電脳塵芥

四方山雑記

国葬における「警察発表500人」などのデマ詰め合わせ

 9月27日に行われた安倍晋三氏の国葬義において、それに反対するデモの人数が「警察発表500人」などの情報が流布されました。これについては複数メディアがすでに警察に問い合わせており、デマであることが確定されているといってよいでしょう。

反対集会の参加者は「警察発表で500人」とする根拠不明の情報も出回っている。警視庁警備部は29日、本紙の取材に「27日の国会前行動について参加者数は発表していない」と説明。こちらも偽りの情報であることが分かった。
安倍元首相の国葬反対デモ「日本野鳥の会の集計で307人」「警察発表で500人」は誤り 偽情報が拡散

ということでデマ自体の検証はする必要はないのですが、これがどのように拡散していったかを軽くですが見ていきます。

「警察発表500人」の初発は国葬当日の前

 さて、まず国葬反対デモ「警察発表500人」説ですが、この情報が盛り上がりだしたのは9月27日の18時ごろからです。

そこら辺の時間帯を起点にして情報が爆発的に流布するわけですが、実はこの「警察発表500人」情報の初発は国葬当日の9月27日ではなく、9月23日だと思われます。そしてこの情報を初めて出したのが以下のツイートです。


https://twitter.com/starship_glory/status/1573194828602822658

このデモは9月23日に芝公園からの出発で行われた「9・23安倍国葬阻止闘争 戦争阻止・岸田打倒掲げデモ」であり、アカウント主である starship-glory氏はこの情報の根拠として「現場の警察のアナウンスでは約500名」というツイートをしていることから、おそらくは現場にいた警察に人数を聞いた際に答えてもらった数字をツイートしたと考えられます。しかしながら現場から聞いた程度の情報を警察による公的な発表というには甚だ微妙であり、「警察発表」というくくりは不適切とはいえるかもしれません。またそもそも本当に警官に聞いた数であるかの確証は得られません。ただ、この「500人」という数字についていえば、デモについて書かれている前進社ブログにデモの参加者は「850人」としていることから警察発表が仮に「500人」だとしてもそう遠くない数字であるとも言えます。ちなみに何故かこの9月23日に行われたデモに対しての「警察発表500人」にも関わらず、これを9月19日に行われた代々木公園での反対デモの事と勘違いしているアカウントがいくつか存在しており、主催者発表13000人なのに警察発表500人という時系列が歪んだツイートも見受けられます。


https://twitter.com/AmiLittleStar/status/1573255293664100352?s=20&t=trx5AOMw9Q9623fwgNJqgA

事程左様に「警察発表500人」という情報が9月27日の前から国葬賛成派とも言えそうな方々の中で流布されて行ってることが理解できます。

国葬当日での流布過程

 当日における「警察発表500人」の発端はタイムスタンプ上で「午後2:25」に投稿された下記のツイートでしょう。


https://twitter.com/irodada/status/1574631382852292608

下記画像の様にツイートが消えていなければ9月27日における該当情報のツイートで一番早く、また午後2時25分時点というかなり早い段階のツイートとなります。

実際のところ、このiroda氏が何を見て「警察の集計によると500人」という情報を持ってきたのかは謎です。当日前から流布している情報をそのまま当日にも適用しているのか、13時33分にテレビ朝日が出した国葬反対デモに対する記事での主催者発表500人を曲解したのかは氏の前後のツイートを見てもどうにも不明です。しかしながら、この情報が当日やその後における拡散の起点となったは確かでしょう。それは以下の事からもうかがえます。

画像の下からツイート時間は午後3:38午後4:19午後4:27のツイートですが、いずれも拡散していき、そして17時台に拡散の決定的要因ともいえるツイートが出てきます。それがツイッター速報による下記のツイートです。


https://twitter.com/tweetsoku1/status/1574684015696781312

ここにリンクされている記事は5chに17時14分に建てられた「主催者「国葬反対デモ、国会前に1万5000人!」なお警察発表は500人」というスレッドの転載記事ですが、ツイッター速報の記事、そしてこの5chのスレッドにおいてももっとも重要であろう「警察発表500人」のソースは一切ありません

上記画像の様に「【速報】「国葬反対」国会前デモに1万5000人 主催者が発表 政治部」の記事の一部転載があるだけです。このことからスレッド作成者は記事ではなく、ツイッターで流布していた「警察発表500人」をスレッドタイトルに入れたと推測できます。そしてリアルタイム検索でもっとも投稿が増えた時間帯には下記のツイートが登場。


https://twitter.com/XU3F8wI1Csm5HQ2/status/1574693140954779649

そして右派系のインフルエンサーが27日の深夜から28日を明けてからこの情報に群がり、デマがコミュニティ内で半ば事実化します。


https://twitter.com/nipponkairagi/status/1574763528929837056


https://twitter.com/jda1BekUDve1ccx/status/1574846087503880192


https://twitter.com/jda1BekUDve1ccx/status/1575003775919566849


https://twitter.com/Muranishi_Toru/status/1574991953628102656


https://twitter.com/YoichiTakahashi/status/1575007788127772672


https://twitter.com/mk00350/status/1575048351791296512

 この「警察発表500人」は9月23日時点の芝公園からのデモであった場合はその数自体は対して主催者発表の数からの差が少なく、またツイートした本人がその場にいた警察から聞いた可能性もあり、デモの対象が芝公園だけの場合はデマである可能性は低いかもしれません。ただし、この「警察発表500人」と「国葬反対デモ」が合わさった時点で情報の一人歩きが確認でき、国葬当日前からすでに違うデモに対する人数に変換されている現象が発生しています。そして国葬当日、発端となったアカウントがどこから情報を持ってきたのかまでは断定できませんが、この一人歩きしていた情報を使用した可能性は否めません。そしてその後にまとめサイトインフルエンサーにその情報が膾炙し始めて立派なデマへと育ったという流れになるかと考えられます。流言飛語のテンプレ。

公園を上空からとった写真とミスリード

 国葬にまつわるデマ的な話はほかにもあるので、とりあえず気になったいくつかを指摘しておきます。まず、以下の画像。

これは当日のデモを上空から撮影して人の少なさを指摘するわけです。おそらくですが、画像の初出は以下のツイート。


https://twitter.com/GCj4vujf8SzMlIl/status/1574611378282762241

この画像に対しては海乱鬼氏が数えて約200人と大変な苦労をしているわけですが……。


https://twitter.com/nipponkairagi/status/1574697611160072192

まずこの公園は錦華公園で、デモの主催は国葬反対共同行動によるものです。デモの予定を見る限りは11時に錦華公園に集合、12時に出発というもので、そうすると上空からの写真ツイートは13時6分ですが、この写真自体は11時台に撮られたものと解するのが自然でしょう。そして、この11時台の参加者ですが、以下の様に参加している杉原こうじ氏によれば400名とのこと。


https://twitter.com/kojiskojis/status/1574594120315981824

そもそも主催者発表の「10000人(のちに15000人)」というのは国会周辺のデモの事を言っているのであり、デモを形成する一団体の動き、それも時間帯が不明の錦華公園だけの写真を持ってきて主催者発表と比べるのは不適当すぎます。ちなみにNHK記事によるとこの錦華公園のデモは約300人といったところです。

野鳥の会デマ


https://twitter.com/wbsj_tsubame/status/1575296710532005888

 野鳥の会国葬反対デモを数えたという正直謎すぎるデマなんですが、これは野鳥の会自体がすでに否定しています。さて、このデマの出所ですが、それは以下のツイートでしょう。


※ツイート削除済み。

ろまパピ氏による9月27日のツイート「AFNによれば、日本野鳥の会ボランティアの実数計測で307人だった」とあります。このAFNがなんであるかですが、これは以下が示すように「あさひフェイクニュースAFN)」という当初から狙っているデマネタツイートといえます。


https://twitter.com/z2yvo5HSCUwXmyf

なお、このAFNは「あさひ」というアカウントが発信しているものですが、野鳥の会ネタはろまパピ氏によるものであさひ氏自体は野鳥ネタはツイートしていません。どうにも下記の流れを見る限りはろまパピ氏がAFNという名称を使って乗っかったという流れかと思われます。


https://twitter.com/RomaPapi0417new/status/1574763590342803458

ちなみに両者ともにツイートを見る限りは国葬賛成派というか、右派に属する方にはみうけられます。あさひ氏に関してはとばっちりな感じはありますが、それはともかくとしてネタツイートと言ってもそれを信じちゃう人がたくさんいるっていう。


※削除済み

献花人数10万人説

 上記に比べればそこまでの拡散はされてませんけど、献花に訪れた人数が10万人というツイートが少しだけ拡散してます。発端と言えるのは石井氏が10万人を超えるのではというツイート、その後に加藤氏、白川氏などの右派系インフルエンサーが拡散していった過程があり、そして翌日に石井氏が記事を寄稿したという流れができます。


https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1574747627245031424


https://twitter.com/jda1BekUDve1ccx/status/1574846087503880192


https://twitter.com/lingualandjp/status/1574927956807647232

https://twitter.com/ishiitakaaki/status/1574970682915532800

こちらの石井氏による「国葬の献花10万人超 デモはシルバー人材数百人」では氏による「50メートルの列で100人と警察は人の数をカウント」、「地図確認により献花台から四谷駅まで直線3キロ、ただし並んだ人が揃って、献花台まで7キロ歩いたとする」、「列は原則3縦列」という情報から以下の様に数を導き出します。

上記仮定で試算してみよう。3縦列、7キロの列は4万2000人になる。列は午前9時30分から午後7時30分まで10時間続いた。2時間30分で入れ代わると4巡。16万8000人が献花したことになる。最初と最後に列は少ないとして、軽く見積もっても、会場で10~12万人の人が献花をしたわけだ。

上記の試算が正しいかどうかはひとまず置いといて、これもまたバズる。

実際にバズった要素はほかにもあるかもしれませんが、やはりタイトルにある「国葬の献花10万人超」という部分は注目を集めて、10万人であることを信じる人たちが出てきます。ですが、そもそもこの記事の最後の方に現時点では以下の様な注意書きがされています。

【注】政府は28日の記者会見で、国葬の献花者数を2万5889人、国葬参加者数を4183人と公表した。現地に行った私から見ると少ないと感じるが、この記事の10万人超の試算は多過ぎ、その事実を加える。28日午後にこの注は執筆した。

この石井氏による記事は政府発表前にアップされた記事のために氏の独自試算により10万人という数字になったわけですが、28日の官房長官の会見によって献花人数は確報として2万5889人というのが政府発表です。ちなみに国葬当日の19時ごろの記事に18時時点で速報値として2万3千人という記事が出ていることもあり、なぜ石井氏がわざわざ独自試算をして10万人という政府発表とはかけ離れた数値を出したのかは謎です。なお、この約2万5千人という数値は政府発表なのですが中には政府発表を信じないアカウントも存在しており、それなりに拡散してます。ここらへんは説得しようがないと思われる。


https://twitter.com/AmiLittleStar/status/1575258142988185603


https://twitter.com/NaNa20220213/status/1575402357717803009

香港デモ画像の使用

 あまり拡散はされていませんが、このようなツイートも。


https://twitter.com/LiberationArmy7/status/1575112106600374273

国会前の1万5000人というデモ参加者の証拠画像として上記画像を持ってきているわけですが、これは2019年6月9日における香港デモの画像で、「香港デモ、なぜ100万人も? 雨傘後の冷めた空気一変」という記事で確認できます。ちなみにこのアカウントは下記のツイートを考えれば国葬賛成派、もしくは反対派は嫌っていそうなので、デマ画像によって反対派の評判を落としたいのかもしれません。


https://twitter.com/LiberationArmy7/status/1574745075196006400

ディープステート系デマ


https://twitter.com/n_kazuhiro369/status/1574906003337814016


https://twitter.com/n_kazuhiro369/status/1574908151974879232


https://twitter.com/masa1230aki/status/1575051318384697344

 最後はかなり毛色が違うネタですが、こういう振り切ったディープステート系のネタというか、デマも流れていました。該当のブログ記事はこちらにあるので読みたい方はどうぞ。曰く、

・東京地下には膨大な無限城みたいなDS地下基地が存在
・地下の基地はオリハルコンで覆われていて核ではビクともしない
・東京は世界DSの中心部であらゆる結界が張られている

【山手線と中央線で勾玉の形になるように《鉄の結界》】

などなど、該当ブログにはもっと色々とアレな情報がありますが……。リンク貼っといてなんですが、見なくていいと思います。


10月9日追記

この記事で取り扱っていない部分があったので、こちらもどうぞ。

「安倍元首相の国葬に訪れた女性がつけていたのは統一教会のペンダント」根拠不明の情報が9千件以上拡散



■お布施用ページ

note.com

ロシアのとあるアニメファンコミュニティによってガルパンのキャラがロシア応援キャラクターみたいな扱いされてる件について


https://twitter.com/chaos_magatama/status/1572169599248142337

 というツイートがあって、この放送局はRussia 1だからロシアの国営放送テレビですかね。本放送自体は公式のこちらで見れます。で、記事全文は短いものなので、自動翻訳したものを置いておきます。

アニメ関係者はロシア軍に協力する
2022年9月15日 22:47
ロシア最大のアニメコミュニティが、特殊作戦とロシア軍を支援することを表明しました。テーマ別イベントの収益の一部は、ロシア軍に送ることが約束されました。今、ドンバスを守っている人は全員、生涯無料の入場が保証されています。日本のアニメファンの関心からすると、やや意外な動きである。しかし、アニメ運動の新展開の著者たちは、変革の時が来たと断言している。

記事の文だけを見ると本当にアニメファンコミュニティによる「ロシア軍」の応援です。番組上はそのファンコミュニティのトップがインタビューも受けている様なのですが、これを書いてる人間は語学壊滅でロシア語が分からないのでその部分についてはスルーします。

実際にどのような宣言をしたのか

 この宣言をしたのはORDAというアニメファンコミュティでレイブンという人物をトップにした組織です。そしてこの宣言をだしたのは9月12日。以下、自動翻訳ですが、どのような内容であったかは次の通りです。

で、お約束のレイヴンのスピーチ。
モスクワでの会議、様々な人との複数の会話、そしてただの人たちの結果、以下のように発表したいと思います。
 
1.ロシアを支持し、コメントや会場で軍事行動等を非難するようなことは一切させません。ユニットを組んでいるアニメの連中も、今はウクライナで戦っている(いろいろ確認されている)。
 
2.ドンバス(ウクライナ全般)で戦った、または戦っているアニメのシチュエーターの皆さん、小さなことかもしれませんが、イベントへの入場は一生無料です。
 
3.欧米の価値観や考え方を廃していく。LGBTなどの異端はもういらない。バンド組織でもなく、ステージでもなく、フェスでもなく、パクリでもない。
 
4.イベントの収益金の一部を人道支援として前線に送り、軍隊を支援する。だからさー、ホルデのアニメ祭りのチケット買う=ロシア軍を支援する、なんだよ。
 
私たちの組織は、善のため、幸福のため、そして正義のためにあるのです。
このため、一部の参加者がいなくなることは覚悟の上ですが、気にしないでください。
私たちは誇りをもって、「ザ・ロシア!」と言います。Za Rodina! Za Horde!
 
そうそう、わが国で若者が欧米の価値観に毒されているのは、わが国が若者に何も提供できていないからだと理解しています。より正確には、オファーとトレンドの本質が形成されていないのです。
 
自分たちでやる。
我が国とORDAの価値観の本質は、真の強い友情、誠実さ、皆へのサポートとヘルプです。
 
そして、「Horde Anime Dream」は、アニメ人がアニメを見るだけでなく、それ以上の存在になるための世界です。アニメの世界の良いところ(あきらめない、友人や親族のために戦う、自分や他人を信じる)を取り入れ、ロシア固有の価値観と融合させた、アニメ青年が優しい青年である世界です。挑戦します!
 
ちなみに、昔のO.R.D.A.はSociety of Russian Good Anime Menの略です :3 冗談ではありませんよ(笑)

以上の様に当然ながら現在のロシアの姿勢を支持し(12日時点ですが、現時点ではもその姿勢は変わらず)、その支援としてウクライナで戦った兵士にはイベント入場料は一生無料、イベント収益の一部を支援に回すという軍事的な要素の他に反LGBT、反欧米価値観を強く打ち出しています。このORDAというアニメファンコミュニティはロシアのニュースサイト記事を読むとアニメファンはLGBTに対して親和性があるというステレオタイプを打破するという考えがあるようで、故に今回の戦争とは一見あまり関係ないような反LGBTの動きを明言している様です*1。ちなみに当然ながらこのコミュニティの動きに反対しているロシア人もいます*2。なお加入者数に関しては3800人という情報もあり、それを紹介している記事は少ないと書いていますが、決して少なくない人数と言えると思います*3
 ちなみに文中ではガルパンのガの字も出ずに何故か最後にキャラクター画像だけが表示されているという状態で、つまりはコミュニティ内で「公式的な」応援キャラクターというわけではなさそうです。この画像自体が数年前から存在し、たとえばロシアで最も人気のアニメという2019年の記事には既に使われている画像ですし、文中の「ЧТО В СЕРДЦЕ У РУССких АНИМЕШНИКОВ?(ロシアンアニメの核心とは?)※自動翻訳」というのも今回の件とは無関係です。キャラ人気自体はあるでしょうけど、この画像がミーム画像としてもあまり流布してそうにないのでなぜこの画像を使用したか自体は謎ですね。その後も別に使用されてないので投稿者の趣味といったところかも。
 ちなみにこの宣言の30分後には次のような投稿も。※自動翻訳

よし、騒いだし、みんなの質問もちゃんとキャッチできたから、今度はもっと説明しよう。
 
このトピックでは禁じ手ではありません。
1. LGBTの考えを持つ人のイベントへの参加は禁止されていません。
2. 男性キャラクターを女の子にコスプレするのも、その逆も創造性であり、混同してはいけない。それはプロパガンダとは関係なく、単に与えられた性別のキャラクターに対する憧れです。
3.同性でも気軽に抱き合ったり、一緒に応援したり、踊ったりすることができる。それが友情であり、普通なのです。ほっぺにキスしても、誰も気にしない。
4. ヤオイ/ジュリエットジャンルに関連するパーツを身につけ、シーンなどを除いた状態で来場すること。
 
禁止されています。
1. イベントで、コスプレイヤーのパフォーマンス、お絵かき大会で、LGBTに関連するものを表示すること。
2. イベントなどでLGBTを公然としゃぶりつくす。
3.ロシア軍を否定的に語り、ドンバス防衛におけるわが国の行動を攻撃する。
4. LGBTや欧米のバカリズム全般を宣伝するための組織のガセネタに。
5. LGBTのシンボル(Tシャツ、バッジ、スカーフなど)。
6. LGBTアイテムのトレード
 
なぜ種族はこんなにも必要なんだ?なぜなら、私たちはこの国の未来と若者を大切に思っているからです。質問は終了しました。

コミュニティ内での禁止されていない事項と禁止事項をまとめて、そして最後にまた関係のない画像(賭ケグルイ)を貼るという流れ。

やはりこの流れを見ているとレイブンの趣味の画像を貼っている模様。あとこれらの内容を見ていると戦争への価値観というよりもむしろ反LGBTへの動きの方が強い感もあります。
 戦争賛成はともかく反LGBT系の流れでキャラクターを使用するコミュニティはアメリカの方でもあるし、日本のオタクの中には反LGBT系は見られるので、このロシアの事例が特異的な事ではないですがテレビで紹介されたと共に絵柄が絵柄なだけに耳目を引きますね。ただそもそも地上波ニュースで流すほどにニュースバリューがあるニュースなのかと考えると、正直なさそうなのでこれをニュースに選んだのが謎チョイスではある。

アニメファン部隊ストーム?

 余談ですが、真偽はわからないけれどレイブンが全員がアニメファン?で構成された部隊として「ストーム」というものがあると投稿していました

この顔隠し部分がない画像自体は今年の8月ごろに多少出回っていた画像で、その際には「ストーム」という情報も特に付加されていなかったので情報自体に怪しさがあったり、全員がアニメ好き?の部隊とかちょっと意味わからないのでなんですが、それはともかく抱き枕を携えている兵士の画像は強烈である。



■お布施用ページ

note.com

*1:参考記事https://readovka.news/news/111873

*2:少ないながら次の記事にこの動きに反対のツイッターがリンクされている。https://medialeaks.ru/1309ndi-str-int-orda-anime/

*3:加入者数は次の記事から。https://deita.ru/article/523389

東日本大震災時に「自衛隊が赤飯を炊き出しに出して批判」されて「問題」になったという話は実態のない伝言ゲームでは


https://twitter.com/SantaUonome/status/1502164211891605504

 以下、いくつかアップロードされているマンガを引用します。

これは3.11時の自衛隊による被災地支援時の食糧支援配布で「赤飯の缶詰」が出たことによってそれが「不謹慎」であると批判されて「大問題」になったという話であり、それ以降は上層部からの命令によって赤飯が食糧支援配布に出なくなったというものです。この手の話題は自衛隊による支援時にツイッターなどで「読む」ことはあってもそれを「見た」という人物は特になく、風聞が占めていて実態そのものは胡乱と言わざるを得ません。

自衛隊(陸・空)が戦闘食糧で赤飯を止めた理由

 まず公的なアナウンスにと受け取れる自衛隊(陸・空)が災害時の戦闘糧食で赤飯を止めた理由ですが、2011年8月11日の毎日新聞のWEB記事にその理由が語られています。

自衛隊:陸・空「赤飯」やめます 災害時に敬遠され
 東日本大震災を受け、陸上自衛隊が54年前から隊員の食料としてきた赤飯の調達をやめた。「祝いごとで食べる赤飯を被災者の前で食べるわけにはいかない」という隊員の声がきっかけになった。「腹持ちがいい」と人気もあっただけにメニューから消えるのを惜しむ声もある。
 陸自によると、隊員が訓練や災害派遣時に野外で食べる「戦闘糧食」は「缶飯(かんめし)」と呼ばれる缶詰とレトルトパックがある。主食は白飯、赤飯、とり飯、五目飯、しいたけ飯、小型乾パンの6種類で、赤飯の缶飯自衛隊発足3年後の1957年に採用された。年間調達量は缶飯約26万食、レトルト約7万食に上っていた。
 赤飯は阪神大震災新潟県中越地震の際にも批判的な見方があり、災害派遣ではなるべく使わないよう配慮されてきた。全国から前例のない規模の部隊が派遣された東日本大震災では、配給した赤飯の缶飯の返品が隊員から相次いだ。陸自担当者は「今後も大規模震災が危惧される中、被災地で活動する隊員が被災者らに気を使うことなく食事ができるように、赤飯はやめたほうがいいと判断した」という。
 また、航空自衛隊も「被災者に誤解を与える可能性があり、支援で提供もできない」として缶飯から赤飯を外すことを決めた。
 一方、海上自衛隊災害派遣時も艦艇内での食事が多いことなどから「赤飯の缶飯の廃止は検討していない」という。
【魚拓】自衛隊:陸・空「赤飯」やめます 災害時に敬遠され - 毎日jp(毎日新聞)

自衛隊が赤飯を止めた理由は記事を読む限りは自衛隊による声がきっかけです。阪神大震災中越地震の際の批判的な見方が外からなのか、中からなのかは不明ですが、少なくとも記事の論調を読む限りは内部での見方、影響も大きいと考えられます。勿論、この自衛隊内部の論調そのものは外からの批判であろう「不謹慎」に左右されたものと考えられますが、それとは別に自衛隊員も日本の習慣、常識を知っている日本人でもある為に「赤飯」という存在がどの様な時に用いられているものかという常識の様なものは共有しているわけで、「気をつかう」という意識そのものからは逃れられない隊員も多かったという事でしょう。それを栄養価や腹持ちなどで払しょくできるかというとできなかったのかもしれません。
 ただ上記の出来事は「戦闘食糧」の話であって支援に関する話ではありません。空自の説明では「支援で提供もできない」ということから支援に関わる部分もあり、また当時に支援に回した可能性もある文言ではあるものの、当時に支援に回してそういう批判があったかまでは断言できません。

ツイッターにおける当時の状況を探る

 2011年、3.11時のツイートは流石に10年以上も遡ることからアカウント削除や凍結などですべてがみられるわけではないですが、当時にそもそも現実としてそういう批判があったのかどうかは一応は確認可能です。まず当時一番拡散されたであろうツイートは以下の様なものと考えられます。


※参考:3月11日から3月17日までの該当ツイートを利用したツイート群

このツイートをしたアカウントは凍結しており*1、どれだけ拡散したかは不明ですが非公式引用などからそれなりに拡散している事が分かるツイートです。例えば下記の非公式引用RTは300を超えており、元々のツイートはこれよりも多かったと考えるのが自然でしょう。


https://twitter.com/LEN614/status/46445805971845120

また以下の様に2013年にはコピペツイートとして利用されている事からもこのツイートによる「流布」の影響はあったと考えるべきでしょう。

そしてこのツイートに関してはそういった「現場」を体験したわけでもなく、「自衛官が赤飯食べてる場面を見ても激怒して怒鳴ったり喧嘩ふっかけないであげてください」というお願いの様なツイートであり、またそもそも「自衛隊が赤飯を炊き出しに出して不謹慎だ」ではなく「自衛隊が赤飯を食べてても」というものであり、赤飯炊き出し批判の「実態」は皆無です。
 そして次には以下の様なツイート。


https://twitter.com/Kinpatsu5184/status/46440747267923968

このツイートに関しても「食ってても許してあげて」とあり、自衛隊が赤飯を食することが問題であって配布の問題でもありません。なおこの方は「当時俺も切れられた」という事からおそらくは元自衛官なのでしょうから、自衛隊が赤飯を食べることに批判的な人間が皆無というわけではないという事もうかがえます。これ自体が「騙り」の可能性もありますが元自衛官による類似の書き込みは見受けられることからこの手の話は自衛官の中ではある程度のあるある(それが「経験」なのか自衛隊の中での伝聞なのかは不明)なのでしょう。
 で、次に「自衛隊 赤飯」で当時拡散しているようなツイートですがほぼありません。毎日新聞の記事が出る前くらいまでの2011年7月末までにRTが10以上あったツイートも現状残ってるのでは以下しかない。

一番上のツイートが自衛隊が炊き出している赤飯の話ではあるものの、むしろそれ自体をデマだと否定しているツイートです。一番下は今回の話とは関係のない他では聞かない説であり、伝播もしてなさそうなので無視。その他の二つは「自衛隊が赤飯を食べている」系の話。このことからこの「赤飯が出されて不謹慎だ」という話は以下の様な推移で生成された風説と考えられます。


自衛隊が炊き出しに赤飯を出して不謹慎だという話の生成過程】
被災地で自衛隊が赤飯を食べてても不謹慎だと言わないで系ツイートが拡散

自衛隊」「赤飯」「食べる」「不謹慎」という言葉が脳内伝言ゲームされる

自衛隊が炊き出しに赤飯を出して不謹慎」という認識が生まれ、一部で流布されていく


 3月13日に「自衛隊が炊き出しに赤飯」に「デマ」という指摘があることから当然ながらデマツイートもあるはずです。そしてそれに近く、また拡散が伺えるのは以下のツイートです。

自衛隊の炊き出しが赤飯であることに文句をつける人」と明言している事から発端ツイートの一つでしょう。「文句をつける人がいてびっくり」とあり、脳内伝言ゲームでもされていなければこれ以前にそれ系の話が出ていると思われますが……、現状は見つかりませんでした。ただこのツイートは非公式引用RTなどからそれなりに広まったツイートであることが確認でき、このツイートの影響が大きかったかなと考えます。なお例に漏れずこのアカウントも凍結されており当時の拡散具合は分かりません。あとこの凍結されたアカウントに見覚えがあると思ったら、これ菅野完氏のアカウントですね。当時の有名具合は知りませんが拡散はしてそうという印象はあります。ちなみにそれ以外で「赤飯炊き出し」で拡散してそうな現存ツイートは見受けられません。
 さて当時のツイート群を調べる限り、やはり「自衛隊が炊き出しに赤飯を出して不謹慎」で怒っているというツイートやその現場を見たというツイートはほぼほぼありませんでした。管見の限り、3月13日に当時おそらく千葉県在住者のアカウントによる自分の父親が自衛隊員が赤飯を食べることに怒っているというツイートの1件のみ*2。ただそれも拡散は一切されおらず、これらの言説に影響を与えた可能性はありません。つまりはいずれも伝聞調の「批判があるんだって」系の話が広がったものと言え、伝言ゲームが流布される事での話題性の上昇と共通認知が生まれ、実態以上の虚像が出来上がったと考えられます。勿論、実際に「見た」、「それに対する批判」のツイートが消された可能性は拭えませんし、こういった批判をする人間はツイートではなくその場でのクレームが多いでしょう。しかしこれに関しては当時ですら、そんな話はないというツイートがあることから正直そんな声はあったとしてもごくごく一部と考えられます*3。「自衛隊が赤飯を食べている」への批判は自衛官などによる過去話からあり得たとは考えられますが、「炊き出しに赤飯」自体、そしてそれへの批判は実際にあったかどうかさえ不明です。

赤飯の缶詰は市民への炊き出しに出されたか

 デマ指摘されているようにそもそも赤飯の缶詰が自衛隊の食事としてではなく「赤飯の缶詰」として炊き出しで配布されていること自体に疑問があります。まず第一に指摘されているように赤飯の缶詰は災害派遣時などに用いられる自衛隊用のレーションであり、炊き出しの為の食料ではありません。次にマンガのテクニックと言えばそうですが「赤飯」としてならともかく「缶詰」として出されている可能性が低い。例えばこの缶詰は以下の写真の様に缶切りが必要なわけですし、炊き出しに出てくる可能性は低く考えられる。


出典:自衛隊戦闘糧食1型「赤飯」試食記: まさひさのBikeHouse

一応、「缶詰」の赤飯を何かの容器に分けてという可能性もありますし、緊急時故にという可能性もありますがこれが「主流」の炊き出しはあり得ないと考えるしかない。そして次に当時の炊き出し支援を網羅している情報はないので一切ないことの証明は難しいですが、当時の炊き出しは以下のようなものです。

・3月12日、八戸市

出典:東日本大震災 八戸市の記録

・3月16日、宮城県名取市

・3月22日、岩手県山田町

上記2枚の出典はいずれも「約45分で200人分の食事を作れる「野外炊具1号」は、自衛隊が誇る最強のメシ炊きマシーンだ - メシ通 | ホットペッパーグルメ

というように自衛隊の炊き出し、当然ながら調理してるんですよね。


【3月13日追記】

 ツイッター内で当時海上自衛隊の横須賀地方総監であった高嶋博視氏がその著書内でこの赤飯の件に対して以下の様に記述していたので追記しておきます。

(3月15日についての記録)食事の席で赤飯(缶詰)に話が及んだ。赤飯の缶詰は古くから我々の非常用糧食のひとつとして、五目飯とともに備蓄・搭載しているが、赤飯について自衛隊にはひとつの定説がある。
 過去の災害派遣において、赤飯を不用意に被災者に提供したところ、「被害を被っている我々に赤飯とはなにごとか!」とお𠮟りをうけたというものである。実際にあった話かもしれないし、被災者に気を遣った誰かの作り話かもしれない。しかしながら我々はこの説に従って、いつのころからか赤飯の提供を控えるようになった。
 今回はまだ五目飯等に余裕があるので、未だ赤飯は提供をしていない。私は海幕長にこう申し上げた。
「食べるものがなくて困っているときに、赤飯も五目飯もありません。赤飯は最後まで取っておきますが、これを出さざるを得ない状況になったときにはだします。ただし被災者にはその旨を断ります」
 海幕長もそれを「よし」とされた。
 後日そのような事態になったので、方針通り淡々と赤飯を提供した。これにはさらに後日談がある。ある被災地から「小学校の卒業式を行うが、、何ら卒業生を祝ってやることができない。ついては海上自衛隊の赤飯をもらえないだろうか?」との打診があった。部隊指揮官は喜んでこれに応じた。
高嶋博視『武人の本懐 FROM THE SEA 東日本大震災における海上自衛隊の活動記録』 p.79-80

かなり貴重な記録であり、少なくとも海自の高嶋氏が知る限り、

・過去に事実が作り話かはわからないが、赤飯を出して怒られたという話が自衛隊に伝わっている
・3.11時にも提供は行ったが、この記述からは批判は(少なくとも高嶋氏の知る限りは)なかった
・後日談で卒業式で赤飯の提供を依頼された(後述の石巻市大須小学校と思われる)

ということになります。これは陸自の話を含まない海自の支援且つ高嶋氏の知る範囲の話であるとはいえ、その後の卒業式の話と合わせて考えれば少なくとも「大問題」になった可能性は低いと言えましょう。赤飯が提供されたこと自体は事実ではあろうものの、やはりこのマンガはかなり盛っていると考えられます。

【2024年1月8日追記】
 当時、陸上自衛隊の幕僚長を務めていた火箱芳文氏へのインタビューについての記事を教えてもらったので追記しておきます。

幼な子を抱いた母親のご遺体が…
(略)
隊員の健康には心と体の両面で注意を払いました。毎日、幾つものご遺体を目にするのです。中には、幼な子を抱いたまま亡くなった母親の遺体もある。宮城県石巻市の大川小学校では、ランドセルが隊員の目に入った。「ここか!」と思いヘドロをかき分けて捜索すると、子供さんの遺体が上がってくる。そうした光景が自分の家族と重なる。その悲しみがどんどん心の中にたまっていく。
 なので、隊員たちに気持ちを吐き出すよう勧めました。夜、班長を中心に車座になって、その日にあった出来事を話す。ある時はみなで祈る。ある時はみなで泣く。 それだけでも気持ちが変わります。
(略)
 隊員から配慮のなさを指摘されることがありました。食事が不足しないよう送った様々なものの中に、赤飯の缶詰があったのです。担当者は赤飯の方が腹もちがよいと思い良かれと思って送ったのだと思います。しかし、先ほどお話ししたように、現場は毎日ご遺体に接し心を痛める状態です。「こんなもん食えるか!」と怒りの連絡が入りました。「申し訳なかった」というしかありませんでした。


 ただ必ずしもなかったかというと、3.11前とはなりますが以下のようなツイートや、救援物資としてテレビに出ていたというツイートがあることから一部では配られていた可能性はあります。

【3.11前のツイート】

https://twitter.com/SaikHide/status/18195956545626112


https://twitter.com/nayuta_stars/status/22498444862033920

【3.11後のツイート】

https://twitter.com/konoe_mtki/status/51711260198313986

また新聞記事を確認してみたところ毎日新聞の西日本版夕刊2011年8月11日の「自衛隊:陸・空時、赤飯調達やめます。祝い事イメージ「被災者の前で食べられない」」で実際に配布したことは確認できます。

海自は震災発生後間もない3月24日、宮城県石巻市大須小学校に卒業式の支援として赤飯の缶詰602食を贈っている

この記事は上述したWEB記事と内容自体はほぼほぼ同じものですが、最後に3.11時に実際に赤飯の缶詰を事例を記述したものであり、おそらく三大紙の中では唯一の記事となります*4。ただし記事を読むと卒業式という「祝い」の席であり、この事例で批判が起こった可能性は流石に考えられません。このほかにも配布した事例はある可能性はありますが、しかし記事の傾向を考えれば顕著な批判が実際にあったならばそれを書くほうが自然であり、だのに卒業式の話を持ってくるという事は自衛隊側で取材に対して「大問題」と答えるほどの批判はなかったと考えるのが自然です。また付け加えて書くと、毎日新聞(広島版)2016.4.19にて「熊本地震:被災地へ食糧空輸 海自呉 缶詰2190食分」という記事で熊本地震時にも赤飯の缶詰が支援物資として輸送されている事が記事となっています。海自は陸・空とは異なり戦闘糧食としても使用を続けている事から支援物資としての赤飯の缶詰は続けている事が伺えます。
 以上の様に赤飯の缶詰が(炊き出しか否かは問わず)当時に炊き出しやそれに類する食糧支援で配られた可能性はあろうかと考えられます。ただしクレームが入って「大問題」にまでなった可能性を考えると発端となるような出来事、その記事やツイートが一切ないだけにこの点についてはあまり信用がおけません。

3.11後に「自衛隊と赤飯の缶詰」の語られ方が強化されている

 まず今回のマンガ自体が「自衛隊と赤飯の缶詰」話を強化していたり、そもそもこのマンガがバズったのは今回だけではなく2019年9月にも同様のツイート及びtogetterでまとめられもしています。またイミシンというメディアでもこのマンガが紹介されており、ある種の「真実」化されていると言えるかもしれません。ただこの「赤飯を炊き出しに利用」は主にこのマンガが情報のハブとなっている感がありますが、それとは別に「自衛隊と赤飯の缶詰」の話自体が3.11後に爆発的に増えていることが考えられます。
 まず3.11前における「自衛隊 赤飯」をツイッターで検索すると「赤飯が批判された」というたぐいのツイートは数件はあるもののRTもほぼされずに目立ってはいません。これが3.11後になると上記で紹介したツイートや、またその際に付加される阪神淡路、中越地震時にも批判があったという情報が付加されていきある意味で言えばこの言説に「市民権」が得られたと言えます。例えばかわぐちかいじの『俺しかいない~黒い波を乗り越えて』では以下のようなシーンを描いています。


画像引用元:https://twitter.com/kazuyaFD2/status/857089476048322560
※元は読み切りとして掲載され、その後に『ヒーローズカムバック』に掲載。

一点、注意が必要なのは3.11前にも阪神淡路大震災などの時に赤飯が批判されたという話自体はあったことです。しかし既に述べたように有名な話とは言えず、それを考えるとこの2012年で描かれたマンガは3.11後の言説空間を読み取って描かれたものと考えた方が自然でしょう。そして、3.11後にRTが100を超えた「自衛隊 赤飯」系のツイートもいくつか出てきます。その代表例は以下のツイート。


https://twitter.com/wB1HqwmdlNOHH3x/status/1039510821364088832

3.5万件のRTとなりかなりのものです。なおこの方、このツイートの前に似たようなツイートをしていたり。またtogetterでは「被災地で自衛隊が栄養のある赤飯を食べているのを見て「けしからん!」の苦情で禁止?→「真に受けていいか怪しいぞ」という意見も」というまとめも出来ています。事程左様に「不謹慎」だという理不尽なクレームに対する批判や嫌気、自衛隊への好感度なども相まって一つの話題のネタとして出来上がった感すらあります。実際に世の中には想像の域を超えたクレームをする人間もいる事や被災後の余裕のない被災者の心情、元自衛官系と思われる経験者の体験談などから自衛隊の赤飯、ひいては食事そのものに対する批判があった事は確かだと考えますが、実態以上の語られ方がされている様にも感じられます。悪い意味でバズりネタになっているかなとも。

防衛省への問い合わせとその返事

 で、この件について防衛省に対して問い合わせをしたところ全くの無反応だったので、反応せざるを得ない開示請求してみました。請求内容としては東日本大震災時に赤飯の缶詰を出したことはあるか、そしてそこからは派生した問題があったならばその資料を請求するというシンプルなものです。この開示請求結果に関して防衛省側の返事としてはその様な資料はないというものでした。勿論、「資料がない=事例がない」と必ずしも直結するものではありませんが、少なくともマンガにあるような「大問題」になっているらならば何らかの資料が残っていてもよさそうなものです。しかし資料は皆無。このことから仮に問題が実際にあったとしても防衛省的には「残しておくべき問題」の様な認識はされていなかったと考えるのが無難でしょう。

 「自衛隊が赤飯を食べている」への批判が数は少なくともあったであろう事ですが、ただ語られ方がクレーマー批判の中で実態以上の虚像が出来上がってしまっている感が拭えません。「赤飯の炊き出し」についてはその存在そのものが胡乱です。正直、炊き出しの缶詰に関しては取材してその実在性を確認しているならばともかく、今の状況では「風説」としか捉えようがないというのが所感。


続編

nou-yunyun.hatenablog.com



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*1:現在、@toryuを利用しているアカウントはありますが、このツイート主とは別のアカウントでしょう。

*2:https://twitter.com/ohohoassisnager/status/46853152846258177

*3:例えばhttps://twitter.com/kensukeShimoda/status/46798292025229313https://twitter.com/nog5/status/46814228249706496

*4:朝日、読売にはこの件自体の記事が存在しません。なお3.11前という括りならば読売新聞2007.7.18「中越沖地震 海自艦が柏崎に入港 食料物資を陸揚げ」において赤飯(おそらく缶詰)を物資として送ったことが記述されています

【デマ】外国人の生活保護受給者は200万人ではなくって6万人半ばくらいだよ


https://twitter.com/nipponkairagi/status/1556777673212723200

 画像の方の出典は「生活保護は外国人でも受けられる?申請前の注意点はある?」で、さらに言うとこのデータの出典は河野太郎のブログ記事「国籍別生活保護受給世帯数」と思われます。なお、河野太郎のブログでは以下の様に紹介しています。

左から国籍、生活保護受給世帯、その国籍の在留外国人数、右端の数字は生活保護受給世帯数/在留外国人数(世帯数を人数で割っている数字であることに注意)

これが海乱鬼氏が引用したブログだと次のように内容が変化しています。

左から「国籍」と「世帯数」、「被保護者の人数」と「生活保護受給世帯数を在留外国人で割った数字」です。

つまりはもともとのデータでは「該当国籍の在留外国人」という全体の数字が「被保護者の人数」へと変化してしまい、200万人の外国人生活保護受給者という途方もない数字(デマ)が発生したわけです。大体、2022年6月現在の生活保護受給者は202万人のために生活保護受給者のほぼ全部が外国人という馬鹿げた数字になってしまいますし、出入国管理庁によれば外国人居住者は2021末時点で246万人なので、これまた大部分が生活保護受給者という普通に考えてあり得ない数字です。無職200万人もあり得ないで、データを見なくても嘘と言えるレベル。ついでに言うなら「中国4,443世帯 668,644人」とかあたりで1世帯当たりの人数が途方もない数になっていることを気づいて欲しい。はたしてこのブログでの記述の変化が執筆者の恣意的なものか、単純な読み間違いによる過ちかまでは不明ですが、それはともかく外国人の生活保護受給者200万人はあり得ません。
 ちなみに外国人受給者の人数ですが、これは普通に厚労省の被保護者調査でデータが出てます。

以上の様に2年位前からは外国人の生活保護受給者は6万7000人あたりで推移。新年度である今年の4月からは何故かは不明ですが600人ほど一気に減って6万7000人を割って6万6千人台になっています。生活保護受給者に占める割合で言えば約3%になります。

拡散具合

 このデマはブログの方がデマの出所といった方がいいですが、海乱鬼氏のツイートによって広がっています。下記のツイートなどは海乱鬼氏の文章だと明記せずに氏のツイートを利用したものですが、本家越えしています。


https://twitter.com/masatyourou/status/1558017763251171329

ちなみに海乱鬼氏にしても上記のツイートにしても8月中旬ごろのツイートですが、ネット右派層が「#国葬反対より外国人生活保護反対」というハッシュタグをしたのでもう一度微拡散が確認できます。

国葬と外国人生活保護を比較するのは適当ではないと思われますが、外国人生活保護自体が右派層にとってウケが良く、そして一つのイシューになっているのでこの様なハッシュタグやデマが受け入れられやすい下地ができていたとも言えます。こんなに質の低いデマにすら飛びつくほどに。

外国人生活保護は年間1200億円について


https://twitter.com/nipponkairagi/status/1556591591783297024

 もう一つ、というかこちらの外国人生活保護に対して年間1200億円があってからの「外国人受給者200万人」ですが、この毎年1200億円の出所は2010年時点の生活保護費予算と当時の外国人生活被保護者をもとにした仮試算であり、明確な試算はありません。そもそも公的なデータはないはずです。
 もともとこの話はツイッターなどをさかのぼる限りは2011年6月ごろに噴出してきた情報であり、当時ほんの少し拡散したのは「排害社」という団体による「7・9外国人への公金支出全廃デモの告知」からです。ただこの時点でデモの理由的なものの一つになるという事はこれ以前にこの言説があったことがわかります。
 ただ上記の情報は当時そこまで流布はしておらず、この言説がネットにおいて流布する最大のきっかけは2012年3月16日の片山さつきによる国会質疑でしょう。

片山さつき お手元の資料を見ていただきたいんですが、生活保護費、二十二年度で三・三兆円、このうち、御覧いただくと分かりますが、仮試算で千二百億円弱も外国人に払っております。その保護率は日本人の二、三倍、三分の二が朝鮮半島出身の方だそうです。
第180回国会 参議院 予算委員会 第10号 平成24年3月16日

この質疑がyoutubeやまとめブログなどによって流布され、今に尾を引いているといえます。なお、2021年の生活保護費負担金(事業費ベース)は約3.8兆円。仮試算だと約1140億円ほどになりますが、ただ実績額の約半分は医療扶助であり、生活保護者の多くが高齢者世帯であることを勘案すればこの仮試算額自体はもう少し少なくなるものと思われます。

 毎年1200億円自体はそこまで大きな的外れではないとは思いますが、外国人受給者200万人を信じるのはちょっと考える力を捨ててます。大体、外国人生活保護毎年1200億円と受給者200万人を合わせて考えると一人当たり毎年6万円になっちゃいますし。デマは論外だが、少しは考えて。



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那覇市(沖縄県)の人口増加は選挙のせいじゃないと思うし、そもそも増えても「何故」を判断するのは無理


https://twitter.com/JxSvPrIhSLdQgmP/status/1566340443046301697

 このツイートのソースは那覇市の人口動態とのこと。で、「3か月前から沖縄県那覇市だけでも100人以上の人口増加」というのは知事選に伴って特定陣営の人間が引っ越してきて投票をしているのではという、選挙にまつわるありふれた陰謀論ではあります。なお、このツイート主についてはさきま陣営を応援しており、その方向性からは「サヨク」が引っ越してきてるんだろうと暗に言いたいのでしょうし、過去には名護市の件で同様のデマがありました。ただこの引っ越しネタ自体は左派側に属する人間から右派応援の宗教票が引っ越してきてるという層もいるので、右派/左派問わずにあったりする陰謀論でもあります。

沖縄県全体の人口動態変化について

 知事選なので那覇市で限定するよりも沖縄県で数字を見た方が良いと思うので、沖縄県推計人口データをソースにして最近の人口動態の変化を見ていきます。まずアカウント主は「県知事選挙の年の3か月あたりから急に増える」と書いてありますが、これは「3月」ではなく文脈から「(知事選の選挙権を得られる)3か月(前)」ということでしょう。つまりは9月11日の投票日の3か月前なので6月。ただ6月だけ見ても傾向はわかりづらいので、4月から6月中の沖縄県の人口動態を以下に示します。

一目瞭然ですが、県全体で4月から6月にかけて人口自体は増えています。ただでは、これが選挙の影響かどうかまでは不明ですので、2018年から2022年の5年間における増減数を見ていきます。

これを見ていくとこの5年間の中での4月の増加数はむしろ低い方です。そもそも4月は新年度の始まりということもあって基本的に人口が増加しやすい月で、その後の5月、6月についても通年で人口が増加しやすい月。あえて言えば2020年、2021年よりも人口増加が多いとは言えますが(2020年とかはコロナの影響を感じますし、比較に使うには不適当な年かもしれません。2021年に関してもちょっと比較には微妙な時期かも?)、前回の選挙年である2018年はともかくとして、選挙とは関係のない2019年の増加数と比較すると増加数が低いことから少なくとも人口増減から選挙の影響で人口が増加したとは言えないかなと。
 さて、ここまではツイート主の主張である「人口増加数」で見てきましたが、それよりも良い指標となるであろうものがあります。それは「県外からの転入者数」です。増加数は転出者や県内転入者数の影響を含むので「増加数」だけを見ても外からの票の増減は読みにくい。ならば県外からの転入者を参考にした方が良いでしょう。ってことで、データ。

ついでに那覇市

データだけ見ると2022年が若干、県外からの転入者数が多いとは言えます。数値にすれば2022年の県外転入者数は4月から順に5866、2872、2590人。コロナや選挙の影響がなかったと言える2019年(6070、2648、2311人)と比較すると4月は劣るものの、5月、6月は約200~300人くらいの増加とは言えます。ただ、これが選挙の影響かまではわかりかねます。例えば別の解釈も可能であり、2020年、2021年のコロナ禍で抑制されていた行動の反動という解釈も成り立ちます。5月には3年ぶりの「行動制限のないゴールデンウィーク」の時期でしたし、2022年から行動抑制はかなり緩和されているわけですから。それと6月の増加を考える場合、選挙日は9月11日であることを考えれば中旬以降に転入してきた人間には選挙権が付与されないわけで、6月の増加数についてはその部分に留意する必要があります。ただなんにせよ、なんで増えているかは結局わからん。

 「何故か県知事選挙の年の3ヶ月辺りから急に増えるのはナゼ?」とツイート主は書いていますが、ナゼも何も5,6月は普通に人口増加がしやすい月ってだけで、県全体で見れば毎年増加している年です。なのでこの増加をもってして「増加=選挙の影響」と考えるには論拠が弱いです。一応言えることは県外転入者数が過去5年に比べれば増えているという事ですが、これも選挙のためと断定などできません。仮に選挙のために人口が増加していたとしても、それがどの「陣営」かは不明です。個々の転入者の動機、ましてやその投票行動などわかるわけがありませんし。数字だけ見ても所詮は陰謀論の域を出ない。


9月7日追記
 ついでに選挙権が付与されない7月の県外転入者数を貼っておきます。

2022年の転入者数は落ち込むことなくそれなりの数を維持しています。2018、2019年の転入者数に比べれば劣りはするものの、7月を境にして目に見えた形で減ったようには見えません。まあ、この数字を見たところでやっぱり結論は出るわけないのである。




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【デマ】玉城デニーが中国共産党の勢力とフランスは断定していない


https://twitter.com/CYXuAxfGlfFzZCT/status/1563853217666019328

 おそらくソースとして貼ってある2021年10月5日の産経新聞の記事「仏軍事研究所が「中国の影響力」報告書 沖縄を標的と指摘」には「玉城デニー」という人物名は一切ない。この時点でただのデマといっても過言ではない。ただ該当記事は以下の様な内容を含むわけで、「あいつは敵勢力」的な発想とは相性の良い記事ではあります。

沖縄への関与は、中国にとって「日本や在日米軍を妨害する」意味を持つと指摘。沖縄住民には日本政府への複雑な気持ちが残り、米軍基地への反発も強いため、中国にとって利用しやすい環境にあるとした。中国が独立派を招いて学術交流を促したり、中国人が米軍基地近辺で不動産投資を進めたりなどの動きがあると列記した。
中国は独立派と同様に、憲法9条改正への反対運動、米軍基地への抗議運動を支援しており、その背景には日本の防衛力拡大を阻止しようという狙いがあるとも指摘した。

 さて、ツイッターだけだと闇のくまさん氏の発想の着地点の理路がわかりにくいですが、氏はもともとユーチューバーであり、当然このネタに基づく動画をアップロードしています。そちらの方ではもう少しなぜそうなったのかがわかりやすいです。


https://www.youtube.com/channel/UCz5X9oXlFrMnZF3j58CDVgA/videos


※わかりやすくするために途中の字幕を抜かしています。

まず玉城デニー氏による「日米から沖縄を取り戻す」という発言を見て、この発言を「沖縄の独立を玉城デニーは狙っている」という解釈を闇のくまさんはします。ただこの解釈自体は以下の様にネット保守層の中では突飛な解釈ではなく普通の解釈でしょう。

togetterはともかくとして、シェアニュースジャパン、政治知新、もえるあじあなどの名だたるサイトがこの「取り戻す発言」に反応しています。そして闇のくまさんは8月27日の産経記事「中国元副首相「日中は運命共同体」 国交50年で」を関連付けながら、冒頭の産経新聞記事を思いだして玉城デニーの発言を大問題視、そしてフランスの軍事研究家が危惧したとおりになっていると煽っているわけです。ちなみにですが、動画の方だとツイッターにおける文面「玉城デニー中国共産党の勢力とフランスが断定」というレベルよりはちょっと落ちているかなとは感じます。それでもほぼほぼ関連付けているといえますけど。


9月1日追記

 この画像記事の出典を追記しておきます。記事は2018年9月23日の八重山日報となり、要は前回の選挙選の際の記事です。当然ながら当時すでに話題になっており2018年のtogetterのまとめ「沖縄県知事選『玉城さんが、「日米から沖縄を取り戻す」と叫んでるのが放送されていました。理解が出来ません』『県知事選挙でそのような事を言ってどうするの?』なお 八重山日報にも記事掲載があったもよう」があるように使われ方の文脈としては今と変わりません。これが今回の選挙選で出てきたのは意図的なものではあるでしょう。


フランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)による報告書

 産経の記事だけだとあれなのでフランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)のレポートを置いておきます。「玉城デニー」という文言があるのはおそらく下記の部分だけですかね。

Le terrain est favorable puisqu’il y a déjà des mouvements indigènes pro-indépendance et hostiles à la base américaine. L’île est majoritairement anti-Tokyo, anti-gouvernement central, comme en témoigne l’élection de Denny Tamaki comme gouverneur en octobre 2018, un opposant de longue date à la présence américaine. La préfecture d’Okinawa milite pour le départ d’une partie des troupes américaines (marine et armée de l’air). Le risque qu’Okinawa déclare un jour unilatéralement son indépendance est pris au sérieux à Tokyo. Or, « la Chine encourage cet objectif par la diplomatie, la désinformation et des investissements dans la partie nord de l’île, près des bases américaines »
(自動翻訳)
アメリカの基地に敵対する先住民の独立運動がすでに存在するので、地勢的には有利だ。2018年10月の知事選で、長年アメリカのプレゼンスに反対してきた玉城デニー氏が当選したことからもわかるように、この島は反東京、反中央政府が主流である。沖縄県は、一部の米軍(海軍と空軍)の撤退を推進している。沖縄がいつか一方的に独立を宣言するかもしれないというリスクは、東京でも深刻に受け止められている。しかし、「中国は、外交、偽情報、米軍基地に近い島の北部への投資を通じて、この目的を後押ししている」という。

長くなるので引用は割愛しましたが、引用箇所の上下には日本の保守界隈と相性の良い文章が書かれてはいます。個人的にはやや過剰な書きぶりであったりして違和感を感じる部分はありますが。ただ、それであってもさすがに玉城デニー氏を「中国共産党の勢力と断定」との書き方はしていません。やはりデマ、闇のくまさんの思想による妄想かなと。



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安倍晋三を射殺したのはスナイパーによる「ガリウム弾」だというデマの初出

togetter.com

 というまとめがあって、要は安倍首相を殺したのは山上容疑者ではなくスナイパーであり、そして弾丸は「ガリウム弾」だ、というデマがあったりします。文化人放送局で安倍晋三の友人である山口敬之氏もどうやらこの説を唱えています。これが本気なのか飯のタネなのかは不明でありますが、少なくとも以下の様に動画再生数のネタになっていることだけは確か。


https://www.youtube.com/watch?v=IC4dYRCs1Ok&ab_channel=%E6%96%87%E5%8C%96%E4%BA%BA%E6%94%BE%E9%80%81%E5%B1%80

ちなみに一応動画の中で山口敬之はガリウム弾を「仮説」として紹介していますが、政府や奈良県警、奈良の救急本部の一部が関わっているとしていてガリウム弾そのものよりもヤバそうな認識を示しています。ちなみに山口氏はこの仮説の出所を医者としています。
 では、この「ガリウム弾」というデマはどこから来たのかを記しておきます。なお、「スナイパー」説は割と事件当初から複数の人間がつぶやいていたりしてますので割愛します。

結論

 結論から書きますけど、これ、youtubeのアカウント「FAMILY GROWTH家族の成長」の7月26日の動画「⑤消えた弾丸は奈良医大にある。血液の保全を! 弾丸と銃創 溶けるガリウム弾丸について」が初出です。現在動画は削除済みですし、ものがものなので見れる動画のリンクは貼りませんが、以下のような動画です。

ツイッターで観測した限りでもこの7月26日から「ガリウム弾」と安倍晋三射殺事件を関連付けたツイートがみられます。


※8月18日からつぶやきが増えたのは陰謀論的世界観以外にこの説が広まったからです。

では、この「FAMILY GROWTH家族の成長」はどこから「ガリウム弾」という答えに導いたのか。まず前段としてこの事件には安倍晋三の身体には2つの銃創があり、そのうちの1つの弾丸が見つかっていないという事実が存在します。この「見つからない弾丸」が「消えた」となり、そこから「溶ける」という発想へと繋がっていったわけです。そしてこの動画はその答えを探るというものです。なお、動画の説明によると自らは医者であって銃器について詳しくないと語っていますので、要は銃器素人(論文やyoutubeの動画は何百本も見たとのこと)による発想です。この「医者」が山口敬之がいう所の「医者」かまでは不明。
 そして、この動画内で溶ける弾丸についていくつかピックアップした候補がこちら。

動画内ではこれら個々の候補には理由をつけながら候補から外していきますが、最終的に「ガリウム弾」という答えにたどり着きます。あ、ちなみにですが、この動画主は調べるまでガリウムを知らなかったといっています

何故それまでよく知らなかった「ガリウム」を「溶けた弾丸」の最有力候補としたのか。それは今まで挙げた個々の候補では満たせなかった条件を満たしているからではありましょうが、その説の説明に使用しているのがユーチューバーSEIKIN(セイキン)による動画です。

www.youtube.com

そしてyoutubeガリウム弾を自作している人間の動画を探し当て、どうやら「確信」に至ります。

www.youtube.com

その「確信」具合は、このガリウム弾動画をアップロードしたTAOFLEDERMAUSに対して安倍晋三がスナイパーによるガリウム弾で撃たれたと思っているから、その検証を手伝ってくれないかと依頼しているほどのものです。その依頼が叶えられたかまでは追っていませんが、ガリウム弾ならば疑問点を解消できると思っている声の弾み様です。
 ということで流行ってる「ガリウム弾」ってのは以上の様にして生まれてきたわけですが……、疑問に対して答えを探っていって、それらひとつひとつに対して一見「論理的」な説明で答えていき、その「説」が嵌ると気持ち良いのかもしれませんけど、まあ、陰謀論ってか、正直素人の考えた妄想ですね。なお、この「FAMILY GROWTH家族の成長」は現在、安倍晋三事件に関するシリーズ動画を19回までアップしており(数回分は公開停止)、そのいずれも万を超える動画です。特にスナイパー説についても界隈への影響力を持っており、7月26日にアップした「④スナイパーはどこから撃ったのか?」は18万回再生と馬鹿にできないレベルで再生されています。

ガリウム弾」そのものは時間が経てば風化はする様な内容かなとも思われますが、ただ「スナイパー」説の方は根強く生き残る予感がします。飯のタネとしてこれを使っている保守界隈もいるでしょうが、恥を知って欲しい。


追記
 ちなみに。
 スナイパー関連では近くのビルの屋上にテントがあって、それが「スナイパー小屋」という単語として流布してて、で、それはバズフィードがビル管理会社へも問い合わせしてデマだという記事も出たわけですが。このスナイパー小屋デマの出所も「 FAMILY GROWTH家族の成長」です。動画は現在削除済みですが、ネタ元は8月15日の「第18回ビル屋上に簡易テント。スナイパー小屋がイベント後3時間で撤去されている。サンワシティービル屋上 7月8日2022年」がそれです。


※7月15日のツイートは今回の件とは全く関係がないツイートです。

たぶん、この「FAMILY GROWTH家族の成長」というアカウントがなかったらスナイパー関連の話は今よりも勢力が小さかったのかなと。




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全ロシア国営テレビが岸信夫氏のフェイク画像ツイートを放送で使用した模様

 まず初めに言わずもがなですがこれは「フェイク画像」で、読売新聞でもデマであるとの記事を載せています。この画像を使用したツイートを在英ロシア大使館がツイートしていましたが、そちらは現在削除済み。ただ既にロシア語圏のニュースサイトではすでに記事も上がっており、そして駐英ロシア大使館並みにやばい事案として、ВГТРК(全ロシア国営テレビ・ラジオ放送会社)がザポリージャ原発に触れた記事の中で岸フェイクツイートの件にがっつり触れています……。

Советник премьер-министра Японии Нобуо Киши сравнил происходящее с Хиросимой: "Мир на пороге ядерной катастрофы. Украинские ракеты не должны взрываться на Запорожской атомной электростанции. Не повторяйте американских преступлений". Но через полчаса свой пост удалил – он ведь идет вразрез с официальной позицией Запада.
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岸信夫首相補佐官は、今起きていることを広島になぞらえて、「世界は核の破局の瀬戸際にある」と述べた。ウクライナのミサイルがザポリジャー原子力発電所で爆発してはならない。アメリカの犯罪を繰り返してはならない」。しかし、その30分後、彼はその投稿を削除した。欧米の公式見解に反するからだ。

 以上の様にロシア圏ではこのデマ画像を下にしてこのデマがオルタナティブファクト化しているといえます。で、この画像の初出といえるのは画像検索をした限りはロシアのSNSであるVKontakteにあるアカウントのПортфель Генштабаによる8月12日の投稿と思われます。そちらの投稿文は以下の通り。

Новый советник премьер-министра Японии по национальной безопасности и ядерному разоружению Нобуо Киши (бывший министр обороны и брат убитого Синдзо Абэ) сравнил обстрелы украинскими военными Запорожской АЭС с американской бомбардировкой Хиросимы и Нагасаки.
Чиновник призвал Киев остановиться и не бомбить Запорожскую АЭС, чтобы не допустить новой ядерной катастрофы.
Но, видимо, дружба Японии с Зеленским превыше, так как пост Киши удалил через полчаса. Но интернет помнит всё...
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日本の首相の新しい国家安全保障・核軍縮アドバイザーである岸信夫氏(元防衛大臣、暗殺された安倍晋三の弟)は、ウクライナ軍のザポロジヤ原発への砲撃を米国の広島・長崎への原爆投下になぞらえています。
同高官はキエフに対し、さらなる核の惨事を防ぐため、ザポリジャー原子力発電所への爆撃を止めるよう求めた。
しかし、どうやら日本とゼレンスキーとの友好関係が優先されたようで、岸さんの投稿は30分後に削除された。でも、インターネットはすべてを記憶している...。

ちなみにこれよりも少し拡散していたのはテレグラムのТипичная Одессаというアカウントの13日の投稿です。上記に挙げた記事の方ではこちらの方を紹介していますし、影響力はこちらの方が大きかったかもしれません。  そんな岸フェイク画像ツイートですが、8月11日にツイートされたことになっていますが、その反響は「0ツイート、1引用ツイート、5いいね」。この反響の少なさの時点でほぼほぼあり得ないわけですが、ただ可能性としてはいち早く気付いたロシア人がいたという可能性は無きにしも非ずではあります。ただし30分後にツイートを消したという設定や、8月11日時点で日本のツイッター界で一切話題になっていない時点でこの画像はやはりフェイクとしか言いようがありません。それと日本語がちょっとおかしいですが、一部文末に若干の差異はあれど以下の様に最初は英語などで文面を考えてからその後にグーグルなどの機械翻訳で日本語を作成したからなのかなと。

 それとこのツイートの文意ですが、タイミング的にほぼほぼ同時期である8月11日の国連におけるロシアのネベンジャ国連常任理事代表のスピーチと非常に相性の良い内容になっています。タス通信の記事にある内容にある一節では”"Kiev’s criminal acts against nuclear infrastructure push the world to the brink of a nuclear disaster, comparable to Chernobyl”とあり、太字部分はフェイクツイートと同一内容です。それなりにされることがある言い回しとはいえ、フェイク画像はここら辺のスピーチに触発されて作られた可能性はあるかもしれません。

おまけ。寿司の美登利の看板デマ

 岸ツイートフェイク画像は8月12日の投稿がおそらく発端ですが、8月10日には全くこれとは別の以下の様なフェイク画像が流布しています。

ロシア圏ではこれらの画像を用いた記事も書かれており(その1その2)、ロシア大使館がツイートするのとは別種の悪質性があるといえます。勿論、これらも言わずもがなのフェイク画像によるデマで現地を確認してないことを確認したツイートや、被害者ともいえる寿司の美登利は上記画像が会社と一切関係ないとの公式発表をしています。


https://www.sushinomidori.co.jp/#modal_1327

ちなみに画像にあるアカウント名はグーグルで検索した限りいずれもヒットしません。当然ながらもともと現実に実在しない看板を写真に撮っている現実にありえない行為をしていたアカウント群であることからこれらのアカウントそのものも嘘であると考えられます。ただ複数の画像やアカウントを捜索していることを考えると岸ツイートよりも手が込んでいる。そしてこれらの画像の初出ですが、探る限りはテレグラムにおけるЯкеменкоによる8月10日11時1分の投稿であると考えられます。文面は以下の通り。

Реклама в Токио - японский повар затыкает рот "Украине" своей национальной едой, чтобы не молола ахинею, ибо всем уже надоела до тошноты.
"Может быть поговорим о чем-то ещё? Например о том, какие вкусные у нас суши" - предлагает повар.
Украина надоела уже всем. Неудивительно. Но совсем затыкать их не нужно. Арестовича надо слушать, когда грустно и хочется похохотать, а Зеленского, когда несварение желудка и надо тошнить.
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東京での広告 - 日本人シェフが「ウクライナ」の国民食で、くだらない話をしないように、みんながうんざりするほどギャグを言う。
"別の話 "をしないか?例えば、うちのお寿司はおいしいよ、とかね。
ウクライナはみんなをつまらなくしている。当たり前だ。しかし、完全にシャットアウトする必要はありません。アレストビッチは悲しいとき、笑いたいときに、ゼレンスキーは消化不良で吐き気がするときに聴くといい。

現在この投稿における画像はどうも見れないようになっていますが、この投稿をもとにした記事を見る限りは今使用されている画像と同じものを使用しています。これがその日のうちに他のテレグラムアカウントや記事によって転載されて日本に到達したという流れです。

 以上の様にここ1週間くらいの間に日本を親露派と思わせようとする様なフェイク画像が2つ出回っていることになります。実際のところ、これらのフェイク画像を作った人間が同一かどうかまでは不明ですし、目的そのものは嫌がらせや愉快犯なのか、それとも何らかの戦略なのかまでは不明です。さすがに戦略的なものであった場合、双方のフェイク画像とも雑にもほどがあるのでおそらくは前者な気はしますが、岸フェイクツイートはВГТРКで紹介されててもしかしてこっちは後者、ロシア国内のプロパカンダなのではという疑問もわきます。
 現状だとたまたま別個で作成されたフェイク画像が短い期間で表に出たことはあり得ますが、もしも次にまた短い期間で親露派系フェイク画像が作成された場合、そういった画像を作成する個人、もしくはコミュニティが存在する可能性は高まるかなと。変な画像にはすぐさま反応しないようにね。



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