、その際左右のサークル
   スペースの机がバタバタと倒され、多大な被害を残していった。
   (西あ29.30付近が被害甚大)
直後 シャッター前行列が通ったあとにはタオルや筆記用具、財布、ペットボトル、負傷者等が散乱していた
10:00 コミックマーケット3日目開始
 
直後の本人のHPの日記で周囲のサークル対しての謝罪と買い専に対する怒りが書かれた。
そして、2chではみつみ擁護、叩きで該当スレは大荒れだった。これを機に葉鍵板のみつみスレは (羊)、
ここ、同人コミケ板は(狼)と称されるようになった。
2ちゃんねる同人用語辞典辞書

上記は2003年のスレッドに書かれていたもので、事故から約3年たってから書かれたものですが、2000年当時にあった複数の(自称)目撃者などの書き込みなどを見る限り、そう大きな外れはなさそうです。
 簡単にまとめて事故の概要を示すとしたならば、台風の影響により雨が降っていたこと、超大手サークルを目当てにした大人数の行列が出来たことによりシャッターが開いた後の人の動きの中で、雨で滑って一部が転び、そしてその転んだ人間が踏まれたという流れです。雨で滑って転んだことが原因と考えると、いわゆるぎゅうぎゅう詰めの「将棋倒し」とは違う印象もあり、その面で今回の話をされている経験者の中には「将棋倒し」というほどではないという方もいました。なので、この記事でも「将棋倒し」とタイトルでは書いてないのですが、ただ群衆が集まったことにより発生した事故ではあることからこの事故自体が群衆事故(将棋倒し)であることには間違いはないかなと。
 ちなみにこの事故そのものの存在を疑問視する人は流石にいないでしょうが、一応当時この大行列の目当てになったサークルは「おわびとおねがい」を出して、以下のような文を書いています。

買う為に並んだ参加者の方々へ
今回はホントに色々ありました。とにかく走らない、押さない、自分勝手なことをしない、この位は最低限守らなくては駄目です!勝手に非常口から入った人とか、 人のサークルを無断で通ったり(あまつさえ人のものを踏んだり!)、どうみてもやってはいけないでしょう?怪我人がでたりするのは、”俺ぐらい走ったって”と走る人とか、おしたりとかする人がいるからです。

以上の事から事故そのものを否定することはあり得ません。さすがにそんな人は少数派だとは思いますが……。

当時の書き込み

 怒りを感じるという意味では当時被害にあったサークルの日記の文章がかなりそれをあらわにしています。

それに列の中に転んだのか、後から押しかかる群集に踏まれて1人が脳震盪、1人がどうも骨折らしい。しかしそんなバカはどうでもいい。シャッターの外にいた女の子がそれに巻き込まれて怪我をしたらしい。
おめぇらバカなんじゃないの?
じゃなくバカ。
生身の女の子より2次元の女の子の方がいいわけだな。

ただ、この文章を見ればわかるように人的被害については「~らしい」となっており、引用はしていませんが群衆事故の瞬間自体にはこの人自身は席を離れており、事故の瞬間そのものを目撃しているわけではありません。
 で、次は2chの書き込みですが、この事故が起こった当日の8月13日は同人板が落ちているという……。なので、同人ノウハウ板と葉鍵板に散発的に書き込みがなされています。そしておそらく一番最初の書き込みは同人ノウハウ板の以下の内容と思われます。

12 :名無しさん:2000/08/13(日) 16:53
今日の西館のシャッターが開いたとき
将棋倒しがおきてました。
担架もきてたし結構やばそうでした。
コミケ3日間がおわって感想スレッド(ネタ含む)

事件発生が10時前であり、この書き込み時間が16:53なあたりに、外に行ったらネットの手段がかなり少なかった2000年当時を思わせますが、それは置いといて。そしてこれに反応している目撃談はいくつかあり、例えば以下の書き込み。

22 :カッタにお使いに出された:2000/08/14(月) 00:37
不幸な友人が
「倒れて動かない人がいたよ・・・」
とか言ってたのってまじねたなんですね。
あと、人間土石流に巻きこまれて
靴片方なくして泣いてる女の子もいたとか。
 
・・・人死にが出てからじゃ、絶対遅いと思うんだけどな・・・

というように参加者の中で噂になるくらいの出来事であったことが理解できます。そして葉鍵板の方では事故の詳細を書き始める人が出てきます。

19 :西館の混対:2000/08/14(月) 16:27
(略)
そして午前9時40分過ぎ、普通はシャッター周りにいるスタッフが、並
んでいる人間に対して、「これからシャッターを開けますが~」という
例のパフォーマンスをやらなければいけないところを、全く行わず、し
かも列の周りにほとんど列抑えのためのスタッフも配置せず、いきなり
シャッターを開放!当然、欲望の野獣の群は強引に開放途中のシャッタ
ーに強行突入し、まず、メイン通路の列が爆発。左右のサークルスペー
スの机がバタバタと倒され、次いでシャッターの真下の真ん中付近で、
約10名におよぶ将棋倒しが発生!スタッフ数名が将棋倒しになった人間
を助けようとはしたが既に後の祭りで、暴走が始まった列をくい止める
ことはできずじまい・・・更に、323の列形成を予告無しに、スペース
がある位置とは反対方向に形成したことで、混乱に拍車をかけ、あたり
騒然とした雰囲気に・・・はっきり言って、あれだけお粗末な対応をし
コミケットの混対スタッフ連中を私は見たことがありません。
 
おまけに、一般入場が始まって第2波の参加者列が入口からシャッター
へ向けて猛烈にダッシュしてきても、スタッフはヒステリー声で端から
叫ぶだけ・・・しばらくして、ようやく1名のスタッフが身を呈して列
の真ん中に突っ込み、両手を広げて列を制止し、ようやくいくらか勢い
が緩和されたという・・・前代まれにみる素晴らし過ぎる対応でした>
西館の混対スタッフ
コミケの戦果を語ってくれ!

暴言&暴行に関する書き込み

 さて、今回のこの西館シャッター前事故においてはこの事故以外にも倒れている人間に対して「邪魔だから(面白いから)踏んじゃえ」的な暴言が発せられたという証言があります。今回、ツイッターで話題が派生する中でも「私が直接耳にしたもの」というツイートがあります。


https://twitter.com/kotoreimaichilo/status/1587211990455369728

ただこの加害的暴言に関しては事故当初の書き込みでは見られず、同人板復活後の8月16日(水)あたりから見受けられるようになります。それが目撃談と共に語られている書き込みが以下のものです。

142 :実録補足:2000/08/16(水) 16:59
女子トイレ前より。
 
西館2、9時半過ぎ。
シャッターの前はT字路状態。
3方向に男の群れ。
「シャッターあけ…」というスタッフらしき声、
殆どいきなり開くシャッター。(列の後方はほとんど
スタッフの声は聞き取れなかったと思われる)
「うおおおおおおおおおおおおおお」
という、地響きのような男の唸り声、合唱。
「きゃあ」という女の子の悲鳴聞こえるも、一人として
足を止める男無し。
「女並ぶなよ! 邪魔なんだよ!」
確かに聞きました。そういう声。
 
その後私が目にしたのは、コンクリの床に倒された
女の子。服ぼろぼろ、サンダル破壊、体中赤アザだらけ。
彼女は本購入に並んでいたわけでなく、いきなり
シャッターが開いた混乱に巻き込まれてしまっただけの
模様。周囲の人が抱き起こすも、骨折している模様で、
最終的にスタッフが車椅子で運んでいきました。
 
スタッフ無能以前に、最低だ列の奴ら。マジで。
こちら西館シャッター前です

なお、この142の書き込みは「実録補足」と書いていますが、これはこのスレッドの100-102で「転売屋は見た」という人が書いた目撃談です*2。ただしこちらの目撃談には暴言の証言はありません。では、この「実録補足」が書いた暴言が初めての暴言についての書き込みかというとそれは異なり、109の以下の書き込みがこのスレッドでの初めての暴言証言です。ただし。

109 :名無しさん:2000/08/16(水) 11:55
倒れた女の子を「邪魔だふんじゃえ」って・・・サイテイすぎるよ
そんなに2次元の女が大事なのか
こちら西館シャッター前です

上記の書き込みは目撃談ではなく見聞きした情報からであることがわかる文章です。この書き込みに対しては「尾ひれのついた噂」という書き込みもあり、この16日時点で流布し始めた真偽不明の話であることが伺えます。なお「踏んじゃえ」はネタだと思うけど、「どけ」といって蹴りを入れてた人を目撃したという証言も。

258 :>256:2000/08/17(木) 00:08
「邪魔だから踏んじゃえ」はネタだと思うけど、
「邪魔だ、どけ」と、倒れていた人に蹴りを入れていた奴が
いたのは目撃しました。
こちら西館シャッター前です

他にも若干ネタ臭さもある証言*3、半年後のマンガレポートのスレッドでは「女!邪魔だ!どけ!」という証言ありますが、さすがに引用が長くなるので割愛しておきます。
 現状で調べた限りはこの「邪魔~」系の暴言&暴行書き込みの初出は2ch内では見当たらず、2chとは別の場所で書き込まれた可能性があります。ニフティーサーブでも類似の話題が上がり、個人HPのレンタル掲示板サービスでも話題になっていた形跡は2chの書き込みから類推できますので、初出はそちらかもしれません。ただアーカイブすらないのでもはや追跡不可能な気はしますが……。そして暴言内容ですが、実録補足の書き込みと109、258の聞いた暴言内容は違うものの、ニュアンスからは別々の文言というよりも一つの発言の変化形とみなした方が良いと感じます。琴礼真一路氏が聞いたという「面白いから踏んでこうぜ」に関しても加害の意思がより強くなっているとはいえ、全体を見ればニュアンスは類似のものです。すべての発言があった可能性も無きにしも非ずとはいえ、さすがにこれらの発言が全てあったというよりも、一つの発言からの変化形と考えるのが妥当でしょう。ちなみにスレッド内では「面白いから~」という発言証言はありませんが、後述するようにこの文脈での発言を使用している方もいます。

ケガの度合いについての書き込み

 スレッド内で語られるケガの状態はかなり幅があり、脱臼、骨折、開放骨折内臓破裂、果ては死亡説(男性)までありますが、内臓破裂以上のレベルになれば流石にイベント規模などを考えれば報道レベルでしょうし、それ以上は噂&ネタでしょう。開放骨折に関しても実しやかに語っている人間がいますが、正直胡乱です。そして骨折ですが、こちらは骨折箇所にバリエーションがあり、手、鎖骨(鎖骨は折れたけど目当てのものは買えたという書き込みあり)、関節(折れて無ければ逆関節という書き込みあり、肘や膝などのわかりやすい部分か)など、こちらもどれが本当なのか。嘘と噂が混在している状態であり、それは下記の2人の反省会参加者の書き込みからも実感できます。

511 :>462:2000/08/17(木) 21:28
ぼくは大手サークルのお手伝いで参加して、閉会後の撤収も手伝って、反省会にも参加したんですが。
米沢氏は”沢山の話題のうちのひとつ”としてかる~い感じで
「えー、西館の某大手サークル…といえば皆さん察しはつくでしょうが(笑)、そこでちょつとした将棋倒しが有りまして、軽い打撲?が一人?と、擦り傷?が2.3人?(この?の部分は米沢代表が隣の人に聞いて確認している)という事で、念のため救急車も呼んだのですが、大事に至らなくてよかったです」
(以上、記憶している範囲内で可能な限り原文ママ。)
…と、言ってました。まさか、重傷者が出ていたなんて思いもしませんでした。報告の最中も普通に微笑をたたえたままで、真摯な態度には見えませんでした。
 >軽い打撲?が一人?と、擦り傷?が2.3人?
 >(この?の部分は米沢代表が隣の人に聞いて確認している)
上記のような様子なので、閉会時に米沢氏が事件を正確に把握していたのかどうかもあやしいかもしれません。「重傷者発生」の情報は、もしかして”西館の区長”のところで全部にぎりつぶされてたりして?
こちら西館シャッター前です

 

23 :飲料部支配人:2000/08/19(土) 03:45
>19さん
それいおうと思ってたところ。
反省会のときに代表が脳震盪と脳挫傷をごっちゃにしてるようにも
聞き取れたような気
もするので、率直なところ非常に知りたい。
ちなみにスタッフでしたが今のところ連絡等はこの件についてはありません。
西館シャッター前事件 その2

双方ともに反省会に参加したようですが、511は軽い打撲と擦り傷、方や飲料部支配人によれば脳震盪系の話をしているように見受けられます。どちらかが嘘を言っているのか、もしくは聞き取りする人間の情報の取捨選択故にこうなっているかは中々判断が難しいです。だたし、双方ともに共通するのは「骨折」という単語を使用していないことから当時の反省会で「骨折」という単語は使用されていない可能性はそれなりに高いと考えていいかもしれません。

コミックマーケットカタログ59における事件の振り返り

 まあ、さんざん胡乱な2ch書き込みなどをもとにダラダラと文章を重ねてきたわけですが、この件についてはコミックマーケットカタログ59でC58の振り返りとして触れられています。まず準備会による振り返りでは次のように記述されています。

三日目は、西ホール1Fにおいて人気サークルの列に向かう参加者の波が一部崩れ、数人が点灯するトラブルが起きた。大事をとって、救急車で二人が運ばれたが、打ち身程度の軽傷だったと報告されている。病院に運ばれた参加者も午後には会場に戻ってきていたということのようだ。雨風のために、シャッター口を開場時前に閉鎖していたこと、雨ですべりやすくなっていたことなど、原因はいくつか考えられるが、準備会では二度とこうした混乱が起きないように、体制、布陣の見直しが検討された。
 こうした出来事が、確認されないまま、噂やデマとなって流れていくことの問題も発生しているコミケットの主催者側による発表やアフターレポート的な記事を掲載してくことになった。また、コミケットの公式ホームページにも、コミケット終了後、1週間ほどの間に、アフターレポートを掲示するようにしていくつもりだ。
コミックマーケットカタログ59 「準備会からの夏コミレポート」

注目すべき点はケガが軽傷である事、そして噂、デマが流れてそれを問題していることでしょう。ただその反面、何が「噂、デマ」であるかの指摘がなく、事故の詳細についてもいまいちわからないという内容面には若干の物足りなさがあります。ちなみにここで書かれているアフターレポートについては59からではなく60から開始されており、以後それが続いていきます。
 そして次はカタログに掲載されているコミケ58のマンガレポートですが、準備会のレポートで「噂やデマとなって流れていくことの問題も発生」と書かれていることから、少なくともこのレポートで描かれていることはある程度の事実性が担保されていると判断はできるでしょう。

基本は人が雪崩の様に来て大変だったというレポートですが、注目すべきは最後の3つ*4

特に左端は「友人(性別不明)」が被害に踏みつけられて病院に行ったというレポートであり、また真ん中も伝聞調ではない目撃証言でありこの二つは事実と考えていいでしょう。つまりは、やはり倒れた人間が踏みつけられ、そして巻き込まれた女性がいる。この二者が同一人物までかは不明ですが、それはともかくとして「人なだれ」と表現する様な人がおり、雨という環境要因はあったとしても群衆事故は起きていたといえます。そして一番右端ですが、「面白いから押してやろうぜ」、「面白いからふんでやろうぜ」という暴言が書かれています。ただし文体からは本人が聞いたというよりも流布している暴言を使用したという感もあります。2chなどで流布していたのが「邪魔」というキーワードで共通していたことを考えると若干不思議な感はあり、これが実際にあったのかの判断は難しい……。なお、このレポートを書いた「さわがに亭」に関してはどうにも当時HPを持っていた模様であり、とあるHPのリンク集にそれっぽいHPがあるのだけれど、当然ながら現在はお亡くなりになっており、アーカイブにおいても保存されているがないために漁ることは不可能。ただ準備会が「噂」などを問題視しているという表明をしたうえで、この暴言についてのレポートを載せたという事は準備会としてもそれをある程度の事実性のあるものとして捉えているとは考えられます。なので、暴言の詳細な内容はわからないものの倒れていた人間(おそらく女性)に対して、何らかの暴言に近い事を発言した人間はいたと考えてもいい「かも」しれません。

 インターネット発達時期であり、SNSがなく、動画も写真も気軽に撮れない時代、そして00年代前半にあった数多のHPやサービスが文字通り死んだ現在、探れるのはここら辺が限界かなと。群衆事故は起きた、ケガに関しては骨折までの可能性は低く軽傷で済んだ、暴言はおそらくあった。あと、2chに限らず伝聞は形を変えやすいし、その中には嘘を言う人間もいる。これは今も変わらない。



■お布施用ページ

note.com

*1:発端ツイートはこちらhttps://twitter.com/May_Roma/status/1586885012141522945、指摘ツイートはこちらhttps://twitter.com/bottikurihu/status/1586996852477476864

*2:この名前が指し示すように、ヤフオクではこの後数万円でこのサークルの本が出品されていた模様。

*3:「邪魔だ、くんなテメェ(確かこう)」

*4:「こどもぎんこう」のレポートは女性の被害が伝聞調なので除外。というか、この方は「当時の書き込み」で個人HPで怒っていた方です。

産経新聞と夕刊フジによる武蔵野市の松下市長の「住民投票条例の再提出」記事は解釈違いでは


https://twitter.com/yukanfuji_hodo/status/1588370382096322560

 以前、「武蔵野市の外国人も投票権を持つ住民投票条例案におけるツイッターでのバッシングの流れ」を書いた手前、一応メモがてらに。上記の夕刊フジの記事に対して松下市長が捏造だとツイートしてました。


https://twitter.com/matsushitareiko/status/1588532489555148801

ただ、この夕刊フジ自体の記事は産経新聞からのネタの流用でしょう。それが以下の記事。

住民投票条例再提出へ 松下市長がシンポで意向表明 東京・武蔵野市
東京都武蔵野市の松下玲子市長は3日、市内で開かれたシンポジウムで「住民投票条例を定めたい」と述べ、令和3年12月に市議会本会議で否決された同条例案について、再提出する意向を表明した。提出時期は明言しなかった。今年2月の記者会見では「論点を整理して検討する」として、再提出を当面見送る考えを示していた。

ところで、この記事だと産経新聞が取材したのだと思ったら、産経新聞も取材の申し込みはなかったという。


https://twitter.com/matsushitareiko/status/1588543049860550656

これが真ならば少なくとも産経新聞はダマで取材をしたのか、どこからか情報を得て書いたことになりますが、そこは産経の内部の者しかわからないので置いておきます。なお、産経記事がアップされる前には以下の様に「再提出をする」と言ったというツイートも存在。


https://twitter.com/96455681/status/1588108113764175875

なので、少なくともそういう「解釈」が出来る発言自体はしたのでしょう。それは松下氏の以下のツイートからも察せられます。


https://twitter.com/matsushitareiko/status/1588531543357939712

武蔵野市自治基本条例第19条には住民投票の実施を規定し、住民投票の必要な事項は別に条例で定めるとしています

そもそも自治基本条例が既にあり、そして19条により実施規定が必要で、その為に住民投票条例を定める必要があるというものです。現在はこの住民投票条例がないために(外国人の投票権有無は置いといて)いつか制定しなければならないものです。


11月3日のシンポジウムのパンフレットより

この類の発言の中で「再度提出」なのか「定めたい」なのかは分かりませんが、そういった言い回しが使用され、参加者のツイートや産経の様な記事が出来たと思われます。なので松下氏と反対派との間で解釈の齟齬が生じている様に見受けられます。この解釈の違いはたぶん埋まらないでしょうから、どうしようもなさそう。手っ取り早いのは動画がアップロードされる事なんですけど、動画がアップされても埋まらなそうな溝でもある。
 ところで話は変わりますが、youtubeの影響力も今や侮れないだろうなあっと。

youtube動画は右派系が多い。



■お布施用ページ

note.com

保守系ツイッターデモ仕掛け集団「Team.DOJ(Defence of Japan)」に関するメモ

 10月23日のツイッターで「#外国人に土地を売らないで」というハッシュタグがトレンドになっていて、それは良いのですが(?)これを仕掛けているのがおそらく「Team.DOJ(Defence of Japan)」という集団だったので、該当集団についてのメモです。

 ツイッターでは右派、左派に限らずにツイッターデモが定期、非定期に限らず時折行われているのですが、その中で定期的に保守系ツイッターデモを行う集団があります。それが「Team.DOJ(Defence of Japan)」(以下DOJと表記)です。例えば今回の「#外国人に土地を売らないで」というツイッターデモの発端は以下のツイートが発端であり、これを仕掛けているのはDOJの発起人であるFUKUDA MAKOTO氏(【DOJ🛡No.0001】)によるものです。「#外国人に土地を売らないで」というハッシュタグ自体は以前からあったのですが、これを氏が以下の様な経緯でツイッターデモへと発展させます。


https://twitter.com/8ueBd6tf29iYRpZ/status/1582936166067994625


https://twitter.com/8ueBd6tf29iYRpZ/status/1583427824069013504

このようにアンケートを用いて何のツイデモを仕掛けたいのかの結果としてデモの対象を決めています。排外主義的といえる「外国人に~」と「マイナカード反対の~」が多くて、「日本の未来を~」がダントツで投票数が少ないのは彼の世界観を表しているなとか、あとフォローバック運用なのか氏のフォロワー6万を考えると約1000票の投票というのは少し微妙というか、他の右派系インフルエンサーと比較すれば物足りない数字に見えなくもないですが、それはひとまず置いといて。まあ、そんなこんなでツイデモが行われたわけです。ちなみに長渕剛の影響も大きかったかなと。


https://twitter.com/8ueBd6tf29iYRpZ/status/1583790412971806720

「Team.DOJ(Defence of Japan)」って何

 ツイデモ自体は別に問題も何もないのですが、それはともかくとしてこの「Team.DOJ(Defence of Japan)」ってなんじゃらほいと。まず立ち上げ者は先ほどのFUKUDA MAKOTO氏とEIoṉ̲ Muⱪʂ氏です。立ち上げ時期は2020年1月頭で、それを思わせるツイートが2020年1月2日にされています*1。何故このような集団を作ろうと思ったのかは後述しますが、それはともかく今現在のDOJとは以下の目的を有しています。


https://twitter.com/8ueBd6tf29iYRpZ/status/1583834291267854340

ただこれだけだとよくわかりません。なので公式HPを参照しましょう。

Team.DOJ (Defence of Japan)の意義
私たちTeam.DOJは、他のTwitterとは違い『目的』を持ってTwitter発信をしております。
つまり『呟く』を否定するのではなく、『単なる呟くだけ』に終始せず、 Team.DOJの6つ目的に沿い、一丸となり、国益第一の為、国家の体制を守る時には守り、改革が必要な時には改革に賛同し、我が国が、我が国らしく、未来ある子供たちに誇れる国にしていく集まりです!
加えて、単なるインフルエンサー(有名人)に群がるTwitter民ではなく、有名人ではない、また著名人でもない一般国民の本当の声を政治家や政治全般に届けていく為の集まりでもあります。
決して、インフルエンサー(有名人)を否定しているのではなく、本当の声は日々汗水垂らし働いておられる方々や専業、兼業主婦・主夫の方々など、一般国民でなければならないという意味です。
(略)
また、全国津々浦々までTwitterで繋がり、国政だけではなく、身近な地方自治体の選挙やリコール、或いは住民投票国民投票など、課題や問題のある政治行政に対し、まさに一般国民が主権者である事を知らしめる為結集し、一致団結します!
世界では政治団体、その他の組織団体ではなく、今や純粋にTwitter民の力で拡散し、政治を変えている事はすでに常識化しています!
(略)
だからこそチャンスと捉え、私たちは多少の齟齬はあっても細かい事に執着せず、他の考えも尊重し合い、本来、脈々と受け継がれてきた日本人のアイデンティティである『和を以て貴しとなす』を、実現し、結集する事で他にはない大きな影響力を持つ集まりです!

むちゃくちゃ簡単に書くとツイッターで草の根活動しましょうということですかね。ちなみにDOJのいう「六つの目的」は、

国民国家の為の政治を取り戻そう
憲法を国民の手に取り戻そう
・国防の誇りを取り戻そう
・子供たちに誇れる日本を取り戻そう
・教育を取り戻そう
・仲間を取り戻そう

以上の6つですが、「仲間を取り戻そう 」以外の5つは基本的には従来のネット保守層の主張とそう相違はありません。特徴的なのがこの「仲間を取り戻そう」というので、字面からすると拉致被害者奪還かなと思わなくもないですが、実際は以下の様なもの。

昨今は左派・左翼による凍結祭り等でアカウントが凍結される事例が多くあります。
また左派・左翼といったイデオロギーによらず凍結させる事を目的とした愉快犯も多く見られます。
禁止ワードを使っていないにも関らず凍結されるといた事例もありました。
心当たりの無い凍結はスパム通報による物と考えられます。
その場合の対抗処置としては、フォロワー数を増やす事で、凍結の危険性を減らせます。
何故なら、フォロワー数の約1.5倍の利用者からのスパム通報が無ければ凍結されないといった情報を元にしています。
その為の相互フォローによる凍結対策がTeam.DOJは、最も有効と考えています。
また相互フォローによる関係性の強化で、もし凍結されても誰かが気付く又はサブアカウントにて誰かに相談できる環境を作っておく事で、直ぐに戻ってこられる体制を構築する事が重要です。

アカウント凍結に際してDOJ内で相互フォローをしていれば凍結しにくい、もしくはその際にも相談ができやすいのではという発想の様であり、他の目的と比べれば日本云々ではなく対ツイッターの話です。実はこの凍結対策というのがTeam.DOJに入会する特典の様で、それはDOJ自体がそういう趣旨の事を記述しています。


※特典自体は8つまでありますが、以下略で。

実際、この「凍結」のしづらさに関しては本当かどうかわかりませんが。ただ、おそらくですがこの凍結対策自体がこのDOJという集団が立ち上げられた理由です。それは立ち上げをした両者の以下のツイートからうかがえます。


https://twitter.com/TakashitoAi/status/1212676329314799617


https://twitter.com/8ueBd6tf29iYRpZ/status/1213649791483170816

このように両者とも当初は凍結対策を念頭に置いてフォロワーを求めています。これが後に明確なチーム化することによって別の目的を携えてちゃんとした(?)集団になったのでしょう。HP自体は2021年4月ごろですし、組織っぽくなったのはもう少しタイムラグがあるようです*2

 さてこんなDOJですが、入会者に関して簡単に見分けがつく方法があります。それがアカウント名に書いてある「【DOJ🛡No.0000】」という部分です。ただ全員が全員この作法に沿っているわけではなく、実際に「DOJ🛡No.0000」は260台くらいは確認できますが、その付近の数字を適当検索してもヒットしない場合があり、自分がDOJと明示していな会員もいると考えられます。退会者もいる可能性はありますが、このNo自体をうのみにするならば250人近くはいることになります。またツイデモ対象アンケートの方は大体1000票近辺。ツイデモを行う際にこのうちの数割でもアクティブに動くならば、他の層に波及することは不可能でもない数字と思われます。

で、実際のところ彼のDOJのツイデモが影響力を持っているかですが、HPでは2021年にトレンド化したタグという動画を挙げています。

【2020年にDOJ発のツイデモでトレンド化したハッシュタグ(一部抜粋)】
・国防責務放棄の反日立憲共産党
・静岡知事選で自民岩井候補を応援しよう
・この際だ膿を出しきれ自民党
・国会議員の靖国参拝は当たり前
・海外の日本人救出のため憲法改正が不可欠
高市早苗さんを総理大臣に
・マスコミのデタラメさがバレてきた
・悪夢の民主党政権を思い出せ
政権交代国家の破壊
・外国人住民投票権を許さない
・岸田内閣早期退陣
etc

以上の様にわかりやすくネットにおける保守系の動きであり、また自民党(岸田、二階)などに厳しく高市早苗などの自民党内の極右系を推していることがわかります。上記のハッシュタグを広めたのは何もDOJだけではなく保守系インフルエンサーの存在や、自民党系の時には左派系も関わっているでしょうが、これらのハッシュタグがDOJによるものである場合、その影響力はわりかし無視できないかもしれません。また、DOJは土曜日に定期的(時期にもよるが毎週に近い?)にツイデモを開催しており、その継続性による影響は馬鹿にできません。今後、もしそういうハッシュタグを土曜に見かけたら、そういう事なのかもしれません。
 これらの動きは草の根民主主義と言えますが、花を咲かすとやばい価値の草の根かな。彼らはこういうことにマメだ。



■お布施用ページ

note.com

*1:何故か一番最初のツイートはDOJではなくDOFとなっている。ただDOF(Defence of Japan)とあるので、単純にDOFが間違いと思われる

*2:詳しく調べればわかるのでしょうが、めんどうくさいので割愛します。

「北海道トマム地区の住民の50%が外国人」っていう話について


https://twitter.com/CYXuAxfGlfFzZCT/status/1580122079529082881

 めんどくさいけど、今後こういう情報が流布して育っていく可能性もあるから書いとく。まず、闇のくまさんのソースは時期的に週刊新潮の以下の記事でしょう。アノニマスポストの可能性もありますが、結局は新潮の記事なので。

長渕剛の「土地を外国人に売らないで」発言の背景にある「北海道の中国化」
国土買収が進むこうしたエリアでは外国人従業員が増え、ガバナンスへの波及も無視できなくなっています。トマム地区の外国人比率は、50.5%(2019年7月末)。とうとう半数を超えました。地元の女性と結婚するなど、何組かのカップルも誕生しています。

ということで、この外国人比率は2019年7月末の話です。ちなみに既にですがクマさんの時点で「ほとんどが中国人」とは言っているものの、直接的に「外国人」を「中国人」に脳内変換してるツイートも見られたり。


https://twitter.com/nonnonchacha_S/status/1580177680254717952

これは、まあデマです。
 で、この外国人人口ですが、トマム地区限定のものはありませんが、占冠村全体での人口は外国人を含めてその数の推移を月ごとに発行される「広報しむかっぷ」で確認可能です。そして2018年ごろからの各月の村全体の人口、トマム地区の人口、村全体の外国人人口の推移は以下の通りです。

まず見ればわかることは外国人の人口変動が村の人口変動に直結するほどに村の人口が少なく(2022年8月末の時点で日本人のみの人口は1082人)、また日本人の流入が少ないことが伺えます。そして外国人の人口推移とトマム地区の人口推移も連動しており、基本的には外国人転入者≒トマム地区への移住者と考えてよいでしょう。また外国人人口はシーズン毎の変動が激しく、このことから大半の外国人はリゾート地に関わる季節限定の労働者の様なものであると考えられます。しかしそれも2020年2月からのコロナ禍による入国者激減の影響が顕著に表れており、それ以降はほぼほぼ平坦な推移となっています。大体、コロナ禍前の底の数値やコロナ禍後の数値を考えるとその底の値は150~170人近辺と思われます。ただ2022年5月末の外国人人口は114人という事もあり「定住者」という意味では100人程度かもしれません。
 そして割合ですが、占冠村の外国人人口の大半がトマム地区に住んでいると仮定した粗い数値を出すと次のようになります。

シーズンによっては6割を超えているであろう時期もありますが、それは瞬間的な割合であって、常にいる外国人の数で言えば3割から4割という事でしょう。そういう意味では「北海道トマム地区の住民の50%が外国人」は現時点では過去の話ではあります。「デマ」、と言えなくもないですが、完全な嘘とも言い切れません。あと、この3割という値でも大問題だと言い出すでしょうし。
 次に外国人の国籍内訳ですがこれは在留外国人統計により半年ごとの記録が確認可能です。それによれば占冠村の2021年12月末の在留外国人内訳は以下の通り。

占冠村における在留外国人(2021年12月末) ※在留外国人統計より】
総数     163
その他    45
ネパール   25
台湾     23
中国     19
フィリピン  15
インドネシア 14
韓国     12
タイ     5
米国     4
ベトナム   1

これを見る限り突出して多い国というのはなく、東~東南アジア地域の数か国から15~25人程度が来ていることがわかります。あと、「その他」って何処だよって感じではありますが、令和3年第7回占冠村村議会で村長は「令和3年11月末現在の外国人登録者数は28か国147人」と答弁しており、内訳はわからないもののそれなりの国の数が「その他」に含まれていると思われます。ちなみにコロナ禍前の外国人口が500人を超えていた時期である2019年12月末の数字は次のようになります。

占冠村における在留外国人(2021年12月末) ※在留外国人統計より】
総数     547
台湾     185
その他    163
中国     57
韓国     37
ネパール   35
タイ     20
インドネシア 19
フィリピン  15
ベトナム   10
ブラジル   4
米国     2

この数値を見る限りは観光客シーズンに多く補充(?)されるのは台湾ということになる模様です。さあ、お次は在留資格

占冠村における在留外国人の在留資格(2021年12月末) ※在留外国人統計より】
総数           163
技術・人文知識・国際業務 55
技能           38
企業内転勤        23
特定活動         18
家族滞在         16
技能実習2号ロ      6
教育           2
永住者          2
日本人の配偶者等     2
特別永住者        1

これだけだと中々判断が難しいところはありますが、大半はトマム地区内での仕事で、という印象はありますね。ただ、正直よくわかりません。

 以上、トマム地区というよりも占冠村全体で見ていきましたが、過去にその数字は本当ではあったが、現状においては3割程度になっている、という所ですね。北海道は沖縄と同じくこういう扇情系の話が多く、例えばこのブログでも過去に「【デマ】帯広市において、「中国人は市営住宅を占拠してない」 - 電脳塵芥」だとかでちょっと扱いましたが……。今回の「北海道トマム地区の住民の50%が外国人」に関して言えば「かつて」は事実であったものの今現在はそうでもないという所ではあります。ただ、今回はコロナによる入国制限などが緩和されて中国人観光客などが増えればまた外国人住民そのものは増えはする可能性はあるので、やがてはまた「本当」になることはあると考えます。これは今や日本が相対的な競争に敗れ、安い国になり、観光に適した国になったという事でもあり、それこそ安倍政権からの「観光立国」の成果ともいえるんじゃないかなと。あと現状、やはり「従業員」的な性格の外国人が多くて「侵略~」的な言説には向きませんし、また在留外国人も一つの国に偏っているわけではなく、例えば一部の人が懸念しているような「中国人に~」的なのは今の段階では妄想の域と言わざるを得ません。住んでいる外国人も季節に左右される腰を据えない在留者が多いように見受けられますし。
 ちなみに令和3年の占冠村村議会では外国人居住者に対するサポートをどうするかなどが話し合われている様で、外野が「外国人の住民が50%!」みたいな煽りをしているのは下品だなあと。



■お布施用ページ

note.com

三浦知良が国歌斉唱について、朝日新聞記者とやり取りした話が胡散臭い


https://twitter.com/etc_tokyo/status/1579918788828725249

 なんか見た瞬間にちょっと胡散臭いな~、とか思ってたんで。手っ取り早くこの話のインターネットでの初発を見ていきましょう。

2ch
2014年05月20日

https://nozomi.5ch.net/test/read.cgi/shop/1388756386/904

ツイッター
2013年1月24日

2013年1月30日以前の書き込み

【ブログ】
2012年08月28日

やまとのニュース日記

目立つところを見ていくと2012年の「やまとのニュース日記」というのがインターネットにおけるこの情報の初発のように見受けられます。また、ツイッターに貼ってあるリンクの中には「やまとのニュース日記」につながることからもこの情報の出処はほぼほぼこのブログと考えていいでしょう。ただし「やまとのニュース日記」に出典は書かれていません。また、このブログはカズの写真の後に以下の様な写真も添付しており、このブログ主が意図しているとこは明白なのかなと。

朝日新聞における「三浦知良」と「国歌」に関する記事

 では、朝日新聞三浦知良と国歌を関連付けた記事があるかというと、1件だけあります。それが1997年10月27日の以下の記事です。

国立、落胆 引き分けホイッスル サッカーW杯アジア最終予選(1994.10.27 朝刊)
君が代
 午後7時 UAEの国歌に次いで、君が代。髪をびっしょり汗でぬらした三浦知良選手が、胸に手をあてる。スタンドにいる若い女の子も胸に手を当てて、大声で歌う。

この記事は26日行われた日本対UAEについて、時系列的な流れを説明した記事であり、その中でカズが国歌を歌ったという話を挟んでいるだけの記事です。これ以外に三浦知良と国家を直接関連でづけた記事は見当たらず、当然これは日韓戦でもありません。
 カズの国歌への姿勢に関しては写真を見ても明らかなように胸を当てて国歌を歌っており、その姿勢を評価する声はあるようですが*1、しかしながら少なくとも朝日新聞の紙上においていま流布されている様なインタビューのやり取りは一切ありません。あと私個人の感覚的なことですが、このやり取りの「朝日新聞記者」の質問に何とも言えなく嘘くささを感じてしまったりします。ただ勿論、紙上に載っていないだけの可能性はありますが、だがしかしその場合はなぜ2012年というかなり遅れた時期にこの話が、それも出典なしに広がっていることを考えると、正直このやり取りはかなり胡散臭いですし、「やまとのニュース日記」というブログの創作に思えてしまいます。他の転載されている話にも出典や、この話を聞いたという話も出ていないようですし。

元ネタ?

 ところで、このカズの

「自分の国の国旗や国歌に敬意を表さない人が、他国に対して敬意を表する事ができますか?」

という文章と類似した文章があります。それが以下の様なものです。

「他国の国旗・国歌に敬意もつ国際常識を身につけるため、まず自国の国歌・国旗に敬意持つべき」

ほぼほぼ意味は同じといえるでしょう。この文面がなんであるかというと、卒業式の国歌斉唱の際に起立しなかった事を理由にして退職後に嘱託教員として雇用されなかった事を訴えた裁判について、2011年5月30日に出た判決を書いた産経新聞の記事「「国際常識を身につけるため、国旗、国歌に敬意を」 国歌斉唱時の起立命令は合憲 最高裁が初判断」が出典です。ここでは以下の様に裁判官の言葉を紹介しています。

竹内行夫裁判官は「他国の国旗、国歌に対して敬意をもって接するという国際常識を身に付けるためにも、まず自分の国の国旗、国歌に対する敬意が必要」

この発言が2chでスレッドが建つ際に若干変化し「【君が代裁判】 裁判官 「他国の国旗・国歌に敬意もつ国際常識を身につけるため、まず自国の国歌・国旗に敬意持つべき」」となります。この文言が今のカズの言葉に変換されたかどうかまでは断言できませんが、これ以前にカズの発言としては存在しなかった事や文章そのものの類似性は指摘できます。またこの裁判官の発言からカズの言葉までの時間差は1年以上ありますが、「やまとのニュース日記」が書かれる2012年8月前となる7月にはインターネットアーカイブで該当記事の保存が目立っていることから、一部でこの記事が話題になっていた可能性があります。


https://web.archive.org/web/20120701000000*/https://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110530/trl11053017440005-n1.htm

残念ながら、なぜこの時期に保存が複数回行われているのかまでは確認できませんでしたが、可能性としてはここら辺の時期に「やまとのニュース日記」の管理者が見て捜索した可能性もあるのかなと。あくまでも可能性ではありますが。

バズった時期

 次にバズった時期ですが、これはほぼほぼ特定できます。それは2014年10月の以下のツイート。


https://twitter.com/FIFI_Egypt/status/525550622339104768

フィフィ氏あたりの影響は大きかったのかなと。彼女がどこでこのネタを仕入れたのかまでは判断しようがないですが、2015年4月にもまた同じツイートをしてバズります。


https://twitter.com/FIFI_Egypt/status/587152001584074752

そしてnaverまとめブログで流布するようになり、時折ツイートがバズる様になります。以下、4桁RT越えのツイートを列挙。


https://twitter.com/_hopechan_/status/1166557831795003392


https://twitter.com/jda1BekUDve1ccx/status/1167383927138316289


https://twitter.com/bigdadd35311532/status/1167816488633257986


https://twitter.com/tyo2020sky/status/1170989180190511104


https://twitter.com/nipponichi8/status/1355181193948348416


https://twitter.com/jda1BekUDve1ccx/status/1580336074923995136

最後の加藤氏は以前にもツイートしているとはいえ、バズった時期は10月13日なんで記事冒頭のえとせとら氏のバズを見てのパクツイ的なものっぽい。また一部では有名人の名言扱いで流布している模様ですね。


https://twitter.com/renrakuyou_yon/status/1082249580928847872

 事程左様にこの発言はソースが全く皆無であり、また類似の発言があることから創作(デマ)な気がします。ガチの検証をする場合、三浦知良の参加した日韓戦をすべてピックアップして、そのインタビューを雑誌などで調べるという手法が考えられますが、さすがに今回はそこまではしません。ただ、ガチ検証をしなくてもやっぱりこの話は胡散臭い。有名人の嘘名言みたいなもんだと思う。



■お布施用ページ

note.com

*1:朝日新聞ではなく、毎日新聞にはへらへらとしていて歌わない選手、それに比べてちゃんと歌う選手、という様な対比的な書かれ方をしたコラム記事があります。

「日本刑務所の囚人内訳」という外国人収容者が異常に多いデマ情報について

 最近、ちょっとこの画像が数度目につくことがあったのでこの「特亜65%」という「日本刑務所の囚人内訳」というデマ情報について書いていきます。すでに幾度かデマという指摘が記事化されており、例えば「「殺人・傷害での囚人の65%が特亜!」というあまりにありえない差別デマ」、「日本の囚人の97%は外国人?:こんなデマにも騙される人がいる」、「「外国人の犯罪がなければ、日本の刑務所はガラガラ」の真偽を公的資料で検証する」などなどで指摘されています。ただこれらの記事は数年前のものなので、その指摘の一部に倣い今一度この表の数値を簡単に検証します。
 データは法務省の「矯正統計統計表」を参考とし、また最新のデータだけではなく2010年から2021年までの流れで刑務所の年末収容者総数、および外国人の収容者数(来日外国人含む)、中国、朝鮮・韓国籍の収容者数、そしてそれらが占める割合を求めていきます。それが次の表です。

見れば一目瞭然ですが、収容者数自体の総数は減少傾向であり、なおかつ外国人収容者数も減少。ここ10年でその割合は全体の5~7%で推移している事がわかります。韓国・朝鮮人の割合は減少傾向、中国人の割合については2016年あたりで下げ止まり、近年はそこから若干の増加はみられるものの1%近辺で推移していることがわかります。
 さて、以上に紹介した数字自体はすべての罪を含むものであり、出回っている画像に書いてあるデマは  

『殺人・傷害』で収監されている日本刑務所の囚人 特亜が65%!

というものです。つまりは上記の数字を紹介しただけではデマの否定とはいえず、「殺人・傷害」は「特亜」が多いという事は言い張れます。しかしながら統計に「年末在所受刑者の罪名」はあるものの、この罪名ごとの在所受刑者の国籍までは不明です。なので、ここでは「新受刑者の罪名別 国籍(総数)」を利用して新受刑者の年毎の「殺人・傷害・傷害致死」の国籍を見ることによって間接的にデマを否定します。

以上の様に当然ですが、日本国において新規受刑者(殺人、傷害、傷害致死)の国籍割合は日本人が95%ほどと圧倒的に多くなっており、朝鮮・韓国、中国国籍者の割合を合わせても多い時で3%を少し超える程度です。つまり、これが新受刑者の割合とはいえ、刑務所の囚人国籍が「特亜が65%」というのはあり得ません。

そもそもこのデマ情報はいつ生まれたか

 最初に書いておきますが、この「日本刑務所の囚人内訳」の元ネタに関して、これらの数値がデマ作成者による「全くのデタラメな数値」なのか「何らかの元ネタ」からこの数値を作成したのかまでは不明です。しかしながらこのデマが流布された場所と時期、および拡散に寄与したきっかけそのものはほぼほぼ確定でき、それはおそらく2015年の5月4日から5日にかけて2chの複数のスレッドに書かれたスパム的書き込みです。
 2015年5月4~5日にかけて、次のような書き込みが10を超える複数のスレッドで行われます*1

見ればわかるようにこの書き込みにはソースの様な形で「新・中国朝鮮人犯罪ブログ」と「暴力団ニュース~ヤクザ事件簿」という二つのHPがリンクされています。しかしながら「新・中国朝鮮人犯罪ブログ」は現在ブログごと削除されており5月4日付近のアーカイブもない為に記事の確認そのものが不可、また「暴力団ニュース~ヤクザ事件簿」にはこの「囚人内訳」の情報はありません。では、現在削除された「新・中国朝鮮人犯罪ブログ」の方がソースとして貼られていたのか。実はブログは削除されているものの、このブログの書き手である「東アジア文化研究会*2」はツイッターにアカウントを持っており、2015年5月4日付近の記事タイトルの確認自体は可能です。

該当時期の近い記事は上記の様なものとなり、「日本刑務所の囚人内訳」的な記事はタイトルだけでは見当たりません。勿論、記事の中身にはその内訳が書いてある可能性は否定できませんが、書かれていなかった傍証としてこのブログ記事がもしもソースだった場合、ツイッター2chで該当記事へのリンクがあってもよいものですが、このブログをソースに見せた書き込みに貼られたリンクはブログトップに飛ぶようになっており、ソース記事に飛ばない工夫をされた書き込みとなっていることです。つまり、この「日本刑務所囚人の内訳」という書き込みはソースの様に2つのサイトのリンクを貼っていますがそのいずれにもソースの記述がない、デマ情報に対して嘘ソースを貼ることによって見た目の信頼性を高めていると思われます。ソースはなくてもリンクに飛ぶことによって「囚人内訳」情報がウケる層にはウケる情報を提供しているあたり、悪質とも言えます。

ツイッターでの拡散とまとめブログへの転載

 上記の書き込みに対するツイッターでの反応の中で現存する中で一番早い書き込みは5月4日の19時にあります。


https://twitter.com/henoKappa/status/595169277952430080

このツイートやその前後のツイートにリンクを貼っていない為に何をソースにツイートしたのかはわかりませんが、その書き方や時間から2chの転載と思われます。ただし、この時点でははっきり言って全然バズっていません。バズった、というか2chやその後のまとめサイトで使用、そしてタンブラーなどで保存が確認されているのが以下のツイートです。

「新・中国朝鮮人犯罪ブログ」のブログトップへのリンクをソースの様に見せながらにしてのツイートであり、文面からし2chの書き込みの転載と思われます。この「wish」氏のアカウントは現在凍結しており、またアーカイブも残っていない為に当時どれほどの拡散をしたかまではわかりません。ただし、このツイートに対して5月4日の20時台に批判的な引用RTをしているツイートが確認でき、先ほどスクショを貼ったツイートと同時期あたりにツイートされたものと類推できます。そして8日あたりからこの情報に対する好意的な引用RTが増え

5月9日には2chで「衝撃的事実。日本刑務所の囚人内訳 32%が朝鮮韓国人、21%が帰化人、33%が中国人、11%が他外国人、3%が日本人」というスレッドが建ち、そしてアベノミクス速報というまとめサイトで「衝撃的事実!日本刑務所の囚人内訳・・32%が朝鮮韓国人、21%が帰化人、33%が中国人、11%が他外国人、 日本人は3%wwwwwwww」という記事が出て一気にこの情報に対するツイートが増加します。ただし、この時点でそこまでのバズりは発生はしていません。現在確認できるのはせいぜい100RTを超えた以下のツイートくらいです。


https://twitter.com/qque2pf9k/status/862544706793652224

なお、5月12日には「囚人内訳」情報を利用した画像がすでに作成されているのを確認できます。しかしこの画像自体はあまり流布している様には見受けられず当時にバズった気配もあまりありません。


https://twitter.com/shocopeco/status/597917001118453760

ただこの画像を見るとのちに流布している牢屋の画像との共通点が見受けられます。数値の情報が共通なのは当然ですが、煽り文としての「移民増加により今後さらに治安悪化!」という部分がフォントを含めて全く同じです。上に書かれている赤字部分に関してもフォントが類似していることからもこの画像と今出回っている牢屋背景の画像作成者は同じ可能性があります。反面、異なる部分として「日本人3%」から「特亜65%」に、そして元のデマ情報にはなかった「殺人・傷害」というデマを付加、内訳表の真ん中への移動など、より煽りやすい情報になっていることが伺えます。

坂東忠信による「「在日」外国人犯罪の公的統計資料公開」

 以上見てきたようにこの「日本刑務所の囚人内訳」自体は2015年5月ごろに生まれたものと推察できます。ただこの時点では若干のバズりを確認はできるものの、件の画像自体は作成されておらずという状態です。このデマの流れが加速し始めるのが8月だと考えます。
 2015年8月には「日本刑務所の囚人内訳」とは別の角度から、とはいえ相性の良い情報が流れ始めます。それが8月4日にアップされた坂東忠信公式ブログの「日本初「在日」外国人犯罪の公的統計資料公開。」という記事です。この記事は8月8日に2chにスレッドが建ち、その後、これが8月10日ごろに「もえるあじ*3」や「正義の見方*4」というまとめサイトへの転載が行われます。また一か月以上遅れての9月26日に「まとめ安倍速報」というまとめサイトで「「在日」外国人の犯罪検挙情況は公表されたことがありませんでした。日本初の公的統計資料公開。k凶悪犯日本人は3%ってwww 凶悪犯はほとんどすべて外国人か帰化外国人」というまとめ記事が作成されます。そしてそこには件の画像が使用されています。

これによって9月26日時点ですでにこの画像が作成されていることがわかります。では、このまとめ記事の元ネタである「日本初「在日」外国人犯罪の公的統計資料公開」という8月8日に作成されたスレッドが画像の出典かというと、これは違います。そもそもスレッドのタイトルを見ればわかるようにこのスレッド自体は坂東忠信のブログ記事に依拠し、あくまでも在日外国人犯罪の公的統計の話をするスレッドであり、該当資料も在日外国人犯罪の資料にすぎません。つまり「日本刑務所の囚人内訳」の話には触れていませんし、「殺人・傷害」などの犯罪区分けについての記載もありません。にもかかわらず、「まとめ安倍速報」の記事タイトルには「凶悪犯日本人は3%」などの資料にはない情報が付加されています。そしてまとめの記事を見ると該当スレッドの2の名無しさんが件の画像を貼っているように見受けられますが実際は以下の様にそんなことはなく、これはまとめ記事の際に付加された情報の捏造です。

ここからわかることは8月10日ごろには坂東忠信のブログ記事の情報は「日本刑務所の囚人内訳」という情報とは別個のものとして扱われていたものの、9月26日ごろには坂東忠信をソース(嘘)として扱い、「日本刑務所の囚人内訳」というデマ情報をそれっぽく見せる工夫がなされているという事です。そしてそれが顕著に表れているのが以下の書き込み*5です。

この書き込み*6は2016年2月10日でおそらくこの近くの時期が初出かと思われますが、これやこれに近いコピペ書き込みが2016年3月に増加します*7。現在、5ch/2chの過去ログ検索を見る限りは100件を超える書き込みが見られますし、2022年現在においても使用されています*8。ここからいえる事は、もともとの段階ではブログ記事をソースとして見せかけていたが、それよりも良さそうな坂東忠信氏の情報が出てきたらソース(嘘)の乗り換えをしたという事であり、鑑みるに「デマ情報」を流布した人間はもとからこの情報がソースはないデマ情報という事に自覚的だったといえます。コピペ投稿している大半はそんな事も知らずに使用しているとは思われますが。
 最後に一応書いておきますが、坂東氏の記事自体が「囚人内訳」の情報とのイデオロギー的な親和性が高いことからの結びつきと考えられます。ただ一つだけ留意しておくべき点は坂東氏自身は「日本刑務所の囚人内訳」そのものは否定しています。


https://twitter.com/Japangard/status/1010376713392439296

現在流布している画像の初出時期

 では件の画像の初出はどこなのか、というと正直わかりません。しかしながら2015年8月中旬ごろには既に使用されている事はわかります。それが以下のツイートです。


https://twitter.com/sahimesan/status/634050482269368324

8月20日における投稿です。画像だけを挙げているためにその出典はわからず、またこのアカウントが作成した画像なのか、拾った画像なのかも不明です。ただ画像の切り取り方が悪いのか、画面下部に白い部分が見えていることからおそらく拾った画像でしょう。そして20日時点ではただ単に坂東忠信氏の情報と結びついていなかった、という事も考えられはしますが、まとめサイトの目ざとさや該当スレッドでも触れられていないことから、この画像は8月10日から20日の期間ごろに製作されたものと思われます。傍証としては8月14日は坂東情報のスレッドをまとめた「もえるあじあ」のまとめ記事に対して「日本刑務所の囚人内訳」情報でバズったwish氏の画像を貼っているツイートが確認でき、ここからも坂東氏の情報と「囚人内訳」情報が混ざり合ってきていることが確認できます。実際のところ、件の画像が作成されたのは坂東氏の情報の有無にかかわらず作成された可能性はあり、また画像作成者が坂東氏の情報を念頭に置いた可能性は不明です。出回っている画像自体には坂東氏の情報は採用自体はされていませんし。ただ、その後を含めた情報の流れを見る限りやはり坂東氏の記事の影響は無視はできないでしょう。
 ちなみに件の画像には下に白い線のあるバージョン、ないバージョンの他に、画面下部に「いいね」ボタンなどが設置されている画像も存在します。

このレイアウトがどのサイトなのかよくわかりませんし、これが初出なのか、それとも画像転載して使ったのかも不明。おそらくは後者だとは思いますが。後者の場合は、やはり「使い勝手」が良いのでしょう。

画像はバズる

 情報自体はデマ、画像の初出はよくわからないという結論ではありますが、最後に近頃この画像をよく見るようになったと思います。画像はテキストよりもコピペや視覚的影響が強いのか、バズりやすいです。


https://mobile.twitter.com/h_nakatsugawa/status/1256050620600995840

https://twitter.com/sss12Barbossa/status/1256062994422706182


https://twitter.com/ieYEZkoBRCqsujz/status/1549316469267124224


https://twitter.com/Lgu0tPMgcy2fTbT/status/1570300343275356160


https://twitter.com/ktf8dkp/status/1579151470465019904

拡散したツイートはほかにもあるでしょうが近年だけでもこれだけあります。特に2022年においても既に数回バズっており、多くの指摘が付いているにもかかわらず根強く残っていることが理解できます。特に2020年の日本維新の会の元衆議院議員中津川ひろさと氏による流布はデマを用いて煽動していることから甚だ悪質で、議員の資格はないと言えます。無事落選したようですが。

 結局、事実の有無ではなくデマ情報であっても煽動したいこと、時に誇大妄想も伴う変えたい現実がある人たちには指摘も無意味なんでしょうけど、とりあえずこの情報はデマですし、使っている人は嘘つきです。



■お布施用ページ

note.com

*1:【確認した書き込まれたスレッド一覧】

サイゼリヤでワインがぶ飲み!32㌧目!
広島市役所 part7
発泡酒総合2
UFOキャッチャー動画総合スレ10
宮城・仙台の喫茶店 Part2
建築板金屋☆ぱーと2☆
怖い・意味不明な童謡
アイスのPARM(パルム)好きのスレ☆☆ 3本目
斎藤佑樹・田中将大・坂本勇人・前田健太
京都の派遣【悪党おこしやす
一番うまいキムチ
群馬のおいしいレストラン・食堂・定食屋
回転寿司のマナー
【最悪】広島お好み焼「うずしお」【ドーム側】4
【イオン】トップバリュのビール・発泡酒総合3本目

*2:大層な名前ではありますが、アーカイブに残っているブログ部分を確認すると、ありがちな排外主義的なブログと言えます。ちなみにリンクはありませんが、閉鎖後に同研究会と思われるブログや別アカウントが確認できます。その経緯や意図は探っていないので不明ですが、このブログ自体は形を変えて生き残っています。

*3:記事削除済み。アーカイブなし。ツイッターを見る限りそのタイトルは「【在日犯罪】すごいのキタ━━(゚∀゚)━━!!!警視庁、日本初「在日外国人犯罪統計」公開!在日特権の証拠に公的機関によるソースがついた!!!|」

*4:記事削除済み。アーカイブはこちら

*5:出典:https://tamae.5ch.net/test/read.cgi/kankon/1443528017/869

*6:なお、貼られている一つ目のリンクは死んでいるため、どのような情報であったかは不明。

*7:2015年5月に行わた「日本刑務所の囚人内訳」の一定期間の集中的書き込みが3月時点にも行われている形跡あり。

*8:例えば、https://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/news/1647305545/857